DQ5二次創作二日目です。
楽しんでいただければ幸いです。
よければ拍手コメントなどいただけるとうれしいです。
「う・・・あれ・・・」
あたしはひんやりとした暗がりの中で目を覚ます。
「うあ・・・」
上半身を起こしたあたしは、自分が何も着ていないことに気がつき、思わず両手で躰を隠した。
ここはどこだろう・・・
着るものはないかしら・・・
あたりを探ってみるものの、岩壁に囲まれた小部屋のようになっているらしく、寝台代わりのわらぐらいしか置いてない。
武器も防具も何もない・・・
それどころか下着すらない・・・
一体あたしをどうしようというのだろう・・・
父の敵も討てないままこうして捕らわれるなんて・・・
あたしはこぼれそうになる涙を振り払う。
泣いていたって仕方がないのだ。
それよりも逃げ出す手段を考えなくちゃ・・・
「ホッホッホッ・・・目が覚めたようですね」
突然ゲマが現れた。
あたしはもうびっくりして敷きわらの中にもぐりこむ。
こんなものでも躰を多少は隠せるだろう。
裸を見られるなんて耐えられないよ。
「ホッホッホッ・・・驚かせてしまいましたか。まあいいでしょう。ようやく実験の準備が整いましたのでね」
そうだった。
ゲマはあたしで何か実験するって言ってたんだ。
どうしよう・・・
実験なんていやだよぉ・・・
「では始めましょう」
ゲマはそう言うと何事かをつぶやき始めた。
魔法?
あたしは思わず身を硬くする。
黒焦げにされた山賊のボスの姿が脳裏に蘇る。
あんな目に遭うのはいやだ。
誰か助けて・・・
でも違っていた。
ゲマのつぶやきが終わると、床の上に緑色のぶよぶよしたものが広がり始めたのだ。
もしかして、あれは噂に聞くバブルスライム?
毒をもつ厄介なモンスターだわ。
あたしはなるべくバブルスライムから離れるように壁のほうににじり寄った。
「ホッホッホッ・・・怖がることはありません。こいつはただのスライムです。バブルスライムではありませんよ」
えっ?
バブルスライムじゃない?
でも緑色のスライムなんて聞いたこと無いわ。
それに裸の今はただのスライムだって強敵よ。
「もっとも・・・少しばかり特殊ですがね」
ゲマがそう言ってにやっと笑った瞬間、緑色のスライムがあたしに向かって飛び掛ってきた。
「いやーっ!」
あたしはわらくずを投げつけて逃げ出した。
でも、わらくずなんて何の役にも立ちはしない。
緑色のスライムはべちゃっという感じであたしのいたところに広がって行く。
下に敷かれたわらがみるみるうちに溶かされていった。
「ひっ」
あたしは思わず悲鳴を上げてしまう。
普段何気なしに戦っていたスライムが、急に恐ろしいものに思えてきた。
「あっ」
何とか逃げ回っていたあたしだったが、ついに足にスライムが絡みつく。
「ひぃっ」
思わず足を取られてしりもちをついたあたしに、スライムは容赦なくかぶさってくる。
「いや、いやぁぁぁぁぁっ」
悲鳴を上げて逃げようとするけど、粘つくスライムは振りほどけるものじゃない。
それどころか足を伝って躰中を覆い始めるのだ。
「いやぁっ! たすけてぇっ! 死にたくないよぉ!」
あたしは必死に助けを求めた。
緑のスライムはじわじわとあたしの躰を覆ってくる。
あたしは必死でもがくけど、蹴飛ばしても叩いてもぶよぶよのゼリーみたいなスライムには効き目がない。
ひんやりしたスライムは、やがてあたしの躰全体に覆いかぶさってくる。
逃れようにもどうにもできない。
そして、首からやがて口、鼻、目と覆われて、頭の上まですっぽりと包まれてしまうのだった。
息を求めて苦しむ肺。
すっぽりと覆われてしまったあたしは空気を求めて口を開ける。
でもそこには空気はない。
あるのはぶよぶよとしたゼリー状のスライムだけ。
苦しい・・・
苦しい・・・
苦しい・・・
スライムがあたしの開けた口から流れ込んでくる。
そればかりじゃない。
鼻の穴からもお尻の穴からも入ってくる。
ぶよぶよとした感触。
でも・・・
どうしてだろう・・・
なんとなく気持ちいい・・・
気がつくと苦しさはなくなっていた。
躰を覆うスライムは気持ちいい。
息をする必要もなくなっていた。
あたしの躰はスライムに覆われ、スライムによって生かされている。
ああ・・・
なんて安らいだ気分。
なんだかとってもいい気分だわ。
やがて、あたしの躰を覆っているスライムに変化が起こってきた。
スライムがあたしの躰の周りで固まり始めたのだ。
腕の周り、脚の周り、そして胴体の周り。
すべてでスライムが硬く固まっていく。
でも、それがすごく気持ちいい。
まるであたしの躰が作り変えられているみたい。
