海マツリ会場にあるチャットには連日多くの方々がいらしてくださっております。
本当にどうもありがとうございます。
この場を借りましてお礼を述べさせていただきます。
チャットでは、皆様といろいろなお話ができて本当に楽しいです。
そんな中にはいろいろな悪落ちネタなども、お話の中で浮かんでまいります。
先日ゲームネタのお話の折に、ドラクエⅤで攫われた主人公の妻が悪堕ちしてくれればなぁとお話ししたことがありました。
ゲーム上では石にされて主人公に助けられるのを待つだけなんですが、何か悪のアイテムあたりで悪堕ちしてくれればよかったのにと思ったものです。
そんな話をちょいと書いてみました。
短いですが、よかったら読んでみてください。
悪魔のボンデージ
「クククク・・・いけませんねぇ。我が魔族に歯向かい、あまつさえ天空の武器防具を集めようとするなんて・・・」
邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる魔族の実力者ゲマ。
このゲマこそが、ビアンカの愛するヘボヘボの父パパスを殺し、今また世界に邪悪を広めようとしている張本人なのだ。
ビアンカの夫ヘボヘボは、幼い頃母を何処とも無く連れ去られ、父パパスを殺され、母の手掛かりである天空の武器防具を求めているうちに幼馴染であったビアンカと再びめぐりあい、彼女を生涯の伴侶として共に生きることを選んでくれたのだ。
ビアンカもそのことを喜び、夫ヘボヘボとともに冒険を重ねるうちに、お腹の中に二人の結晶を儲けてようやく出産したばかりだった。
しかし、幸せは突然撃ち破られてしまう。
ビアンカは夫ヘボヘボを良く思わなかった大臣によって引き入れられたモンスターによって城から連れ去られてしまったのだ。
彼女にできたことは生まれたばかりの双子の赤ん坊をどうにか隠すことだけ。
突然のことに戦うこともできなかった彼女は、こうしてゲマの元に連れて来られていたのだった。
「あんまり人間を舐めないほうがいいわ。私の夫が黙っていないわよ」
ビアンカはそれでも気丈にゲマをにらみつける。
魔術師系統のモンスターであろうゲマは、どちらかというと策略を好むだろう。
だが、夫ヘボヘボはどんな策略だって打ち破るに違いない。
だって彼は・・・
ビアンカの胸に温かいものがあふれてくる。
私の夫だもの・・・
魔力を封じられ、両側から腕を掴まれているにもかかわらず、目の前の人間の女はまるで気力を失っていない。
だが・・・
この気丈さが好ましい。
ゲマはそう思う。
人間は面白いもので、心の支えがあるうちはなかなかへこたれたりしないものだ。
そう・・・
あの少年も奴隷の境遇から抜け出し、われら魔族に対して敵対することをやめようとはしない。
今ではグランバニアの王ですらあるのだ。
あの男が人間を束ねて魔族に反抗するようになれば・・・
面白くないことになりかねない。
「クククク・・・確かのお前の夫ヘボヘボは稀に見る男だ。我が魔族にとっても障害になりかねない」
ゲマは笑いながらビアンカの顎に手を掛ける。
両脇から腕を掴まれているビアンカは、必死に顔をそむけようとするが、ゲマの腕はそれを赦さない。
「今に夫がここまで来るわ。さっさと逃げ出したほうがいいんじゃない?」
嫌悪感をあらわにビアンカは言い放った。
でも、はたして夫は間に合ってくれるのだろうか・・・
ううん・・・絶対に夫は間に合ってくれるはず・・・
ビアンカは必死にそう信じ込む。
「クククク・・・来てもらおうではありませんか。そしてあの男に絶望というものを味合わせてやるのです」
「えっ?」
ゲマの笑みにビアンカはぞっとする。
あ・・・
こいつの狙いは夫なんだわ・・・
ヘボヘボ、来ちゃダメよ・・・
私はどうなってもいいから来ちゃダメ・・・
ビアンカは思わずゲマから目をそらした。
がさっと言う音がする。
何?
何の音?
ビアンカは思わず音の方を見てしまう。
すると、そこにはゲマが何か真っ赤な色のものを手に持っていた。
「クククク・・・気になりますか、これが?」
ゲマが手にしたものを広げる。
それはどうやら衣装のよう。
あの噂に聞く“てんしのレオタード”のように上下ひと繋がりの水着のような形をしている。
だが、色は毒々しい真っ赤な色。
つややかに照りかえる血の色のような赤。
ところどころに鋲が打ち込まれていて、まるで革鎧のよう。
「クククク・・・これは“あくまのボンデージ”といいましてね。これを着たものは呪われるのですよ」
「呪いの衣装?」
世界には呪われたアイテムというモノが存在することは知っている。
動きを止めたり、防具なのに防御力が低くなったるするのだ。
これもそういった呪いの衣装の一つなのだろうか・・・
「あくまのボンデージ・・・」
「そうです。これを着たものは生きながらにして死者となり、魔王ミルドラース様のしもべと化すのです」
「な、なんてこと・・・」
ビアンカの背筋に冷たいものが走る。
夫との冒険の間に生きる死者、いわゆるリビングデッドとは何度か遭遇していた。
安らかな眠りにつくことすら許されず、魔王の言いなりにこき使われる哀れな存在。
これを着せられたら私もそうなってしまうの?
