新年SS「かわいいは正義」の第二回目です。
昨日も書きました通り、「男性同士」の絡みシーンがありますので、そういうのが苦手な方はそっと閉じていただけるようお願いいたします。
一応折り畳みもしますが、ツイッター連携等は折り畳みが意味がないことが多いので、ご注意ください。
それではどうぞ。
何となく気恥ずかしい。
やはり男が女の子の下着を穿いているというのは、バレたら変に思われるのではないだろうかと気になってしまうのだ。
とはいえ、もう男用のパンツなんて穿く気にはなれない。
かわいらしさのかけらもないような実用一点張りの男のパンツなんて、見ているだけでむさくるしさを感じてしまう。
やはり身に着けるものはかわいいものでなくては・・・
そしてかわいいものは女の子のものが多いのだから、かわいい自分がかわいい女の子の下着を着けるのは当たり前だと和希は思う。
それに・・・
女の子の下着を身に付けたら、なんだか自分がすごくかわいくなったようでうれしかった。
パンツに浮き出るチンポの形はグロテスクで嫌悪感で一杯だが、女の子のかわいいパンツを穿いているというだけでギンギンに勃起してしまうため、つい昨晩はオナニーを三回もしてしまったのだ。
そしてそのたびにこれがもっとかわいいチンポだったらと願わずにはいられなかった。
「はあ・・・」
そして結局和希は女の子のパンツをそのまま穿いて学校に来てしまったのだ。
ズボンの下だからたぶん気づかれるとは思えないのだが・・・
それでもなんだか気恥しい。
俺はなんてことをしてしまっているのだろうとすら思う。
でも・・・
なぜかやめようとは思わないのだ。
そして、なぜか今日は和希は朝からクラスメイトの女子たちの仕草が何となく気になってしまっていた。
かわいい仕草の子。
そうでもない子。
いろいろといるのがわかる。
どうすればもっとかわいくなれるのか?
そんなことが気になってしまう。
かわいい仕草をできるようになりたい。
もっとかわいく・・・
ポケットのスマホが振動し、LINEの着信を伝えてくる。
休み時間になったので、聡美あたりが何か送ってきたのだろうか?
スマホの画面を確認すると、聡美ではなくジャキュートからであった。
あ・・・
なんだかドキドキする和希。
彼からのLINEがなんだか嬉しい。
和希はすぐに文面を見る。
『先輩おはようございます。昼休み、昨日のところで会いましょうね』
あ・・・
そういえば今日も何かプレゼントしてくれるって言ってたっけ・・・
なんだろう・・・
プレゼントも楽しみだけど、ジャキュート君と会うのが楽しみに感じる。
ジャキュート君、またかわいいって言ってくれるかな?
言ってほしいなぁ・・・
昼休み。
和希は早々に昼食を済ませると、何となくウキウキした気分で昨日の場所へ向かう。
本来そこはいつもなら腕時計に偽装したファイターブレスで日本支部との状況確認に使う場所なのだが、今日は違う意味の場所になりそうだ。
「ちょっと早かったかな?」
人気のない校庭の隅には今日も誰もいない。
和希はちょっとがっかりしてしまう。
仕方なくファイターブレスを確認する。
昨日同様今のところ問題はないようだ。
やれやれ・・・
このままずっと平和だといいのになぁ。
そう思って和希がファイターブレスから目を上げる。
あ・・・
近づいてくるジャキュートの姿。
なんだかついつい笑顔になってしまう。
思わず自分の格好を再確認してしまう和希。
どこか変なところはないだろうか?
女の子のパンツを穿いた俺はかわいく見えるだろうか?
かわいいって言ってもらえるだろうか?
