先日ツイッターで、ふと「正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできたんだけどという人妻」とつぶやきましたところ、フォロワーさんのHowling様が反応してくださり、アイデアが一本浮かんだとおっしゃってくださいましたので、それならいっそ二人でこのつぶやきを基にしたSSを書きませんかと提案させていただきました。
するとHowling様もご快諾くださりまして、期せずして同じツイートを基にしたSSの競作という形が出来上がり、このたびそのSSが完成しましたので投下させていただきます。
タイトルはそのまま「正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻」です。
なお、Howling様の作品はこちら(
正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻)になりますので、ぜひご覧いただければと思います。
それではどうぞ。
正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻
「うーん・・・」
私は曲げていた腰を伸ばして背伸びをする。
まだ午前中だというのに暑いわぁ。
さすがにもう夏ねぇ。
外はぎらぎらと太陽が照り付けているようだし。
これは洗濯物もすぐに乾きそうねぇ。
私は洗濯を終えた洗濯物をかごに入れ、庭の物干し竿のところへ持って行って干していく。
くわー、まぶしい。
お日様が一杯ねぇ。
これなら乾燥機で乾かすよりも早く乾いてふわふわになってくれそうだわ。
一通り洗濯物を干し終わり、かごを片付けていると、表の方からパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
何か近くで事故でもあったのかしら?
『・・・要不急の外出は控え、戸締りをして充分にご注意ください。何か異変を感じましたら・・・』
サイレンと一緒にスピーカーで何か言っているみたい。
外出を控えて戸締りを?
どういうことなのかしら?
もしかして?
私はすぐにテレビをつけてみる。
いつもならワイドショーをやっている時間なのに、今はニューススタジオが映し出された。
「付近の方は充分にご注意ください。繰り返します。先ほど市内東方の市民公園付近でゴリグランの集団が出現いたしました。通報によって駆け付けたストームチームによって集団は撃退されましたが、その際怪人の一体が逃走し、なお付近に潜伏中とのことです。現在ストームチームと警察が協力して逃げた怪人を追跡しておりますが、公園付近の方は戸締りを厳重にして充分にご注意ください」
大変だわ。
市民公園と言ったらこの近くじゃない。
さっき何か騒いでいると思ったらそういうことだったのね。
子供達でもはしゃいでいるのだと思っていたわ。
私はすぐに開けっ放しになっていた庭へのガラス戸を閉じようと思い、急いでそちらへ向かう。
だが遅かった。
「ひっ!」
私は思わず立ち止まる。
そこには奇怪な巨大カマキリのような化け物が立っていたのだ。
緑色の外骨格に覆われ、三角形の頭部には巨大な複眼が輝き、右手にはカマキリのカマが鋭い先端を見せている。
人間とカマキリが融合したような化け物。
テレビで言っていたゴリグランの怪人がここに?
「クキキキキ・・・地球人のメスよ、騒ぐな!」
思わず助けを求めて悲鳴を上げようとしていた私は、何も言えなくなってしまう。
カマキリ怪人のカマが私の喉元に突き付けられたのだ。
「騒いだら殺す。いいな? クキキキキ・・・」
私は無言でうなずくしかない。
ああ・・・どうしてこんなことに・・・
誰か助けて・・・
私は外から見えないように庭に通じるガラス戸を閉じてカーテンを閉める。
カマキリ怪人にそうしろと言われたからだ。
ガラス戸を閉める時に声を出そうかと一瞬考えたものの、隣の家は昼間は留守だし、庭から逃げ出そうにも柵を超えなくてはならない。
その間にカマキリ怪人に殺されてしまうだろう。
今はおとなしくして、助けを待つしかないと思う。
「クキキキキ・・・よし、おとなしくしていれば殺しはしない。やつらの警戒が緩み、転送装置の故障が直れば引き上げてやる」
「は、はい・・・」
カマキリ怪人がリビングのソファに腰を下ろしてそういう。
どうやらすぐに殺される心配はなさそうだわ。
でも・・・
これからどうしたらいいの?
「あ・・・あの・・・」
「クキキキキ・・・なんだ?」
「か、買い物に行っても・・・」
せめて外に出られれば・・・
「ダメだ」
カマキリ怪人が首を振る。
やっぱり・・・
行かせてくれるはずがないとは思ってはいたけど・・・
『・・・は控え、戸締りを厳重にして・・・』
「ちっ、しつこいやつらだ」
外ではパトカーのサイレンの音とスピーカーからの声が流れている。
今なら警察に助けてと言えば助かるのでは・・・
私はそっと玄関の方へと近づいていく。
何とか気づかれずに・・・
「クキキキキ・・・おとなしくしていろと言ったはずだ。おかしな真似をするな」
カマキリ怪人の複眼がぎろりと私をにらんでくる。
やっぱりダメだわ・・・
これじゃ逃げるのは無理・・・
どうしたらいいの?