「い、いやっ! いやですっ!」
必死に逃げようと身をよじるビアンカ。
しかし、魔力を失っている今、彼女は逃れるすべを持たなかった。
「おとなしくするのだ」
ゲマの手がビアンカの服を引きちぎる。
「いやぁー!」
ビアンカの悲鳴が響き渡った。
必死で暴れるビアンカに手を焼いたゲマは、終いにはやけつくいきで動きを封じねばならなかったものの、ビアンカはついにあくまのボンデージを着せられてしまった。
真っ赤でつややかなレオタード型のボンデージは、子供を産んだとは思えないほどのスタイルのいいビアンカにとてもよく似合う。
そして、すぐにあくまのボンデージはビアンカの肉体に影響を及ぼし始めるのだった。
ああ・・・いやぁ・・・躰が・・・躰が冷たくなっていく・・・
ビアンカの躰は急速に命の営みを止めて行き、ほんのりと赤い肌が青白くなっていく。
ああ・・・助けて・・・助けて・・・あなた・・・
肉体が冷えて行くのと同時にビアンカの心も急速に冷えて行く。
人間らしい温かい心が魔族同様の冷たい心に変わっていくのだ。
寒い・・・寒いよ・・・どうして・・・どうして助けてくれないの・・・どうして・・・
ビアンカの頬を涙が伝う。
だがその涙もすぐに乾き、表情が消えて行く。
寒い・・・
寒い・・・
どうして・・・
どうして私は寒いの?
みんなは温かいところにいるのに・・・
私だけ除け者なの?
自分たちだけ温かければいいのね・・・
赦せない・・・
赦せない・・・
温かいところなんて嫌い・・・
人間なんて大嫌い。
私は魔王様に従う。
人間たちを皆殺しにしてやるわ。
ゆっくりと起き上がるビアンカ。
真っ赤なボンデージがその身を彩っている。
青白い顔に冷たい笑みが浮かぶ。
「クククク・・・どうやら上手く行ったようですね」
「はい、ゲマ様。私は魔王ミルドラース様の忠実なしもべ。憎むべき人間どもを滅ぼすお手伝いをさせていただきますわ」
ビアンカはそう言ってゲマに跪く。
彼女の夫が彼女を救いに来たのは、それから程なくのことだった。
END
もしかしたら時系列狂っているかもしれません。
ビアンカを攫ったのはゲマじゃなかったかも・・・
そこらへんは目をつぶっていただければ幸いです。
さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。
それではまた。
- 2007/09/16(日) 21:58:59|
- ドラクエ系SS
-
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| コメント:7
見事な出来です。
確かにビアンカを攫ったのはゲマではなかったと思いますが、主人公が助けに来るまでの間の出来事と考えれば問題ないと思います。
赤い色とは裏腹に心を冷たくしていくギャップ?はよかったです。てんしのレオタードと対のアイテムって感じで、本当にありそうな名前ですね。
やっぱり主人公の名前はヘボヘボなんですね。シスターアンナのときもそうでしたし。
- 2007/09/16(日) 22:31:07 |
- URL |
- metchy #-
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いつも楽しく読ませてもらってます
で、魔王の名ですがデスタムーアじゃないような?
たしかそれは6の魔王で5はミルドラース?だったような?
間違ってたらごめんなさい
これからも頑張っていい作品を書いてください
- 2007/09/17(月) 16:23:52 |
- URL |
- 通りすがり #-
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通りすがりさんの言ってるとおりデスタムーアは6ですね。5はミルドラースです。
でもそんな細かい違いはあるにしても、とても楽しく読ませていただきました。
DQ物のネタもこれからも少しづつ書いて欲しいです。
- 2007/09/17(月) 18:50:29 |
- URL |
- ななし #JalddpaA
- [ 編集]
>>metchy様
濁点が使える前はへもへもが主人公でした。(笑)
それ以後はだいたいヘボヘボで通していますねぇ。
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
metchyさんのSSも期待しております。
>>通りすがり様
ギャー!!
大変申し訳ありませんでした。
ご指摘の通りⅤの敵はミルドラースでしたね。
うろ覚えで書いてしまったのが間違いの元でした。
ちゃんと調べてかかにとダメですねー。
文中は修整しておきました。
>>ななし様
ご指摘の通りでした。
ミルドラースに修整しておきました。
楽しんでいただけたようで何よりです。
これからもネタが思いつけばドラクエネタも書いていきたいですね。
- 2007/09/17(月) 20:42:48 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
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大変楽しませていただきました。
ビアンカをさらったのはジャミですね。ゲマの部下で馬みたいな奴です。
あと、仲間モンスターだけのパーティでビアンカの所に到達すると、
「あの人に伝えて。私のことは忘れてって…」
といったようなことを言われるらしいとか。
- 2007/09/29(土) 09:19:34 |
- URL |
- asa #-
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>>2007/09/28(金) 14:25:18 の方様
確かにそうですね。
そちらも面白い展開になりそうです。
今度また考えて見たいですね。
>>asa様
そうなんですかー。
モンスターだけで行ったことはなかったですね。
あの仲間モンスターは主人公に洗脳され正義堕ちしたと考えるとまた違うイメージかもしれないですね。
- 2007/09/29(土) 20:42:01 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
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