またしてもDQ5ベースの二次創作短編を一本書いてみちゃったので、今日明日で投下します。
本当は短編なので一気に投下でもいいんでしょうけど、まあ、二日に分けてもったいぶらせてくださいませ。
「えいっ!」
どうのつるぎの一太刀が、せみもぐらの胴体を一薙ぎする。
こいつらは地中に巣をつくり、作物を荒らしまわる厄介なモンスターだ。
時々頭を抱えたような格好で身を守ったりもするけれど、正直に言ってそれほど手ごわい相手ではない。
爪の一撃だってかわのよろいを貫いてくるほどじゃない。
でも油断は禁物。
ほかのモンスターと集団で現れたりするから、そういったときには気をつけないとダメ。
一体に気を取られているうちに後ろからなんてこともあるからね。
さてと、今日もまあまあの収穫ね。
あたしは倒したモンスターの必要部分を切り取って袋に入れた。
モンスターはいろいろとお金になる。
せみもぐらの殻は粉にして飲むと咳止めになるし、何に使うのか知らないけれど、スライムだって売ればお金になるのよ。
だから冒険者なんて職業が成り立つってわけ。
もっとも、あたしは冒険者じゃないけどね。
「おじさーん、これ今日の獲物。また引き取ってよ」
あたしは村で唯一のよろず屋に獲物を持ち込んだ。
ここの親父さんがあたしから獲物を買い取り、そのお金で私はいろいろなものを買うってわけ。
もっとも、このあたりのモンスターはそれほど手ごわくない代わりにお金も安いから、あんまり贅沢はできないんだけどね。
大きなお城のある地方とかだと強いモンスターがいたりするらしいけど、そのぶん売ったときのお金も半端じゃないらしい。
優れた冒険者はそういったモンスターを退治して、銀でできたシルバーメイルとかはじゃのつるぎなんてのを装備しているっていうわ。
「そうさなぁ・・・15Gってところかな」
「う~・・・もう一声」
「12G」
「何で下がるのよ!!」
なんていう掛け合いをしながら、あたしは獲物を買ってもらう。
結局、やくそう二つと交換で話がついた。
1G儲けってことかな。
やくそうもバカにはならないのよねー。
もっとも、傷口に当てるとすぐに回復するので、大変便利なんだけどね。
「ねえ、おじさんとこでもてつのよろいとかはがねのつるぎなんてのは仕入れないの? せめてうろこのよろいとかさぁ」
あたしはよろず屋さんの店内を物色しながら訊いてみる。
まあ、どうのつるぎにかわのよろいでこのあたりは充分なんだけどさ。
「そういった品々はこっちまで回ってこないんだよ。強いモンスターの出る地域に優先的に回っちまうのさ。ま、それだけこのあたりは平穏な地域だってことだよ。お前さんもいるしな」
よろず屋のおじさんがにこにこしながらあたしの獲物を仕分けしている。
町で売るものとこの村で消費するものに分けているのだろう。
「まあ、そうなんだろうけどさ。あたしで役に立っているんならいいけど・・・」
「リゼッタは充分役に立っているさ。親父さんとおんなじだよ」
あたしはなんとなく照れくさくなって、かわのぼうしを目深にかぶった。
そうなのだ。
あたしは父の後を継いでこの村で戦士をやっている。
この村はあたしの生まれ育った村。
あたしの父はここでずっと村のために村の周囲のモンスターを退治してきた。
父のおかげでこの村は守られてきたのだ。
畑の作物を荒らしたり、家畜を襲ってくるようなモンスターは父がみんな退治してくれた。
だから小さくてもこの村はみんなが笑顔で暮らせる村なのだ。
その父が死んだのは五年前。
当時噂ではあちこちの城や町から子供がさらわれるってことがあったらしい。
父のことはお城にも名前が知られていて、事件の調査に駆りだされたのだ。
そこで父は強力な魔術師に出会ってしまったという。
人間離れした強力な魔力を持ち、二体の魔物を従えた邪悪な魔術師。
名前はゲマ。
かろうじて生き残った人から父の最期を聞かされた母は、間もなく後を追うように亡くなった。
だからゲマは父と母の敵。
出会ったら絶対に赦さない。
あたしは父の後を継いで戦士になり、この村を守りながら腕を磨いているのだ。
いつかゲマを倒すために・・・
「そういえば村はずれの洞窟にまたしても山賊が住み着いているらしい。猟師のメボットさんが危うく襲われるところだったって言ってたよ」
「ええっ? また?」
あたしはため息をつく。