「ひゃぁっ!」
どきんと心臓が跳ね上がる。
いきなり我が家の玄関の呼び鈴が鳴ったのだ。
誰かが来たらしい。
私は出ていいかどうかカマキリ怪人の方を見る。
「クキキキキ・・・ちっ、奴らめ、まさか一軒一軒回っているのか?」
「ど、どうすれば?」
ああ・・・お願い・・・私に行かせて・・・
そうすれば玄関から逃げ出せるわ・・・
「よし、出ろ。おかしな真似はするな」
「は、はい」
私は玄関へ行こうと振り向く。
「いや、待て。あれを試してみるか。今までやったことはないが・・・」
「えっ?」
ソファから立ち上がり、立ち止まって振り向いた私の方へとやってくるカマキリ怪人。
そしてそのまま、私を壁に押し付けてくる。
「な、何を!」
私が悲鳴を上げる間もなく、カマキリ怪人の躰が私の中にずぶずぶとめり込んでくる。
えっ?
えええええ?
な、何?
何なの?
私の躰、どうなっているの?
カマキリ怪人の躰がすっかり消え去ると、私は何事もなかったかのように玄関へと向かう。
えっ?
私の躰が勝手に?
ど、どうなっているの?
「クキキキキ・・・いや、うふふふふ・・・だな」
私の口が勝手に言葉を紡いでいく。
どうして?
私じゃない。
私がしゃべっているんじゃないわ。
「はい。どなたですか?」
玄関のドアを開ける“私”。
やや出るまでに時間がかかったせいか、留守だとみなして隣の家に行こうとしていたのであろう警官二人と若い男性一人が足を止める。
あれは確かストームチームのストームブルー。
厄介なやつがいるな。
「ああ、いらっしゃいましたか。お留守かと思いました」
「ごめんなさい。ちょっと着替えていたものですから」
“私”がすらすらと返事をする。
そんな・・・
私が言ったんじゃないわ。
助けて!
私の中にカマキリ怪人がいるの!
お願い!
わかって!
「そうでしたか、こちらこそすみません。実はこの近辺にゴリグランの怪人が潜伏していると思われる状況でして。何か変わったこととかそれらしいものを見たとかありませんか?」
若い男性、ストームブルーが“私”に問いかける。
クキキキキ・・・
すっかりこの外見に騙されているようだな、ストームブルーめ。
えっ?
今私は何を?
これはカマキリ怪人の意識なの?
そんな・・・
いやぁっ!
助けてぇ!
私は必死に叫ぼうとするが、まったく声が出せない。
それどころか、このことに気が付かないストームブルーが愚かにさえ思えてくる。
どうして?
どうして気が付いてくれないの?
下等な地球人め・・・
「いいえ、何も。もしなんでしたら、家の中を確認なさいますか?」
大げさにドアを広く開け、家の中を見せるようにする“私”。
ストームブルーは一応家の中をちらっとは見るものの、すぐに首を振る。
「いえいえ、それには及びません。もし何かありましたら、すぐに警察なりストームチームの本部なりに知らせてください。いいですね」
「はい、わかりました。ご苦労様です」
“私”はにっこりと微笑み、ストームブルーたちに頭を下げる。
そして彼らが立ち去るのを見てドアを閉めた。
うふふふふ・・・
うまくいったわ。
すっかりこの姿に騙されたようね。
“私”はドアにもたれたまま思わず笑ってしまう。
この躰はなかなかいい。
アジトの転送装置が回復するまで、しばらくこの躰で過ごさせてもらうとしよう。
うふふふふ・・・クキキキキ・・・
“私”は部屋に戻ると、どさっとソファに座り込む。
なんだかさっきまであんなに怖がっていたのがバカみたい。
クキキュふふ・・・
こうしてみると、“私”って結構おっぱい大きいのね。
脚だってすらっとして悪くない感じだし。
“私”は両手でおっぱいを持ち上げ、脚を組む。
この躰、メスの躰だが悪くないわぁ。
髪をかき上げたり、唇に指を這わせたり、脚を組みなおしたり、おっぱいをゆすってみたりとひとしきり自分の躰を楽しんだ後、“私”は立ち上がって鏡に向かう。
クふふふふ・・・
“私”ってこんないやらしい顔をしていたのね。
この顔と躰なら、ほかにももっと地球人を騙せそう。
なんだかこうやって地球人を騙すのも楽しそうね。
“私”は冷蔵庫から缶ビールを取り出して一口飲む。
冷たいのど越しが気持ちいい。
そう言えばこれは誰のために買ってあったんだっけ?
このメスのつがいのオスのため?
