今日はバレンタインデーですね。
私はココロのボウルを捜してあげたら、ココロがチョコくれましたよ。

なんかうれしいですねー。
さて、100万ヒット記念第一弾として、本当に久しぶりですが「ホーリードール」をお送りします。
ほったらかしにしてすみません。
何とか結末まで持って行くつもりですので、応援よろしくお願いいたします。
25、
「とにかくこうしてはいられないわ」
麻美は明日美を病院に連れて行こうと決心する。
傷口は青あざのような感じだが、肉が盛り上がっていたり血がにじんでいたりするところもあり、このままにしておくことなどできはしない。
とにかく病院で診てもらわなくては・・・
麻美は戸棚から保険証を用意して身支度を整える。
そして車のキーを取り出して、明日美に病院に行くことを告げようとした。
「えっ?」
突然室内に光が走る。
「な、何?」
まばゆい光に麻美は手をかざして目を閉じる。
やがて、徐々に目蓋を通しても光を感じなくなるのがわかり、麻美はゆっくりと目を開く。
「ええっ?」
驚いたことに、そこに明日美の姿は無かった。
その代わりに赤いミニスカート型のコスチュームを身に着け、ブーツと手袋を嵌めた少女が立っていたのだ。
麻美にはその少女が明日美には思えなかった。
姿は同じでも、明日美とは違う。
麻美には違うとしか思えなかったのだ。
「あなたはいったい? 明日美は・・・明日美はどこなの?」
麻美は目の前の少女にゆっくりと近づいていく。
アニメに出てくるような少女のようだが、何か得体の知れないものを彼女は感じていたのだ。
「・・・・・・」
少女は無言で麻美を見上げている。
その目は冷たく、そしてガラス玉のように無機質だった。
まるで人形の目だわ・・・
麻美がそう思った瞬間、少女の手に細長い杖が現れ、その先端が向けられる。
「あっ!」
麻美の意識はそこで途切れた。
「ただいまぁ」
玄関を潜り抜ける一人の男性。
この家の主人である浅葉竜巳(あさば たつみ)だ
浅葉グループ傍流とはいえ、いくつかの企業群の会長をしているため、今日のように深夜帰宅ということも珍しくは無い。
「ふう・・・もうすぐ一時か・・・みんな寝ちゃったかな」
明日美の寝顔が見たいな・・・
そう思いながらリビングに向かう。
「おや?」
リビングからは明かりが漏れていた。
「麻美はまだ起きているのか?」
待っていてくれたのかなと、少しうれしい気分でリビングに入る竜巳。
だが、彼を出迎えたのは妻ばかりではなかった。
「明日美・・・まだ起きていたのか?」
リビングには赤いミニスカートの衣装に身を包み、室内だというのにブーツを履いて手袋をはめ、両手に余るような杖を持って立っている娘の姿があったのだ。
その後ろには彼の妻がぼうっとした表情で立っている。
「麻美、寝かせなきゃだめじゃないか。今何時だと・・・えっ?」
いきなり明日美の持つ杖の先端が竜巳に向けられる。
「明日美、何を? えっ?」
グニャリと世界が歪んで行く。
めまいがするような感覚に陥り、自分が立っているのか座っているのかさえわからなくなっていく。
「・・・はい、ゼーラ様。人間からの干渉を排除しました・・・」
意識を失う直前、竜巳は娘の抑揚の無い言葉を確かに聴いていた。
黒く塗られた柔らかそうな唇。
その唇にもう一つの漆黒の唇がそっと触れる。
抱きしめられた黒の少女ののどが動く。
口付けられた唇から流れ込む魔力が、少女ののどを潤し躰に力を与えていく。
苦しげだった表情に安らぎが浮かび、その様子にそばに立っていたレディアルファは胸をなでおろした。
「これでいいわ。後は少し休んでいれば大丈夫」
愛しい娘を抱きかかえるようにして、そっと寝かせるデスルリカ。
すでにレディベータは規則正しい寝息を立て、安らかな表情を浮かべて寝入っていた。
「ありがとうございます、デスルリカ様」
「気にすることは無いわ。あなたたち二人は私の可愛いしもべたち。助けるのは当然のことよ」
レディアルファの礼に微笑むデスルリカ。
そう・・・
可愛い二人を苦しめる者は赦さない。
闇の広がりを阻む者は赦さない。
光の手駒どもにはいずれ相応の報いを与えてやらなくてはね・・・
デスルリカはぎゅっとこぶしを握り締めた。
「さて・・・いつまでもここにはいられないわ。あなたはレディベータと一緒にここにいなさい。私はかりそめの世界に戻るとするわね」
「はい、デスルリカ様。お気をつけて」
レディアルファに微笑みで応え、デスルリカは闇の世界を後にする。
大いなる闇のしもべデスルリカである時間は終わった。
これからは退屈な荒蒔留理香に戻る時間。
本来ならこのような時間を過ごしたくは無い。
人間などに戻るのは耐え難いもの。
だが、留理香には一つの楽しみがある。
紗希とともに過ごすこと。
その楽しみがあるからこそ、人間の姿になることも耐えられるのだ。
今日はベータのことがあったので紗希をほったらかしにしてしまった。
もう夕食はとっくに食べ、お風呂も済ませて自室に行っちゃったころだろう。
宿題をやっているかどうか確かめて、やっているようならココアでも淹れてあげようかしら。
