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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

彼女は女戦闘員(前)

昨日、10月10日は千十(せんとお)で「(特撮系)戦闘員の日」ということで、女戦闘員のSSを一本投下させていただきましたが、一本だけじゃちょっと寂しくありませんか?
ということで、10月10日から17日までは「(特撮系)戦闘員の日週間」と範囲を広げちゃいまして、今日と明日でSSを一本前後編で投下したいと思います。

今日はその前編です。
タイトルは「彼女は女戦闘員」です。
はい、タイトルそのままです。
ややラブコメっぽい仕上がりになっていると思います。
いつもとはちょっと違った話になっているとは思いますが、お楽しみいただけましたらうれしいです。

それではどうぞ。


彼女は女戦闘員

「嘘・・・だろ?」
俺は愕然とする。
時計を見たら夜中の1時。
なんでこんな時間まで俺は眠りこけていたんだ?
しかも学校の中で?
えええええ?

えーと、昨日は明け方までゲームしてました。
ほぼ徹夜で学校来ました。
午前中何とか授業を受けました。
お昼食べたらもう眠くてどうしようもないので、用具室で昼寝しようと思いました。
気が付くとこんな時間でした。
ってか?
やべぇ。
どうせなら朝まで目が覚めないほうがよかったんじゃね?

今から帰れるのかな?
玄関開いているのかな?
はあ・・・
まあ、とりあえず教室行ってカバン取ってこなきゃ。

俺はとりあえず用具室から出て教室へ向かう。
夜の学校ってシーンとして気味悪いなぁ。
電気点けてもいいのかなぁ?
外からの月明かりや街灯の明かりが入ってくるから、廊下が暗くて歩けないってわけじゃないけど・・・
とにかくさっさとカバン持って玄関行ってみるか。
鍵がかかってたらどうするかだなぁ・・・

「ひっ!」
「えっ?」
教室の扉を開けた俺は、予想外のものを見てしまう。
女子が一人、それも奇妙な格好をした女子が教室にいたのだ。
首から下がほとんど裸みたいに見える黒い全身タイツのようなものを着た女子が。
な、なんだぁ?

「い、いいいいい・・・」
「は?」
「いいいいいやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「わあっ」
突然大声をあげる女子に、俺は思わずびっくりする。
彼女の方も俺を見た眼鏡の奥の目が驚愕に見開かれていた。
「みみみみみみみみ」
「な、なんだ?」
「見ーらーれーたぁぁぁぁぁ!」
いや、そりゃ見ちゃったけどさ・・・
「あああああああ、まずいまずいまずい、私が女戦闘員であることを見られたぁぁぁぁ!」
「へ?」
女戦闘員?
女戦闘員って、あれですか?
特撮とかに出てくる下っ端ですか?
彼女が?

って、よく見たら、彼女は同じクラスの鴇沢(ときざわ)さんじゃないか?
なんで彼女がこんな時間に教室にいるんだ?
しかもそんな躰のライン丸出しみたいな全身タイツを着て。
「鴇沢さん?」
「ああああああああ、私の名前まで知ってるぅぅぅぅぅぅ! 始末? 始末するしか? 始末するしかないぃぃぃぃ?」
えええ?
始末って?
始末ってドラマとかで言う殺すって意味か?
俺を殺すっていうこと?
マジですか?

ひゅっと音がして、俺の脇をナイフのようなものがかすめる。
マジなのかよぉ!
「ま、待て! 待って!」
俺は慌てて両手を前で振る。
「始末・・・始末しなくちゃ・・・私がトテンコプの女戦闘員だと知ったものは始末しなくちゃ・・・」
眼鏡の奥の目を血走らせ、俺を睨みつけるように向けてくる鴇沢さん。
まずい。
このままじゃ本当に殺されかねない。
どうしたら・・・

「待てって女戦闘員!」
ぴくっとなって動きが止まる鴇沢さん。
ダメもとで言ってみたけど、いやマジで彼女は本当に女戦闘員だっていうのか?
なんかの特撮の撮影かなんかじゃないのか?
でも、何とかこの場を切り抜けなきゃ。