なんだか気になってしまうのだ。
「こんにちは、先輩」
やってきたジャキュートが笑顔で挨拶してくる。
「こ、こんにちは」
なんだかドキドキしてしまう和希。
「呼び出してしまったりしてすみません。どうしても今日も先輩のかわいい顔が見たくなってしまいまして」
ああ・・・嬉しい・・・
ジャキュートにかわいいって言ってもらえるのはなんだかすごく嬉しいのだ。
「ううん、大丈夫だよ。俺、いつも昼はヒマしているし」
「そうですか? よかった」
にこっと笑うジャキュート。
かわいいというなら彼も相当にかわいいと和希は思う。
「先輩、昨日は写真を送ってくれてありがとうございました。とっても素敵でかわいかったですよ」
「そ、そうか? こっちこそあんなかわいい下着をいただいてありがとうな」
「どうでした? かわいい下着を穿いた気分は? 自分がかわいくなった気がしませんでしたか?」
まっすぐに和希の目を見つめてくるジャキュート。
なんだかその目に吸い込まれてしまいそうだ。
頭も少しぼうっとしてくる感じがする。
「うん・・・なんだかかわいくなった気がした」
「でしょ? ほかにもかわいい下着を身に着けたくなりますよ」
「うん・・・昨日さっそく通販で注文しちゃった・・・」
昨晩大手通販サイトで女の子の下着をいろいろと見ていたら、思わず欲しくなってしまったのだ。
「へぇ、それは予想以上だ。先輩はもしかしたら心の奥底で本当にかわいくなりたかったのかもしれませんね」
ニヤッと笑うジャキュート。
「それじゃ、先輩が買ったものと重なっちゃうかもしれませんけど、ボクからもこれを」
そう言って今日もジャキュートはカバンから紙袋を取り出す。
今日は昨日よりも大きい紙袋だ。
「家に帰ったら開けてくださいね。先輩は中身を見るとすごく嬉しくなって、すぐに身に着けたくなります」
「うん・・・家に帰ったらすぐ開けて、中身を見ると嬉しくなり、すぐに身に着けたくなります」
「これからは女の子のかわいい下着しか身に着けたくなくなります」
「うん・・・これからは女の子のかわいい下着しか身に着けたくなくなります」
ジャキュートの言葉が心に沁み込む。
和希にとってその言葉は真実なのだ。
もう男の下着なんて着られない。
「ところで先輩。もしかして今もボクの送ったショーツを穿いてくれているんですか?」
「えっ? う・・・うん・・・」
なんだか恥ずかしくなり顔が赤くなる和希。
それがまたかわいさを見せている。
「ホントですか? 見せてもらっていいですか?」
「ええ? 恥ずかしいよ・・・」
「いいじゃないですか。ここにはボクたちしかいません。それに先輩はボクに見せたくて仕方ないんですよ」
「うん・・・俺はジャキュート君に見せたくて仕方ない・・・」
そう言うと、和希はズボンのベルトを外し、ファスナーを下げて少しズボンを下げて見せる。
ピンク色の女性用のショーツから、まだ勃起していないにもかかわらず、男性器の先端がちょっとだけ顔を出していた。
「ふふふ・・・これが先輩のおちんちんですか」
「ああ・・・恥ずかしい」
「そうですね。こんな大きなおちんちんは先輩には似合いません。先輩はもっと小さくてかわいいおちんちんの方が似合います」
「でも・・・どうしたらいいのか・・・」
ジャキュートの言うとおりなのだ。
もっと小さくかわいいチンポがいい。
もっとチンポが小さくなればいい。
「ふふふ・・・それじゃそれは今度のお楽しみにしましょう。先輩がボクの予想以上の速度で種から花になりそうなので、予定を早めてあげます」
「そう・・・なの? うん・・・楽しみにしてる」
「さあ、もういいですよ。見せてくれてありがとうございました。先輩やっぱりかわいい」
「あ・・・ありがとう。嬉しい」
ズボンを上げてベルトを締め直す和希。
ジャキュートにかわいいと言われるのがたまらなく嬉しい。
「あ、カズ君見っけー」
和希が身だしなみを整え直したころ、聡美が手を振ってやってくるのが見える。
おそらく日本支部からの異常なしの情報を共有しようというのだろう。
なので、そばに見慣れない白人の男子高校生がいるのを見て、聡美は足が止まってしまう。
「どうした、聡美?」
「あ・・・うん。カズ君お話し中だった? ごめんね」
すぐに回れ右をして立ち去ろうとする聡美。
「あ、淡桃先輩・・・ですよね?」
「えっ?」
ジャキュートに呼びかけられ、驚く聡美。
どうして彼は私の名を知っているのだろう?
「え、ええ、そうだけど」
聡美は助けを求めるように和希を見る。
「ああ、やっぱり。初めまして。ボク留学で来ているジャキュートって言います」
ぺこりと頭を下げるジャキュート。
「俺の後輩なんだ。すごくいい奴なんだよ」
和希にそう言われ、聡美はさらに困惑してしまう。
和希にそんな後輩がいたなんて知らなかったからだ。
「あ、えーと、淡桃聡美です。よろしく」
当たり障りのない挨拶を返す聡美。
「カズキ先輩にはよくしていただいているんです。怪しい奴だと思われたかもしれませんが、ボクの目を見てもらえばわかります」
「えっ?」
思わずジャキュートの目を見てしまう聡美。
「あ・・・」
何か急に頭がぼうっとしてくる。
何?
なんなの?
