今日は新年一発目のSSを投下いたしますねー。
やはり新年ということで、今回はウシネタです。
タイトルは、「ママは食べてすぐ寝たので牛になってしまい、牛怪人の奥さんにされてしまいました」です。
タイトルと内容はあんまり合っていないかもしれませんが、そこは笑って見逃してやってください。
(^_^;)
超短編のSSですが、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
ママは食べてすぐ寝たので牛になってしまい、牛怪人の奥さんにされてしまいました
「ただいまー」
ボクは勢いよく玄関のドアを開けて家に入る。
今日も学校が終わったー。
家に帰ってくると、ホッとするよね。
もちろん宿題とかもあるんだけどさ。
ボクは靴を脱ぎ捨て、まっすぐ自分の部屋に行くとカバンを置く。
そして洗面所で手を洗ってうがいをし、それからリビングに行くんだ。
今日のおやつは何かなー。
「ママ、ただいまー。えっ?」
ママがテーブルに突っ伏してる。
えっ?
なに?
「ど、どうしたのママ?」
ボクはママのそばに行く。
「あ……お帰りなさい、大樹(だいき)」
ボクが行くと、ママはなんだか気だるそうに顔を上げた。
「ママ……大丈夫?」
「う……ん。なんだか買い物から帰ってきたら躰が急にだるくなって……風邪かもしれないから、あんまり近寄らないほうがいいかも」
ええ?
大丈夫かなぁ?
心配だよ。
「薬持ってこようか?」
「う……ん……もう少し、様子見る……」
ママはそう言ってまたテーブルに顔を伏せてしまう。
様子見でいいのかなぁ?
「おやつ……戸棚にあるお菓子食べていいわよ……」
「あ、うん……」
おやつなんてどうでもいいのに。
「ママ、寝るならベッドで寝たほうがいいよ」
「うん……わかってる……もう少ししたら……」
「ママ」
どうしよう……
このまま寝てて大丈夫かなぁ?
病院に行かなくていいのかな……
ボクは心配になったけど、ママの言う通り少し様子を見ることにした。
戸棚からお菓子を取り出し、部屋からカバンを持ってきて、リビングで宿題をやることにする。
ここなら、ママの様子も見ていられるよね。
ボクがしばらく宿題をやって、もうすぐ終わろうかというとき、ママが突然起き上がる。
「ママ?」
ボクが声をかけたのにもかかわらず、ママはスッと立ち上がると、そのままキッチンに駆けこんでいってしまう。
「ママ」
ボクが慌てて後を追うと、ママは冷蔵庫を開け、野菜室からレタスを取り出して、いきなりむしゃむしゃと食べ始める。
「えっ? マ、ママ?」
ボクのことなど目に入ってないかのように、ひたすらレタスを食べるママ。
大きなレタスの玉が、みるみるうちに小さくなっていく。
「ど、どうしたの、ママ?」
「ダメ……これじゃ足りない……」
レタスを食べ終わったママは、なんだか物足りなさそうにしてる。
いきなりレタスを食べちゃうなんてどうしたんだろう?
「ママ?」
ママはボクに返事もしないで、リビングに戻ると、財布を握って飛び出していく。
「マ、ママ」
「ちょっと買い物に行ってくるわ。お留守番お願い」
ボクが玄関に追いかけると、ママはそう言って出て行ってしまう。
えええええ?
ど、どうしちゃったの、ママ?
買い物ってさっき行ってきたんじゃなかったの?
疑問に思うボクの目の前でドアが閉まる。
ボクはただ、唖然として見送るしかなかった。
「ふう……ただいま」
しばらくしてママが帰ってくる。
先ほどとは違ってにこにこしている。
「お、お帰りなさい。だ、大丈夫なの?」
ボクは仕方がないので宿題の残りを片付け、不安に思いつつ家で留守番をしていたのだ。
「えっ? 何が?」
両手にいっぱいの荷物を抱えているママ。
いったい何をそんなに買ってきたのだろう?
「さっき、躰がなんだかだるいって……」
「ええ? そうだったかしら? うふふ、もう大丈夫よ。きっとお腹が空いていたせいかも」
そう言ってママは、テーブルに着くと持ってきた袋からトウモロコシを取り出す。
わあ、トウモロコシだ。
今晩のおかずに使うのかな?
