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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

サントリバルの酒場

こちらも久しぶりの更新の「グァスの嵐」です。
なんか久しぶりすぎて忘れられているかも・・・
楽しんでいただければうれしいです。


19、
サントリバル島は小柄な島であり、中央にそびえる山からの斜面が急角度で海岸線に到達するため、人の住める平地がほとんど存在しない。
にもかかわらず、南側のふもとが何かでえぐられたような湾になっているため、天然の良港として知られており、さらに位置関係も周囲に散らばる島々に連絡しやすい位置にあるために、貿易の中継港としての重要性が近年とみに増している島である。
そのため、湾の周囲に新興の集落が作られ、中小の船舶が常時出入りするにぎやかなところとなっている島だった。
今、エミリオのファヌー『エレーア』は、そのサントリバルに到着していた。

サントリバルの港は人でごった返していた。
もともと狭い土地に加え、中継港としての重要性から各地の商人が集まっていることもあり、その使用人たちや船乗りが多いのだ。
無論、そういった連中目当ての詐欺やスリ、娼婦なども大勢いいる。
油断がならない代わりに楽しい町でもあるのだった。

エミリオたちはとりあえず積荷をギルドに引き渡し、その上でラマイカ方面に向かう積荷を捜すことにする。
ミューに関してはミューの希望に任せることにして、この島に残るならそれでもよいということに決めていた。
そのため、ミューの希望を確認する意味でも、陸の美味いものを今夜はみんなで食べに行こうという話になっていた。
ミューはもちろん遠慮したものの、エミリオとフィオレンティーナの二人に詰め寄られ、結局食事に出ることを了承したのだった。

「美味しい」
スープを口に運んでは幸せそうに目を細めているフィオレンティーナ。
確かにこのヤシガニとチルクのスープは絶品だ。
食えるものならなんでもいいというゴルドアンも夢中になって食べている。
それにちょっと塩味の聞いたふわふわのパン。
エミリオたちが運んできた小麦もきっとこうしたパンになるのだろう。
「運び賃としては悪くなかったからね。遠慮なく食べてよ」
エミリオが給仕を呼んで追加の注文をする。
健啖振りを発揮する三人を前にして、やはりミューだけは食事が進まないようだった。
「ミュー、つらいのはわかるけど食べなきゃだめだ。そんな顔をしていたらマスターが悲しむよ、きっと」
エミリオがパンの皿をミューの前に差し出す。
少女にとってつらいことであるのはわかっているが、いつまでも落ち込んではいられないのだ。
これからのことを考えなくてはならないのだから。
「ミューは食事の必要が・・・」
そう言ってミューは首を振る。
「ミューちゃん、お願いだから食べて。ずっと食事してないじゃない。そんなんじゃいつか倒れちゃうよ。お願いだから・・・」
フィオレンティーナも心配そうな表情でミューを見つめている。
彼女自身きっとつい先日までつらい日々だったに違いない。
姉が消息不明と聞いて、矢もたてもたまらずに飛び出してきたのだ。
泣きたい気持ちは同じだろう。
「ミューは・・・わかりました。食べます」
何か言いたげだったミューだが、皿からパンを掴み取ると、半分に割って食べ始めた。
だが、パンを半分とスープを少し飲んだだけで、スプーンを置いてしまう。
「ごめんなさい。ミューは少ししか食べられないのです。もうお腹いっぱいです」
「そうか・・・でもうれしいよ。食べてくれてよかった」
エミリオがにこやかに微笑む。
その表情はミューのシナプス回路にも温かみをもたらしていた。
「あ・・・いいえ、ミューこそ心配をおかけしてしまいましてごめんなさいです」
ミューはとても素直にそう言うことができた。

そのとき、どかどかと靴音も荒々しく一団の男たちが入ってくる。
そのいずれもが青い空で目立つように黄色い色のシャツを着て、広い襟をつけていた。
海軍の水兵によくある服装であり、事実男たちはリューバ海軍の水兵たちだったのだ。
「リューバ海軍だ。あのギャレーの連中かな?」
「わからん。だがどうする? ミューの姿を見られないほうがいいんじゃないか?」
ゴルの提案にエミリオもうなずく。
「そのほうがいいかも。奴らが食事に夢中になったころに抜け出そう」
「そうね。そのほうがいいわね」
フィオレンティーナまでもが、テーブルの上でエミリオとゴルドアンに顔を近づけてひそひそ話をしていることに、エミリオは思わず苦笑する。
いつの間にかフィオレンティーナはエレーアのいっぱしの乗組員のつもりなのだ。
それはエミリオにとっては気持ちよいものであり、多少困惑することでもあった。