「ボクはカズキ先輩の親友です。カズキ先輩とは信頼し合っている間柄です」
「あ・・・ジャキュート君はカズ君の親友・・・カズ君とは信頼し合っている間柄」
そうだ・・・
ジャキュート君はカズ君の大事な親友。
だから私も彼を大事にしなきゃ・・・
「男同士の大事な友情を邪魔したくはない」
「男同士の大事な友情を邪魔したくない・・・」
そうだよ・・・
カズ君とジャキュート君は男同士だもん。
女に言えないこととかもあるだろうし、邪魔しちゃいけないよね・・・
「だから、ボクとカズキ先輩が一緒にいるときは少し遠慮しよう」
「だから、ジャキュート君がカズ君と一緒の時は少し遠慮しよう・・・」
そうだわ・・・
ジャキュート君とカズ君が一緒の時は少し遠慮しなくちゃ・・・
カズ君とはカズ君が一人の時に話せばいいよね。
「わかってくれますよね」
「うん・・・よくわかる」
こくんとうなずく聡美。
「聡美?」
なんだか、ジャキュートと話している聡美の様子がいつもとは違うような・・・
「あ、カズ君ごめんね。ジャキュート君とお話し中だったんでしょ? 私は特に用があったわけじゃないから行くね。またね」
そう言って手を振り、立ち去ってしまう聡美。
「なんだ、あいつ?」
思わず和希は首をかしげる。
「きっとボクたちに気を使ってくれたんですよ。いい人ですね」
「そうだろ? あいつはいい奴なんだ。かわいいしね」
幼馴染を褒められるのは悪い気はしない。
それにしてもまさか幼馴染同士でファイタースーツの適合者として選ばれるとは思いもしなかった。
それが一億人に一人と言われる適合レベルだったことも。
ファイタースーツ適合者として選ばれてからの聡美の努力を知っているだけに、和希は聡美が褒められるのは自分を褒められる以上にうれしかった。
「ええ・・・いずれ彼女も・・・ふふふふ・・・」
そう言って意味ありげに笑うジャキュートだった。
******
学校が終わると急いで家に帰る和希。
ワクワクが止まらない。
カバンの中にしまっているジャキュート君がくれた紙袋。
中身はおよそ想像はついているが、早くどんなものなのか見たくてたまらない。
「ただいまぁ」
玄関を開け、靴を脱ぐのももどかしい感じで部屋の中に入っていく。
そしてカバンから紙袋を取り出すと、急いで中身を取り出していく。
「うわぁ・・・」
思わず声が出てしまう。
紙袋の中身は、色とりどりのカラフルな女性用の下着。
ショーツもあればブラジャーもある。
そのいずれもがパステルカラーやワンポイントなどのかわいいものばかり。
「なんてかわいい・・・」
和希はとても嬉しかった。
ジャキュート君がこんなにたくさんかわいい下着をプレゼントしてくれるなんて・・・
ああ・・・早く着たい・・・
かわいい下着を身に着けたい・・・
すぐさま制服を脱いでいく和希。
ズボンを脱ぎシャツを脱ぎ、穿いているショーツに手をかけたところでハッとする。
今穿いているこのショーツ。
これ一枚じゃなくなったんだ・・・
たくさんあって穿き替えられるんだ・・・
そう思うとすごく楽しい。
毎日毎日かわいい下着を身に着けることができる。
なんて楽しいんだろう・・・
とりあえずレモンイエローのショーツを手に取り穿いていく。
やはりグロテスクなチンポがどうしても気になってしまう。
うう・・・
どうしてこんなに俺のチンポは醜いのだろう・・・
せめてもう少し小さくてかわいければ・・・
だがこればかりはどうしようもない。
せめてこの醜さをカバーするようにかわいくならねばと和希は思う。
ショーツの次はブラジャー。
これが何をするものかぐらいは知っている。
でも・・・
和希は自分の平らな胸を見下ろす。
俺は女の子みたいなオッパイはないからなぁ・・・
これも残念なことだが、どうしようもない。
だが、胸が平らだってかわいいブラジャーをしていけないということはない。
胸が平らだってかわいいブラジャーでかわいくなればいいのだ。
男がかわいくたっていいんだ・・・
俺はかわいくなりたい。
もっともっとかわいくなって、ジャキュート君にかわいいって言われたいんだ・・・
ジャキュート君にかわいいって言われたいんだ・・・
ショーツに合わせたレモンイエローのブラジャー。
シンプルなものだが、それがかえってかわいらしい。
和希は何となくブラジャーを着けていく。
今まで着けたことがないから、これで正しいのかどうかわからない。
でも、何となくこれでいいんだろうと着けてみた。
ブラジャーまで着けたところで、和希は風呂場に行ってみる。
風呂場の鏡で自分の姿を確認するのだ。
本当は大きな鏡があるといいのだろうが、和希の部屋にはそんなものはない。
今度、買った方がいいのかな・・・
そんなことを思いながら鏡を見る。
「ふわ・・・」
なんだか驚いた。
今まで嫌いだった自分の女性ぽい顔立ちが、ブラジャーが一緒に映るだけで、すごくかわいいものに見えるのだ。
「俺・・・かわいい・・・」
嬉しい。
かわいいのが嬉しい。
きっとジャキュート君にかわいいって言ってもらえるし、これなら聡美にもかわいいって言ってもらえるかもしれない。
ああ・・・
なんて嬉しいんだろう・・・
しばらく鏡の中の自分に見惚れている和希。
「そうだ・・・」
ふと気が付いて、部屋にスマホを取りに行く。
「ジャキュート君に写真を送らなきゃ」
自分の写真を、しかも女の子の下着を着けた自分の写真を他人に送るなんて考えたこともなかった。
でも、和希はジャキュートに見てもらいたくてたまらないのだ。
「ふふふ・・・」
楽しそうにブラジャーやショーツを身に着けた自分の姿や、床に広げた女性の下着類を写真に撮ってLINEで送る。
すると、すぐに既読になって返事が来る。
『わあ、ありがとうございます。先輩。すごくかわいいです』
『こちらこそありがとうね。こんなにたくさんのかわいい下着をもらえるなんて』
『先輩がかわいくなってくれるならもっともっと差しあげますよ。ボクそれなりに小遣いは多いので』
『そんな・・・悪いよ』
『何言ってるんですか。先輩にはもっともっとかわいくなってもらって、ボクのものになってもらわなくちゃ』
えっ?
