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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ゲジゲジ怪人のパートナーにされてしまった人妻 (前)

今日明日でブログ丸17年達成記念SSを一本投下させていただきます。

タイトルは「ゲジゲジ怪人のパートナーにされてしまった人妻」です。
タイトルを見ておわかりのように、まあ、いつもの私の作品です。
(^o^;)

寝取られ系作品となりますので、苦手な方はご注意くださいませ。

それではどうぞ。


ゲジゲジ怪人のパートナーにされてしまった人妻

 「わぁいわぁい」
 嬉しそうにはしゃぎながら走りだしていく少年。
 軽やかな足取りでみるみるうちに遠ざかっていく。
 「こぉら、弘樹(ひろき)! 走ったら危ないでしょ!」
 母親の梨帆(りほ)が、駆け出していく息子に声をかける。
 「大丈夫だよー!」
 少年は一旦立ち止まって振り返るも、そう言って再び走り去っていく。
 もう……
 まったく言うことを聞かないんだから……
 転んだらケガをするかもしれないのに……
 梨帆は困ったものだと苦笑しながら、あとをついていくしかない。

 「ははは……久しぶりに遠出してきたからな。楽しくてしょうがないんだろ」
 梨帆の夫の弘和(ひろかず)が笑いながら、大きなバスケットを持ってついてきている。
 もう……あなたったら弘樹には甘いんだから……
 梨帆はちょっと口をとがらせる。
 いつも小言を言うのは梨帆の役目になってしまっているのだ。
 たまには父親が注意をしたっていいのにと思う。
 「転んだりしたらケガするわ」
 「ははは……少々の傷は男の子には勲章さ」
 「それはそうかもしれないけど……」
 男親とはこんなものなのだろうか……
 ケガによっては取り返しがつかないことだってあるんだし……
 まあ、男の子は元気が一番とは言うけれど、ケガをして痛い思いをするのはあの子なのよ。
 梨帆はそう思う。

 「ねえママー、パパ―、見て見てー!」
 先に高台にたどり着いた弘樹が、両親に手を振って呼んでいる。
 「おう、今行くぞ」
 手を上げて応える父の弘和。
 今日は家族でハイキング。
 高原の高台までドライブに来たのだ。
 ここは景色がいいわりに穴場のようで、今日も三人のほかにはさほど人はいない。
 梨帆も朝早くからお弁当を作るのは結構大変だったとは言うものの、ハイキング自体は楽しんでいた。

 「わあ、いい景色ねぇ」
 高台から広がる景色に、梨帆は思わずそう口にする。
 苦労してここまで昇ってきた甲斐があるというものだ。
 「まったくだなぁ。周辺にめぼしい施設があるとかじゃないから、あんまり人が来ないらしいけど、景色がいいという話は本当だったな」
 夫の弘和も遠くに山並みが広がる景色に感動する。
 家族でハイキングに行くのにいい場所はないかと同僚に聞いたのだが、ここを教えてもらえたのはよかった。
 弘和はふと隣の梨帆を見る。
 ひいき目と言われるかもしれないが妻は美しいと弘和は思うのだ。
 決してミスコンテストに出てくるような美人ではないかもしれないが、健康的な美しさがあると思うし、三十代半ばとまだまだ若くもある。
 息子の弘樹にとってもいい母親だと思うし、自分にとっても良き妻だ。
 そんな梨帆がこうして隣にいてくれることは本当にありがたいと思う。
 「ん? どうかした?」
 夫の視線に気づく梨帆。
 「あ、いや……」
 思わず気恥ずかしくなり、弘和は視線を逸らした。

 「ねえパパ、あっちにも道があるよ」
 そう言って弘樹がちょっと下った位置にある林の中を指さす。
 パッと見には見づらいものの、よく見ると確かに小道のようなものが林の中にあるのだ。
 だが、小道の先は林の奥へと向かっているような気もする。
 「うーん……地元の人の道かもしれんぞ」
 「行ってみようよ。何があるか確かめたい」
 父はそういうものの、弘樹はウキウキした顔で振り返る。
 もう、弘樹ったら……
 ただの林の小道じゃない。
 何も無いに決まっているのに。
 ちょっとした探検をしたくて仕方がないという感じの弘樹に、梨帆はややあきれてしまう。

 「そうだな、よし、行ってみるか」
 だが、梨帆の思いとは裏腹に、夫の弘和は弘樹と一緒にそっちの道へと降りていってしまう。
 「ええ? ちょ、ちょっと」
 慌てて止めようとする梨帆。
 「大丈夫だって。立ち入り禁止とかじゃなさそうだし、どこかの民家に突き当たったりしたらごめんなさいでいいだろ。弘樹の好奇心を生かしてやりたいし」
 そう言いながら、すでに父と息子は丘を下ってその小道へと向かっていくところだ。
 「で、でも……」
 「大丈夫だって」
 なおも梨帆は引き留めようとするが、二人は聞く耳を持つ様子はない。
 もう……
 弘和さんもこういうところがあるのよね。
 林の奥で道に迷ったらどうするの?
 道から外れなければ大丈夫だとは思うけど……
 梨帆はそう自分を納得させ、あきらめて二人に付き合うことにする。

