ベトナム戦争で経済的にも痛手をこうむった合衆国は、軍事関係の予算についても引き締めざるを得ませんでした。
折りしも、1960年代後半には、第二次世界大戦中に建造された数多くの駆逐艦や護衛駆逐艦が、いくら近代化を施しても退役を余儀なくされていく時期でありました。
増強著しいソ連海軍の水上艦や潜水艦に対抗するためには、高性能な艦艇は無論必要でしたが、一方で数量的優勢も確保しなくてはなりませんでした。
高性能な艦艇は当然のごとくコストがかかります。
合衆国の予算といえども、限られた中で数量と高性能を両立することはできませんでした。
そのため、高性能な兵器をある程度確保しつつ、性能には目をつぶってコストダウンを図った大量生産むきの兵器で数量的優勢を確保するという、いわゆるハイ・ロー・ミックス構想が生まれました。
そのわかりやすい例が航空機です。
コストも高いが優秀な性能のF-15と、低コストでそこそこな性能を目指したF-16(ただし、F-16は予想以上に高性能であり、F-15をしのぐ部分さえもあります)のコンビで質と量の両面を満たすことにしたのです。
海軍もハイ・ロー・ミックス構想を取り入れることにし、大きな船体で将来的発展余裕のあるある意味贅沢な駆逐艦であるスプルーアンス級駆逐艦と、安く大量に建造できることを目指したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲイトを建造することにいたしました。
オリバー・ハザード・ペリー級は、全長135メートルほどの船体に対空ミサイルと対潜ヘリコプターを二機搭載する有力な汎用フリゲイトとして1977年に一番艦が就役。
以後12年間で合計51隻もの大量産が行なわれました。
まさに数的優勢を確保する軍艦だったのです。
オリバー・ハザード・ペリー級は、コスト削減のためにさまざまな方法を取りました。
優秀な三次元レーダーを使わずに二次元レーダーで済ませたり、アスロック発射機を備えなかったり、艦首バウソナーを装備しなかったりと、徹底したコストダウンを図りました。
しかし、艦首のスタンダード対空ミサイル発射機は対艦ミサイルハープーン発射機を兼ねており、76ミリ砲やバルカンファランクスなどの必要な装備は確保していますし、ヘリコプターによる対潜能力もしっかりと備えています。
事実合衆国海軍でこそ脇役でありハイ・ロー・ミックスのローですが、諸外国の海軍ではれっきとした主力艦として使われているものも多く、ライセンス生産や退役艦の購入も多数行なわれております。
速度こそ最高28から29ノットとやや遅めではありますが、空母機動部隊の随伴艦としても使われ、まさに合衆国海軍の小型汎用艦として活躍してきました。
近年は艦齢の古い艦から退役がはじまってきてはおりますが、まだ当分は艦隊の一角を占める重要な艦艇として重宝されるでしょう。
ちなみに一番艦の艦名となったオリバー・ハザード・ペリーとは合衆国海軍の軍人であり、「米英戦争」の折に「エリー湖の戦い」において活躍した人物です。
そして彼の弟こそ、日本人にはなじみの深いあの黒船を率いて浦賀にやってきたマシュー・カルブレーズ・ペリー提督なのです。
オリバー・ハザード・ペリー級は、冷戦と言う時代の平時の戦時量産艦だったんですね。
それではまた。
- 2007/09/04(火) 19:50:06|
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