「えっ?」
ボクは驚いた。
ママは取り出したトウモロコシを、そのまま茹でも焼きもせずにぼりぼりと食べ始めたのだ。
「マ、ママ?」
「なあに? あげないわよ。これは私が食べるんだから」
ギロリッとボクをにらむママ。
「そうじゃなくて、生で食べて大丈夫なの?」
「平気よ。美味しいわ」
ぼりぼりとあっという間に一本食べ尽くし、二本目にかじりつくママ。
変だよ……
ママ……変だよ……
いったいどうしてしまったの?
「ああ、美味しかった。何? 私の顔をじっと見たりして」
トウモロコシを三本も食べてしまうママ。
「ママ……大丈夫? 何か変だよ」
「何が?」
「だって……トウモロコシは普通生じゃ食べないよ」
「そう? そうだったかしら……いいじゃない、美味しいんだもん」
あっさりとそういうママ。
いいじゃないって……
お腹は大丈夫なの?
「ふわぁ……食べたら眠くなっちゃったわ。おやすみ」
「えっ? ええっ?」
またしてもテーブルに伏せてしまうママ。
「ママ! ママってば!」
「もう……なぁにぃ?」
早くも半分寝てしまっている感じだ。
「だめだよ! 食べてすぐ寝たらウシになるって、ママいつも言ってるじゃない」
行儀が悪いとか消化に良くないとかで、ママは時々ボクにそう言っていたのだ。
食べてすぐ寝るとウシになっちゃうわよって。
でも、ママは目を開けてもくれない。
「ねえママ! 晩ご飯は? 夕食の支度はしないの?」
「ああん……もう……うるさいわねぇ……適当に食べてよ」
「ええ? ママ! ママってば!」
ボクが何度呼んでも揺さぶっても、ママはもう起きようともしない。
グウグウと寝息を立ててしまっている。
どうしよう……
ボクは途方に暮れてしまった……
******
「それで、どうしたの?」
「うん。夜にパパに電話してみたんだけど、ママはきっと疲れが出たんじゃないかって。パパも赴任先だからすぐに帰るってわけにはいかないって言うし。だから朝になってもまだママの様子がおかしいなら、病院に行くように言いなさいって……」
ボクは昨夜の出来事を由紀乃(ゆきの)ちゃんに話す。
結局あの後、ボクは買い置きのカップラーメンを食べて、リビングでママの様子を見ているうちに、気が付いたら寝てしまっていたんだ。
「そっか。それでおばさんはどうなの?」
由紀乃ちゃんが心配そうにボクの顔を覗き込む。
由紀乃ちゃんは幼稚園の時からのボクの友達で、学校では隣のクラスだ。
家が近いので、時々一緒に帰ることがある。
家にも何度か遊びに来たことがあって、ママも由紀乃ちゃんのことはよく知っている。
だから今日はボクが一緒に帰ろうと誘ったんだ。
なんだか話を聞いてほしくて……
「うん……朝になったらいつものようにボクを起こしてくれたよ。昨日のことは夢だったのかなって思ったぐらい。でも……」
「でも?」
「口をずっともぐもぐさせているんだ。しゃべる時も口に何か物を入れている感じでしゃべるし……」
「物を?」
「うん。ボクが何を食べているのって聞くと、何も食べてないわよって……口をもぐもぐさせながらそう言うんだ」
「ふーん……」
「じゃあ、なんで口をもぐもぐさせているのって聞いたら、ああ、これ? これは胃の中のものを口に戻してまた噛んでいるのよって……」
「ええ?」
由紀乃ちゃんがびっくりする。
そりゃそうだよね。
ボクだって驚いたもん。
でも、ママは口をもぐもぐさせながらそう言ったんだ……
「ねえ、だい君」
由紀乃ちゃんがボクを呼ぶ。
ボクの名前が大樹だからだい君。
ずっとそう呼ばれているんだ。
「ねえ、だい君。やっぱり一度お医者さんに診てもらった方がよくない?」
「うん。ボクもそう思う。ママはどこかきっと病気なんだ。だから変な行動しちゃうんだと思う。なんか前にテレビでも病気の人は普段とは違う行動を取ったりするって言ってたし」
「私もそれがいいと思う」
由紀乃ちゃんもコクコクとうなずく。
良かった。
由紀乃ちゃんに聞いてもらえてホッとした。
帰ったら、ママに一緒に病院に行こうって言ってみるよ。
「それじゃまたね。おばさんのこと、何か手伝えることがあったら言ってね」
「うん。大丈夫だと思う。また明日ね」
ボクは手を振って由紀乃ちゃんと別れる。
由紀乃ちゃんに話を聞いてもらって、だいぶ気分が軽くなった気がする。
うん……ママがこれ以上おかしな行動するなら、お医者様に診てもらわなくちゃ……
「ただいまー」
ボクはいつもと同じようにそう言って家に入る。
ママ……どうしているだろう……
いつも通りに戻っていてほしいけど……
「ママ……」
ボクは手にしたカバンを落としてしまう。
嘘でしょ……
ママ……
「あら、お帰りなふぁーい」
大きな袋に手を突っ込んで、取り出した草を口に運んでは食べているママ。
えっ?
