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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

デスマドー少女隊復活(1)

期せずして90万ヒット記念作品になっちゃいましたけど、今日から三日間連続でSSを一本投下いたします。

今回の作品は、またしてもと思われるかもしれませんが、「魔法機動ジャスリオン」の二次創作(という扱い)です。
(架空の)本編終了後の後日談として作られていますが、独立した作品として読んでいただいても大丈夫だと思います。

以前xsylphyx様にいただきました「魔法機動ジャスリオン」の本編第八話に出てきたデスマドー少女隊が、あまりに魅力的なので使わせていただきました。
xsylphyx様ありがとうございました。

「デスマドー少女隊復活」

「あ・・・痛っ」
思わず額に手を当てる。
どうしたのかしら・・・
最近頭痛が時たま起こるわ。
特にあの日とは関係ないみたいだけど・・・

やがて少しずつ引いていく痛みに、額から手を離してふうと一つため息をつく。
作成中の試験問題から目を離し、いすにもたれ掛かるようにして背筋を伸ばす。
それほど根を詰めているわけではないはずだが、やはり試験問題作成は疲労を増幅させているのかもしれない。
やだな・・・まだ若いのに・・・
そりゃあ担当している女子生徒たちに比べれば、すでにおばさんと言われたってしかたがない。
でもでも、二十代半ばのみずみずしい肉体は疲労など無縁のはずだと思いたかった。

「どうかしましたか? 大河内センセ」
白衣を着た若い女性が声をかけてくる。
こげ茶色の長い髪が柔らかそうに波打ち、優しそうな眼差しが心配そうに彼女の方を向いていた。
養護教諭の美並原紀江(みなみはら のりえ)だ。
きっと、彼女が頭痛に顔をしかめていたことに気がついたのだろう。
よく気がつく美並原のおねーさんと言われ、女子生徒の間でも“お嫁さん”にしたい女性の上位に来る常連だ。
「あ、ちょっとここのところ頭痛が時たまね」
思わず大丈夫と言うふうに両手を振る。
ちょっとした頭痛だし、いつもすぐに治まるのだ。
きっと疲れがたまっているのだろう。
認めたくは無いが、いつまでも若いままではいられないと言うことか・・・
ハア・・・
彼女は心の中でため息をついた。
「風邪じゃ無さそう・・・ですけど・・・それでは頭痛薬を上げましょうか? それと、しょっちゅう起こるようでしたら、一度診ていただいた方がいいですわよ」
にこやかに微笑み、一応の忠告をする紀江。
養護教諭として、教職員の健康にも留意しなくてはならないのだ。
「ええ、そうします。ありがとう美並原先生」
「どういたしまして」
そう言ってなにやら教頭に話しかけにいく紀江。
保健室の備品などの件で何か話があるのだろう。
白衣に包まれた小柄な躰だが、結構胸が大きいと噂では言われている。
大きさではともかく形では・・・って、何を考えているのか・・・
彼女は思わず苦笑した。

大河内真奈美は、この川霧(かわぎり)女学園で日本史を教える女性教師である。
二年C組の担任も担当しており、生徒の気持ちを汲んでくれる若手女性教師として生徒の人気も高い。
そんな真奈美だったが、彼女はここ数日、頭痛とともにある出来事に心を悩ませていた。

「思い出せないなぁ・・・なんかあったはずなんだけど・・・」
学校からの帰途、真奈美はそうつぶやく。
ここ数日真奈美の心を悩ませているのは、ここ数ヶ月の間に時々記憶が定かでない時期があることだった。
特に学園の行事である演奏会や学園祭の頃の記憶があやふやで、しかもそれが彼女だけのことではないと言うことだった。
従姉妹の綾も同時期の記憶が定かでないらしく、どうもその頃に学園で何かあったらしいのだけど、それが思い出せないと言うもどかしさが、真奈美の心を悩ませていたのだ。
「まあ・・・学園祭の時の事故が原因なのかもしれないんだけど・・・お医者さんは何でもないって言ってたのよね・・・」
今年の学園祭では、ある事故がおきてしまい、学園の生徒の半数近くが昏倒すると言う事態があったのだ。
調理室からのガス漏れと科学部の実験の相互作用らしいのだが、その後の検査とかでも特に異常は見られず、生徒たちも問題は無かった。
ただ、若干の学園のイメージ低下になったのは間違いなく、しばらく理事長のぴりぴりしたムードに職員室は暗くなったものだったわね・・・
でも・・・
真奈美は思う。
それだけではなかったはず・・・
私は・・・
私は誰かと・・・
生徒たちとともに誰かと・・・
そこらへんがもやもやする。
忘れてはいけないものを忘れてしまったような・・・
いや、無理やり忘れさせられたような・・・

ハア・・・
悩んでも仕方ないわね。
それよりも今晩は何を食べようかしら。
そろそろ街は冬支度。
来月ともなればクリスマス一色だろう。
今年は綾に何を買ってあげようかしら・・・
叔母さんにも何か買ってあげないとヤバいわよね。
いつもいつもただでご飯食べさせてもらっているし・・・
ボーナス入ったら何か考えなくちゃ・・・
そんなことを考えながら家路を急ぐ真奈美。
街は平和に包まれていた。