「ミュー、いいね。とりあえず今日は船に戻るんだ」
「すみません、静かにしてくれますか?」
エミリオはミューが静かに水兵たちを見つめていることに驚いた。
その表情はまったく無表情と言っていいもので、何を考えているのかをうかがい知ることはできない。
幼さの残る女の子なのに、その無表情さはまるで人形のような感じさえうかがわせ、エミリオは一瞬戸惑った。
「ミュー・・・」
「あの人たちの話が聞こえます」
そう言ってミューは耳を澄ましている。
なるほど、無表情だったのはそういうわけだったのだ。
エミリオは納得すると、あの水兵たちの会話に耳を済ませるのだった。

「やれやれ、たまらんなぁ・・・」
「ぼやくなぼやくな。命令じゃ仕方ないだろう」
水兵たちは運ばれてきたマグを片手に一杯やっている。
どうやらこれから任務に就くらしい。
「二言目にはやれ自航船がどうの、じじいがどうの、女の子がどうの・・・結局てめえの尻拭いじゃないか」
「まったくだ。結局追っていた船は焼けちまったそうじゃないか。お偉いエスキベル提督が聞いてあきれるぜ」
「シファリオンの連中も哀れだが、こっちも災難だぜ。こちとらただの伝令船で通信を届けに来ただけだってのに・・・」
「これからこのあたりの島巡りってか? やってられないぜ!」
文句や愚痴を言いながらマグを傾けている水兵たち。
柄の悪い連中で、海軍でもあまり日の目を見ていない連中だろう。

「自航船?・・・焼けた?・・・女の子?」
「女の子ってのは・・・ミューのことか?」
「島巡りってことは・・・ミューちゃんを探しているって事?」
エミリオ、ゴルドアン、フィオレンティーナの三人が顔を見合わせる。
どうやら海軍はミューのことをあきらめていないらしい。
それに自航船って・・・
「ミュー・・・もしかして君のマスターは自航船に関係があったんじゃ?」
「それは・・・それはミューに対する質問ですか?」
ミューはエミリオに向き直る。
エミリオは黙ってうなずいた。
「ミューは・・・ミューは質問されれば答えないわけには行きません。先ほどの質問は・・・その通りです」
「やっぱりそうなのか・・・」
エミリオは理解した。
海軍がわざわざ乗り出してくるのも無理はない。
帆もオールもなしで動く船があるとしたら、それを一番ほしがるのは海軍だろうだからだ。

「ねえねえエミリオ、自航船ってなに?」
「自航船ってのは船乗りの間ではちょっと知られた怪談話みたいなもんだ」
エミリオに向けられた質問だったが、ゴルドアンがあとを引き継ぐ。
「怪談?」
「ああ、怪談といってまずけりゃ御伽噺だな。フィオは船って何で動くか知っているか?」
「むぅ、バカにしないでよ。船は風で動くわ。風に帆を張ってそれで動くのよ。さもなきゃオールで漕ぐか」
フィオレンティーナが少しむっとした表情で、まさにその通りの答えを出す。
船は大体そうやって動くものなのだ。
中には、川をさかのぼったりする場合に動物に引いてもらったりすることもあるけれど、それは例外中の例外だろう。
「その通りだ。だがな、自航船ってのは帆もオールも使わずに航行できるのさ」
ゴルドアンが自分のマグを空にする。
「えっ? 帆もオールも使わずに? どうやって?」
フィオレンティーナが目を丸くする。
帆もオールも使わずに船が航行するなんてありえない。
「わからん・・・わからんから手に入れようとする。もっとも、そんなのはよくある噂だとばかり思っていたが・・・な」
ゴルドアンは苦笑した。
  1. 2007/12/27(木) 19:24:41|
  2. グァスの嵐
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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