あれって、野菜か何か?
草……だよね?
袋にはウサギ用の牧草って書いてあるし……
「ママ! 何食べているの? 草なんか食べてどうしたの?」
ボクはママに駆け寄り、何とか食べるのをやめさせようとする。
トウモロコシどころか、草を食べるなんて変だよ!
どうしちゃったんだよ、ママ!
「ええ? うるさいわねぇ。アタシが何を食べようが勝手でしょ。草は美味しいのよ」
もしゃもしゃと草を口に運ぶママ。
「だめだってば! やめてよ! きっとママは病気なんだよ! ボクと一緒に病院に行って診てもらおうよ!」
ボクはママの腕を取り、無理やり食べるのをやめさせようとする。
でも、ママはボクを振りほどくようにして突き飛ばす。
「うわっ!」
「うるさいわねぇ。もういいわ。げふっ……もうお腹いっぱいになったし……ふわぁぁ……少し寝ましょ」
げっぷをして大きなあくびをするママ。
「えっ! ママ! 病院へ行こうよ! ママってば!」
床に尻もちをついたボクがそう言っても、またママはテーブルに突っ伏して寝てしまう。
「ママ! ママってば! ダメだよ! 食べてすぐ寝るとウシになっちゃうってば! ママ!」
ボクは必死にそう叫んだ。
えっ?
突き飛ばされたボクがようやく立ち上がった時、ママの姿が変わり始める。
嘘……でしょ……
ママが……
ママが変わっていく……
ママの姿が、だんだんと変わっていく。
着ているものがびりびりと裂けていき、ママの躰が大きくなる。
頭からは左右に二本の角が伸び、耳も大きくなっていく。
鼻が伸び、口も大きくなっていく。
脚は太くなり、穿いていたストッキングもちぎれ、つま先が動物の蹄のように変わっていく。
躰の色は白と黒のぶちになり、お尻からは先がふさふさとした尻尾が生えてくる。
ウシだ……
ママの姿はウシと女の人が合わさったような姿になっていた。
ママはウシになってしまったんだ……
そんな……
食べてすぐ寝たら、本当にウシになってしまうなんて……
「ブモモモモー! どうやら変化が終わったようだな。おい、起きろ」
「わあっ!」
ボクは思わず声を上げてしまう。
いきなりウシの化け物が現れたのだ。
全身が白と黒のぶちになっていて、頭はウシの頭をして角が生えていて、胸はがっしりとして腕も太く、足には蹄が付いていて尻尾もある。
ママと同じようにウシと男の人が合わさったような姿だ。
「ブモォーーー! アアァン、迎えに来てくださったのですか、ウシ男様ぁ」
起き上がったママが、鳴き声を上げてウシ男に抱き着いていく。
「マ、ママ!」
「ブモーーー! グフフフ、そうだ。俺様のメスを迎えに来てやったのだ」
「うれしいですわ、ウシ男様ぁ」
ママの腰に手を回し、ママを抱き寄せるウシ男。
ママは着ていたものもすっかりなくなってしまい、おっぱいもむき出しの姿でウシ男に抱き着いている。
そんな……
「ママを離せぇ!」
ボクは勇気を振り絞ってそう叫ぶ。
ギロリとウシ男の目がボクを見る。
ううう……
負けるもんか……
「ママを返せ! ママをそんな躰にしたのはお前だろう!」
「ブモモモモー! 威勢のいいガキだ。そうとも。このメスには気付かれないようにウシの因子を注入してやったのさ。こうして俺のメスにするためにな。グフフフ……」
「アン、ウシ男様ぁ」
ウシ男の手がママのお尻を撫でまわす。
「くっそぉー! ママを放せ!」
