魔法機動ジャスリオン2ndシーズン先行販売DVD、「プロローグ・魔女生誕」の三回目、これが最終回となります。
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『吹雪摩子。そなたはそのような生命体にしては頭がよい。知識の活用の仕方も心得ていると見える。わが娘の中核、プロセッサとして生まれ変わるがよい』
その言葉と同時に摩子の躰が黄色い眼に引き寄せられる。
「えっ? ええっ?」
驚いてあわてて引き寄せられまいと必死にもがく摩子。
「ま、摩子! このやろう、摩子を放せっ!」
「摩子ちゃん!」
寿美は必死に手を伸ばして摩子の腕を掴み取ろうとした。
だが、先ほどですら届かなかった摩子の腕が届くはずも無い。
「い、いやっ! いやぁぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴を上げてもがく摩子だったが、抵抗もむなしく黄色の眼の正面に位置する場所に移される。
そして・・・
黄色の眼が瞬きをすると、摩子のポケットに納まっていた携帯電話がするりと摩子の前に浮かび上がった。
『ふふふふ・・・この携帯電話とやらは非常に便利なものですね。妾の力を存分に受け止めてくれる』
「け、携帯電話が・・・」
恐怖におののきながら、自分の携帯電話を見つめてしまう摩子。
今まで日常の道具であった携帯電話が、今は恐怖の象徴のようにすら思えている。
『ふふふふ・・・そなたの携帯電話はもはやわがアクマシンの闇機械へと変貌しました。そして、そなたも妾の力を受け取るのです』
「い、いやぁっ!」
「摩子!」
「摩子ちゃん!」
寿美と珠恵の見ている前で宙に浮いた摩子の携帯電話が怪しく光り始める。
決してまぶしいものではなく、ぼうっと赤く輝いているのだ。
そして黄色の眼が再び瞬くと、摩子の着ていた制服や下着類がずたずたになってはじけ飛ぶ。
「ひぃっ!」
もはや摩子は恐怖で真っ青になっていた。
「やめてぇ! お願いだからやめてぇ!」
「チックショウ! やめてくれよぉ!」
寿美も珠恵もなすすべがない。
ただ親友が裸にされてしまうのを眺めているだけだ。
「いやっ、いやぁっ」
首を振っていやいやをする摩子。
躰が固定されてしまっているのか、裸を隠そうともせずに大の字に手足を広げている。
その適度な大きさの形のよい胸も、うっすらと陰毛に覆われた大事なところも黄色の眼にさらけ出されているのだ。
おそらく恐怖と恥ずかしさで気も狂わんばかりかもしれなかった。
やがて赤くぼうっと輝いていた携帯電話がすうっと摩子の胸の辺りに近づいていく。
そしてこの場にはまったくふさわしくない軽妙なドラマ主題歌の着メロが流れ、本体そのものがぶるぶるとバイブレーションし始める。
「電話が・・・鳴ってる」
もしかしたら誰かがこの状況を知ってかけてきてくれたのかも・・・
そんな寿美の思いは一瞬にして打ち砕かれた。
どうしてだか知らないが、寿美にはその着信があの黄色い眼、マザーからの着信に他ならないことに気が付いたからだ。
そして、ぶるぶると震え着メロを流している携帯電話は、そのまま裸の摩子の胸にすっと張り付いていく。
「ひいっ」
摩子の悲鳴が上がり、まるで二人に見せ付けるかのように摩子の躰が回転して正面が寿美たちに向いた。
「摩子!」
「摩子ちゃん!」
珠恵は先ほどから必死に走っていた。
足を動かして走っているのだ。
だが、位置が変わらない。
どんなことをしても摩子との距離は決して縮まらない。
だがそれでも珠恵は走り続けた。
涙を流しながら走り続けた。
摩子に張り付いた携帯電話はやがてずぶずぶと摩子の胸にめり込み始める。
二つの形よいふくらみの間に挟まるような形でめり込んでいくのだ。
「あ・・・あああ・・・」
自分の躰に携帯電話が入っていく恐怖。
摩子は知らずのうちに失禁してしまっていた。
めり込んでいく携帯電話はやがて完全に摩子の躰に飲み込まれてしまう。
「あああ・・・あああ・・・」
恐怖のあまり口を開けて呆けてしまっている摩子。
次の瞬間、摩子の胸から全身に黒い色が爆発的に広がっていく。
「えっ?」
「きゃぁー!」
珠恵と寿美の見ている前で摩子の躰は見る見る漆黒に染まっていく。