 夫と息子からはぐれないようにしてあとをついていく梨帆。
 丘を降りたところから広がる林に、分け入るようにして入っていく。
 そこは確かに小道と言えば小道のようで、きちんと踏み分けられている。
 林の中の緑の香りは包まれていると気持ちがいい。
 木漏れ日も差してとても素敵である。
 でも、虫がいそうなのが気にかかる。
 虫よけスプレーはかけてきたし、リュックの中にも入れてきてはいるが、梨帆は虫が苦手だったのだ。

 「ここならクワガタやカブトムシなんかもいそうだな」
 「虫捕り網持ってきてれば良かったね」
 「そうだな。今度来る時には持ってこよう」
 すっかり男の子二人になってしまったようなそんな会話をしている父と息子。
 男同士ってこういうものかもしれないと梨帆はまた苦笑する
 でも、捕るのはいいが捕ってきたものを見せられたりしたらどうしよう……
 弘樹は梨帆が虫嫌いと知っているはずなのに、きゃあきゃあと悲鳴を上げるのが楽しいのか、嫌がれば嫌がるほど見せようとしてきたりするのだ。
 もし今回もそうしたら、きっちり怒ってやるんだからね。

 「ねえ……まだ行くの? そろそろ戻った方がよくない?」
 道の狭さも変わらず誰にも会うことも無い林の中の小道は、どんどん奥へと誘い込んでいるような気がして、梨帆は夫に声をかける。
 こんなところじゃお弁当を広げて食べることもできないだろう。
 戻って見晴らしのいいところでお昼を食べたほうがいいのではないだろうか。
 「そうだなぁ……この先に何があるというわけでもなさそうだし。弘樹、戻ろうか」
 「ええー? 戻るの? もうちょっと行ってみようよ。何かあるかもしれないし」
 せっかく父親が戻る気になってくれたというのに、弘樹はさらに先に行ってしまう。
 「ちょっと待ちなさい、弘樹!」
 梨帆が呼び止めても聞こうともしない。
 そのうち道の先がちょっとカーブになっているようで、弘樹の姿は樹々の間に隠れてしまう。
 「しょうがないな……おーい、弘樹」
 弘樹を追いかける弘和。
 「もう……」
 梨帆も仕方なくまたあとを追うことにした。

 「あれ?」
 弘和が驚く。
 曲がった道の先に弘樹の姿が無いのだ。
 どこに行ったというのだろう?
 道を外れて樹々の間に入って行ってしまっただろうか?
 「あなた?」
 追いついてきた梨帆も、弘和が立ち止まってきょろきょろしていることに気が付く。
 「えっ? 弘樹は? 弘樹はどこ? 弘樹?」
 梨帆も息子の姿が見えないことに慌てて名前を呼ぶ。
 「弘樹? どこにいる?」
 二人が息子の名前を呼んでいると、突然樹々の間から数体の黒い人影が現れる。
 「わあっ!」
 「きゃあっ!」
 驚いて悲鳴を上げる二人。
 現れたのは全身が真っ黒の全身タイツを着たような格好をした男たちで、驚いたことに目も鼻も耳も無いつるんとした真っ黒の顔をしており、まるで動くマネキン人形のような姿をしていたのだ。

 「キーッ!」
 「キーッ!」
 真っ黒の男たちは口も無いのに奇妙な声を上げながら、弘和と梨帆を素早く取り囲む。
 どうやって声をあげているのか想像もつかない。
 なにせ人間がマスクをかぶったような凹凸すらなく、黒いゆでたまごのようにつるんとしたのっぺらぼうなのだ。
 「な、なんだお前たちは!」
 「いやっ、こ、来ないで!」
 梨帆は夫の影に隠れるようにして身を縮め、弘和は手にしたバスケットを前で構えて身を護るようにする。

 「ギチチチチチッ! お前たち、ここに来たからには黙って帰すわけにはいかんなぁ」
 さらに男たちとは違う不気味な声がして、樹々の間から異形の人影が姿を現す。
 「うわぁっ!」
 「ひぃぃぃっ!」
 思わず悲鳴を上げてしまう弘和と梨帆。
 特に虫が嫌いな梨帆は、その姿を見た瞬間に気が遠くなりそうなほどだった。
 そこにはこげ茶色に黒のまだら模様の節のある躰をつやつやと輝かせ、長い触角をゆらゆらと揺らし、腕や躰の脇、脚の横からワサワサと何本もある細い歩脚を蠢かせた巨大なゲジゲジのようなものが人間のように立っていたのだ。
 しかもそのゲジゲジは外側に歩脚の生えた人間のような腕で脇に少年を抱えている。
 「あっ、弘樹!」
 「いやぁっ! 弘樹ぃ! 弘樹を返して!」
 「ギチチチチチッ! どうやらこのガキの両親か。まあいい、ここで騒がれるのはまずい。とにかく連れていけ!」
 「キーッ!」
 「キーッ!」
 息子を取り返そうとした弘和と梨帆に、黒いマネキン男たちが掴みかかっていく。
 「くそっ! 離せっ!」
 「いやぁっ! 離してぇ!」
 必死にその手を逃れようとする弘和と梨帆。
 だが、たちまち二人は男たちの強い力で取り押さえられ、引きずられるようにして樹々の間へと連れていかれるのだった。

