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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

魔のかけら(1)

1000日連続更新達成記念SS第二弾は新作短編SS「魔のかけら」を四夜連続でお送りいたします。
四日間楽しんでいただければ幸いです。


「魔のかけら」

「ハッ!」
棒手裏剣が狙い過たずに巨大ガエルの腹部に突き刺さる。
「ゲゲゲッ」
苦悶の声なのか単なる泣き声なのかわからないような声を上げる化けガエル。
牛ほどもある巨大ガエルは、舌を振り回してムチのごとく当てようとするが、そんなものに当たる私じゃない。
「郁美(いくみ)ちゃん、気をつけて!」
私は身軽くジャンプで舌をよけながら、後方で札を構えているもう一人の退魔師に声をかけた。
「心配無用よ。そっちこそ気をつけて!」
視線を化けガエルから逸らさずに、私に注意する郁美ちゃん。
もう・・・
わかってるってば・・・
でも、さすがに場慣れしている郁美ちゃんは動じてない。
いつでも札を投げられる準備をして、化けガエルをにらみつけている。
月明かりに白い着物と緋色の袴が映えてとてもきれい。

私はいつもどおりに化けガエルの注意をひきつけて、郁美ちゃんのとどめが確実に刺さるように相手の戦闘力を奪うのだ。
私と郁美ちゃんはこのコンビネーションで、何体もの妖魔を封じてきたのだった。
「そこっ!」
再び私は棒手裏剣を投げ込む。
化けガエルの手足に突き刺さるそれらが動きを封じるのだ。
「破っ!」
瞬間、郁美ちゃんの手が動いて、数枚の破魔札が飛んでいく。
「グギエェェェェェ」
化けガエルに張り付いた破魔札が、化けガエルの魔を封じていくのだ。
見る間に化けガエルは小さくなっていき、普通のアマガエルに戻ってしまう。
うう・・・
小さくなってもカエルはちょっと苦手だよ。

「退魔終了。お疲れ様」
郁美ちゃんが黒く染まった破魔札に火をつける。
めらめらと燃える破魔札が魔を浄化していく。
これで一件落着。
退魔成功ってわけ。
「お疲れ様、郁美ちゃん」
私も袴のすそを直しながら、使った棒手裏剣を回収する。
白衣の内側にしまってホッと一息。
「被害もたいしたこと無くてよかったわね」
「うんうん。こいつってばただ鳴いて暴れるだけだったもんね」
今日の相手はさほど凶悪な奴じゃなかった。
これぐらいなら私だけでも充分なのに、今でも私は半人前。
そりゃあ、郁美ちゃんは正規の退魔師だけど、私だって甲賀忍者の末裔なんだし、少しは任せてくれてもいいのになぁ。
「さあ、戻って報告しましょ。冷たいアイスがあるわよ」
「やたっ、抹茶アイスあるよね?」
「ええ、たまには甘い物いいよね」
私はぶんぶんとうなずく。
抹茶アイスは大好き。
早く戻って報告しよう。
私は郁美ちゃんの手を引っ張るようにして、伊嵜(いさき)神社に向かって駆け出した。

                        ******

こつんと頭に衝撃が走る。
「ふえ?」
私はぼんやりとした頭で何事が起こったのか周囲を見渡す。
くすくすという忍び笑いと、腰に手を当てて怒っている先生の顔が目に入る。
「あっ」
私は一瞬で目が覚めた。
今は授業中だったんだっけ・・・
「チョークをぶつけられてやっと起きたか瑞雲(みずくも)。顔でも洗ってきたらどうだ?」
「す、すみません。だ、大丈夫です。目は覚めました」
私は頭を下げる。
う~・・・
仕方ないよね・・・
夕べだって遅かったんだし。
化けガエルの被害が無かったのは私たちのおかげなのに・・・
「遅くまで起きているからだぞ。夜更かしもほどほどにな」
あう~・・・
私は肩をすくめるしかなかった。

「もう、散々だよー」
放課後、私は郁美ちゃんに午前中のことを話した。
郁美ちゃんは笑っている。
そりゃあ郁美ちゃんは居眠りなんかしないだろうけどさ・・・
私はちょっと口を尖らせて、帰りにハンバーガーでも食べて行こうって郁美ちゃんを誘った。
「ごめんね狭霧(さぎり)ちゃん。委員会の会合があるの。今日は一緒に帰れないわ」
郁美ちゃんが両手を合わせて拝むマネをする。
「そっかー」
私はちょっと残念に思ったけど、委員会じゃ仕方がない。
頭もよくて頼りがいのある郁美ちゃんは、いつもクラスで何らかの委員を頼まれるのだ。
それをいやな顔一つしないで引き受けるんだから、郁美ちゃんはすごいよね。
私だったら頼まれたってやだよ。
まあ、頼む人もいないけどね。