ドキッとする和希。
ボクのものって・・・?
俺がジャキュート君のものになるってこと・・・?
俺がジャキュート君のものに・・・
『先輩。明日はもっと素敵にしてあげますからね。楽しみにしててください。あっ、放課後開けておいてくださいね』
そうスマホに打ち込んで送信するジャキュート。
ニヤニヤが止まらない。
種は予想以上の速度で芽吹いている。
レモンイエローのブラジャーをしたカズキの写真はジャキュートを充分満足させるものだった。
もちろんまだまだ男の荒々しさが残っているので、今少し調整が必要だろう。
だが、薬を使えばそれも問題ない。
結果は両脇に控える二人が示してくれている。
「エル、リア、明日はカズキを連れてくるからよろしくね」
「はい、ジャキュート様」
「かしこまりました、ジャキュート様」
優雅に一礼する二人のメイド。
二人にとって主であるジャキュートの命令は絶対。
もちろん逆らうことや命令を遂行しないことなど考えられもしない。
ジャキュートのために故郷の星まで差し出した二人なのだから。
明日はそのことを和希も知ることになるだろう。
ジャキュートはそう思った。
******
「うう・・・」
やはり気になってしまう。
シャツの上から制服の上着を着ているから、バレたりはしないとは思うけど、やはりかわいいとはいえ女の子の下着を着けているのを知られたくはない。
もし知られたりすれば、からかわれるのは必定だからだ。
もちろんからかわれたってブラジャーを外す気にはなれないし、かわいいものを身に着けて何が悪いっていう気もある。
それにもうブラジャーを着けない自分なんて考えられないのだ。
どうして男になんて生まれてきてしまったのだろう・・・
どうせなら女の子に生まれてきていれば・・・
かわいい下着もかわいい洋服も構わずに着ることができただろうに・・・
「おはよー、カズ君」
教室に向かう廊下で聡美が声をかけてくる。
「おはよう、聡美」
和希もいつものように返事をする。
特に変わったところのない朝の風景だ。
「もうすぐテストだねー」
「そうだなー」
追いついてきた聡美が和希の隣を歩く。
「テストでも出動がかかったりするから困るよねー」
「そうなんだよなぁ」
そう言いつつ何となく聡美のことが気になる和希。
聡美はいったいどんな下着を着ているのだろう?
きっとかわいい下着なんだろうな・・・
もしかしたら、今俺が着ているのと同じメーカーのだったりするかな・・・
聡美はかわいいから、きっとかわいい下着も似合っているんだろうな・・・
うらやましいなぁ・・・
「ねー」
「えっ?」
どうやら何か言われていたらしい。
「あ、ごめん。聞いてなかった」
「もう・・・テスト前一週間からテスト期間中ぐらいはジャマフィアもおとなしくしててくれればいいのにねって・・・」
確かにそうだ。
世界防衛組織からの通達のおかげでテスト期間中に抜け出すことになったとしても、再テスト等のサポートは受けられるようにはなっているのだが、できれば普通にテストを受けられるに越したことはない。
だが、今の和希にはそんなことはどうでもよかった。
和希と一緒に歩く聡美の脚。
学校指定の上靴から、これまた学校指定の紺のハイソックスを着けた脚が伸びている。
そしてその足の太ももあたりから上を制服のスカートが覆っているのだ。
それがなんだかとてもかわいい。
スカート、ハイソックス、上靴・・・
この三点セットが和希の目をくぎ付けにする。
俺も・・・
俺もこの三点セットを身に着けたい・・・
女子の制服・・・着てみたいなぁ・・・
「カズ君、カズ君」
「えっ? あ、何? ごめん」
「教室・・・過ぎたよ」
「あ・・・」
いつの間にか自分の教室を通り過ぎてしまっていたのだ。
「どうしたの、ぼうっとして・・・大丈夫?」
心配そうに和希の顔を見つめる聡美。
「うん。大丈夫」
まさか聡美の脚を見てて通り過ぎてしまったとはいえない和希。
「ならいいけど・・・寝不足とか?」