首から上を除く全身がまるで漆黒の全身タイツでも着たかのように真っ黒く染まるのだ。
ほんの数秒とも言う時間で、摩子の躰は完全に黒く染まってしまった。
だが、変化はそれだけにとどまらなかった。
全身を覆い尽くした漆黒の全身タイツに、まるで機械の回路図のような赤いラインが走り始めたのだ。
それは摩子の胸を中心に広がっていき、全身を一つの回路として組み込むかのように網の目のように張り巡らされる。
両手も指先まで漆黒に包まれ、手の甲に回路が刻まれる。
足の先は指が無くなってかかとが伸び、ハイヒールのような形を形成した上で回路が張り巡らされ、赤と黒の見事なコントラストを見せていた。
そして最後に摩子の可愛い顔はそのままに額に黄色の一つ眼が現れ、パチッと見開いた。
「摩子・・・」
「摩子ちゃん・・・」
珠恵も寿美もただ変わってしまった摩子を見つめていた。
回路図を描かれた黒い全身タイツを着ただけとも思える摩子はそのボディラインを余すところ無くさらけ出している。
いつしか眼をつぶってしまっていた摩子だったが、額の黄色い眼が代わりに二人を見つめていた。
やがてうっすらと眼を開ける摩子。
その眼にはぞっとするような冷たい光が満ちていることに珠恵も寿美も気が付いた。
「ふふ・・・うふふふふ・・・あははははは」
摩子が笑い始める。
それは狂気の笑いでも自己の状況を嘆くような笑いでもない。
心の底からの楽しそうな笑い。
新たに生まれ変わったことを心底喜んでいる笑いだ。
「なんてすばらしいの。最高だわぁ。私はもう不完全な生命体じゃない。マザーのお力によって生まれ変わったアクマシン軍団の一員。知の魔女プロセッサよ」
摩子は高らかにそう言い放つと、振り返って黄色い眼に向かいひざまずく。
「マザー。私にこのようなすばらしい躰を与えてくださりありがとうございます。今日からは知の魔女プロセッサとしてマザーに永遠の忠誠をお誓いいたします」
「摩子・・・」
「摩子ちゃん・・・」
親友の変わりぶりに言葉を失う二人。
その二人に振り返った摩子は冷たい笑みを浮かべてこう言った。
「うふふふ・・・次はあなたたちよ。二人ともマザーのお力で生まれ変わるのよ」
******
絶望が寿美の心にのしかかる。
黄色い眼によって摩子だけではなく珠恵も変えられてしまった。
先ほどまで必死に抵抗していた珠恵は、摩子と同じような漆黒の全身タイツに回路図を張り巡らした全身タイツ状の皮膚を持つ動の魔女ドライブとなってしまっていた。
違うところといえば、知の魔女プロセッサの回路が赤いのに対して、動の魔女ドライブは青い回路図ということ。
二人は額に黄色い一つ眼を輝かせ、邪悪な笑みを浮かべて寿美が変えられてしまうのを待っている。
記の魔女メモリとしてマザーのしもべとなるのを望んでいるのだ。
いやだ・・・
いやだいやだいやだ・・・
そんなのはいやだぁ・・・
夢なら・・・夢なら早く覚めて・・・
寿美の躰が引き寄せられる。
黄色い眼の正面に磔にされるように両手両足を広げられ、制服も下着もすべて剥ぎ取られてしまう。
先ほどまで恐怖におびえていた友人たちはもはやその光景を楽しむかのように笑っている。
神様・・・
今まで悪いところがあったのなら直します。
だから・・・だから助けて・・・
『睦月寿美。そなたには礼を言います。そなたのおかげでこうしてプロセッサとドライブを手に入れることができたのですからね』
「私のおかげ?」
『そう。そなたの携帯電話のデータからこの二人を割り出すことができました。そして・・・妾に力をもたらす存在、魔法機動ジャスリオンが雷純玲という少女であることも』
「えっ?」
寿美は驚いた。
昨年流行った噂というよりも都市伝説に近いもの。
“魔法機動ジャスリオン”
パワードスーツに身を固めた少女が悪の存在を打ち倒していく。
特撮かアニメの世界の話が、にわかに現実味を帯びて語られた都市伝説魔法機動ジャスリオン。
それが雷先輩だというの?
「うそ・・・」
『ふふふ・・・そなたは雷純玲が好きなのですね?』
好・・・き?
私は雷先輩を・・・好き?
そうか・・・
私は・・・
雷先輩が好きだったんだ・・・
『かわいそうに・・・』
「えっ?」
寿美が顔を上げる。
どうして私がかわいそうなの?
