ノモンハンで激闘を繰り広げた関東軍が、満州の鉄道線、いわゆる南満州鉄道を守備する独立鉄道守備隊が前身であったことはお判りいただいたと思いますが、満州事変以後、満州国となった広大な国土を防衛する立場になっても、南満州鉄道の警備は関東軍の重要な任務のうちの一つでした。
そのため、鉄道維持を任務の範囲とする工兵隊は、常日頃から鉄道レールの維持と警備を行なっていましたが、満州国内でも治安の悪い地域では匪賊が跳梁跋扈したりして、鉄道にも被害が及ぶことが多々ありました。
そのため、工兵隊は軌道警備のために特別の車両を装備することにします。
それが九五式装甲軌道車でした。
九五式装甲軌道車は、外見はまさに銃塔を装備した軽戦車といった感じで、日本陸軍の九四式軽装甲車に何となく面影が似ております。
履帯を装備しており、全体を装甲で覆ったその姿はまさに軽戦車に見えたことでしょう。
もちろん履帯での軌道外走行も可能で、良路上であれば時速約30キロメートルで走ることができました。
鉄道警備のための車両ですから、当然軌道上を走ることもでき、その時には車体下部から軌道用の鉄輪を出し、レールに乗って走りました。
前後には連結器もあり、兵士を乗せた車両を引っ張ってパトロールすることも多かったようです。
線路上では約70キロメートルも速度を出せたということです。
ただし、見た目とは裏腹に、九五式装甲軌道車の装甲は誠に薄いものでした。
前面で8ミリ、側面で6ミリという薄さで、小銃弾と砲弾の爆風と破片を防げる程度しかありません。
機関銃弾ですら、場合によっては撃ち抜かれたことでしょう。
さらに最大級の弱点は武装が無いことでした。
戦車と見紛うばかりの外見で、上部には360度回転できる銃塔があったにもかかわらず、非武装なのです。
これは日本軍の縦割り組織の弊害でした。
九五式装甲軌道車の銃塔に機関銃を装備するという話がでた時、「武装した履帯つき車両は戦車であって工兵用の車両ではない。武装するなら別の兵科が管轄することになる」ということで、工兵隊から取り上げられかねなかったのです。
結局九五式装甲軌道車は銃塔はあっても機関銃が無い車両となりました。
兵士は手持ちの銃や鹵獲した機関銃を銃塔から撃ったそうです。
車両としてはいい車両なんですが、日本軍の兵器にまつわる組織的お粗末さから逃れられなかったんですね。
残念なことです。
さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。
それではまた。
- 2007/09/18(火) 19:21:33|
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