                   ******

 「う、うーん……」
 床のひんやりとした感触に目が覚める梨帆。
 どうやら気を失っていたらしい。
 「梨帆、大丈夫か?」
 「ママ!」
 目を開けると、心配そうな夫の顔と今にも泣きだしそうな息子の顔が飛び込んでくる。
 「あなた、弘樹、無事だったのね?」
 梨帆は躰を起こすと二人に抱き着いていく。
 弘和も弘樹も一緒に抱き合い、三人で無事を喜びあう。

 「ごめんなさい……ごめんなさい……ボクがもっと奥に行こうって言ったから……」
 「泣かなくていいのよ弘樹。あなたのせいじゃないから」
 我慢しきれず泣き出した息子を慰める梨帆。
 「そうだぞ。悪いのは俺たちみんなを閉じ込めたあいつらだ。それにしても奴らはいったい何者なんだ?」
 弘和も息子の頭をなでてやる。
 「私……私、化け物を見たわ。おっきなゲジゲジみたいなの……」
 梨帆が恐怖とともに思い返す。
 「ああ、俺も見た。あれはいったいなんなんだ?」
 梨帆と弘和が顔を見合わせる。
 あんな巨大なゲジゲジは見たことが無いし、しかも言葉をしゃべっていたのだ。
 まるでゲジゲジと人間が掛け合わされたゲジゲジ人間のようだ。
 なにか悪いいたずらにでも引っかかったのではないだろうか……

 「ボクも見た。いきなり襲われて目が覚めたらここにいたけど……」
 どうやら弘樹はいきなり道の先にあのゲジゲジの化け物がいて、悲鳴を上げることもできずに気を失わされたらしい。
 「まあ、とにかくみんな無事でなによりだ。さて、問題はここから抜け出せるかどうか……」
 弘和が立ち上がって部屋の様子を調べる。
 殺風景なコンクリート造りの部屋のようで、椅子もテーブルも何もない。
 壁には窓もなく、ドアものぞき窓ひとつない鉄のドアで、弘和が開けようとしてもびくともしなかった。
 ただ、天井は照明が埋め込まれているのかうっすらと輝いており、暗闇にはなっていない。

 「くそっ、完全に閉じ込められている」
 部屋を調べ終わった弘和が、腹立ちまぎれにドアをける。
 「あ、そうだわ」
 梨帆がポケットからスマホを取り出し、警察にかけてみる。
 リュックやバスケットは奪われていたが、身に着けていた財布やスマホは取られていなかったのだ。
 だが、すぐに絶望感が押し寄せる。
 スマホの電波が遮断されているようで、どこにもつながらないのだ。
 外への連絡手段は無いらしい。

 「こうなればトイレに行きたいとかなんとか言って人を呼び、そいつに鍵を開けさせて出るしか……」
 「そんなの危険だわ。もし相手が武器を持っていたりしたら……それに一人で来るとは限らないし」
 弘和の言葉に梨帆は首を振る。
 武器だけじゃない。
 あの黒い男たちはとても力が強かった。
 自分たちの力で勝てるとは梨帆には思えないのだ。
 「どうしたらいいんだ……」
 力なく床に腰を下ろす弘和。
 梨帆にもどうしていいのかわからなかった。

 だが、どうあれ生理現象というものは起きてしまうわけであり、梨帆はほどなく尿意を覚えるようになる。
 とにかくトイレすらない部屋で影になる場所もない。
 あったとしてもそこで用を足すというわけにもいかないだろう。
 仕方なく梨帆は夫に尿意を伝えるも、弘和とて何ができるというわけでもない。
 結局ドアを叩いて、外にいるかもしれない連中にトイレに行きたいことを伝えるしかなかった。

 しばらくするとドアが開き、あの巨大な二足歩行のゲジゲジ人間が入ってくる。
 「ひっ!」
 「うわっ!」
 「わあっ!」
 まさかこの化け物が来るとは思っていなかった梨帆たち三人は思わず声を上げてしまう。
 「ギチチチチチッ! トイレに行きたいと言ってたな。お前たちも排泄するのを忘れていたぜ」
 「あ、ああ……その、妻がトイレに行きたがっているんだ。できれば俺と息子もお願いしたい」
 黄色の複眼が輝き、頭部からは長い触角が揺れ両脇の細い歩脚がワサワサと蠢いている、まさに人間とゲジゲジを掛け合わせたような化け物に、弘和は恐る恐るお願いする。
 三人一緒にこの部屋を出ることができれば、なんとか機会があるかもしれない。

