すでに事故から10日になろうとしておりますが、海上自衛隊のイージス艦「あたご」と、千葉県勝浦の漁船「清徳丸」が衝突いたしました。
いまだ救出されていない行方不明のお二人の安否が非常に気がかりです。
一刻も早い救出がなされることを望みます。
このイージス艦あたごですが、昨年の「世界の艦船」2007年8月号(海人社)で特集が組まれていたのを思い出しました。
あたごは、アメリカのイージス駆逐艦「アーレイ・バーク」級を元にして日本独自の改良を加えた海上自衛隊初のイージス艦「こんごう」級の拡大改良版として新たに建造された最新鋭イージス艦です。
イージスシステムというのは、1970年代にソ連がアメリカの空母機動部隊対策として考えていた対艦ミサイル大量集中発射による飽和攻撃に対抗するために、アメリカで開発されたものです。
つまり、イージスシステムは航空機が発射する対艦ミサイルと、その発射母機を複数同時にレーダーで探知処理し、撃墜することを目的として作られました。
皆様も写真でご覧になったと思いますが、あたごの大きな艦橋構造物の右前左前と右後左後に八角形の形のパネルが付いているのに気が付きませんでしたでしょうか?
あれがイージスシステムの対空レーダーです。
このパネル型レーダー(フェーズ・ド・アレイ・レーダーといいます)で接近する航空機やミサイルを探知し、瞬時にコンピュータで解析して危険度の高い順番を特定。
対空ミサイルやCIWSなどの対空装備で撃墜するのです。
その能力は機密のベールに包まれていますが、一説によれば百機の目標の同時処理が可能といいます。
他にも自分の艦のレーダーばかりでなく、衛星や他の艦の得た情報などもリンクによって手に入れることができ、戦場での艦隊の中核と成ることのできる能力を持っているといわれます。
しかし、イージスシステムは対空装備です。
水上艦艇の探知にはこのイージスシステムではなく、通常の対水上レーダーが使われます。
この対水上レーダーもいくつか種類があって、通常航海には航海用レーダーが使われます。
このレーダーがはたして清徳丸をきちんと認識していたのかどうか・・・
基準排水量7700トン。
満載排水量では1万トンを超えるといい、第二次世界大戦中の重巡洋艦の重量に匹敵します。
全長も165メートルの長さがあり、急停止や急旋回ができる代物ではありません。
清徳丸とは大きさが雲泥の差です。
だからこそ、航海には注意が必要だったと思います。
注意していなかったのではないとは思いますが、人間どんなことでも慣れが忍び寄ります。
昨年3月に就役したばかりのころは、艦長はじめ乗組員も緊張して艦を運行していたと思われます。
しかし、就役からほぼ一年。
乗組員も艦に慣れ、どうしても日常の航海時には緊張感が失われてしまったのではないでしょうか。
大海原だからぶつかりようが無いと思いがちですが、航路は意外と船同士が接近します。
衝突も一年間でかなりの数に上ります。
だからこそ、常の緊張感を失わないように気をつけないといけないのだと思います。
これは車のハンドルを握る私自身にも言えることだと思います。
皆様も日常に潜む危険には充分ご注意くださいませ。
それではまた。
- 2008/02/28(木) 19:56:06|
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軍用艦は島国日本の国防の要として日夜厳しい訓練を積んでいる……と思いたかったのですけどねぇ……
おまえらプロの船乗りなのか? と呆れてしまいます
なだしお事件の教訓はどこへやら……
それにもまして防衛省の危機管理能力の欠如
事後処理のまずさで赤恥かいてるのは「船場○兆」とか「雪○食品」と同レベルですな
結局、役人根性が染みついた彼らが守りたいのは日本という国ではなく自分たちの体面だけなのでしょう
こんな日本が心配です……(´Д`;;)
- 2008/02/28(木) 21:58:19 |
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- 芹沢軍鶏 #JalddpaA
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第二次大戦の重巡に匹敵する重量!?
見た目は小さそうなのですが、そんなに大きかったのですね。
日本の盾として活躍して欲しいのに、これでは・・・
- 2008/02/29(金) 01:42:35 |
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- うおP #-
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>>芹沢軍鶏様
なだしお事件の教訓は充分生かされたとは言いがたいかもしれないですね。
組織を守ろうという体質は役所はどこもそうですよね。
たるんでいるといわれても仕方ないんでしょうね。
>>うおP様
海上自衛隊の中でも最大級の艦艇ですからね。
アメリカの駆逐艦といっている艦艇だって5500トン軽巡を上回るものばかりですし、軍艦は大型化しているんですよねー。
- 2008/02/29(金) 21:07:15 |
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- 舞方雅人 #-
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