「女戦闘員! お前の番号は?」
確かテレビでは戦闘員って番号とかで呼ばれていたりするよな。
彼女にも番号があるのかどうかはわからんけど、とにかく俺は番号を訊いてみる。
「ヒャ、ヒャイーッ! 私は女戦闘員64号です!」
いきなり気を付けをして右手を胸に当て、番号を言う鴇沢さん。
番号あるのかよー。
ど、どうしよう・・・
ここは合わせたほうがいいかなぁ・・・
ええい、ままよ!
「よし、ご苦労。警戒を解け。俺は敵じゃない」
「敵じゃ・・・ない?」
キョトンとする鴇沢さん。
眼鏡の奥の目が困惑している。
そりゃそうだよなぁ。
うーん・・・

「ああ、俺は敵じゃない。実は俺も組織の一員だ」
うう・・・そんなこと言って大丈夫か?
でも、ただの人間ですと言っても逃がしてもらえそうもないしなぁ。
何とかごまかして・・・
「組織の? 友倉(ともくら)君もトテンコプのメンバーなの?」
あ、よかった・・・俺のことは友倉圭太(けいた)ってわかってくれていたか。
「あ、ああ」
こうなりゃ何とか仲間だと思ってもらうしかないな。
「よかったぁ・・・私もうどうしようかと思って・・・」
そのままぺたんと床にへたり込んでしまう鴇沢さん。
ありゃ、彼女の方もかなり緊張していたのか。
それにしても目のやり場に困る・・・
完全に躰のライン丸出しの黒い全身タイツにブーツと手袋、それに怪しげな紋章のベルトですか。
まさに特撮の女戦闘員そのまんまじゃないですか。
まさかそんなのが実際にいるなんて・・・

「そ、それで友倉君も戦闘員なの?」
う・・・
戦闘員だと俺も同じような全身タイツを持っていないとやばいかな?
どうしよう・・・
「い、いや・・・俺は・・・俺は・・・俺は怪人だ!」
うう・・・
なんかどんどんドツボにはまっていっているような気がするのは気のせいか?
「か、怪人?」
鴇沢さんの目が丸くなる。
「し、失礼いたしました! ヒャイーッ!」
いきなり立ち上がって右手を胸に当て奇声を上げる鴇沢さん。
「わ、私、新入りなもので怪人様とは全く存じ上げず・・・その・・・ご無礼をお赦しください!」
目を潤ませて思い切り頭を下げる鴇沢さん。
うひゃー。
これはこの組織は相当に上下関係が厳しい感じ?

「だ、大丈夫だから。問題ないから。赦すから」
「ヒャイーッ! ありがとうございます、怪人様」
ホッとしたように表情が緩む彼女。
う・・・なんというかかわいい。
考えてみれば、鴇沢さんはクラスでも目立つ子じゃなかったから、今まで気にしたことなかったなぁ。
こうしてみると結構かわいいよなぁ。

「あ、いけない! 私ったら」
鴇沢さんが慌てたように机の上のカバンから何かを取り出す。
俺が何だろうと思っていると、彼女は眼鏡をはずしてそれを頭からかぶり、目だけが覗くようなマスク姿になる。
「ヒャイーッ! 正装もせずに失礼いたしました。あらためまして私は女戦闘員64号です。よろしくお願いします」
なるほど・・・そのマスクをかぶった姿が正しい女戦闘員の格好というわけね。
なんだかすごくエロくてたまらないんですけど。
うう・・・勃ってしまいそうだ・・・

「あ、ああ、こちらこそよろしくな」
俺はできるだけ冷静になろうとそう答える。
「あの、怪人様?」
「ん?」
「怪人様も任務を終えて学校に着替えに?」
あー、なるほど。
彼女は任務を終えてここで着替えていたのかー。
その途中で俺が入ってきてしまったと・・・
「あ、いや、俺は・・・」
「あ、そうですよね。怪人様は着替えるというよりも擬態ですもんね」
うはぁ・・・ということは、人間に擬態した怪人がこの世にいるってことかよ。
ヤバいだろ、それ・・・
「ま、まあな」
擬態なんかできませんけどね。
「すごいです。私今まで全く友倉様が怪人様だったなんてわかりませんでした」
両手を胸の前で組み合わせて何やら感動しているみたいですけど、俺自身自分が怪人だなんてそんなこと今の今までわかりませんでしたよ。