 「ギチチチチチッ! まずは女、来い!」
 「きゃっ!」
 いきなり腕を掴まれて引き寄せられる梨帆。
 「何をする! うわっ!」
 ゲジゲジ人間に捕まった梨帆を慌てて引き離そうとした弘和だが、ゲジゲジ人間の腕にあっという間に突き飛ばされてしまう。
 「あなた!」
 「ギチチチチチッ! お前はおとなしくしていろ」
 ゲジゲジ人間は梨帆を部屋から連れ出して、ドアの外にいたあの黒いマネキン男に手渡す。
 「そんな……二人にもトイレを」
 梨帆はなんとか振りほどいて離れようとするが、マネキン男の力は強くてとても振りほどけない。
 「ギチチチチチッ! お前たちはこれでも使っていろ!」
 もう一体のマネキン男が持っていた箱のようなものを取り上げ、部屋の中に放り込むゲジゲジ人間。
 「くそっ! 梨帆を離せ!」
 弘和が追いかけて飛び出てこようとするが、それよりも早く鉄のドアが目の前で閉じられてしまう。
 「そんな……あなたぁっ!」
 手を伸ばして夫を呼ぶ梨帆。
 だが、無情にも夫と息子は部屋の中に取り残される。
 「ギチチチチチッ! あれは簡易トイレだ。男だけならあれで充分だろう」
 「そんな……ひどい! あんまりです!」
 梨帆はキッとゲジゲジ人間をにらみつける。
 「ギチチチチチッ! そう言うな。トイレに行きたいんだろう? 連れて行ってやる」
 鋭い爪の付いた硬い手で梨帆の顎を持ち上げるゲジゲジ人間。
 「ば、場所を教えてくれれば一人で行けます」
 巨大な顎を左右に広げるゲジゲジ人間に気を失いたくなるほどの恐怖を感じながらも、梨帆はなんとか目をそらすまいと必死に耐える。
 「ギチチチチチッ! なかなかいい女だ。ますます気に入ったぞ。ついてこい」
 梨帆の顎から手を離してくるりと背を向けるゲジゲジ人間。
 歩くたびに躰の両脇に生えている細い歩脚もワサワサと蠢いている。
 本当にゲジゲジと人間のかけ合わさった生き物のようで、虫嫌い、特にゲジゲジのような脚の多い虫は大嫌いな梨帆は恐怖で背筋が寒くなる思いがする。

 ゲジゲジ人間が歩いていくあとを、梨帆は腕を後ろ手に押さえつけられたままマネキン男によって歩かされていく。
 廊下はすぐ先がまた鉄の両開きドアになっており、そこにはやはりマネキン男たちが見張りをするように立っていた。
 よく見るとマネキン男たちの腰にはベルトが巻かれており、大きな虫の顔のような模様が付いている。
 いったい何のマークなのだろうか。
 見たことも無いマークだわと梨帆は思う。

 それにしても廊下にも全く外の見える窓が一つもない。
 もしかしたらここは地下か何かなのかもしれない。
 薄暗い照明しかないのでよくわからないが、いったい何のための建物なのだろう。
 「ギチチチチチッ! ここだ」
 ゲジゲジ人間がドアを開け、梨帆を中に入れる。
 やはり薄暗く狭い部屋で、床に穴が開いている。
 「えっ? トイレ?」
 「排泄用の穴だ。使いづらいかもしれんが我慢しろ。ギチチチチチッ!」
 そう言ってドアを閉めるゲジゲジ人間。
 「えっ? ちょっと……」
 なにかを言う間すら無い。
 しばらく立ち尽くした梨帆だったが、仕方なくそこで済ませるしかなかった。

 「ギチチチチチッ! そっちではない。こっちだ」
 トイレを出て部屋に戻ろうとした梨帆を、ゲジゲジ人間は違う方向へと連れていく。
 「えっ? ど、どこへ?」
 このままでは夫や息子と引き離されたままになってしまうと恐れる梨帆だったが、マネキン男が無言でついていくように促してくる。
 逆らったところでマネキン男が簡単に梨帆の躰を取り押さえてしまうだろう。
 仕方なく梨帆はゲジゲジ人間のあとについていくしかない。
 「わ、私をどこへ連れていくつもり? あなた方はいったい?」
 「ギチチチチチッ! 我々はバグゲラン。黙ってついてくるのだ」
 「バグゲラン?」
 「そうだ。我々はバグゲラン。いずれ我々が世界を闇から支配するのだ。そして俺様はそのバグゲランの怪蟲人(かいちゅうじん)ゲジゲランだ。ギチチチチチッ!」
 胸を張り顎を鳴らすゲジゲラン。
 梨帆は唖然とする。
 バグゲランだの怪蟲人だの聞いたことも無い。
 そんな組織が本当にあるというのだろうか?
 テレビか映画の撮影ではないのだろうか?
 私たちはどうなってしまうの?

 『ぎゃぁぁぁぁぁ……』
 奥の方から男の悲鳴が聞こえる。
 「えっ? い、今のは?」
 思わず足が止まる梨帆。
 「ギチチチチチッ! 役立たずが処分されたか、実験材料がくたばったかどっちかだろう」
 ゲジゲランと名乗ったゲジゲジ人間があっさりと言う。
 「ええ?」
 役立たず?
 実験材料?
 いったい何のことなの?
 「ギチチチチチッ! 心配するな。俺様はお前が気に入った。お前にはチャンスをやる。先ほど首領様にも許可をいただいた」
 青ざめた梨帆を振り返り、ゲジゲランが顎を広げる。
 「チャンスを? 私に? 主人と息子は?」
 「ギチチチチチッ! そうだな……お前次第ということにしてやってもいい」
 「私……次第?」
 「ギチチチチチッ! そうだ。おとなしくついてこい」
 再び歩き出すゲジゲラン。
 梨帆は黙ってついていくしかなかった。