クふふふふ・・・
そんなオスのことはもうどうでもいいか。
とりあえずストームブルーはうまくごまかせたみたいだし、あとはアジトに戻るだけ。
まあ、将軍には怒られるかもしれないけど、あんな行き当たりばったりの作戦を考える将軍が悪いのよ。
って・・・作戦の良し悪しがわかるなんて、なんだか“私”頭がよくなったのかしらね。
“私”と一つになったからかしら。
あー、ビールが美味い。
それにしても、転送装置が故障したと言われた時にはどうしようかと思ったが、こうして地球人と合体するという実験もできたし、結果オーライといったところかしら。
あん・・・
もうビールが空になったわ。
冷蔵庫の中にももうなさそうだし・・・
そうだ。
ちょっとこの躰で外に出てみよう。
クふふふふ・・・
面白そうだ。
“私”はこれまで着ていた衣服を脱ぎ捨てる。
これが“私”の裸か・・・
地球人のメスというのは面白くも美しい姿をしているものだわ。
クふふふふ・・・
さて、“私”はどんな衣装を持っていたかしらね。
“私”は寝室のクロゼットからなるべくオスの目を惹きそうなものを選んでいく。
元の“私”の知識がこういう時には役に立つわ。
それにしてもあんまりそういうオスの目を惹きそうな衣装は持っていないのよね。
今度用意しておかなくちゃ。
って、今度があるのか?
またこうして“私”が一つになる?
クふふふふ・・・
それも悪くないかもね。
とりあえず“私”は太ももまでのガーターストッキングと黒の下着を身に着け、胸元が開けられるシャツとタイトスカートを穿いてみる。
鏡に映る“私”はなかなかのもので、これならオスの目を惹きつけるぐらいはできそうだ。
“私”はそのまま玄関に行くと、かかとの高い靴を履いて外に出る。
あれからもう小一時間は経っているからか、どうやらパトカーのサイレンも遠くで鳴っているだけのようだ。
どうやら特に怪しまれてもいないようだな。
クふふふふ・・・
******
「ふう・・・これは面白いな。クふふふふ・・・」
“私”は買ってきた缶ビールを冷蔵庫に入れ、そのうち一本を開けて口にする。
「このビールというものもうまい。地球人はいいものを飲んでいる」
“私”はソファに腰を下ろし、再度ビールを喉に流し込みながら、先ほどまでのことを思い出す。
それは本当に滑稽な情景だ。
“私”が何者かも知らずにこの姿に見惚れるオスたちの多いこと。
地球人のオスに懐かれても面白くもなんともないはずなのに、どうやら“私”としてはまんざらでもない気分になる。
変な気分になりそうだわ。
それにちょっと声をかければすぐに言うことを聞いてくれそうなオスも多く、今後の作戦に生かせそうな気がしないでもない。
今回の作戦は失敗だったが、この成果を持って帰れば、将軍もそれなりに満足してくれるのではないだろうか。
地球人との合体は今後も試してみる価値があるだろう。
クふふふふ・・・
おっと、将軍がお呼びのようだ。
どうやら転送装置も回復したらしいな。
さて・・・
あっ・・・
気が付くと私の目の前にはカマキリ怪人が・・・
いえ、ゴリグランのカーマギリーが立っている。
「クキキキキ・・・お前には楽しませてもらったぞ。だから殺さないでおいてやる」
右手のカマが私の顎を持ちあげ、その大きな複眼が私を見つめてくる。
あ・・・
何?
この気持ちは・・・
「行ってしまう・・・のですか?」
私は何を言っているのだろう?
さっさと出て行ってほしいはずではなかったのか?
ゴリグランの・・・怪人なんて・・・
「クキキキキ・・・当然だ。私はアジトに戻るわ・・・と、お前のせいで口調がおかしくなったではないか」
苦笑するように口を開け、首を振るカーマギリー。
「あの・・・あの・・・」
私は・・・
私は何を言おうとしているの?
私は・・・
なんで?
なんでこんなに喪失感を感じているの?
いや・・・
いやよ・・・
分離してしまうなんていや・・・
「私も・・・私も連れて行ってください。お願い・・・私も一緒に・・・」
言ってしまった・・・
私はどうしてしまったのだろう・・・
でも・・・
でも・・・
「クキキキキ・・・どうした? さっさと出て行ってほしいのではなかったか?」
「それは・・・その・・・あなたと一つになるのがとても気持ちよくて・・・中身があなたなのに全く気が付かないバカな地球人を見るのが楽しくて・・・もっと・・・もっとあなたに私の躰を使ってほしい・・・」
私はそっとカーマギリーに近寄ってもたれかかる。
そう・・・
私は彼と一つになりたい。
「クキキキキ・・・そうか、いいだろう。俺も・・・いや私もお前の躰は気に入った。来るがいい」
「はい」
私はそのまま顔を上げ、彼を受け入れるようにする。
再び彼の姿が私の中に潜り込み、私はもう一度“私”となる。
「クふふふふ・・・では行くとしようか」
ニヤリと笑みを浮かべる“私”。
はい。
私は“私”に心の中でそう答え、アジトへの転送を待つ。
さようなら、今までの私。
そして、新たなる“私”が歩み出す。
クふふふふ・・・
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただければと思います。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2019/07/28(日) 23:10:00|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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