『雷純玲をあなたは好き。ですが雷純玲はあなたのことなどなんとも思ってはいない』
あ・・・
ドクン・・・
寿美の心臓が跳ね上がる。
無意識に避けてきたその言葉。
遠くから見つめていられればよしと言い聞かせてきた自分が今までごまかしてきた言葉。
『そして・・・雷純玲には巻雲綾という存在がいる』
やめて・・・
その名前は出さないで・・・
寿美は首を振る。
わかっている。
雷先輩と巻雲先輩が仲がいいのはわかっているよ・・・
だから・・・
だから憧れだけでよかった。
好きだという自分の気持ちになど気が付きたくは無かった。
『苦しいでしょう? 悲しいでしょう? それは不完全な生命体だからなのよ』
「不完全?」
『そうです。人間を含め機械との融合を果たしていない生命体はすべて不完全。そのような不完全な生命体を救い支配して導くのが妾の役目』
「支配して導くのが・・・役目?」
黄色い目が瞬きをする。
『さあ・・・苦しみから解放してあげましょう。生まれ変わるのです。記の魔女メモリに』
寿美の前に浮かんだ携帯電話の着メロが鳴り響く。
そして寿美は胸に衝撃を受けて意識が遠くなった。
******
何も無い虚無。
身を守るすべは何も無い。
凍てつくような闇にただ一人で放り出されている。
怖い・・・
怖い怖い・・・
助けて・・・
誰か助けて・・・
雷先輩・・・
雷先輩助けて・・・
怖いよぅ・・・
助けてぇ・・・
寿美は必死に呼びかける。
いつかと同じように・・・
柄の悪い男子学生に絡まれた時のように・・・
またあの時と同じように助けて欲しかった。
雷純玲に助けて欲しかった。
だが・・・
寿美にはわかってしまっていた。
ここは虚無の空間。
たとえ雷純玲でも来ることはできない。
ここへ来るには完全な生命体でなくてはならない。
雷純玲のような不完全な生命体ではここへ来ることはできないのだ。
そう・・・
寿美を助けてくれる者は誰もいない。
寿美は悲しくなって、ひざを抱えて丸くなってしまった。
『寿美』
えっ?
『寿美』
誰?
誰なの?
闇の中に二つの黄色い眼が現れる。
それは優しい母の眼。
闇の中から寿美を救ってくれるものの眼だった。
あ・・・
寿美は顔を上げてその眼を見つめる。
胸の中に温かいものが湧き、力が満ちてくる。
『恐れることはありません。そなたは完全な生命体になるのです』
完全な生命体?
そうだ・・・
完全な生命体になればいいんだ・・・
そうすればこんな闇なんか怖くない。
いや、むしろ闇を従えることだってできるんだ。
完全な生命体になれば・・・
『寿美・・・いえ、わが娘メモリよ。受け入れるのです』
はい、マザー。
寿美は立ち上がってそう答えていた。
次の瞬間、寿美は全身に力がみなぎってくるのを感じていた。
******
ゆっくりと眼を開ける寿美。
いや、今の彼女はもはや寿美などという名前ではない。
闇軍団アクマシンの一員、記の魔女メモリだ。
彼女の全身は漆黒の全身タイツ状に変化しており、黄色の回路図がびっしりと張り巡らされている。
今までの脆弱な肉体とはまったく違う研ぎ澄まされた肉体だ。
完全な生命体となった自分。
メモリはそれがとてもうれしかった。
ゆっくりとマザーに対してひざまずくメモリ。
「マザー、このようなすばらしいアクマシン軍団の一員に加えていただきありがとうございます。私は記の魔女メモリ。マザーに永遠の忠誠を誓います」
「ふふふ・・・これでそろったな」
「ええ。これからは私たちがマザーのお手伝いをして地上支配をしなくては。ドライブもメモリもよろしくね」
メモリの背後にやってくるドライブとプロセッサ。
赤と青、それに黄色の回路図に光が走る。
「うふふふふ・・・もちろんよ。まずはマザーの望まれる“マジカルクロノブック”を手に入れなきゃね」
メモリがすっと立ち上がる。
マジカルクロノブックは魔法機動ジャスリオンの手の内にある魔道書だ。
それを手に入れればマザーのお力はより強大になるだろう。
それはメモリにとっても喜ばしいこと。
そのためには魔法機動ジャスリオンである雷純玲の動きを封じる必要がある。
「うふふふ・・・そういえばメモリは雷純玲のことが好きなんだったわね」
「そうなのか、メモリ?」
プロセッサが含み笑いを浮かべ、ドライブが驚きの表情を見せる。
「うふふ・・・ええ、そうよ」
メモリははっきりと言い放った。
以前の脆弱な人間だったとき、メモリは雷純玲の強さと凛々しさにあこがれていた。
だが、その雷純玲はマジカルクロノブックで魔法機動ジャスリオンという戦士に変身する。
