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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

四月馬鹿と騙される女

新元号発表で世間がざわめいている中ですが、今日は四月一日。
そう、奴が帰ってくる日です。
今年も何とか帰ってくることができましたー。ヽ(´▽`)ノ

そしてなんと、今年は四月馬鹿様のお話も10回目を迎えるという節目だったんですねー。
こんなネタを10年もやってきたのかー。(笑)

ということで、10回目の四月馬鹿様です。
平成最後の四月馬鹿様をどうぞお楽しみくださいませ。

それではどうぞ。


四月馬鹿と騙される女

「うん・・・うん・・・そう・・・わかった・・・うん・・・何とか用立てられると思う・・・うん」
電話の向こうから聞こえてくるつらそうな声。
でもそれは演技なのだろう・・・
嘘の事故・・・
嘘の病気・・・
嘘のデビュー資金・・・
そのたびに私は彼にお金を渡す。
戻ってこないということを知りながら・・・

優しい彼があんなつらそうな声を出すのだから、今度はきっと本当のことに決まっている・・・
そう思いたいのは私の方。
でも・・・
でも・・・
ううん・・・
信じよう・・・
彼のことを信じよう・・・

「ふう・・・」
吹き抜ける風に私は思わず身を縮こませる。
昼間はともかく、日が暮れるとまだまだ寒い。
春の陽気もまだ足踏みといったところかしら。
それに・・・
私は通帳に記された数字を見る。
もう残りはわずか・・・
この封筒に入った10万円を渡してしまえば・・・
お金が無くなった私を彼はどうするのだろう?
それでも私を愛してくれる?
それとも・・・
考えたくはない・・・

今日は四月一日。
エイプリルフール。
嘘をついてもいい日。
彼の言葉もきっと嘘。
このお金は・・・きっと彼の遊びに消えてしまう・・・

「うん・・・お金・・・用意した。うん・・・そう・・・うん・・・わかった・・・待ってる・・・うん・・・」
電話を切る私。
彼の指定してきた待ち合わせ時間までまだ少しある。
どこかで時間をつぶそうか・・・
どこがいいかしら・・・
あんまりお金を使わずに済むようなところがいいな・・・

「ククククク・・・あんた、騙されているぜ」
「えっ?」
どこで時間をつぶそうかと歩きながら考えていたら、いつの間にか後ろにいた人に私は声をかけられた。
思わず振り向くと、そこにはつばの広い帽子を目深にかぶり、黒いコートで身を包んだ男の人が立っていた。
いや、声と服装から男の人と判断しただけだけど・・・

「なんですか? いったい」
「あんたは騙されていると言ったんだよ」
その物言いに、私はちょっとムカッとする。
「何が騙されているというんですか?」
なんなのだろう、この人は?
私が騙されているって・・・そんなの・・・言われなくたってわかっているわ・・・

「あんた・・・これから会う男にバッグの中のお金を渡すつもりだろ? やめておいた方がいい。騙されているんだ。ククククク・・・」
「あなたに何がわかると! 騙されているなんて! 騙されているなんて・・・そんなのわかってます!」
ああ・・・
言ってしまった・・・
騙されているなんて・・・
そう・・・わかっていた・・・
わかっていたのよ・・・

「ほう? わかっていると? わかっていて金を渡すつもりか?」
相変わらず帽子の陰になってて顔が見えない。
いったいこの男は何者なの?
なぜ私にかかわってくるの?
「ええ、そうです。このお金は私のお金なんだから、私がどう使おうとあなたには関係ないでしょ!」
「ククククク・・・そうだな。俺様には関係がない。だが、騙されているのがわかっているのに騙されたふりをしている奴というのが、俺様は好きじゃなくてな」
「騙されたふり?」
「そうだろう? あんたは自分がその男に騙されているのをわかっている。だが、あえて騙されていようと望んでいる。それが騙されたふりでなくて何なんだ?」
それは・・・そうかもしれないけど・・・
「で、でも・・・お金があれば・・・お金を渡せば彼は私にやさしくしてくれる・・・私に笑顔を見せてくれるのよ」
そう・・・
そのためにお金を渡すの。
これは・・・これは一つの商品売買みたいなものよ!