ふと何かが真奈美の目に止まる。
それは通りに面した大型電気店のディスプレイ。
幾つものハイビジョンや薄型のデジタルテレビが、昆虫の複眼のごとくに同じ映像を映し出している。
「フィギュアスケートかぁ・・・もうそんな季節なのね」
画面には氷上を軽やかに舞うフィギュアスケートの選手が映し出されていた。
紫色のレオタードを身に纏い、表情豊かに滑っている選手の姿は、見る者に美を感じさせるには相応しい。
「紫色のレオタードかぁ。紫って着こなすのが難しい色なのよね」
ドクン・・・
えっ?
ドクン・・・ドクン・・・
真奈美の心臓が跳ね上がる。
な、何?
何なの?
画面から目が離せない。
紫色のレオタードが真奈美の目に焼きついてくる。
あ・・・
ああ・・・
紫色・・・
赤紫と青紫・・・
な、何なの・・・一体?
ハア・・・ハア・・・
息が苦しい・・・
誰か・・・
たす・・・け・・・て・・・

「真奈美先生!」
「真奈美先生!」
いつの間にか大型電気店の前の通りにうずくまってしまっていた真奈美に声がかけられる。
えっ?
気がつくと、そこには心配そうな顔をして彼女を覗き込んでいる従姉妹とその親友の少女の姿があった。
「先生大丈夫? 顔真っ青だよ」
そう言って手を差し伸べてきたのは、その親友の方である雷純玲。
朝は苦手としているが、いつも元気で活発な少女だ。
だが、真奈美はその手を受け取ることができなかった。
な、何?
黙って今まで見ていたとでも言うの?
こんな時間まで綾を連れまわしていたの?
綾が大人しいのをいいことに好きほうだいしているんじゃない?
それに今だって私が苦しんでいたのをあざ笑っていたんだわ。
わざとらしく手を出して恩を売ろうとするなんて・・・
やっぱりこの女・・・なんだわ・・・

「結構よ」
真奈美は手を借りずに立ち上がる。
「今何時だと思っているの? 生徒がうろついていていい時間?」
「えっ、あ、その・・・」
差し出した手を拒否されてしまい、純玲はちょっと困惑する。
「ご、ごめんなさい真奈ちゃん、あっ、真奈美先生。私が純玲ちゃんを引き止めちゃったんです」
突然の真奈美の叱責に驚いた綾だが、正直に謝り非を認める。
確かに時間的にはもうすぐ7時過ぎ。
母がそろそろ心配する時間だ。
でも、いつもなら教師とは言えこんなふうに頭ごなしに怒鳴りつける真奈美ではないはずなのに・・・
綾はそう思う。
「綾は黙っていなさい。どうせ雷さんが連れまわしたのをかばっているんでしょ」
ああ・・・私はどうしちゃったんだろ・・・
真奈美はぼんやりとそう思う。
このぐらいの時間なら、外出している事だってあるだろう。
でも、純玲の顔を見たとたんに、真奈美の中でどす黒いものが沸いてくるのを止められなかったのだ。
「とにかくさっさと家へお帰りなさい!」
そう言い捨てて二人に背を向ける真奈美。
一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
そうしないと純玲にさらに何か言ってしまいそうな自分が怖かったのだ。

いったいどうしてしまったというのだろう・・・
繰り返されるその疑問。
だが、答えなどでるはずも無い。
従姉妹の綾の一番の親友。
綾が一番信頼している純玲ちゃんに対して、無性に憎しみを感じてしまったのだ。
まさか嫉妬とも思えないが、どす黒い感情は止めようが無かった。
明日・・・謝らなくちゃ・・・
そう思う反面、なぜ教師である自分が謝らなくてはならないのかとも思う。
私はあの娘たちに注意をしただけ。
謝るような事は何もしていないわ・・・
でも・・・
傷つけてしまったかもしれない・・・
そう思うとまた謝らなくてはとも思う。
先ほどから同道巡りで考えが先へ進まない。
今は考えるのはよそう・・・
真奈美は結局考えるのをやめる。
結論がでない以上しかたがない。
なるようにしかならないわ。

帰宅して、食事の後にお風呂に入ってさっぱりすると、どうにか気分も落ち着いてくる。
そうすると、少し心に余裕も出てくるのか、やはり先ほどのことは大人げなかったと思い、明日には謝ろうという結論に達する。
いったんそう決めると、やはり心が少し軽くなり、真奈美はホッとした気分に包まれていた。
やっぱり今日の私はどうかしていたんだわ・・・
頭痛のせいもあったのかも・・・余計なことを考えすぎていたのかな・・・
そんなことを思いながら、明日の仕度を整えてパジャマに着替えベッドに乗る。
これから一時間ほどはゆったりした時間だ。
いつものように寝ながらでも見られる位置のテレビをつけ、読みかけの本のページを開く。
一人暮らしだと何となく音が無いと寂しくて、見ていると言えないまでもテレビをつけてしまうのだ。
それにニュースを聞いておくのも悪くは無い。
もっとも、本に集中してしまえば、テレビの音声など耳に入らなくなるのだけど。