というわけで今日は一人で学校から帰る。
ハンバーガーショップに寄ろうかとも思ったけど、一人で寄ってもつまらないしね。
まあ、どうせ夜になればパトロールだ何だって呼び出されることになるとは思うんだけど・・・

プルプルプル・・・
あれ?
着信だ。
誰からだろう。
私はポケットから携帯を取り出して開いて見る。
着信:伊嵜神社
へ?
神社からだ。
なんだろ。
私はすぐに通話ボタンを押して電話に出た。
「もしもし」
『ああ、よかったわ。狭霧ちゃん大至急来てくれない? ちょっと困ったことになったのよ』
「朱音(あかね)さんですか? 何があったんですか?」
電話をかけてきたのは伊嵜神社の宮司の秋津洲(あきつしま)朱音さんだ。
郁美ちゃんのお姉さんであり、神社本庁を通じて退魔を依頼してくる元締めのような人でもある。
朱音さん自体には退魔の力が無いらしく、退魔自体は郁美ちゃんの仕事だけど、私も甲賀忍者の末裔の力を見込まれて、いつの間にか手伝いをするようになっている。
それにしても、妖魔なんてものがこの世界にいるなんてこと、郁美ちゃんと親友じゃなきゃ知らなかったよね。
『魔のかけらが出現したらしいの。郁美には連絡取れなくて・・・』
そうか、今日は委員会だから・・・
郁美ちゃんは学校じゃ携帯の電源切っているし、まさか退魔の仕事があるからって呼び出してもらうわけにも・・・
それに夕方とはいえ、こんな時間から妖魔が活動するなんて思いもしないよ。
「わかりました。すぐに行きます」
私はすぐに伊嵜神社に向かって駆け出していた。

神社に駆け込んだ私を待っていたのは、朱音さんの険しい表情だった。
「はあはあ・・・お待たせ、朱音さん」
「狭霧ちゃん、来てくれてよかったわ。早速だけど様子を見てきて欲しいの」
「様子?」
朱音さんがこくりとうなずく。
「一瞬強い魔の気配を感じたの。たぶん魔のかけらが出現したんだと思う」
「魔のかけらが?」
魔のかけらというのは、どこからか突然現れる邪悪な魔力の塊で、周囲に影響を及ぼして妖魔にしてしまうことがあるものだ。
先日の化けガエルもそうやってできたものかもしれない。
「魔のかけらなら放っては置けないわ。周囲の生き物が取り込んだりしたら・・・」
「うん。妖魔に変化しちゃう」
「だから急いで封じなくちゃいけないわ。かけらの封じ方は知っているわね? もし手に負えないようなら連絡して。郁美を向かわせるわ」
「大丈夫です。かけらだったらいただいた破魔札で私でも封じられます」
私は朱音さんの言葉に力強く答えると、すぐに巫女服に着替えて出動する。
魔のかけらが妖魔を生み出す前に封じちゃわなくてはならない。
でも、魔のかけらは特定の形を持つわけではないので、どれがかけら本体なのか見極めないとならない。
何度か見たことはあるけど私に見つけられるかな・・・
ううん、こんなときこそ私の力を見せてやろう。
郁美ちゃんがいなくたって私一人でも大丈夫。
もう半人前じゃないって事を見せなくちゃ。

夕暮れの街中を巫女服で駆けて行く。
緋色の袴が夕日に照り映えている。
幾人かの好奇の目がこちらを見ているけど、気にしてはいられない。
一刻も早くかけらを確認するべく、私は朱音さんの感じた場所へ向かっていく。
朱音さんは魔を感じることにかけては一級の腕前だ。
朱音さんのおかげでこの街の妖魔被害はよそに比べて少ないぐらい。
その朱音さんが強く感じるのだから、魔のかけらも強力なのかもしれない。
だったら、私でも見つけるのは容易だろう。
最近は私だって魔を感じることぐらいできる。
そんな強力な魔のかけらなら、私にだって感じ取れるよね。

「このあたりのはずだけど・・・」
私はゆっくりと脚を止める。
閑静な住宅街。
こんなところに魔のかけらが現れたなんて・・・
早く見つけなきゃ・・・
私はゆっくりと深呼吸して周囲を見渡した。
買い物帰りのご婦人たちが、何事だろうと私を見ている。
夕食の支度をしているいい匂いがあちこちの家から漏れている。
そんな中で私は精神を集中し、魔の気配を探ってみた。