「どうだろ・・・」
聡美も和希の様子がやや気にはなるものの、とりあえず風邪とかではなさそうだ。
「じゃ、じゃあ」
和希はそう言って聡美に手を振り、自分の教室に入っていく。
聡美もそれを見送り、自分の教室に入るのだった。
昼休みになり、今日もウキウキした気分で早々に昼食を終えた和希は校庭の片隅に向かう。
午前中はやはりブラジャーを着けている気恥ずかしさを感じて仕方がなかったものの、かわいいブラジャーを身に着けていると思うだけで、そんな恥ずかしさは抑え込めてしまう。
むしろその恥ずかしさこそが、かえってかわいいブラジャーを着けていると感じさせてくれて嬉しいぐらいだった。
もちろんそんなことは誰にも言えるはずもなかったが、ジャキュートには言えるだろうし見せることだってできる。
そう・・・
和希はブラジャーを着けた自分を見てほしかったのだ。
自分をかわいいと言ってくれるジャキュートに見てほしかったのだ。
何となくそわそわしてしまう。
制服の上着のボタンをはずしてみたり、また止めてみたりしてしまう。
なんて言おう・・・
プレゼントありがとうだろうか・・・
それとも軽めに、見て見て、かわいいでしょだろうか・・・
今日は上下そろいの水色のブラとショーツ。
鏡を見たらとてもかわいらしかった。
きっとジャキュート君もかわいいって言ってくれるはず。
ああ・・・
かわいいって言われたい・・・
ジャキュート君のかわいいって言葉を聞きたい・・・
彼にかわいいって言ってもらえるのが好き・・・
彼にもっともっとかわいいって言ってもらいたい・・・
「せんぱーい」
その声を聞いただけで、和希の心臓が跳ね上がる。
にこやかな笑顔でゆっくりと歩いてくるジャキュートの姿。
すらっとした長身は先輩である和希を超えている。
もっとも、和希自身が同級生の中では背が低く小柄な躰付きなのだが。
「ジャキュート君」
「こんにちは、先輩。今日もここにいたんですね」
「うん。ジャキュート君が来るかと思って」
どうしちゃったんだろう・・・
俺・・・彼の顔を見ているだけでドキドキしちゃう・・・
なんて素敵なんだろう・・・
かっこよくて・・・何よりかわいい・・・
その二つが同居する不思議・・・
美少年っていうのは彼のことを言うのかもしれない・・・
「ボクも先輩がここにいるだろうと思いました。いてくれてよかった」
「うん。だって・・・昨日のプレゼントのお礼をしなきゃと思ったし・・・」
どうしよう・・・
着ているよって見せた方がいいかな?
ジャキュート君に見てもらいたいけど・・・ちょっと恥ずかしい・・・
なんだか顔が火照ってくる和希。
「そんなのいいんですよ。先輩に着てもらえればって思っただけですから」
にこやかな笑顔のジャキュート。
「そ、それでね・・・俺・・・」
着てみたんだけど、すごくかわいくて素敵で・・・
そう続けようと思った和希。
「先輩、今日放課後空けてくれました?」
「あ、う、うん」
「よかった。じゃ、放課後校門のところで待ってますから来てくださいね。お願いします」
「あ、うん・・・いいけど・・・」
「詳しくはその時に。それじゃ放課後待ってます」
そう言ってくるりと背を向け、歩いて行ってしまうジャキュート。
「え?」
あれ?
な・・・んで?
何か言いたそうだった和希を置いてその場を後にするジャキュート。
「ふふふ・・・大丈夫ですよ“先輩”。言いたいことはわかってます。ボクにブラをしているところを見せたかったんでしょ?」
そんなことはわかり切っている。
昨日はショーツを穿いた姿を見せてくれたのだ。
今日はブラを着けた姿を見せたかったに決まっている。
ふふふ・・・
大丈夫です・・・
放課後たっぷりと見せてもらいますから。
カズキがもっと見て、もっと見てと懇願するぐらい・・・
ふふふふふ・・・
「はあ・・・」
なんだよ俺・・・
なんでこんなに残念なんだ?
ジャキュート君がさっさと去っていったから?
