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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

白の帰還(2)

短編SS「白の帰還」の二回目です。
楽しんでいただければ幸いです。
もしよかったら、コメント・拍手などいただけるとすごくうれしいです。

それではどうぞ。


「触角よ! 触角を狙ってみて!」
暗黒帝国のトンボ型の怪人に翻弄されるセーバーチーム。
空中からの攻撃に苦戦を強いられているのだ。
私は司令にお願いして、アドバイザーということで現場に来ていた。
そして小型の装甲車の中でモニターを見ながら、思ったことをアドバイスしていたのだ。
『よし、二人で奴の触角を叩き落すぞ!』
『おう!』
レッドとブラックとが同時にジャンプし、空中で一回転して見事に手刀を叩き込む。
トンボ型怪人は両方の触角を折られ、めまいでもしたかのように地面に叩きつけられた。
『今だ! クラッシュファイヤー!』
レッドの叫びとともに、見事な連携でトンボ型怪人を取り囲むセーバーチーム。
おのおののエネルギーが光となってほとばしり、トンボ型怪人を覆っていく。
『グギャァァァァァ』
断末魔の悲鳴を上げながら、トンボ型怪人は爆発した。

『やったな』
『ああ、触角が弱点だったんだ』
『麻梨さんのおかげですね』
『麻梨、聞いている? サンキューね』
セーバーチームのみんなの声が車内に届く。
よかった。
私も役に立てたんだわ。
セーバーホワイトはもう香奈美ちゃんに任せるしかないけど、少しでも役に立てるならこんなにうれしいことはない。
マリーの記憶を思い出すのはつらいけど、少しでも罪滅ぼしになればいいな。

                      ******

「ね、麻梨さん、ショッピングモールに美味しいケーキを出す喫茶店ができたんですよ。一緒に食べに行きませんか?」
眼を輝かせている香奈美ちゃん。
私も甘い物は大好きだけど、香奈美ちゃんもケーキには目がないのだ。
「ムッ、それは聞き捨てならないわね。どこの喫茶店かな?」
文庫本を読んでいた茜までもが眼を輝かせる。
ここはセーバーチームのリラックスルーム。
私もようやくここに入れてもらえるようになったのだ。
今ではみんなともほとんど以前と変わらなく接している。
まあ、多少のぎこちなさはまだ残ってはいるけれど・・・

「むふふ・・・Dブロックのレマンですよー。あそこのケーキは絶品です」
「あ、あそこかぁ。うんうん、あそこのケーキは美味しいわよね」
「あ、茜さんいつの間に? 内緒にしていて驚かせようと思ったのに」
ちょっと残念そうな香奈美ちゃん。
「レマンなら俺も行ったことあるぞ。コーヒーが美味かった」
光一も横から話に乗ってくる。
そうなるとコーヒー党の晟が黙っているはずはない。
「ふっ・・・光一の美味いは当てにならないからな。ここは俺が味見してくるか」
案の定行く気満々でジャケットを羽織っている。
なんだかんだ言っても、光一が美味いという店には必ず顔を出しているのだ。
結構当てにしているんじゃない。
「それじゃみんなで行きましょうか? いいでしょ? 麻梨さん」
「ええ、私はかまわないけど・・・みんなはいいの?」
「いいに決まっているだろ。なぁ?」
光一の言葉にメンバーみんながうなづいてくれた。

                      ******

「おかしい・・・みんな気をつけて」
装甲車の車内で私はマイクに声をかける。
今回の暗黒帝国の怪人はケラをベースにした怪人らしい。
自由に地中を掘り進むことができるケラ型怪人に、セーバーチームはまたしても翻弄されている。
しかも、今回は顔を出しては潜るというまるでもぐら叩きのような状況だ。
攻撃をしないで逃げ回っているのは何か理由があるに違いないわ。
でも、いったいどんな理由があるというの?