 「キーッ!」
 「キーッ!」
 入口の左右に立っているマネキン男たちが右手を上げてゲジゲランと梨帆を迎える。
 入り口のドアを抜けて部屋に入った梨帆は、そこにずらっと並んだ透明なガラスの筒のようなものに気が付いた。
 「ひっ」
 思わず息を飲む梨帆。
 そのガラスの筒には薄いグリーンの液体が満たされ、中に裸の人間が浮いていたのだ。
 まるでホルマリン漬けの人間の標本のようではないか。
 いや、人間だけではない。
 いくつかの中身は半分躰が真っ黒く変色したものや、それこそ今も背後に黙ってついてきているマネキン男そっくりになっているものもある。
 中には女性もいるようだ。
 これはいったい……

 「ギチチチチチッ! これはバグドレーを生み出す装置だ」
 ゲジゲランがガラスの筒の列の間を通っていく。
 「バグドレー?」
 梨帆もそのあとをついていくしかない。
 「ギチチチチチッ! そうだ。今お前の後ろにいるやつがバグドレーだ。ここはさらってきた適当な人間をバグドレーに変化させる装置なのだ」
 「に、人間を?」
 梨帆は愕然とする。
 まさかこのバグドレーとか言うマネキン男たちが元は人間だったというの?
 梨帆は後ろをちらっと振り返る。
 この無言でついてくるバグドレーも、もとは人間だったというのだろうか?
 「えっ? わ、私をまさか……」
 梨帆はハッとした。
 トイレの後でこっちに連れてきたのは、このガラスの筒に自分を入れるつもりだったからなのではないだろうか?

 「ギチチチチチッ! 心配するな。こいつらは命令に従うだけの人形のような存在にすぎん。お前をそんなものにするつもりはない」
 ゲジゲランはそう答える。
 「じゃ、じゃあどうして?」
 私をここに連れてきたのだろうか?
 疑問に思う梨帆。
 「ギチチチチチッ! チャンスをやると言っただろう。お前は怪蟲人になれ。俺様と同じ怪蟲人になるんだ」
 「ええっ?」
 梨帆の顔が青ざめる。

 「ギチチチチチッ! これは人間を蟲と融合させ怪蟲人を生み出す装置だ。いわば蛹のようなもの。この中でお前は怪蟲人になるのだ」
 ガラスの筒のならんだ奥に置かれたカプセル状の機器の前でゲジゲランは立ち止まる。
 どうやらこのカプセルがその装置らしい。
 「か、怪蟲人に?」
 梨帆の膝ががくがくする。
 私に化け物になれというの?
 それも大嫌いな虫に?
 「そうだ。俺様は最初に見たときからお前が気に入ったのだ。お前は美しい女だ。そして俺様は以前からメスが欲しかった。お前は俺様のように怪蟲人になれ。怪蟲人となって俺様のメスになるのだ。人間をいたぶり殺すのは楽しいぞ。ギチチチチチッ!」
 「そんな……いやっ! いやです! いやぁっ!」
 梨帆は真っ青になって首を振り、その場を逃げ出そうとする。
 だが、すぐに背後にいたバグドレーが彼女を捕らえてしまう。
 「いやよぉ……助けてぇ!」
 必死にもがく梨帆。
 虫の化け物になんかなりたくない!

 「ギチチチチチッ! なぜだ? お前は選ばれた存在になれるのだ。怪蟲人となって俺様のメスになれ! 俺様とともにバグゲランのために働くのだ」
 「いやです! 絶対にいやっ! あなたなんかのメスになんてならない! 私には主人も子供もいるの! 絶対にいやぁっ!」
 たとえここで殺されても化け物のメスになんてならない!
 梨帆は必死に拒絶し、バグドレーを振りほどこうとする。
 弘和さんや弘樹を裏切るなんてできないし、虫になるなんて耐えられない。

 「ギチチチチチッ! そうか……だが、お前が拒否すればあいつらは死ぬ」
 ギラリと光る右手の鋭い爪を見せるゲジゲラン。
 「えっ?」
 思わず梨帆の動きが止まる。
 「お前が拒否すればと言ったのだ。お前がどうしても怪蟲人にならないというのなら、俺様はあいつらを殺す。あのガキなどはさぞかし肉が柔らかくて引き裂きがいがありそうだ。ギチチチチチッ!」
 顎を左右に広げて笑うゲジゲラン。
 「そ、そんな……ひどいわ! 卑怯よ!」
 夫と息子を人質に取られたことに気付く梨帆。
 だが、どうしようもない。
 ここで拒否し続ければ二人は……
 この化け物たちは、それこそなんのためらいもなく二人を殺してしまうに違いない。
 梨帆は天を仰いだ。

 「わ、私が怪蟲人になれば……二人は開放してくれますか?」
 梨帆はキッとゲジゲランをにらみつける。
 「ギチチチチチッ! お前次第だ」
 「二人を傷付けないと約束してくれますか?」
 「ギチチチチチッ! 俺様は手を出さないと約束しよう」
 しばらく無言ののち、やがて梨帆はうなだれる。
 「わ……わかりました。か、怪蟲人になります」
 絞り出すようなかすかな声で答える梨帆。
 「ギチチチチチッ! それでいい。なに、お前もすぐに怪蟲人のすばらしさを感じるようになる。人間だったことなど忘れたいと思うようになるぞ。ギチチチチチッ!」
 ゲジゲランはそう言って梨帆の肩に手を置いた。

