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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ノモンハン13

第7師団の一部を増援にまわし、一個師団強もの戦力を集中する今回の作戦に関東軍は自信を持っておりました。
鉄道より遠く離れたノモンハンにソ連軍が大部隊を展開できるはずは無い。
外蒙軍を中心とするハルハ河越境兵力を相手にするのであれば、一個師団強という戦力はまさに圧倒的なものである。
万万が一にも負けることなどは考えられないとの思いでした。

ノモンハンにソ連軍がスターリンの命で戦力を集中しているのを、モスクワで肌で感じ取っていたソ連駐在武官が、わざわざそれを知らせにシベリア鉄道経由で、増強ソ連軍の状況を調査しながら満州の新京にやってきて関東軍司令部に報告したにもかかわらず、関東軍司令部はその武官を「臆病者」とののしった上、いまさらそんなことを言う奴は切るとまで脅されたのです。
まさに敵を知らずおのれを知らずの状況だったのではないでしょうか。

ノモンハンより南西にモンゴル側に入ったところにタムスクという町がありました。
ソ蒙軍の拠点として活用され、航空隊の基地も置かれておりました。
6月中旬にカンジュル廟やアルシャンを爆撃したソ連軍航空機はここから飛び立ったものが大部分でした。
ノモンハン上空の優勢を確保するためには、関東軍にとっては叩き潰したい航空基地であったのです。

タムスクは当然モンゴル領内です。
つまりそこを攻撃するということは他国の領土への攻撃となります。
日本帝国陸海軍は天皇陛下に統帥されています。
他国への攻撃などということは、天皇陛下の命令があって初めて行なえることでした。

しかし、関東軍はこう考えました。
すでにカンジュル廟への敵軍の空襲があったからにはノモンハン一帯は戦場である。
戦場での敵軍への攻撃は軍司令官の裁量のうちにあるのであり、天皇陛下の命令による必要は無い。
タムスクの敵飛行場攻撃は関東軍司令官の裁量範囲内であるため問題ないというのでした。
もはやここまでくると笑うしかないのかもしれません。

このタムスク爆撃の計画を察知した(味方の行動を察知したというのも何なんですが・・・)東京の参謀本部ではまさに驚愕しました。
関東軍が何かをやるつもりだとは感じていましたが、第23師団一個ぐらいなら好きにやらせてやろうという空気が強かった中、他国への越境爆撃はさすがに限度を超えていると感じたのです。

しかし、参謀本部は毅然とした態度に出ませんでした。
関東軍のメンツをおもんぱかったのか、中止“勧告”を出すにとどめ、中止“命令”は出しませんでした。
参謀を派遣してやめさせようとしたのです。

関東軍は中止“勧告”では引き下がりませんでした。
東京から参謀が中止を進言しに来る前にやってしまえということにすらなったのです。

昭和14年(1939年)6月27日早朝。
第2飛行集団の百機以上の航空機がタムスクに向かって出撃。
タムスクで迎撃に上がってきた敵戦闘機や地上駐機中の敵攻撃機などに激しい攻撃を仕掛けました。
日本側は未帰還機四機、戦死七名という損害に対して百機以上の敵航空機を撃破。
ソ連側航空部隊は大損害を受けました。
完全なる奇襲だったのです。

辻参謀が歓喜して敵に与えた戦果を確認して司令部に報告。
関東軍司令部でも各員が小躍りして大戦果に酔い痴れました。
まさにしてやったりの大戦果だったのです。

当然のごとく関東軍はこの大戦果を東京の参謀本部に報告します。
中止勧告という行き違いはあったものの、参謀本部もこの大戦果には喜んでくれるに違いない。
関東軍司令部ではそう考えていました。

しかし、参謀本部から返ってきたのは「バカ者!!」という一喝でした。
確かに大戦果かもしれないが、ソ連が黙って引っ込んでいるわけが無い。
必ず報復がある。
その報復が大規模で日ソの全面戦争にでもなったらどうするつもりなのか?
いったい関東軍は何を寝ぼけているのか?
それが参謀本部の言い分でした。

関東軍司令部は色を失いました。
揃ってバカ呼ばわりされたのです。
参謀本部への反感は頂点に達しました。
犠牲が出なかったわけじゃない。
現に戦死者も出ているし、生き残った連中だって命がけで戦ったからこそ、この大戦果を生んだのだ。
兵士たちの敢闘を無視し戦果を無視する参謀本部は何事か!
これでは死んだ英霊も浮かばれないし、兵士たちに戦えなどとは言えないではないか!
だいたい報復というが、今回のこの攻撃こそ報復であって、カンジュル廟への空襲や東捜索隊などの無念を晴らすものではないのか?
参謀本部の方こそ大バカ者の集まりではないか!
参謀本部などはもはや当てにならん。
満州は我々が守るのだ。

関東軍は参謀本部に対し次のような電文を送りました。
「関東軍の基本方針は敵の不法行為を打破し、北辺の備えを強化、それによって支那事変解決に貢献するところにある。現状の認識と手段においては参謀本部と当方はいささか見解を異にしているが、北辺の些事については当方に一任して安心せられたし」
つまり、ソ連軍との戦闘など北辺の些事であるから関東軍に任せて余計なことは言うな、というのである。
なんと言う電報でしょうか。

参謀本部はついに天皇に上奏し天皇の命によりという体勢を整えます。
その上で関東軍に対してこれ以上の越境攻撃をするなという指示を出しました。

ですが、すでに遅きに失していました。
ハルハ河に陣を敷くソ蒙軍に対して、関東軍はまさに攻撃を仕掛けるべく部隊を展開中だったからです。

第二次ノモンハン戦が始まろうとしていました。

その14へ
  1. 2007/09/03(月) 20:30:40|
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