違う・・・
見てもらえなかったからだ・・・
俺は見てもらいたかったんだ・・・
そしてジャキュート君にかわいいって言ってほしかったんだ・・・
かわいいって・・・
がっくりと肩を落とし、足取りも重い感じで教室へと戻る和希。
それが以前の自分では考えられなかったことだとは、和希はもう思いもしなかった。
******
「えええええ? ジャキュート君ここに住んでいるの?」
放課後、校門のところで待っていた和希は、ジャキュートに一緒に来てと言われ、言われるままに彼の後についてきたのだったが、ある高級マンションの入り口でここがボクの家と言われ驚いたのだ。
「ええ、ボクと他に使用人が二人ほど」
そう言ってすたすたとオートロックのマンションに入っていくジャキュート。
「使用人も?」
「ええ。ボクの身の回りのことをしてくれるんです。さあ、早く」
何となく気後れしていた和希を、ジャキュートが手招きする。
「すごい・・・お金持ちだ・・・」
「まあ、たいしたものじゃありませんよ」
そう言いつつエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。
なんというか・・・
住む世界が違う・・・
和希はそう思う。
エレベーターを降り、廊下を歩いて一室にたどり着く。
すると、すでに入り口前に二人の人影が立っている。
「えっ?」
和希は驚いた。
その二人は紛れもなく物語等でよく見るメイド服姿のメイドさんたちだったのだ。
紺色のゆったりとしたロングスカートの服に白いエプロンを重ね、頭にはレースのついたカチューシャが短めの髪を抑えている。
「「おかえりなさいませ、ジャキュート様」」
まるで一人が発したかのように見事に声を重ねて一礼する二人。
片方は赤毛でやや濃い青の瞳。
もう片方は銀色に近い金髪に淡い青の瞳。
そしてどちらも白い肌をしている。
「ふわぁ・・・」
思わず感嘆の声を上げてしまう和希。
かわいいのだ。
見事なほどにかわいい二人なのだ。
メイド服がとても似合っていて、まるで人形のよう。
この世界にこんなかわいい人がいるんだとさえ思ってしまう。
それほどまでに二人はかわいかった。
「ただいまエル、リア。お客さんを連れてきたよ」
「は、初めまして。深赤和希と言います」
ぺこりと頭を下げる和希。
すると二人のメイドが満面の笑みを浮かべる。
「いらっしゃいませカズキ様。お噂はジャキュート様よりかねがね」
「いらっしゃいませカズキ様。どうぞごゆっくりとお過ごしくださいませ」
「は、はい。ありがとうございます」
まさか放課後ジャキュート君の家に呼ばれるなんて思いもしなかった。
しかもこんなかわいいメイドさん二人に会えるなんて・・・
なんだか彼ら三人に囲まれていると、自分もかわいい仲間になれたような気がして嬉しくなる。
「こっちがエル」
赤毛の方を紹介するジャキュート。
「エルです。よろしくお願いいたします」
「こっちはリア」
次にプラチナブロンドの方を紹介する。
「リアです。以後お見知りおきを」
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」
再度頭を下げる和希。
それにしても本当になんてかわいい人たちなんだろう・・・
「さあ、入って入って。遠慮はいらないですよ、先輩」
そう言って扉を開け、先に入っていくジャキュート。
彼のカバンはいつの間にかエルが持っている。
「カズキ様もおカバンを」
そう言ってリアが和希のカバンを受け取る。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。さあどうぞ」
「はい。失礼します」
和希もジャキュートに続いて部屋に入る。
「うわぁ・・・広い」
思わずそうつぶやいてしまう和希。
リビングだけで相当な広さがあるのだ。
「そんなに広くもないですよ、先輩」
「いやいやいや、これで広くなかったら、俺のアパートなんてウサギ小屋を通り越してハムスターのケージだよ」
ジャキュートの言葉にぶんぶんと首を振る和希。
「あははは、まあちょっとは広いかな。それより座ってください。リア、先輩にお茶を」
「かしこまりましたジャキュート様」
和希のカバンを和希の座るソファーの脇に置き、そのままキッチンへ行ってお茶を淹れるリア。
まさに優雅な動きでかいがいしく働くという物語に出てくる理想のメイドのようだ。
その間にも、もう一人のメイドであるエルは奥の部屋に行っていたようで、戻ってきてジャキュートに何事かを耳打ちする。
それもまた和希には素敵なことのように見えた。
リアの用意してくれたお茶とケーキをしばし堪能する二人。
学校での話など会話もするが、お互いに接点が多くはないため、ややぎこちない。
「ところで先輩。今日も着てきているんでしょ?」
お茶を飲み終えたジャキュートが切り出していく。
目的はこれなのだ。
カズキをかわいいコレクションに加えていく。
身も心も彼のコレクションの一つにしていくのだ。
エルとリアのように。
「あ、うん・・・」
お茶を飲む手を止める和希。
どうしよう・・・
ジャキュートに下着姿を見てもらいたいのは確かなのだが、彼の背後には二人もかわいいメイドさんたちがいる。
その二人に見せるのは・・・さすがに恥ずかしい。
それは下着姿を見せることではない。
下着に隠しようもない彼の男性器が醜いものに感じてしまい、それを見られるのが恥ずかしいのだ。
せめて・・・
せめてジャキュート君だけなら・・・
和希はそう思う。
「どうしたんです、先輩? 今日はかわいい下着を着た姿を見せてくれないんですか?」
「あ・・・うん・・・でも」
ちらちらと和希の目が二人のメイドの方を見る。
「ああ・・・この二人が気になりますか? 気にすることはありませんよ。ボクの目を見てください」
ジャキュートの目が和希をとらえる。
「先輩はかわいい自分の姿を見てもらいたいんです。多くの人に見せたいんですよ」
「俺は・・・かわいい自分の姿を見てもらいたい・・・多くの人に見せたい・・・」
そうだ・・・
ジャキュート君の言うとおりだ・・・
俺はかわいい自分を見せたい・・・
多くの人に見てもらいたいんだ・・・
意を決して立ち上がる和希。
そのまま上着を脱ぎ、シャツも脱いでいく。
淡い水色のブラジャーを着けた上半身が現れる。
そして思い切ってズボンのベルトを外し、脱いでいく。
ああ・・・
恥ずかしい・・・
でも・・・
でも・・・
見てもらいたい・・・
「ほう・・・」
「わぁ・・・」
「ああ・・・」
ジャキュート、エル、リア三人が思わず声を漏らす。
そこにはかわいい女の子の下着を身に着けた和希が立っていた。
ブラジャーとショーツはおそろいの淡い水色。
白い靴下が男ものなのが何となくアンバランスだが、和希の華奢な躰付きに女の子の下着は似合っている。
だが・・・
「くっ・・・」
思わず顔を伏せてしまう和希。
やはりどうしてもショーツを異様に膨張させてしまう男性器の姿が恥ずかしいのだ。
「ご・・・ごめん・・・俺・・・」
「どうしたんです? 先輩」
ジャキュートが驚く。
ごめんとはいったい?