「みんな、敵の動きに翻弄されてはダメよ!」
気がつくとケラ型怪人の動きを追うのに夢中なのか、みんなの連携が取れなくなってしまっている。
それどころか、どんどん遠ざかっていってしまっているのだ。
このままでは無線もうまく届かなく・・・
私はハッとした。
まさかここからみんなを引き離すため?

私は急いで装甲車を発進させようとした。
しかし、その前に車体に衝撃が走る。
後部ドアが引きちぎられ、振り返った私の目の前に見慣れた暗黒帝国の戦闘員たちの黒尽くめの姿があった。
「ヒッヒッヒ・・・迎えに来ましたぞ。マリー」
巨大なむき出しの頭脳をさらした白衣の老人が笑みを浮かべている。
「参謀ゴズム・・・」
暗黒帝国の知恵袋として皇帝に仕え、私も何度も作戦を授けてもらった相手。
今回の作戦も彼によるものだったんだわ。
「皇帝陛下がお待ちかねですぞ。マリー」
いやらしい薄ら笑いを浮かべているゴズムに私はぞっとする。
「いや、いやよ。私はもうマリーなんかじゃない! 皇帝に会うのはいやぁっ!」
私は急いで車外に飛び出そうとした。
でもダメだった。
ゴズムの噴きかけてきた霧によって、私はまたしても意識を失ってしまったのだった。

                      ******

「う・・・あ」
ゆっくりと意識が戻ってくる。
こ、ここは?
私は目を開けると、すぐに周囲を確認した。
「ああっ」
思わず声がでてしまう。
驚いたことに、私は暗黒帝国の皇帝である巨大な目玉のレリーフの前に寝かされていたのだ。
そう・・・
ここは暗黒城の大広間。
皇帝に対する謁見の間。
人類に対する侵略作戦を指揮する間なのだ。

『目が覚めたようだな。我がしもべマリーよ』
重々しい皇帝の声が響き渡る。
「ち、違う、私はマリーなんかじゃ・・・」
私は思わず身を硬くして首を振る。
『マリーなんかじゃないと言うか? 果たして本当にそうか? お前はここに来て我が前にいることでホッとしているのではないか?』
「そ、そんなことは・・・」
皇帝の巨大な目が、まるで私の心の奥底までを見通すように私を見つめている。
『ないというのか? 自分の心の奥を探ってみよ。お前はすでにマリーとなっているのだ。我に再び会いまみえた喜びを感じているのではないか?』
「ち、違う・・・そんなことは・・・」
私は必死でそんなことはないと言いたかった。

でも・・・
でも・・・
私のどこかが喜んでいた。
私のどこかがここにいることにほっとしていた。
光の差し込まない暗黒の空間。
すべてを支配する偉大なる皇帝陛下。
その皇帝陛下の前にいることに、私は確かに喜んでいるところがあったのだ。

『クックック・・・感じただろう? すでにお前の心は暗黒に染まっているのだ。お前はもうマリーなのだ』
違う。
そんなことはない。
私はマリーなんかじゃない。
でも・・・
でも・・・
とても心が休まるの。
ここにいるとすごく居心地がいいの。
あんな人間どもと一緒にいるよりも数倍・・・いいえ、数十倍も居心地がいい。

『さあ、受け入れよ。もう一度我が力を受け入れるのだ。そして、今度こそ身も心も暗黒に染まった女となるがいい』
ああ・・・
いけない・・・
受け入れてはいけない・・・
私は・・・
私は・・・
でも・・・
でも・・・
なんて心地よいお言葉なのだろう・・・
皇帝陛下のお言葉は、まるで心に染み渡るようだわ・・・

『立つのだマリー。そして我が力を受け入れよ』
私にはもう逆らう力はなかった。
皇帝陛下のお言葉に従うのみ。
私はゆっくりと立ち上がると、皇帝陛下にしっかりと向き合った。