「そ、そっちこそ教室で着替えたりしていたのか?」
「はい。うちで着替えたりしたら親にバレちゃうかもしれませんから。そうしたら始末しなくちゃならなくなりますし」
う・・・そうだよなぁ。
もう俺もいまさら嘘でしたなんて言えないよぉ。
「じゃあ、親はえっと、64号でいいんだっけ? が女戦闘員だとは知らないわけだな?」
「もちろんです。知られないようにしています。組織のことを知られるわけにはいきませんから」
「そ、そうか・・・」
な、なんだろう・・・
なんか彼女の秘密を知ってしまったようなそうじゃないような・・・
うう・・・
それにしてもその格好は目の毒だよ。
彼女すごくエロい躰しているのなぁ・・・

「もしかして怪人様も?」
「あ、ああ、親に知られるわけにはな」
「怪人様もそうなんですね。うふふ」
「どうした?」
「あ、すみません。その気になれば人間など一捻りであるはずの怪人様が、親に隠れてトテンコプの任務に就いていらっしゃるかと思うと、何か親近感が湧いて・・・」
マスク越しでもわかる笑顔。
なんだよ。
かわいすぎるじゃないか、彼女。
「そりゃ、一応高校生のふりをしているからな」
「ですよね。私もまじめな女子高生を演じるように頑張ります」
「あ、ああ」
彼女が普段目立たないのは演技なのかな?
「ところで怪人様、怪人様は何モチーフの怪人様なのですか?」
「モチーフ?」
やべ・・・モチーフってなんだ?
「私が直接お仕えする怪人様はクモ女様なんです。だからほら、胸にクモのマークが」
ああ、胸のところの赤いマークはそれか。
確かにクモの形が胸に・・・
うう・・・
おっぱいがもろにそのままの形でタイツに浮き出ているよ・・・

「ああ・・・そ、それは・・・」
どうしよう・・・
下手なモチーフを言ってしまうとやばいかも・・・
「それは?」
「それは・・・新入りの女戦闘員などにはまだ教えられん」
「あっ、し、失礼いたしました。クラスメートだからついなれなれしく・・・申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げ、見た目にもわかるほどに肩を落とす彼女。
「いやいや、気にするな。俺もクラスメートに仲間がいてうれしい」
「ありがとうございます。何かお役に立てることがありましたら、何なりとご命令ください」
「あ・・・ああ・・・」
俺が気にするなと言っただけで、ぱあっと明るい表情になる彼女。
「ま、まあ、それはともかく、さっさと着替えて帰らないとやばくないか?」
「あ、ヒャイーッ! すぐに着替えます」
彼女はすぐにマスクを脱ぎ、手袋を外して背中のファスナーを下ろし始める。
「わっ」
俺は慌てて教室の外へと飛び出した。

                   ******

結局俺は彼女が着替え終わるのを廊下で待つ。
月明かりに照らされた廊下。
これからどうしたものか・・・
それよりも、悪の組織だの女戦闘員だの何かの冗談じゃないのかとも思う。
まあ、彼女なら、冗談だったとしても最後まで付き合ってやってもいいかもしれないけどさ。

「お待たせしました、怪人様」
教室から制服に着替えた彼女が出てくる。
普段教室で見かける彼女だ。
女戦闘員だなんてホント何かの冗談としか思えない。
「どうぞ」
差し出される俺のカバン。
「あ、サンキュー」
そうそう、このカバンを取りに来たんだったっけ。
「怪人様もお帰りになられるのですか?」
廊下を歩く俺に付き従うように一歩下がって歩いてくる彼女。
「その怪人様っていうのはやめようよ。友倉でいいから。それに・・・隣を歩いてくれると嬉しいな」
「よろしいのですか? 怪人様の隣を女戦闘員の私が歩いても」
「いいから。それに怪人様はやめろって」
「かしこまりました、怪人様」
うはぁーーー!
人の話を聞けー!
でもなんだかゾクゾク来る。
女の子に様付けで呼ばれるなんて、それなんてエロゲですか?
たまりませんです。

「いや、だから友倉君でいいよ・・・」
惜しいけどな・・・
「かしこまりました、怪人様」
ダメだこりゃ。
まあ、おいおい直してもらえばいいのか・・・
とりあえず俺の言ったとおりに俺の隣を歩いてくれる鴇沢さん。
確か鴇沢澄恵(すみえ)さんだったな・・・
どうして彼女が女戦闘員になんてなったんだろう・・・

驚いたことに玄関は開いていた。
鴇沢さんが言うには、トテンコプが手を回してくれているらしい。
なので、彼女も着替えるのにここを使っているのだとか。
おいおい・・・
学校が悪の組織に利用されているのかよ。
日本は大丈夫なのか?