 着ているものを全て脱がされ、裸でカプセルの前に立たされる梨帆。
 ゆっくりとカプセルが開く。
 中には何か黄色いゼリーのようなものが満ちている。
 この上に寝ろと言うのだろうか?
 梨帆は恐る恐る足を入れてみる。
 ずぶずぶと沈み込んでまとわりついてくるような感触だ。
 だが、温かくて気持ちがいい。
 「ギチチチチチッ! 怖がることはない。その中に横になればいい」
 梨帆は覚悟を決めてカプセルの中のゼリーの上に横になる。
 躰が半分ほど沈み、なんだかふわふわとした感じで宙に浮いているかのよう。
 あなた……弘樹……ごめんなさい……
 自分はこれから怪蟲人にされてしまう。
 でも、こうしないと二人を助けることができないのだ。
 二人を助けるにはこうするしかない。

 「ギチチチチチッ! お前は俺様と同じゲジゲジの怪蟲人になるようにセットしておいた。なに、俺様もそうだったが、すぐに怪蟲人になってよかったと思うようになるぜ」
 ゲジゲランはそう言ってカプセルの蓋を閉める。
 ああ……そんな……
 よりにもよってあの化け物と同じゲジゲジだなんて……
 梨帆の目から涙がこぼれる。
 だが、蓋が閉められて真っ暗になると同時にゼリーがカプセル内に充満し始め、梨帆の顔も躰も覆っていく。
 「ぐっ……げぼっ」
 鼻も口も覆われてしまい息ができなくなる梨帆。
 だが、ゼリーが口から気管に入り込んで肺に達すると、不思議なことに息ができるようになっていく。
 うそ……息ができる?
 梨帆は驚いたが、じょじょに呼吸に慣れてきて気にならなくなっていく。
 それにゼリーに包まれた躰はぽかぽかとしてとても気持ちがいい。
 まるでお風呂で全身浴をしているようだ。
 でも……これからどうなるのだろう……
 だが、どんなことになろうとあの二人だけは……
 化け物になったとしても心だけは……
 あなた……
 弘樹……

                   ******

 「パパ……」
 部屋の隅で膝を抱えてうずくまっていた弘樹がぽつりとつぶやく。
 「ん?」
 こちらも部屋の壁を背もたれにして、足を投げ出して座っていた弘和が返事をする。
 「ママ……遅いね」
 「ああ……そうだな……」
 それは弘和も感じていたこと。
 トイレに行っただけにしては遅すぎるのだ。

 「もしかしてママは……もう戻ってこないの?」
 「そんなことはないさ……ほら、ママは女性だからいろいろと時間がかかるんだよ」
 自分でも半信半疑ながらそう答えるしかない弘和。
 戻ってこないなんて……あるものか……
 だが、いったい何をしているのか……
 いや、いったい何をされているのだろうか……
 悪い想像ばかりが頭をよぎる。
 「ママ……」
 「大丈夫だ……ママはきっと戻ってくるさ。大丈夫だ……」
 父はそう息子に答えるしかなかった。

                   ******

 「ん……」
 薄く光が差し込んでくる。
 頭がぼうっとする。
 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 カプセルが開いていく。
 あれからどのくらい経ったのだろう?
 私はどうしてこんなところで寝ていたのだろう?

 「あ……」
 手をぐいと引かれ、上半身がゼリーの中から引きずり出される。
 躰にまとわりついたゼリーがずるずると落ち、躰が外気に触れていく。
 外の空気のにおいが感じられ、他にも誰かがいるのがわかる。
 誰がいるのだろう?

 「キチチチチッ」
 変な音が聞こえる。
 何の音だろう?
 梨帆は不思議に思う。
 どこから聞こえてきたのだろう?
 「ギチチチチチッ! どうやら融合が終わったようだな。カプセルの外へ出してやれ」
 こっちは……
 聞き覚えのある声。
 なぜかその声が梨帆には心地よく感じる。
 ゲジゲジの怪蟲人ゲジゲランの声だわ。
 「キチチチチッ」
 また……
 この音は何?

 「キーッ!」
 グイッと躰が持ちあげられるような感覚がして、両脇から持ち上げられるようにカプセルの外へと運び出されていく。
 だ、大丈夫よ……
 ちゃんと一人で起きられるわ。
 梨帆はフラフラした脚でなんとか立とうとする。
 なんだか自分の脚がまだうまく動かないのだ。
 バランスがまだ取れなくて、まるで初めてハイヒールを履いた時のよう。
 それに両脇から生えている歩脚も、まだ動きがバラバラでぎこちない。
 左右からバグドレーたちが支えてくれるのがありがたく感じる。
 バグドレーはこういうときにも役に立つのだ。
 ふふ……
 便利な連中なのね……

 やっと動きが慣れてバランスが取れてくると、彼女は自らバグドレーから離れ、自分の躰を見下ろしてみる。
 細かな像がたくさん見えるような気がして見えづらい。
 だが、それもすぐに気にならなくなっていく。
 とても多くの小さな画像が一つにまとまってちゃんと見えてきたのだ。
 目に問題は無いらしい。