ボクは落ちていたカバンを振り回してウシ男に立ち向かう。
ママを……
ママを元に戻せぇ……
「グハッ!」
ボクはお腹を蹴飛ばされて、壁にたたきつけられる。
「グ……フ……マ、ママ……」
ボクを蹴飛ばしたのはママだった。
ママがウシ男を守ろうとして……
「このガキが! ウシ男様に手を上げようとするなんて赦さないわよ! アタシが踏み殺してやろうかしら!」
ボクを冷たい目で睨みつけてくるママ。
そんな……
ボクのママだったのに……
「グフフフ……おいおいウシ女、そいつはお前のガキじゃないのか?」
にやにやと笑っているウシ男。
「ええ? 冗談じゃないですわ、ウシ男様。こんなガキはアタシの子じゃありません。アタシの子はぁウシ男様にこれから種付けしてもらって産む子供だけですわぁ」
ママ……
そんなぁ……
「グフフフ……いいぞ。それでいい。お前は俺の妻になるのだ。それを忘れるな」
「本当ですか、ウシ男様ぁ。うれしいですわぁ。はい、アタシはウシ男様の妻になります。妻としてウシ男様にお仕えするウシ女ですわぁ。ブモォーーー!」
ママがうれしそうに鳴き声を上げる。
ちくしょう・・・ちくしょう・・・
「ほう……まだ起き上がるか」
「ママを……返せ……」
ボクは痛みをこらえて立ち上がる。
ママを取り戻さなきゃ……
「いまいましいガキねぇ。アタシはお前のママなんかじゃないって言ってるでしょ。踏み殺してやるわ。ブモォーーー!」
ママがボクの方に歩いてくる。
ママ……
ママ……
目を覚まして……
「待て、ウシ女」
「えっ? は、はいウシ男様」
「ガキのくせにいい度胸だ。使い道があるかもしれん。連れて行くぞ」
「はい。かしこまりました、ウシ男様」
使い道?
ボクをどうしようと……
「ブモォーーー! しばらくおとなしくしていなさい」
ママがボクを殴りつけ、ボクは意識を失った……
******
「ワオーーーン……くふふ……」
ボクは思わず遠吠えをしてしまう。
夜は何となく気分がいい。
夜はボクたちエトールの時間だからだ。
あのあと、ボクはウシ男たちに連れられ、エトールのアジトに連れていかれた。
そこでボクは犬の因子を埋め込まれ、イヌ男に生まれ変わったのだ。
エトールは、この世界を裏で支配する組織。
12人のリーダーが、それぞれの動物たちを支配する。
ボクも子供ながらにその12人に選ばれたというわけ。
とても光栄でうれしい。
それに今ボクが向かっているのは、由紀乃ちゃんの家。
彼女をイヌ女にして、ボクのメスにする許可が下りたのだ。
うれしいな。
これからは彼女がボクのパートナーになる。
きっとかわいいイヌ女になってくれるだろう。
将来は子供もたくさん産んでもらって、イヌ軍団を大きくするんだ。
くふふふふ……
待っててね、由紀乃ちゃん。
すぐにボクと同じく犬の因子を埋め込んであげる。
一緒にエトールのために頑張ろうね。
「ワオーーーン!」
ボクはわくわくする思いを胸に、もう一度吠えるのだった。
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
明日は新年SS第二弾を投下いたしますのでお楽しみに。
それではまた。
- 2021/01/02(土) 20:00:00|
- 怪人化・機械化系SS
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