「ごめん・・・せっかく・・・せっかくジャキュート君がすごくかわいらしい下着をプレゼントしてくれたのに・・・俺・・・俺のチンポが台無しにしちゃってる・・・」
悔しそうに唇を噛む和希。
こんな醜いチンポ・・・ジャキュート君に見せられないよ・・・
「ああ・・・そのことですか・・・ふふっ」
小さく笑うジャキュート。
「ねえ、先輩。顔を上げて」
「えっ?」
和希は顔を上げる。
「ねえ、先輩。この二人をどう思います?」
そう言って両手を広げ、左右に立っているメイドの二人を示すジャキュート。
「ど、どうって?」
「かわいいですか?」
「うん。もちろん。かわいいよ。すごくかわいい。うらやましくなるぐらい」
和希は大きくうなずく。
その言葉に二人のメイドもかすかに頬を染める。
「この二人のようにかわいくなりたい?」
「なりたい。なりたいです」
ジャキュートの問いに即答する和希。
今の和希にとってはかわいくなることこそが喜びなのだ。
和希の答えに大きくうなずくジャキュート。
そして左右に控える二人に対し、こう命じる。
「エル、リア、二人ともスカートをまくり上げ、下着を下ろしなさい」
「は、はい、ジャキュート様」
「はい、ジャキュート様」
二人はそれぞれ自分の着ているメイド服のスカートをまくり上げ、裾を口でくわえて持ち上げたままにすると、静かに穿いているショーツを下ろしていく。
「えっ?」
和希の目の前で二人のメイドの股間があらわになり、陰毛がすべてなくなってつるんとした下腹部に小さな小さなペニスがあるのが見える。
「そ、そんな・・・二人は・・・男?」
和希は驚いた。
てっきり二人は女性だとばかり思っていたのだ。
こんなにかわいい人たちが男だったなんて・・・
「そう。この二人は男。でも、そんなのはどうでもいいこと。かわいいものはかわいい。この二人はボクに選ばれたボクのかわいいコレクションの一つ。そして、ボクのかわいいしもべたち」
「ふたりはジャキュート君に選ばれた・・・ジャキュート君のしもべ・・・」
なぜかその言葉が和希の中に沁み通ってくる。
ジャキュート君に選ばれたジャキュート君のしもべ・・・
それがなんだかとてもうらやましかった。
「エル、リア、もういいよ」
「はい」
「はい」
ショーツを穿き直してスカートを下ろす二人。
わずかながら二人とも先ほど以上に頬が赤い。
「どう? この二人のような小さなおちんちんになりたい?」
二人のようなおちんちんに・・・
二人はショーツの上からではほとんど気にならないぐらいの大きさのかわいいチンポだった。
だとしたら・・・
「なりたい・・・なりたいです」
和希は大きくうなずいた。
「エル、リア、カズキを頼む」
「はい、ジャキュート様」
「かしこまりました、ジャキュート様」
二人のメイドが一礼して和希のところに来る。
「さあ、カズキ様、どうぞこちらへ」
「準備はできております。どうぞ」
「えっ? えっ?」
そう言われてもなにがなんだかわからない和希。
「カズキ」
「えっ?」
ジャキュートに名を呼ばれ、思わず彼を見る。
「二人についていくんだ。そうすればカズキはもっとかわいくなれる。二人の言うことを心に刻み込むこと。いいね」
ジャキュートの視線が和希を射抜く。
「あ・・・うん・・・ついていきます・・・二人の言うことを心に刻み込みます・・・」
ふらっと立ち上がる和希。
そのまま二人に導かれるようにして奥の部屋へと消えていく。
あとには意味ありげな笑みを浮かべたジャキュートだけが残っていた。
「ふわぁ・・・」
またしても思わず声が出てしまう。
今日ジャキュートの家に来てからというもの、和希は驚いてばかりだ。
二人のメイドに連れてこられた部屋は、まさに女の子の部屋という感じのかわいい部屋だったのだ。
ベッド、ドレッサー、クロゼット、机などなど、みんなパステルカラーで統一され、かわいらしい部屋になっている。
「さあ、そこに座ってください」
リアに促されて椅子に座る和希。
気が付くと、まだ下着姿のままで恥ずかしくなってしまう。
「あ、あの・・・俺、服を・・・」
「はい、今用意しますので」
「えっ?」
用意って?