硬くなったスライムがあたしの躰にぴったりと張り付いて・・・
まるで金属のよろいの様になっていくの。
はがねのよろいってこんな感じかな。
なんだかあたし自身が硬くなっていくみたい。
すごく気持ちいいよ。
スライムはあたしの頭の周りでも固まっていく。
それは金属のヘルメットでもかぶっているかのように変わっていく。
でもちっともいやじゃない。
かわのぼうしやきのぼうしとはぜんぜん違う。
あたしの頭自体がヘルメットになったような感じ。
視界だって妨げられないし、鼻も口ももう必要ないから気にならない。
頭の先から脚のつま先まで金属質に変化したスライムに覆われたあたし。
ゆっくり起き上がって自分の姿を見下ろしてみる。
全身を光沢ある金属よろいで包んだ姿はまるで騎士のよう。
なんだかとっても素敵だわ。
あたしは足元に広がっている緑のスライムに腰を下ろす。
ぷよぷよっとした感触が気持ちいい。
するとスライムは私の腰の下でじょじょに形をたまねぎのような形に整えていく。
股間とお尻でスライムを挟み込んだような姿勢であたしはスライムに乗っかっていた。
うふふふふ・・・
あたしはスライムに乗っているんだわ。
ううん、違う。
あたしとスライムは一体なの。
もう誰もあたしたちを引き離すことはできないわ。
あたしはうれしくなって腰に形成された剣を抜き放った。
「ホッホッホッ・・・どうやら実験は成功のようですねぇ」
実験?
何の実験なのかしら。
あたしには関係ないと思うけど・・・
あたしはいい気分のまま剣を振って感触を確かめる。
うふふ・・・
これだけじゃないのよね。
あたしは魔法も使えるのよ。
頭の中に思い描いて呪文を唱えるの。
そうすればけがの回復もできるし相手を吹き飛ばすこともできる。
素敵だわぁ。
「スライムの騎士、スライムナイトといったところですか。クックック・・・」
ゲマ様が笑っている。
なんだかとてもうれしそう。
魔界の実力者であるゲマ様はとってもすごい魔力の持ち主。
あこがれちゃうわぁ。
「さあ、スライムナイトよ。その力を我に見せなさい」
スライムナイト?
あたしのこと?
わぁ・・・
なんて素敵な名前。
あたしはスライムナイト。
スライムナイトなんだわぁ。
「かしこまりました、ゲマ様」
あたしは剣を立ててゲマ様に忠誠を誓う。
うふふふふ・・・
この剣で早く人間を切り刻みたいわぁ。
村の連中なんてきっと一刀の下に切り伏せてやれるわね。
楽しみだわぁ。
あたしはお尻の下のスライムの部分をうねうねとくねらせて外へ向かう。
もうこのスライムはあたしの下半身。
あたしはこの先に待つ殺戮の楽しみに胸を躍らせて、かつての我が家へと向かうのだった。
END
- 2008/07/30(水) 21:04:13|
- ドラクエ系SS
-
| トラックバック:0
-
| コメント:5
いやぁ、素晴らしいです。
スライムナイトになっていく過程が手に取るようにわかりますね。
- 2008/07/30(水) 21:18:50 |
- URL |
- いじはち #-
- [ 編集]
なるほど~。スライムナイトってこういう風になるんですね。って、これはあくまで舞方さんの妄想ですよね。
でも、こうやってなるんだったら面白いかもしれないですね。
また、楽しませていただきました。
- 2008/07/30(水) 21:44:10 |
- URL |
- metchy #zuCundjc
- [ 編集]
いつもながら素晴らしいSSでした。
浸食といいますかスライムは悪堕ちによくなじみますね。
- 2008/07/30(水) 22:31:45 |
- URL |
- deadbeet #-
- [ 編集]
成る程……騎士がスライムに乗っているのではなく、二体で一つのモンスターとして、認識されたわけですね。
- 2008/07/30(水) 23:48:51 |
- URL |
- 神代☆焔 #-
- [ 編集]
>>いじはち様
ありがとうございますー。
楽しんでいただけたようでうれしいですー。
>>metchy様
もちろん妄想全開ですよ~。
こんなふうに犠牲者(?)を取り込んでスライムナイトになるんだったらいいなぁって考えました。
>>deadbeet様
ありがとうございます。
スライムによって同化されるってのはいいシチュですよねー。
>>神代☆焔様
ドラクエの設定によれば、人間型の部分もスライムだということなので、あの形で一体の魔物なんでしょうね。
- 2008/07/31(木) 20:41:36 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
- [ 編集]