                   ******

「圭太! 起きなさい!」
俺は母さんの声で目を覚ます。
もう朝かぁ。
昨日は学校で夜中まで寝ていたけど、やっぱり朝は眠いよ。
そういえば結局あのあと俺たちは、普通にクラスメートが通学路で別れるようにして帰ったんだっけ。
家に帰ってきたら父さんも母さんも寝ちまっていたし・・・
息子が帰ってきてないのに心配じゃなかったのかよ。
そりゃ、時々友達のとこに遊びに行ったまま帰ってこないこともあるけどさ。
んで、結局俺は夕食を食べ損ねていたので、夜中に冷蔵庫をあさる羽目になったんだよな。

いつもと同じように支度をして学校に行く俺。
校舎を見てもなんだか昨晩のことがあったからか、少し違う雰囲気にも感じるな。
ここで鴇沢さんがあんな格好を・・・
彼女かわいかったなぁ・・・
あの女戦闘員の格好もう一回見られないかなぁ・・・

「おはよう」
俺はいつものように教室に入って席に着く。
「おはよう」
「おはよう」
これまたいつものようにクラスメートたちが俺に挨拶を返してくる。
全く何も変わらないいつもの光景。
そういえば、結局昨日はゲームやらずに寝ちゃったな。
まあ、あんなことがあったし・・・
脳裏に浮かぶ鴇沢さんの全身タイツ姿。
正直に白状すると、俺は布団に入っても全身タイツ姿の鴇沢さんのことが頭から離れず、しばらく寝られなかったんだよなぁ。

俺は席に座っている鴇沢さんの後姿に目を向ける。
もちろんいつもの制服姿で、髪は栗色のショートカット。
ここからは見えないが眼鏡をかけていて、まじめそうだけど、笑顔はとてもかわいい。
うん・・・
なんで俺は今まで彼女のかわいさに気が付かなかったんだろうな。
おとなしくて目立たなかったからかなぁ。

俺はもう一度彼女と何か話そうと、機会をうかがってみる。
残念ながら休み時間には無理だったものの、お昼休みに彼女が一人で教室を出ていくのに気が付いた。
これはチャンスだ。
俺はそう思い、彼女の後を追いかけてみる。
たぶんトイレか何かだと思うけど・・・

と思って廊下に出たものの、彼女の姿が見当たらない。
「あれ?」
しまった・・・
昼休みの廊下は行き来する生徒たちでいっぱいなのだ。
ちょっと目を離しただけで見失ってしまうには充分か。
うーん、残念。

仕方なく俺は自分のトイレを済ませると、適当に彼女を探しつつ教室へ戻る。
「まだ戻ってないか・・・」
入り口から彼女の席を確認すると、まだ席には戻っていない。
どこへ行ったんだろう・・・
「うわっ」
「キャッ」
突然背中にドンと誰かがぶつかってきた。
「わ、ごめん。俺が入り口で突っ立ってたから」
俺はすぐさまその場をよける。
「い、いえ、こちらも前をしっかりと・・・」
ぶつかったことに驚いた表情で俺を見る女子生徒。
眼鏡の奥の目がとてもかわいい。
って、あれ?
「鴇沢さん?」
ちょうど戻ってきて入り口にいた俺にぶつかったのか?
「か、怪人様?」
「わ、わ、わぁ! ちょっとこっちに来て」
俺はびっくりして鴇沢さんの手を引っ張るようにして連れていく。
背後が何かざわめいたようだが知ったことか!
そして渡り廊下につながる人気のないあたりまで二人で来る。