あ・・・
だが、真奈美の視線は手元の本には下りなかった。
テレビでは今日行なわれたフィギュアスケートのダイジェストがニュースの中で流れている。
大型電気店で見た紫色のレオタードが、今また画面の中で舞っていた。
紫のレオタード・・・だわ・・・
ドクン・・・
あ・・・
真奈美の心臓が再び大きな音を立てて鼓動する。
紫のレオタード・・・
紫のレオタード・・・
紫のレオタード・・・
ドクンドクン・・・
心臓が高鳴り、他には何も聞こえない。
もっと・・・
もっと赤い・・・
もっと赤い色・・・
この紫じゃない・・・
でも紫色のレオタード・・・
赤い紫のレオタード・・・
赤紫のレオタード・・・
あああああ・・・
何なの?
これは何なの?
赤紫のレオタードがどうして頭から離れないの?
いやぁ・・・
いやぁっ!!
真奈美の目の前が暗くなる・・・
そのまま真奈美の意識は闇の中に飲み込まれていった。


「・・・ドー!」
闇の中を駆け抜けていく。
背後には同じように赤紫色のレオタードを着た少女たち。
みな口元に冷たい笑みを浮かべ、彼女の後をしっかりと付いてくる。
闇の中では身に纏っている赤紫のレオタードは、暗闇の中に溶け込んで相手の目をごまかしやすいのだ。
さらに彼女も少女たちも身に魔力を帯びており、人間ども程度には見つけられないだろう。
破壊と殺戮を楽しむには相応しい衣装なのだ。
両手には一見皮でできているような手袋。
両脚はハイヒール状のくるぶしよりちょっと上ぐらいまでのショートブーツ。
いずれもレオタードよりは青みが強く、普通の紫色と言っていい色をしている。
ともに魔力を帯びているのは当然で、ブーツはハイヒールだというのに走るにも戦うにもまったく不自由は感じないし、手袋のほうも両手をカバーして指先の動きも阻害しない上に、車のドアぐらいはパンチで撃ちぬけるほどの威力をもたらしてくれている。
赤紫のレオタードはまさに彼女たちの象徴であり、このレオタードを着ているということが部隊の一員であることを示している。
少々のことでは傷付かないようカバーしてくれ、ブーツとレオタードのカバーの無いように見える両脚もナチュラルベージュのストッキングが覆っているので、ダメージの心配はほとんど無い。
この魔法の衣装を着て戦うことこそが彼女に与えられた使命であり、この魔法の衣装に身も心も捧げ支配されることに彼女は誇りと悦びを感じていた。
そして彼女の傍らにはもう一人。
彼女の背後にいる少女たちとは異なり、彼女と同じ悦びに身を震わせている少女がいる。
疾走の中、ふとその少女と目が合って、二人はひそかに微笑んだ。
気持ちいい・・・
闇の中を駆け抜ける彼女は心からそう思っていた。

う・・・
朝の陽射しがカーテンの隙間から入ってきている。
朝・・・?
ズキン
痛っ・・・
思わず両手で頭を抱える真奈美。
痛みは徐々に引いていき、霞がかかったような頭の中も次第にはっきりし始める。
つきっぱなしの蛍光灯と、つきっぱなしのテレビが夕べそのまま寝てしまったことを物語る。
知らない間に寝ちゃったんだわ・・・
するとさっきのは夢?
なんだか奇妙な夢を見たような気がする。
何人かの生徒たちを引き連れて闇の中を駆け巡っていたような・・・
ズキン
痛っ・・・
病院で診てもらったほうがいいかしら・・・
とりあえず仕事に行かなきゃ・・・
今日は小テストをしなくては・・・
もうすぐ期末試験だし、少しでもいい点をとって欲しいわ・・・
そんなことを考えながら、真奈美は支度を始めるのだった。
  1. 2007/11/27(火) 19:47:45|
  2. 魔法機動ジャスリオン
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<デスマドー少女隊復活(2) | ホーム | トレードが決まっちゃいました。>>

コメント

またジャスリオンが読めるとは!
普通ならデスマドーの誰かが思い出させるとかなんでしょうけど、テレビのフィギュアスケートが引き金になるのは予想外でした。

真奈美先生を頭として、デスマドー少女隊の復活がどのようになされるのか、楽しみです。
  1. 2007/11/27(火) 21:39:36 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

>>metchy様
いつもコメントありがとうございます。
どうにもxsylphyx様のデスマドー少女隊に惹かれちゃいまして、それでこんな話を書いちゃいました。
楽しんでいただければ何よりです。
  1. 2007/11/28(水) 19:44:31 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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