 つややかに輝くこげ茶色に黒のまだらが混じった外皮。
 節が連なったような躰からは、腕や脇の両側に細い歩脚が伸びて蠢いている。
 脚の付け根や腰のあたりは互いの外皮が重なった関節のようになっている。
 足先はつま先が二つに分かれて硬い爪が生えており、かかとは高いハイヒールのようになっていた。
 両手も外皮に包まれ、黒々とした指先には鋭い爪が尖っている。
 胸には形の良い二つの丸い半球がこちらもつややかに黒々とした同心円状の節で覆われ、盛り上がっていた。
 これが私?
 まるでゲジゲジのような躰。
 ああ……そんな……
 私はゲジゲジになってしまったんだわ……
 ゲジゲランの言うとおり、私はゲジゲジにされてしまった……
 自分の躰が変わってしまったことに少し悲しみを覚える梨帆。
 だが、不思議なことにいやだとは感じない。
 それどころか、今の自分の躰が愛おしくも感じてしまう。
 少なくともゲジゲジに対する嫌悪感は消えていた。
 「キチチチチッ」
 まただわ……
 いったい何の音なのかしら……

 「ギチチチチチッ! おお、なんとすばらしい姿の怪蟲人の誕生ではないか」
 ぬっと目の前にあらわれるゲジゲジの怪蟲人。
 ゲジゲランの姿だ。
 長い触角がゆらゆらと揺れ、両側に生えた細い歩脚がワサワサと嬉しそうに蠢いている。
 「キチチチチッ」
 「ギチチチチチッ! 歯を擦り合わせる音もいい音だぞ」
 歯を擦り合わせる?
 梨帆はあらためて指で触って自分の口の動きを確かめてみる。
 「キチチチチッ」
 すると無意識のうちに歯と歯が擦れ合って音を出していることに気付いた。
 口元こそ人間のままの唇の形のようだったが、歯はすっかり変化してギザギザの鋭い歯に変わっており、それが擦り合わさって音を出していたのだ。
 これは私の音だったんだわ……
 そんな……
 私がこんな音を出していたなんて……
 「キチチチチッ」
 だが、出すまいと思っても、口が自然に動いて歯を擦り合わせてしまうのだ。
 「ど、どうして? キチチチチッ」
 しゃべると歯がまた擦れ合って音が出る。
 どうやらしゃべると自然に出る音のようだ。
 そういえばゲジゲランもしゃべるたびにギチチチチチッと音を出していたではないか。
 彼と同じなんだわ。
 そんな……
 私も……この怪蟲人と同じに……
 ゲジゲジになってしまった……

 「ギチチチチチッ! おめでとう。とても素敵で美しい姿だ。これでお前もバグゲランの怪蟲人になったのだ」
 ゲジゲランが嬉しそうに梨帆の姿を見つめている。
 怪蟲人……
 違うわ……
 私は人間……
 たとえ姿はこんなになってしまったとしても、私は人間よ……
 必死にそう思い込もうとする梨帆。
 心まで怪蟲人になるものですか。
 梨帆はそう自分自身に言い聞かせる。

 「お前は俺様と同じゲジゲジの怪蟲人だ。そうだな……ゲジギーラと名乗るがいい。バグゲランの怪蟲人ゲジギーラだ。ギチチチチチッ!」
 「キチチチチッ! ゲジ……ギーラ?」
 違うわ……
 梨帆は否定する。
 私は……
 私の名は……
 梨帆は思い出そうとしたが、なぜかよく思い出せない。
 それどころか、ゲジギーラという名前がすうっと躰の中にしみこんでくるような気がするのだ。
 まるで以前からその名であったかのように。
 私は……
 私はゲジギーラ……
 私は怪蟲人ゲジギーラ……

 ち、違うわ!
 梨帆は首を振る。
 私は……私は怪蟲人なんかじゃない!
 躰は……
 躰は確かにゲジゲジにされてしまったかもしれないけど……
 でも私は……
 私は沢岸(さわぎし)……
 沢岸梨帆よ!
 ゲジギーラなんかじゃ……
 自分の名前をやっとのことで思い出す梨帆。
 だが、彼女の目に映る自分の躰は黒とこげ茶のまだらになった節で覆われたゲジゲジの躰。
 まさにゲジゲジと人間が融合した姿に他ならない。
 それに梨帆という名前すら、どこか別人の名前のように感じてしまい、ゲジギーラという名前の方が自分の名前に感じてしまうのだ。
 ああ……
 そんな……
 私は……
 心まで怪蟲人にされてしまうの?