「あ、あの・・・怪人様?」
「わぁ、ごめん」
俺は慌てて手を離す。
夢中で鴇沢さんの手を引っ張ってきてしまった。
「いえ、問題ないです。それで私に何か?」
やや緊張した感じの鴇沢さん。
そりゃそうだよな。
いきなり引っ張ってこられたんだもん。
「あ、あの・・・」
「はい」
「その・・・」
「はい」
うー・・・なんで言葉が出てこないんだ?
「ほ、放課後・・・時間ある?」
「放課後ですか? はい。バイト行くまでの間は大丈夫ですが」
「じゃ、じゃあ・・・どっかなんか食いに行かない?」
「食べにですか? はい、喜んで」
やったー!
にっこり微笑んでくれる鴇沢さん。
その笑顔がとてもかわいい。
「ほ、ほんと? いいの?」
「もちろんです。何かの任務なのですよね? 怪人様のお手伝いができるのは光栄です」
あー・・・
そう来ましたかー・・・
まあね・・・
うん・・・
怪人の命令には逆らえないよね・・・
あーあ・・・

「あの・・・どうかなさいましたか、怪人様?」
「あ・・・いや」
えーい、くそ!
鴇沢さんと過ごせるならそれでもいいや!
ちくしょー!
なんでこんなもやもやするんだよ。
「それじゃ放課後に」
俺は彼女にそれだけ言って、そそくさと教室に戻る。
くそー!
俺は怪人なんかじゃねーぞ!

とは毒づいたものの、鴇沢さんと一緒にいられるというのはやっぱり楽しみなわけで、俺は午後の授業そっちのけで放課後を待つ。
クラスの連中に何か言われるのも面倒なので、俺は放課後になったらさっさと外に出て校門のところで彼女を待つ。
しばらくすると彼女が来てくれて、俺はホッとした。
もしかしたら来てくれないかもと思ったのだ。

「お待たせしました」
そう言ってぺこりと俺に頭を下げる彼女。
「いや、全然。来てくれてよかった」
「それは当然怪人様のご命令ですから来ますよぉ」
笑顔を浮かべる鴇沢さん。
う・・・素直に喜べないなぁ。

俺は手っ取り早く彼女を連れて近所のハンバーガーショップに行く。
そういえば彼女はこのあとバイトがあるとも言っていたし、店選びに時間をかけているわけにもいかないだろう。
「おごっていただいていいんですか?」
「いいよいいよ。遠慮なく」
ハンバーガー代くらいはいくらでも出すよということで、俺は二人分の会計を済ます。
その間に彼女は席を取っておいてくれたようだ。
俺は用意された二人分のハンバーガーセットを持って彼女のところに行く。

「それじゃいただきます」
ぺこりと俺に頭を下げ、ポテトを口に持っていく彼女。
ダメだー。
なんというか仕草の一つ一つがかわいい。
完全的に俺、彼女に参っている・・・
「どうかしましたか? あ、もしかしてまだ食べちゃいけませんでした?」
「いやいやいや、そんなことないから。どんどん食べていいから」
俺もハンバーガーにかぶりつく。
でも、味なんてわかんねぇよ。

「ところで、バイトって何やっているの? やっぱり悪の組織の?」
俺は話のきっかけにと思い、バイトのことを尋ねてみる。
「あ、ご存じなかったですか? バイトっていうのはあくまでも見せかけで、実際は訓練と待機時間になっているんです。バイトって言っておいた方が両親とかごまかせますし」
あー、なるほど。
「でもバイト代とか出ないと怪しまれない?」
「バイト代じゃなく任務の報酬はちゃんと出ますよ。バイト代よりもずっといいです。怪人様は出ないのですか?」
「あ・・・えー・・・いや、出るよ。出るけど女戦闘員はどうなのかなーと」
報酬が出る悪の組織なのかー。
「出ますよ。こうやって人間社会に紛れ込むためにもお金は必要と首領様もおっしゃってますし」
もぐもぐとハンバーガーを食べている鴇沢さん。
そりゃそうか。
戦闘員も怪人も人間社会で暮らすには金が要るか。

「いつも夜中に学校に?」
毎日あんな感じで夜中に学校にいるんじゃ、結局親に怪しまれるんじゃないか?
「いいえ。昨晩は練習でしたので。任務に向けてのクモ女様との連携の訓練のために」
「そうか・・・って、もしかしてうちの学校にほかにも怪人や戦闘員がいるのか?」
「えーと・・・言ってもいいのかな? クモ女様がいます」
「えええええ?」
ちょっと待て。
うちの学校に怪人がいるのかー?
「ご存じなかったのですか?」
「え、いや、ほら、俺は単独行動専門で別ルートからこっちに来ているからさ。まさか付近に仲間がいるとは思ってなかったんだ」
うう・・・どんどんドツボにはまっていく・・・
バレたらただじゃすまないかも・・・