「ククククク・・・たかだかつまらん男の笑顔がそれほど大事か? そんな男の歓心を金で買って満足か?」
「そ、そんなことどうだっていいでしょ! あなたはいったい誰なの? なんでそんなことを私に言うの?」
「ククククク・・・言っただろう? 俺様は騙されているのがわかっているくせに騙されたふりをしている奴が嫌いだと。なぜなら・・・」
「なぜなら?」
なんだか背筋がぞくっとする。
いったいこの男は何者なの?

「俺様は人間を騙すのが仕事の妖怪、四月馬鹿だからさ」
「ヒィィィィィ!」
男が帽子に手をかけて取った途端、私は悲鳴を上げていた!
帽子の下に隠れていた顔は人間のものではなかった。
それは歯をむき出して笑っている鼻づらの長い馬の顔。
それなのに頭には立派な鹿の角が生えている。
なんなの?
馬なの?
それとも鹿なの?
なんでこんなのがいるのよ!

気が付くと私は一目散に走っていた。
化け物!
化け物よ!
化け物が出たんだわ!
いやぁぁぁぁぁ!

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
ダメ・・・
もう走れない・・・
もうダメぇ・・・

私は公園のベンチに腰を下ろす。
どうやら追いかけては来ていないようだ。
助かったぁ・・・
いったい何なの、あれ?

そういえば・・・
以前何かで見たような気がするわ。
妖怪四月馬鹿。
エイプリルフールに現れて、人間をだまして仲間の馬鹿にしてしまうとか・・・
都市伝説だとばかり思っていたのに・・・
まさか本当にいるなんて・・・

とりあえず四月馬鹿がここまで追ってこなかったのを確認してホッとしたところにスマホが鳴る。
彼からだわ。
まだ待ち合わせにはもう少しあるけど・・・
「はい」
私は電話に出る。
彼のやさしい声。
とてもとてもやさしい声。
「えっ?」
思わず私は聞き返す。

「大丈夫って? えっ?」
お金はいらない?
どういうこと?
えっ?
今までごめんって?
何を言っているの?
デビューが?
今度こそ本当にデビューが叶うって?
先日のライブを見に偉いさんが来ていたって?
準備費用も用立ててくれるからって?

今まで本当にごめんって?
俺、本当にバカだったって?
売れない焦りをお前にぶつけていたって?
何を言っても俺を信じるお前に意地悪してしまったって?
でも、もうお金を請求したりしないって?
これからできる限り返していくって?
俺頑張るからって?

えっ?
彼は何を言っているの?
これは本当に彼なの?

あっ・・・
私はわかった。
これは彼じゃない。
そうよ・・・
これは彼じゃない。
だって彼がこんなこと言うはずがない。
それに待ち合わせしているのに電話をよこすのも不自然。
顔が見えないのをいいことに、私をだまそうとしているんだわ。
そうよ・・・
これこそが妖怪四月馬鹿なんだわ・・・

「騙されないわ」
私は電話に向かって冷たく言う。
「私はあんたなんかには騙されない! 私を仲間に引き入れようとしたって無駄なことよ! とっととあきらめて別の獲物でも見つけることね、四月馬鹿さん」
電話の向こうで何か言っていたけど、聞く気にもならない。
私が通話を切ると、スマホの画面に映った時間が目に入る。
いけない。
待ち合わせに遅れちゃうわ。
行かなくちゃ・・・

良かった・・・
まだ来ていない。
ぎりぎり間に合ったわ。

私は待ち合わせ場所の駅の広告柱の前に立つ。
たぶん彼のことだから、少し遅れてくるかな。
まあ、待つのも楽しいわよね。

「お待たせ。待ったかな?」
待ち合わせ場所にやってくる彼。
いつも通りのにこやかな笑顔。
今日は珍しくコート姿。
でも、なかなか様になっていると思うのは私の欲目だろうか?