村はずれの洞窟は基本的にモンスターが住み着くことが多いのだけど、時々あたしが退治してしまうとその後に山賊が住み着いちゃうことがあるのだ。
洞窟からは村から町までの道が近いので、格好のねぐらになるのだろう。
「折を見てまた頼むよ。あんまり被害がでないうちに」
「わかったわ。まったく懲りない連中ね」
あたしはよろず屋のおじさんにうなずいて見せると、そのまま店を後にした。
******
「ま、待て、待ってくれ」
情けない声を上げる山賊のボス。
数人の手勢をあたしに倒されると、あっさりと土下座しちゃった。
「あなたそれでもボスなの? 今までで一番情けないボスだわ」
あたしはどうのつるぎを突きつけて、油断無いようににらみつけた。
こういう奴ってえてしてこっちの油断を誘うもの。
でも油断さえしなければ、怖い相手じゃない。
「俺たちは頼まれただけなんだ。子供をさらってくれば金がもらえることになっているんだよ」
「えっ? 子供を?」
あたしはドキッとした。
それって・・・まさか・・・
「ホッホッホッ・・・様子を見に来てみれば小娘が一匹入り込んでいましたか」
背後からの声にあたしは背筋が凍るような寒気を感じた。
「あなたがゲマね!」
振り向きざまにあたしはどうのつるぎを構えなおす。
じっとりと皮手袋の中に汗をかくあたしの前には、不気味な笑みを浮かべた一人のローブ姿の魔術師がいた。
「ホッホッホッ・・・私の名を知っているとは。ただの小娘ではなさそうですね」
悠然としてまったく動じる様子のないゲマ。
確かに恐ろしい相手・・・
あたしはひざが震えるのを必死になってこらえていた。
「あたしはリゼッタ。五年前に貴様に殺された父の敵を討たせてもらう」
「ホッホッホッ・・・何かと思えば数多く殺した虫けらの一人の娘でしたか。では、父親の下に送って差し上げましょう」
ダメだ・・・
躰が震える。
勝てる気がしないよ・・・
お父さん・・・
「えーいっ!」
あたしはどうのつるぎで切りかかる。
ドラキーのようなすばやいモンスターでも一撃で屠ってきたあたしの剣。
せめて一太刀でも与えられれば・・・
「ふむ・・・小娘にしてはなかなか」
ゲマはあっさりとあたしの剣をかわしてしまう。
いや、かわされたことすら一瞬わからなかった。
これほどまでの強敵だなんて・・・
「うひー!」
そそくさと逃げ出して行く山賊のボス。
あたしは目のすみでそれを見ていたけど、今はそれどころじゃない。
視線をはずしたら最後、あたしは殺される。
あたしは冷や汗が首筋を伝うのを感じていた。
「役立たずは消してしまいましょうか」
あたしからあっさりと視線をはずし、ゲマは何事かつぶやいた。
それが呪文だと気がついたときには、山賊のボスは黒焦げになっていた。
嘘・・・
魔法ってこんなに威力があるものなの?
手も何も触れていないのに一撃で山賊のボスが・・・
どうしよう・・・
誰か助けて・・・
「さて・・・次はあなたの番ですが・・・ただ殺すのは面白くないですね」
「えっ?」
何?
何をするつもり?
「新しい実験の実験台になってもらうとしましょうか」
「じょ、冗談じゃないわ」
お父さんごめんなさい。
あたしは一目散に逃げ出そうとした。
でもダメだった。
ゲマの吐き出した何か焼け付くような息を吹きかけられ、あたしの躰は全身がしびれてしまったのだ。
「嘘・・・こんな・・・」
あたしは必死に躰を動かそうとしたけど無駄だった。
「しばらく寝ているがいい」
ゲマがそう言った瞬間、あたしの意識は闇に飲み込まれていった。
続く
- 2008/07/29(火) 21:06:33|
- ドラクエ系SS
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敵を倒すために日々奮闘している少女が、敵に捕まってどのように改造されるのか興味がありますね。
いきなり出てきたゲマにどうのつるぎで立ち向かうのはある意味すごい勇気です。
ゲマが出ているので、一応二次ということですよね。
あとは舞方さんのオリジナルで・・・。
- 2008/07/29(火) 22:24:51 |
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- metchy #zuCundjc
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