「そうでしたか。もし、私でお役に立てるのでしたら、何でもご命令ください。クモ女様にもそうするように言われましたので」
「へ?」
「今日の昼休みに怪人様の件をクモ女様にご報告いたしました。クモ女様も近くに仲間がいるなんて聞いていなかったけどうれしいわ、そばにいて協力してあげてねと」
うはぁ・・・
そんな報告しちゃったんですかぁ?
もしかして俺って、かなりヤバくね?
これは正直に言った方がいいのかも・・・

「あ、あのさ・・・」
「はい、なんでしょうか?」
眼鏡の奥のくりくりした目が無邪気に俺を見つめてくる。
「その・・・もし・・・もし昨日あの場に入ってきたのが、怪人じゃなかったらどうしていた?」
「もちろん始末します。昨日は慌ててしまったのでナイフとか血しぶきが飛び散っちゃうような武器を使おうとしちゃいましたけど、次は落ち着いてロープなどで絞め殺そうと思います。あとで自殺に見せかければよいかと」
全く答えにためらいがない。
ダメだー・・・
俺、実は怪人じゃないんだ・・・なんて言おうものなら、“自殺”することになってしまう・・・
「そ、そうか」
「でもよかったです。昨日入ってきたのが怪人様で。そうじゃなかったら私、クモ女様に叱られてしまうところでした」
なんていう屈託のない笑顔。
俺が怪人じゃないとは全く疑っていないのか?
俺、怪人だという何の証拠も出していないんだぞ。

「そういえば、鴇沢さんはなんで女戦闘員なんかに?」
「はい? あ、私ですか?」
「うん」
そうだよ。
どうして彼女のような人が悪の組織の女戦闘員なんかやっているんだ?
「私は任務中のクモ女様を見てしまいまして。それで死ぬかトテンコプの一員となるか選びなさいと言われました」
「それで・・・」
「はい。死ぬのは嫌だったので、トテンコプの一員になりました。でも、おかげで女戦闘員として肉体の強化もしていただきましたし、理想の世界を作る首領様のお手伝いをすることもできるようになりました」
目を輝かせる鴇沢さん。
「じゃあ、女戦闘員になったことは後悔してない?」
「もちろんです。後悔なんてするはずがありません。私は女戦闘員であることに喜びを感じてます。怪人様にも鴇沢なんて言う人間名じゃなく女戦闘員64号って呼んでほしいです」
えええ・・・
いや、それはなぁ・・・
「64号・・・?」
俺は小声でそっと呼んでみる。
「はい! 怪人様!」
まるで子犬が喜んでいるみたいに明るい表情をする彼女。
ぐわー。
こんなに喜ばれたら、もうそう呼ぶしかないじゃん。
あああ・・・
もうダメだぁ・・・

「あっ、私そろそろアジトに行って待機しなくては。行ってもよろしいでしょうか?」
スマホで時間を確認する彼女。
「うん。いいよ」
本当はもっとお話ししたいところだったけど、仕方がない。
「ありがとうございます。それでは失礼します。ごちそうさまでした」
ぺこりと頭を下げる彼女。
「気を付けて、64号」
「ヒャイーッ! ありがとうございます、怪人様!」
突然立ち上がって右手を胸に当て奇声を発する鴇沢さん。
やべぇ!
周囲の人々が何事かとこっちを見る。
「あわわわ、し、失礼しましたぁ!」
俺は慌ててトレイとごみを片付け、急いで彼女を連れて店を出る。
ひー!
視線が痛いー!