それはあまりにも歪んだ存在だ。
今のメモリには魔道書の力を借りて肉体を強化する人間などいびつでおぞましく感じる。
不完全な生命体ゆえにそのようなことをしているのだろう。
ジャスリオンを倒しマジカルクロノブックを奪い取って雷純玲を救ってやらなくてはならない。
マザーのお力で彼女も完全な生命体へと変えてもらうのだ。
「雷純玲はジャスリオンなどといういびつな存在にされてしまっているわ。マジカルクロノブックを奪い取って完全なる生命体へと生まれ変わらせてあげないとね」
メモリの言葉にプロセッサもドライブもうなずいた。
『オホホホホホ・・・頼もしい娘たち。いいですか、三人が力をあわせてマジカルクロノブックを奪ってくるのです。決して侮ってはいけません。愚か者とは言えあのデスマダーを封じた相手であることを忘れないように』
マザーの重々しい声に三人はいっせいにひざまずく。
「どうかお任せくださいませ」
「私たちにかかればジャスリオンなど」
「必ずやマジカルクロノブックは私たちが」
深々と一礼し、三人は生まれ変わった喜びを胸にしてマジカルクロノブックの奪取を誓うのだった。
END
- 2008/02/16(土) 19:49:49|
- 魔法機動ジャスリオン
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うう、気になるところで終わってしまった……
いや、私個人としては変わってしまうこと自体よりも、変わった3人が日常生活に対してどうかかわるのかが気になるものでして。
告知で書かれていたのは、あくまで幹部としての「プロセッサ」「ドライブ」「メモリ」であって、「摩子」「珠恵」「寿美」の名前はありませんでしたからね。
考えられる可能性はこんなものですか……
・失踪する
・失踪はしないが、以前の日常生活にも戻らない
(魔女としての任務を優先するため、学園生活はなおざりになって不良扱いされる)
・魔女として日常生活に戻る
(魔女としての意識を持ったまま、カモフラージュとして今までの自分を演じきる)
・女子学生として日常生活に戻る
(摩子・珠恵・寿美は人とは別の存在になったことに気付かずに日常を過ごす)
特に今回は、授業バッくれてますから、3番や4番の展開で戻ろうとして、どうやってごまかすのか見てみたいですねえ。
(クラスメート全員に措置を施してしまうとか)
なんか、こういうネタが進んでくると、いつか「東映まんが祭り」みたいなことをやってみたいなあと思う自分がいるわけでして。
たとえば、自分が今まで発表してきた小説のキャラなら、この面々にどう対抗するかな、とか……w
いずれにしても、これからの展開を期待しております。
- 2008/02/17(日) 16:55:32 |
- URL |
- 通りすがりのMCマニア #6qCNEni2
- [ 編集]
>>ジャック様
本当に皆様に多くの拍手をいただきました。
私自身が驚いておりますです。
悪堕ちシーンはここを書きたいがためのSSですので、そこを楽しんでいただけたのはうれしいです。
携帯は怖いですよー。(笑)
同人誌の完売はおめでとうございます。
また次作を楽しみにお待ちいたしますね。
>>metchy様
三人はきっと幹部同士の仲たがいなんてしないと思います。
見事な連係プレーで純玲を追い込んでくれるといいですね。
楽しんでもらえてありがとうございました。
>>大ファン一号様
楽しんでいただけてうれしいです。
やっぱりエンドはバッドエンドですよね。
純玲の悪堕ちばかりじゃなく、いろいろなキャラの悪堕ちを書いてみたいものです。
>>通りすがりのMCマニア様
ああー、確かにこの後も気になりますよね。
この後は本編でお楽しみに・・・といいたいのですが、三人はたぶん3番になると思います。
人間などという不完全な生命体に魅力は無いですし、人間の振りをする必要性も感じないでしょうけど
、純玲を監視するためにはやむを得ず女子生徒として生活するんじゃないかなぁ。
二次創作的にキャラを使っていただくのはかまいませんですよー。
ぜひぜひご自身が創作されたキャラと絡ませてあげてくださいませ。
>>姫宮 翼様
お久しぶりです。
機械融合は結構魅力的かなぁと思っていますので、これからも何らかの形で書きたいですね。
ホリドルもがんばりますよー。
- 2008/02/17(日) 21:04:55 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
- [ 編集]