「ううん、私も今来たところ」
そこまで言ったところで、私の唇はキスでふさがれる。
甘いキス。
抱き寄せられる私の躰。
もう・・・
いつもこうなんだから・・・
でも・・・
うれしい・・・

「それで、持ってきてくれた?」
「え・・・ええ」
私はバッグから封筒を取り出して彼に渡す。
彼はすぐに中身を数えて笑みを浮かべている。
「いやぁ、ありがとう。助かったよ」
「これで足りる・・・のよね?」
「ああ、たぶん大丈夫。そうだ。今日は美味いものでも食いに行こうぜ。フランス料理でもさ」
ああ・・・
やっぱりそう・・・
大事なことに使うお金じゃなかったの?
美味しい料理なんかに使ってしまうつもりなの?
やっぱりあなたは・・・

「麻梨恵(まりえ)ー!」
えっ?
私の名を呼ぶ声?
人ごみの中をこちらに向かってくる彼。
えっ?
春敏(はるとし)なの?
えっ?
どういうこと?
春敏なら今目の前に・・・

「ククククク・・・」
笑っているコートの男。
違う・・・
春敏じゃない・・・
彼じゃない・・・
似ているけど・・・違う・・・

「麻梨恵! 麻梨恵! 遅くなってごめん! 電話でも言おうとしたんだけど話がちょっと長くなって・・・そ、そいつはいったい?」
「春敏・・・」
走ってきたのか息を切らせている彼。
私が別の男といるのを見て困惑しているみたいだ。
「麻梨恵! 俺に・・・俺に愛想尽かしたのかもしれないけど。でも・・・でも・・・もう一度・・・もう一度チャンスをくれ! 俺、今度こそちゃんとするから。先の目処も立ったから。だから・・・」
違うの・・・
違うの・・・
愛想なんか尽かしていない。
私はあなたのことを・・・
でも・・・
何がどうなって?

「ククククク・・・さあ、行こうか麻梨恵」
コートの男が顔を上げる。
「ひっ!」
私は思わず息をのむ。
その男は・・・馬の頭に鹿の角を生やしていたのだ。
「四月・・・馬鹿・・・」
「そうさ。俺様は四月馬鹿。お前の愛する彼氏だよ」
歯をむき出してにたぁっと笑っている四月馬鹿。
「ち、違う・・・私は・・・」
「違わないさ。お前は俺様を受け入れた。俺様に金まで差し出した。俺様をすっかり彼氏だと信じ込んでいたのさ」
「そ・・・そんな・・・」
確かに・・・確かに私は・・・

「それにお前は彼の電話を拒絶した。お前にとって彼は善良な人間であってはならないのさ。お前から金をむしり取る悪人であり、お前は騙されている被害者でなければならない」
「ち、違う・・・」
「違わないさ。お前は騙されたふりをしている自分が好きで、そのことに酔いしれたいのさ。だから彼が立ち直ったことを受け入れず、自分の望んだイメージ通りの彼を演じた俺様を信じたのさ。ひーひっひっひっひ・・・」
ああ・・・そんな・・・そんな・・・
私は・・・私は・・・信じる信じると言いつつ、彼を一度も信じてはいなかったのか・・・
「おめでとう。お前はようやく騙された」
あああああ・・・

私の周囲が暗くなる。
すべてが消えうせた闇の中。
私と四月馬鹿だけがここにいる。
そして・・・

私の躰が変わっていく。
私の手は茶色の毛におおわれて指先は蹄となり、私の顔は鼻づらが伸びて馬の顔となり、頭からは鹿の角が伸びてくる。
私は服を脱ぎ捨てる。
もう私には必要のないものだ。
私の躰には茶色の毛が覆ってくれているのだから。
お尻からは尻尾も生えてくる。
あははははは・・・
騙されるなんてばからしいわ。
騙す方が楽しいに決まっている。
そうよ。
これからはたっぷりと騙してやるんだから。