『クックック・・・それでいい。さあ、再び我がしもべとなるがいい』
皇帝陛下の巨大な目から、暗黒の気が流れ出る。
それは私の足元を伝い、じょじょに私の躰にまとわりつく。
そしてゆっくりと私の躰に染み込んでいく。
ああ・・・
気持ちいい・・・
暗黒の気を受け入れることがこんなに気持ちよかったなんて。
再び皇帝陛下のしもべになることがこんなに喜ばしいことだったなんて。
そう・・・
私はもう麻梨なんかじゃない。
暗黒帝国の女幹部マリーなのよ。

                      ******

「おう、それでこそ暗黒帝国の黒き花マリー。美しいですぞ」
「うふふ・・・ありがとうゴズム。あなたの頭脳もしわが深くてとても素敵よ」
漆黒のボンデージとも言うべき衣装を身に付け、マントを羽織った私をゴズムが出迎えてくれる。
こうして二人で皇帝陛下にまたお仕えできるのはうれしいものね。
「お前さんのおかげでまたいろいろと情報が手に入ったわい。どうじゃろうかの、もう一人ほど皇帝陛下の偉大さを教えてやってみては」
「うふふ・・・それはいい考えだわ。私も可愛い部下が一人ほしかったのよね。香奈美なんてどうかしら」
私は手袋に包まれた指先を舌で舐める。
あの娘が皇帝陛下の偉大なお力に触れ、暗黒帝国の一員となってくれたらどんなに素敵だろう。
きっと私の可愛い妹になってくれるに違いない。
「ヒッヒッヒ・・・そうと決まれば早速捕獲作戦に取り掛からねばの。まあ、お前さんが指揮を取れば容易かろうて・・・」
「ええ、私に任せてちょうだい。あの娘をすぐに捕らえてきてみせるわ。うふふふふ・・・」
私は皇帝陛下にひざまずく香奈美の可愛い姿を思い浮かべ、それを実現させるべく取り掛かるのだった。

END
  1. 2008/08/15(金) 20:22:37|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

再洗脳されるマリーいいですね。
香奈美の捕獲はマリーとして行うのか、それとも麻梨として行うのか…気になるところですが今回も素晴らしいSSでした。
  1. 2008/08/15(金) 21:31:41 |
  2. URL |
  3. deadbeet #-
  4. [ 編集]

やはり再洗脳きましたか。
どうせなら香奈美も一緒に連れてきてその場で洗脳して欲しかったですね。

ジェットマンのネタはヒーローの一人ではなく、ヒーローの恋人が洗脳されていたっていうだけです。幹部の名前がマリアだったから、似ているなと思って・・・。

今回も素晴らしいSSでした。お疲れ様です。
  1. 2008/08/15(金) 21:42:08 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

定期的にSSを書いてくれて、頻繁に覗いてます!
毎回ホント楽しみませてもらってます。
舞方さんは内面も外見も表現するのが上手ですね!
  1. 2008/08/15(金) 23:09:15 |
  2. URL |
  3. サンデー #-
  4. [ 編集]

居場所を求めて、闇に再び落ちる展開が素敵ですね。
誘き出されてしまう、ヒーロー達の迂濶さも、パターンの美学です(笑)
 
流石と言うしかありません
  1. 2008/08/16(土) 00:14:04 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

>>deadbeet様
ああー、確かに麻梨の姿で接近というのもありそうですよね。
お楽しみいただきありがとうございました。

>>metchy様
香奈美の洗脳シーンも妄想しちゃいますよねー。
いずれそんな場面も書きたいものです。

>>サンデー様
お褒めの言葉ありがとうございます。
これからも楽しんでいただけるSSを書いていくつもりですので、応援お願いいたします。

>>神代☆焔様
今日公開の旧バージョンはまさしくそういう展開かと。
パターンは好きですので、いろいろと使っちゃいますね。
  1. 2008/08/16(土) 21:04:44 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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