「す、す、すみません。私、新米なもので怪人様に64号って呼んでもらえてすごくうれしくて、つい・・・」
しょぼんとしょげている鴇沢さん。
「いや、いいよ。俺もちょっとびっくりしたけど。まあせっかく擬態しているんだし、お互いできるだけ擬態しているときの名前で呼び合った方がいいかもな」
「はい・・・気を付けます」
「うん。気を付けてくれればそれでいいから。じゃ、俺はここで。また明日」
「はい。また明日よろしくお願いします。怪人様」
そういって頭を下げ、テテテテと走っていく彼女。
あーあ・・・
俺はどうしたらいいんだろう・・・

                   ******

「さすがに昨日の今日じゃ、いないかな?」
一度は布団に潜り込んだものの、結局眠れなかった俺は夜中の学校にやってくる。
校門は閉まっているようだし、誰かがいるような気配も・・・
窓からは非常口を示す緑色の明かりや、消火栓の位置を示す赤ランプの明かりが漏れているぐらい。
まあ、昨晩だって明かりは点けなかったから、いるとしたって明かりが点いているはずはないんだけど・・・

「あれ? もしかして怪人様ですか?」
「えっ?」
振り向いた俺の前には、全身を黒い全身タイツで覆い、目だけを出したマスクをかぶった女戦闘員が立っていた。
「と、鴇沢さ・・・いや、ろ、64号か?」
「ヒャイーッ! はい、私は女戦闘員64号です!」
ぴしっと背筋を伸ばして気を付けをし、右手を胸に当てる64号。
「わ、バカ! 大声を出すな!」
「あ、すみません」
慌てて自分の口をマスクの上から押さえている彼女。
「いや・・・大丈夫そうだ。任務・・・終わったのか?」
俺は周囲に何の反応もないのを確かめると、声を潜めてそう尋ねる。
学校の周囲が雑木林でよかったよ。

「ヒャイーッ! 任務と言いますか昨日と同じく訓練でした」
俺と同じように彼女も声を潜めて答える。
会えたのはうれしいけど、とりあえずここにいるのはまずいだろう。
学校の中に入った方がよさそうだ。
「今日も着替えに戻ってきたのか?」
「はい。制服が教室にありますので」
「じゃあ、行こう」
「はい、怪人様」
うなずいて俺のあとについてくる64号。
とはいうものの、校門は閉まっているしどうしたら・・・
「怪人様?」
どうしたものかときょろきょろしていた俺に、彼女が声をかけてくる。
「あ、ああ、校門がしまっているからどうしようかと・・・」
「あっ、失礼いたしました。怪人様は擬態していらっしゃったんでしたね。少々お待ちを」
彼女はそういうと、すぐにスススッと走ってジャンプする。
「何っ?」
驚いたことに、彼女は背丈以上の高さの校門をあっという間に飛び越えてしまったのだ。
そして校舎側に飛び降りると、すぐに校門を開けてくれる。
「すごいな・・・」
「お待たせしました。どうぞ」
「あ、ああ・・・」
俺は彼女が開けてくれた校門を通って敷地内に入り、そのまま校舎に入り込む。
やはりトテンコプとやらが玄関を開けておいてくれているのだろう。

俺たちは昨日とは逆に夜の廊下を教室に向けて歩いていく。
最初は俺の背後に付こうとした64号だったが、俺が隣を歩くように指示をする。
それにしても、彼女の着ている戦闘員の衣装は躰のラインがめちゃめちゃ強調されて、毎度目のやり場に困ってしまう・・・
並ぶと彼女の胸がドンとせり出しているのも一目瞭然だし・・・
「怪人様も任務だったのですか?」
「あ・・・いや・・・うん・・・」
本当は彼女に会いに来たんだけど・・・やっぱりそう言うのは照れ臭い。
「お疲れ様です。単独任務は大変ではありませんか?」
マスクをかぶった顔が俺の方を向いている。
不思議なもので、布が全部覆い隠しているのに、鼻や口の動きとかで、彼女の表情を感じ取れる。
「いや・・・まあ・・・大したことは・・・」
うう・・・
俺が本当はただの人間で、怪人なんかじゃないとバレたらどうなってしまうのだろう。

階段上って廊下を歩いて俺たちは教室の前に来る。
「それじゃ、すぐに着替えてきますので少々お待ちください」
そう言って教室に入ろうとする64号。
「あ・・・待って」
「はい?」
あ・・・
う・・・
彼女が俺の方を見ている。
うう・・・
「その・・・もう少し・・・」
「はい」
「もう少し・・・その恰好の64号を見て・・・いたいんだけど・・・」
ううう・・・
言ってしまった・・・
変態じゃん俺・・・
でも・・・
でも・・・
すごく魅力的なんだよ、その恰好・・・