ココアに喜ぶ紗希の顔を思い浮かべ、留理香は闇の世界から自宅の玄関に姿を現した。
リビングには紗希の姿は無い。
留理香は階段を上り、紗希の部屋をノックする。
「紗希、入ってもいいかしら?」
娘の反応を待つ留理香。
だが、紗希の返事が無い。
「紗希? いるんでしょ? 遅くなって悪かったわ。ちょっとどうしても抜けられない用事があったのよ」
ノックを繰り返す留理香。
だが、紗希の返事は無い。
「紗希、開けるわよ」
何か心配になった留理香は紗希の返事を待たずにドアを開ける。
「紗希!」
紗希は部屋にいた。
風呂上りに着替えたのであろうパジャマ姿で机に向かっている。
だが、机の上には何も広げられてはいない。
それどころか、紗希は奇妙なものをかぶっていたのだ。
青く輝く光のレースで編まれたヘルメットのようなもの。
そんな奇妙なものを紗希はかぶって笑みを浮かべていたのだった。
青く淡い光。
ヘルメットが放つ温かみのある光。
だが、それは留理香に吐き気を催させるほどの嫌悪感を覚えさせる。
「光の・・・光のアイテム? 紗希、あなたいったい?」
留理香の中に驚愕と怒りとが綯い混ざる。
娘が光に犯されてしまったのだ。
「紗希! それを脱ぎなさい!」
紗希に駆け寄ろうとする留理香。
だが、一瞬早く紗希の躰が光に包まれる。
「くぅっ」
まばゆい光を手をかざして遮る留理香。
次の瞬間、留理香の目の前には、青いミニスカート型のコスチュームに身を包み、青い手袋とブーツを嵌めサークレットを飾った姿に変身した紗希の姿があった。
「光の・・・手駒・・・」
留理香は唇をかみ締める。
可愛いレディベータを傷つけた光の手駒が今目の前にいるのだ。
しかもそれは娘の紗希を光で犯して作り上げた代物だったのだ。
「人間の干渉を排除します」
すっと留理香に向けられる青い少女のレイピア。
そこから魔力を放出してくるのは明白だ。
「赦さない」
留理香は自らの姿を変貌させる。
闇の女デスルリカに変わるのだ。
留理香の周囲に闇が広がり、その闇の中から鋭い槍斧が突き出された。
「えっ?」
一瞬戸惑いを見せるホーリードールサキ。
留理香という人間の記憶を封じ、干渉をしないように仕向けるだけのはずだったのだ。
それがいきなり闇の手駒との戦いとなるとは予測していない。
このような狭い場所では戦闘にも不向き。
ホーリードールサキはそう判断すると、槍斧を避けるように後ろへジャンプし、背中で窓を破って外へ飛び出す。
「待ちなさい! 光の手駒!」
闇の中から姿を現したデスルリカが、その手に漆黒の槍斧デスハルバードを携えてホーリードールサキを追う。
近くの住宅の屋根に飛び移ったホーリードールサキは、デスルリカを迎え撃つためにレイピアを構えた。
「よくも紗希を光に染めてくれたわね。赦さない。紗希は闇こそがふさわしいのよ!」
ホーリードールサキと対峙するように屋根に降り立つデスルリカ。
その手のデスハルバードがかすかに震えている。
デスルリカの怒りによって震えているのだ。
「闇の広がりを食い止め浄化するのが私たちの使命。あなたも浄化する」
冷たい眼でデスルリカをにらみつけるホーリードールサキ。
それは母と娘の交わす視線ではない。
「黙れ! 紗希を返しなさい!」
踏み込みざまにデスハルバードが一閃する。
それをぎりぎりでかわし、後ろに跳び退るホーリードールサキ。
そして下がったところにあるビルの壁をとんと蹴り、レイピアをかざしてデスルリカに飛び掛る。
「くっ」
レイピアの切っ先を払いのけるデスルリカ。
だが、レイピアはおとりに過ぎず、ホーリードールサキの左手が魔力に輝く。
「させるか!」
すぐさまデスルリカも左手を翻し、闇を広げる。
ホーリードールサキの光の魔力とデスルリカの闇の魔力が交差してはじきあった。
はじかれた二人はお互いに再度距離をとって対峙する。
だが、ホーリードールサキの姿を青い光が包み込んだ。
「何?」
デスルリカが見ている前で光は収縮し、やがて消えてなくなった。
「逃げた・・・か・・・」
そう思ったデスルリカから力が抜ける。
手にしたデスハルバードが足元に落ちる。
「紗希・・・どうして・・・どうして光なんかに・・・」
デスルリカの胸には悲しみだけが残った。
- 2008/02/14(木) 19:59:14|
- ホーリードール
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ココロのチョコはちゃんと食べられるんでしょうか・・・。いっつも料理失敗してますけど。
それより、久々のホーリードール!
ついにお互いに正体がばれてしまいましたね。
紗希は相変わらずですが、デスルリカは自分の娘と対峙することに戸惑いを感じてるようですね。
これから、その気持ちをどうもって行くのか、続きを楽しみにしています。
- 2008/02/14(木) 21:08:30 |
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