「ククククク・・・馬鹿の世界にようこそ。新たなるしもべよ」
私はすっとひざまずく。
「ありがとうございます、主様。主様のしもべになれて幸せです」
目の前にいるのはわが主。
馬鹿の王、四月馬鹿様。
そして私は主様にお仕えする馬鹿の一人。
くふふふふ・・・
こんな素敵な姿になれるなんて・・・
これも主様のおかげだわぁ。

「ククククク・・・どうだ? まだ騙されたふりを続けたいかな?」
「とんでもありません。騙されるなどまっぴらです。私は馬鹿。人間どもを騙すのが私の喜びですわ」
そうよ。
これからは私が人間どもを騙す番よ。
「ククククク・・・それでいい。さあ、奴が待っているぞ。今度はお前が奴を騙してやれ」
「お任せくださいませ主様。あの男に私の力を見せつけてやりますわ。くふふふふ・・・」

闇が晴れていく。
私は人間の姿に擬態する。
四月馬鹿様は新たなしもべを探しに行ってしまった。
私も行こう。
あの男を騙すために。
今夜は楽しい夜になりそうだわ。
くふふふふ・・・

エンド

いかがでしたでしょうか?
ではではまた来年ー。(´▽`)ノ
  1. 2019/04/01(月) 20:00:00|
  2. 四月馬鹿
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
<<新元号は令和でしたね | ホーム | これは素晴らしいー! ヽ(´▽`)ノ>>

コメント

今年も面白かったです!
中々変化球な感じでちょっと意表を突かれました!
彼氏は果たしてこのあとどうなったのやら……w
来年も楽しみにしています〜!
  1. 2019/04/01(月) 20:47:07 |
  2. URL |
  3. 暁ユウ #-
  4. [ 編集]

今年もやって来た四月馬鹿様!
彼氏に散々お金を搾取されていた麻梨恵さん・・・ある意味馬鹿になった方が幸せだったのかも?
今回は人を騙して馬鹿を増やすお馴染みの行為の中に違う一面が垣間見えたお話でしたね~。
楽しませていただきました!
  1. 2019/04/01(月) 22:12:11 |
  2. URL |
  3. MAIZOUR=KUIH #gCIFGOqo
  4. [ 編集]

感想

今年もありがとうございます。
同じ寸借詐欺が、彼氏ならば騙された事にならず、四月馬鹿様ならば騙された事になるという所が面白かった。
新たに馬鹿になった彼女はどうやって彼氏を騙すのでしょうね。
  1. 2019/04/02(火) 00:28:15 |
  2. URL |
  3. sen-goku #rFnOs2i6
  4. [ 編集]

待ってました!今年でもう10年目とは…(しみじみ)
前半はある意味心配してる風で初のハッピーエンドか
と思いましたがやはり四月馬鹿でしたね(笑)
わざわざ彼氏に化けて騙すといつもながら芸達者な。
オチが一捻りされてて面白かったです。
騙されるのが好きな人間が騙す側に、というのがいいですなあ。
また11年目も楽しみにしております!
  1. 2019/04/02(火) 12:37:11 |
  2. URL |
  3. くろにゃん #rC5TICeA
  4. [ 編集]

皆様コメントありがとうございます

>>暁ユウ様
それはもう彼氏は人間に擬態した彼女によって心行くまで騙されるでしょうねー。(笑)
まあ、馬鹿になった彼女にとっては、それは復讐でも何でもなく本能なんでしょうけど。

>>MAIZOUR=KUIH様
おっしゃるとおり彼女にとっては馬鹿になった方がよかったのかもしれませんねぇ。
まあ、四月馬鹿にとっては騙されている私を受け入れている彼女がいやだったのでしょう。

>>sen-goku様
違うのですー。
あくまで四月馬鹿を彼氏と信じ込んでしまったというところが彼女が騙されたところなのです。
寸借詐欺は手段に過ぎないのですー。

>>くろにゃん様
もう10年ですよー。
早いものですねー。
来年も書けるといいなぁと思っておりますー。
  1. 2019/04/02(火) 20:22:13 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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