ドロッとしたいやな気配が漂ってくる。
これだ!
私は気配を感じられたことにうれしくなる。
もしかしたら一軒一軒探さなくちゃならないかもと覚悟していたのだ。
気配を捕まえればこっちのもの。
私は漏れ出てきた魔の気配がどこからなのか確認する。
あそこだわ・・・
その気配は一軒の住宅から漏れているのだった。

私は意を決して呼び鈴を鳴らす。
いきなり巫女服の女子高生が尋ねてきたら不審に思われるだろうけど、魔のかけらを放っては置けない。
出てこない?
呼び鈴を押してしばらく待ったが反応がない。
二度三度と押してみても、家人が出てくる様子がない。
留守かも?
私は確認の意味でドアノブを回す。
カチャリ
ドアノブはあっけなく回り、ドアが開く。
あらら、鍵がかかってないよ。
う~・・・
仕方ない。
私は意を決した。

「ごめんください」
ドアを開けて玄関に入る。
途端にムッとするような魔の気配が強くなる。
間違いない。
この家のどこかに魔のかけらが出現したんだ。
何がきっかけで現れたのかはわからないけど、一刻も早く封じなきゃ。
私は草履を脱いで奥へ向かう。
空き巣みたいだけど仕方ないよ。
とにかく魔のかけらを確認して、早く伊嵜神社に報告しなきゃ。

「失礼します・・・」
リビングに通じるドアを開けたとき、私は思わず固まった。
リビングには巨大な毛むくじゃらのものがうごめいていたのだ。
私は必死で悲鳴を上げないように口を押さえる。
ああ・・・そんな・・・

室内にいたのは巨大な・・・それはそれは巨大な蜘蛛だった。
腕ぐらいもある太さの脚を八本うごめかせ、白い糸で室内に巣を張っている姿を見たとき、私は悲鳴を必死で抑えるのが精一杯だった。
「そんな・・・もう取り込んじゃって・・・」
蜘蛛が魔のかけらを取り込んだんだ。
「くっ・・・」
これじゃ私の手には負えない。
郁美ちゃんを呼ばなきゃ・・・
私は一歩あとずさる。
巨大蜘蛛は何かに糸を巻きつけ、抱え込むように脚を動かしている。
糸に絡まれた細長い物体から、すらりと伸びた女性の脚が見えたとき、私にはその物体が何なのか理解できた。
この家の人だ。
この家の人が巨大蜘蛛に捕らわれたんだ。
今しも巨大蜘蛛はその人に牙を突き立てている最中だったのだ。

「うわぁぁぁぁぁ・・・」
私は叫びだしていた。
「その人から離れろぉ!」
私は懐から棒手裏剣を取り出し、思いっきり投げつける。
二本、三本と続けざまに投げつけ、いずれもが巨大蜘蛛に突き刺さる。
『グエェェェェ』
声にならないような声を上げ、巨大蜘蛛は暴れ狂う。
大きく膨らんだ腹部から、どす黒い体液が流れ出る。
「うげっ」
私は思わず吐き気をもよおすが、そんなことをしているときじゃない。
巨大蜘蛛は腹部に三本の棒手裏剣を受けたものの、まったく動きを止めはしない。
むしろ怒りに燃えて食事の邪魔をした私をにらみつけてくる。
私は短刀を抜き、左手には再び棒手裏剣を構えて巨大蜘蛛に対峙した。

『ギシャァァァ』
巨大蜘蛛が私の方に向かって飛び掛ってくる。
私はそれを避けつつ、相手の動きに合わせて短刀を突き立てる。
こうすれば、相手の重量自体がダメージを大きくしてくれるのだ。
『ギェェェェ』
うなり声を上げる巨大蜘蛛。
切り裂かれた腹部からドロッとした体液がほとばしり、私の頭から降りかかる。
「うえぇ」
吐き気をこらえながらすかさず棒手裏剣を叩き込む。
すばやくかわそうとした巨大蜘蛛だが、棒手裏剣の一本が一つの脚に深々と刺さりこむ。
「どうやら妖魔化したとはいえ図体が大きいだけの蜘蛛のようね。これなら・・・」
棒手裏剣と短刀の一撃は巨大蜘蛛の動きを鈍らせている。
このまま行けば動きを封じるくらいわけはない。
あとは郁美ちゃんが来るのを待つだけ・・・
「えっ?」
足袋を履いた足が滑る。
私は一瞬何が起こったのかわからなかった。
  1. 2008/04/10(木) 21:00:08|
  2. 魔のかけら
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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