「はい・・・いいですけど」
キョトンとしたまま窓から差し込む光の中に立っている64号。
美しい・・・
普段見る制服姿とは全く違う・・・
首から肩、そして脇から腰を通って足へと流れるライン。
括れた腰を強調するベルト。
たわわな胸に貼り付いたかのようなクモのマーク。
なんというかたまらない。
ヤバい・・・
あそこがヤバいことになってきた・・・

「も、もういいよ」
「あ、はい」
よくわからないという感じで首をかしげながら教室に入っていく64号。
ふう・・・
まずいよこれ・・・
俺完全に変態じゃん。
全身タイツ姿の女性にこんなに見惚れちゃうなんて・・・
ヤバすぎる・・・
それにズボンの中ではちきれそうになっているこっちもヤバい・・・

「ご、ごめん。俺先に帰るから。ごめん。また明日」
俺は教室の中で着替えている64号にそう声をかけ、返事も聞かずにその場を後にする。
これ以上ここにいたらどうなっちゃうかわからない。
ヤバいヤバいヤバい。
俺はとにかく一目散に家に帰ることだけを考えた。

                   ******

(続く)
  1. 2019/10/11(金) 21:00:00|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

こちらもお疲れ様です、前日のとはガラリと違っててまた面白いですね。
今回はラブコメテイストで見ててほんわかしてしまいますね。
ちなみに組織名気になって調べたらアレが元ネタかな?前日のも意味深でしたね。
主人公がどうなるか、綱渡りでひやひやして先がとても気に鳴ります(笑)
楽しみに後編待っています。
  1. 2019/10/11(金) 22:03:51 |
  2. URL |
  3. くろにゃん #rC5TICeA
  4. [ 編集]

いつもと違うラブコメチックな展開にニヤニヤしながら読んでましたw
鴇沢さんの挙動が可愛いですね(*´ч`*)
クモ女様も登場するのか気になりますが、次回が楽しみです(*>∇<)ノ
  1. 2019/10/11(金) 22:24:25 |
  2. URL |
  3. IMK #-
  4. [ 編集]

こう言うパターンは(舞方さんにしては)珍しいですが面白いですね~。
戦闘員の姿でいる所を見られてあたふたしたり、
64号と呼ばれて笑顔になったり・・・と、
女戦闘員にしては感情豊かでころころ表情を変える鴇沢さんがすごく可愛いです。
果たして友倉君が鴇沢さんと良い仲になれるのかどうか・・・応援したくなっちゃいます。
  1. 2019/10/11(金) 22:40:29 |
  2. URL |
  3. MAIZOUR=KUIH #gCIFGOqo
  4. [ 編集]

うわぁ…幸せそう過ぎて、このままのイイ展開で進むんだろうかと心配な自分がいます(笑)
  1. 2019/10/11(金) 22:40:45 |
  2. URL |
  3. g-than #-
  4. [ 編集]

うーんなかなか新鮮ですなーw
もともとの人格をちゃんと残して普段は普通に生活してるというのもいい設定ですね。
さて・・・主人公の末路は?本当に改造されて怪人になりそうなところがなんらかの事故で洗脳されず
ヒーローへ・・・・なんてどこかで聞いたことがある展開になるのでしょうかw
  1. 2019/10/11(金) 23:39:32 |
  2. URL |
  3. あぼぼ #-
  4. [ 編集]

皆様コメントありがとうございます

>>くろにゃん様
今回は完全に私の欲望的な話を書きました。
ほんわかしていると言って頂きうれしいです。
トテンコプはもちろん頭蓋骨ですねー。

>>IMK様
クモ女様はしっかり登場してくれますのでお楽しみに。
鴇沢さんがかわいいと言って頂けるのはうれしいですー。

>>MAIZOUR=KUIH様
新米なものでいろいろとパニクッちゃったんでしょうねー。
かわいいと思って頂けてうれしいですー。

>>g-than様
今回はハッピーエンドになるはずですー。
たぶん。(笑)

>>あぼぼ様
この組織はできるだけ人間社会に潜もうとしている感じですねー。
主人公の運命はお楽しみにー。
  1. 2019/10/12(土) 21:00:10 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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