 がっくりとへたり込んでしまう梨帆。
 泣きだしそうになり両手で目を覆ってしまう。
 だが、ゲジゲジの複眼は涙を流すようにはできていない。
 それどころか目を閉じることさえできないのだ。
 ああ……私は本当にゲジゲジになってしまったんだわ……
 梨帆は悲しかった。

 「ギチチチチチッ! ど、どうしたのだ?」
 いきなり床にへたり込んでしまったゲジギーラにゲジゲランは戸惑う。
 なにか融合時に問題でもあったのだろうか?
 せっかくこんな美しい怪蟲人が完成したというのに、失いたくはない。
 「だ、大丈夫か、ゲジギーラよ……ギチチチチチッ!」
 どこか戸惑いながらゲジギーラに近づくゲジゲラン。
 その肩に触れてもいいのかどうか悩んでいるようだ。
 「え、ええ……大丈夫。キチチチ……わ、私は……私はゲジゲジになってしまったんですね……」
 悲しそうにうつむくゲジギーラ。
 「ギチチチチチッ! そうだ。だがどうやらお前にはまだ人間の意識が色濃く残っているようだな。うーむ……融合時に人間の意識を引きずることはあるらしいが……まあ心配ない。その躰になじんでくれば、すぐに意識も変わってくるだろう。怪蟲人になれたことを喜びに感じるようになるのだ。ギチチチチチッ!」
 ゲジゲランはゲジギーラの肩にそっと手を置いた。

 そうなのだろうか?
 いずれはこの躰に慣れてしまい、怪蟲人として生きるようになってしまうのだろうか?
 そうなってしまったら……もう……
 「キチチチ……二人は……あの二人は開放してくれるんですよね?」
 ゲジギーラが顔を上げる。
 「ギチチチチチッ! 二人とは?」
 ゲジゲランが驚いたように手を引っ込める。
 「あの人間の男たち二人です。私が怪蟲人になれば解放してくれるという約束だったはずよ。キチチチチッ」
 とぼけたようなゲジゲランにゲジギーラは言葉を強くする。
 その約束が無ければ怪蟲人になどなったりはしなかったのだ。

 「ギチチチチチッ! ああ、あの二人か。安心しろ。お前がちゃんと今後バグゲランの怪蟲人として働くならお前の好きにさせてやる。だが、今はまだダメだ」
 「キチチチ……そ、そんな……ひどいわ! 約束が違うわ!」
 愕然とするゲジギーラ。
 「ギチチチチチッ! 違わんさ。どうやらお前はまだ完全に怪蟲人になったとは言えないようだからな。完全に怪蟲人になったらお前にあの二人を任せてやろう」
 「完全な……怪蟲人に?」
 「ギチチチチチッ! そうだ。身も心も怪蟲人になった時だ。そのためにもお前にはその躰の良さを理解してもらわなくてはな、来るのだ」
 ゲジゲランが焦げ茶色の外皮に覆われた手を差し出す。
 騙されたような気がして不満だったものの、ゲジギーラはその手を取って立ち上がるしかなかった。

(続く)
  1. 2022/07/17(日) 21:00:00|
  2. 怪人化・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
<<ゲジゲジ怪人のパートナーにされてしまった人妻 (後) | ホーム | 今日から18年目に突入です>>

コメント

お疲れ様です!
いい導入でございました。
「俺様は手を出さないと約束しよう」
「お前がちゃんと今後バグゲランの怪蟲人として働くならお前の好きにさせてやる。」
捕まえた相手の意思を尊重する素晴らしい怪人ですね(ニコッ

後編も楽しみです。
  1. 2022/07/17(日) 23:49:42 |
  2. URL |
  3. くろにゃん #rC5TICeA
  4. [ 編集]

やはり人妻の怪人化は素晴らしい

18年突入記念SSお疲れ様です。素晴らしい前編ですね。

ゲジギーラはカプセルから出る時既に戦闘員を便利と思ったり変貌してしまった身体を喜んだり既に怪人として浸透してしまってる。

しかしまだ人間の頃の記憶が僅かにあるので葛藤するのがいいですね。

怪人化するなら「俺様は」手を出さない。

確かに約束はしましたね。となると…ふふふ…

ゲジゲジというモチーフでありながら美しい怪人だとイメージできてしまうのがたまりません。

後編楽しみです。
  1. 2022/07/18(月) 14:57:33 |
  2. URL |
  3. テンプラー星人 #-
  4. [ 編集]

>>くろにゃん様
もうそのあたりは「定番」ですよねー。
後編もお楽しみに。
(´▽`)ノ

>>テンプラー星人様
ゲジゲジの怪人はあんまり出したことないなぁということで選んでみました。
グロい蟲と美しい女体の融合はいいですよねー。
(*´ω`)
  1. 2022/07/18(月) 17:32:42 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

人妻の怪人化に大興奮!

ブログ丸17年達成記念SSの前編の投下、お疲れ様です!

旦那さんと息子を人質にして、梨帆を怪蟲人にした後もどんどん条件を追加していくというゲジゲランの悪役に相応しい言動がいいですね!

また、梨歩が怪蟲人になってからはバグドレーを「便利な奴」と思ったり、怪蟲人になった自身の体を愛おしく思ったり、ゲジギーラという名前の方が浸透してしまうようになったりと、既に怪蟲人としての価値観が浸透し始めている様子には興奮させていただきました!

怪蟲人ゲジギーラとなった梨歩が後編では一体どうなってしまうのか、楽しみです!
  1. 2022/07/18(月) 19:24:31 |
  2. URL |
  3. XEROXEL #97P46UCU
  4. [ 編集]

>>XEROXEL様
ありがとうございます。
後編でさらに変化するゲジギーラこと梨帆をお楽しみにー。
(´▽`)ノ
  1. 2022/07/18(月) 20:06:08 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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