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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

月子の戦い

1000日連続更新達成記念SS第一弾は「帝都奇譚」です。
いよいよヴォルコフと月子の戦いが始まります。
楽しんでいただければ幸いです。

25、
カチャリ・・・
飲み干したコーヒーカップをソーサーに置く。
口元が引き締まる。
「来た・・・ようですね」
ゆっくりと玄関に向かう月子。
全身に緊張感がみなぎっている。
夜は奴らの時間。
本来なら昼間の動きの鈍い時に相手をできれば一番なのだけど・・・
やむをえない。
摩耶子さんを渡すわけにはいかない。
彼女はヴォルコフには渡さない。

日本庭園。
鷹司家の庭。
月明かりがあたりを照らしている。
立っている三人の影。
やわらかいラインからは、そのいずれもが女性であることがわかる。
「なるほど・・・今日はご本人ではなくしもべに私の相手をさせようというわけですか?」
動きやすい洋靴を履いた足が一歩前に出る。
どこの誰かは知らないが、目の前にいる二人の女性はすでに人ではない。
赤い目を輝かせ、鋭い爪と牙を月子のほうへ向けてくる。
「可哀想に・・・」
月子は手裏剣を取り出す。
退魔用の特殊手裏剣だ。
普通の武器では魔物を傷つけることは叶わない。
だが、退魔師の力を与えられた武器は魔物をもものともしないのだ。
「それでは・・・お相手いたしましょうか」
月子がそうつぶやいた瞬間、三人の躰がはじけるように動き出した。

「ハッ!」
月子が手裏剣を撒き散らす。
もとより命中を期待したものではなく、それを相手が避けることによって動きを直線化させるのが狙いだ。
二人のしもべたちは、左右から月子を囲むつもりでいる。
変ね・・・
月子は手裏剣をかいくぐる二人の動きを分析する。
一体の動きが鈍い。
もう一体がかなりのすばやさを見せているのに、その一体は自分のすばやさに戸惑っているかのよう。
変化したて?
もしかしたらそうなのかもしれない。
なるほど・・・
月子はまるで宙に浮いているかのように、庭木や屋根を跳び伝う。
そしてすばやく追いすがる一体に棒手裏剣を打ち込んだ。
「ハグッ!」
左肩をえぐられる一体のしもべ。
月子は知る由もなかったが、それはヴォルコフによって紅葉と名付けられたしもべだった。

「くっ!」
紅葉は思わず左肩を押さえてしまう。
ヴォルコフ様の新たなるしもべ灯の動きの鈍さを逆手に取り、おとりにしようとしていたのに、退魔師は逆に彼女を狙ってきた。
これではおとりの意味がないどころか、灯にはこの隙をつくこともできはしない。
しかも肩口につけられた傷は回復してくれないではないか。
「おのれ!」
再度仕掛けなおさなくてはならない。
今度はおとりなどという考えをなくし、二人で時間差攻撃をかけるのだ。
あんな女退魔師ごときに・・・

心臓を狙ったのだが左肩への一撃で動きは止まった。
意図してそうなのかはわからないが、おとり役は牽制だけで動きが止まる。
二対一と不利には違いないが、しもべごときに遅れは取らない。
それに・・・
どこかにヴォルコフがいるはず。
彼女たちはどうせ二人ともがおとりなのだろうから・・・

屋根の上に降り立つ月子。
彼女を挟むように二人のしもべも屋根に立つ。
屋敷の中では天井裏をネズミが這っているとでも思っているかもしれない。
そう思うとこんな時なのに笑みがこぼれる。
やれやれ・・・
命のやり取りをしているというのにね。

左右から同時に仕掛けるしもべたち。
月子は一瞬左右を見ると、今度は右手側の灯に対して手裏剣を見舞う。
そしてジャンプすると同時に上空から分銅鎖の分銅を紅葉に対して打ちつけた。
人間とは思えない月子の動きに二人のしもべは翻弄される。
一瞬のうちに灯は右足の甲に手裏剣を受け、紅葉は分銅で額を打ち据えられる。
「ぐがぁっ」
「ぎゃっ」
二人の悲鳴が夜空に響き、寝静まった町を一瞬ざわつかせた。

「さすがにやってくれるではないか」
月明かりを背にして黒服の男が姿を現す。
「ようやく姿を現しましたね、魔物さん」
「ニコライ・ペトローヴィッチ・ヴォルコフだ。覚えが悪い雌犬にはしつけが必要だな」
「ごめんこうむりますわ。こちらこそ、あなたのような魔物は退治して差し上げます」
月子とヴォルコフの視線がぶつかる。
二人の間に緊張が走った。

先に動いたのはヴォルコフだった。
欧州人の巨体とは思えぬほどの跳躍で、月子との距離を一気に縮める。
月子は一瞬後ろに下がるように見せかけ、そのまま前へと躰を倒す。
右手に巻きつけた分銅鎖を伸ばし、ヴォルコフの足下を掬いにいく。
着地の瞬間を狙われたヴォルコフだが、逆にタイミングをずらすと、分銅をかわして月子の懐に滑り込む。
月子は左手に握った棒手裏剣を牽制に投げつけ、後ろに下がって距離をとった。

「ヌウ・・・なかなかやる。わが手駒にふさわしい」
「くすっ・・・私は仕える相手は自分で選びますので」
月子は笑みを浮かべながら分銅鎖を握りなおした。
  1. 2008/04/10(木) 20:00:32|
  2. 帝都奇譚
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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