「ですがその前に・・・」
エプロンのポケットからメジャーを取り出すリア。
「カズキ様のサイズを測らせていただきますね」
そう言っててきぱきと和希の躰のサイズを測ってメモしていく。
「今日はジャキュート様があらかじめ用意したお洋服となりますが、サイズがわかりましたので、次は躰にフィットした服をご用意できますから」
そう言ってメモ帳を閉じ、メジャーをしまう。
その間にエルの方はクロゼットからいろいろと取り出して、ベッドの上に広げていた。
それはまさにかわいい服のセット。
「今日はこちらなどいかがですか?」
そう言ってかわいらしいフリルのついたワンピースタイプの服をエルが持ち上げる。
「こ、これ?」
これって・・・女の子の服では?
「さあ、着てみてください。ジャキュート様がカズキ様のために用意されました」
どきんと和希の心臓が跳ねる。
ジャキュート君がこれを・・・俺のために・・・
「うん」
和希がそう返事をすると、エルはにこっと微笑み、和希を立たせて服を着せていく。
「いかがですか?」
そう言ってエルが服を着せ終わった和希を姿見の方に向ける。
「えっ? これが俺?」
そこにはかわいらしい服を着たかわいらしい子が立っていた。
顔は見慣れた自分の顔だったが、いつも以上にかわいらしい。
「ああ・・・」
なんだかドキドキする。
これが俺・・・
なんてかわいいんだろう・・・
「次はこちらを」
リアがそっと和希の頭にやや長めの髪のかつらをかぶせていく。
「うわぁ・・・」
髪が長くなることで、ますますかわいさが増していく。
「うふふ・・・カズキ様、かわいい」
「ホント、かわいい」
エルとリアが二人で和希の服を整え、髪を梳いていく。
そのかわいいの言葉が和希の心に沁み込んでいく。
「さあ、お座りください」
「はい」
言われるままに椅子に座る和希。
すると、すぐにエルは和希の手の爪にマニキュアを塗り、リアは和希の顔に化粧を施し始めていく。
手の爪が終わったら今度は足の爪にもペディキュアが塗られていく。
塗り終わったら乾くのを待ち、水色のソックスを履かせていく。
やがて顔の化粧も終わり、一つの完成形ができあがる。
「うわぁ・・・」
それは鏡をずっと見ていた和希からも声を失わせるぐらいだった。
「へぇ・・・これは・・・」
思わずジャキュートも腰を浮かす。
それほどまでに部屋から戻ってきた和希はかわいらしかった。
本当に元が男だとは思えないぐらいに女の子の格好が似合っている。
もちろん、躰のライン等微妙なところは男の部分が顔を出している。
だが、そんなことは些細なことだし、いくらでも矯正が効くだろう。
そのための薬も彼にはあるのだから。
「そ、その・・・服・・・ありがとう・・・」
恥ずかしそうに頭を下げる和希。
「いえいえ、とてもよく似合ってますよ。本当にかわいらしい」
にっこりとほほ笑むジャキュート。
「ほ、本当? 俺・・・こんなの初めてだから・・・」
和希は思わず顔が熱くなってしまう。
「ふう・・・」
首を振りながらゆっくりと和希のところにやってくるジャキュート。
そのまま彼の頭をそっとつかみ、自分の顔と向き合わせる。
「いいですか、先輩? かわいい子が“俺”なんて言ってはいけません。せめてボクということ。いいですね」
「俺じゃなくボク・・・」
「そう。これからは自分のことはボクと呼ぶこと。いいですね」
繰り返すことで言葉を焼き付けていく。
「うん・・・ボクって言います・・・」
「それから、今後ボクのことはジャキュート様と呼びなさい。いいね? 今日からボクは君の主人なのだから」
「はい・・・ジャキュート様・・・」
「うん、いい子だ。カズキはボクに選ばれたかわいい子。だからボクのために尽くしなさい。いいね」
「はい・・・ジャキュート様」
目を合わせ、ジャキュートは思念を送り込んでいく。
これでカズキはほぼわが物となった。
あとは・・・
******
なんだか頭がぼうっとする。
いったいボクはどうしてしまったんだろう・・・
どうしてボクはこんなところにいるんだろう・・・
どうして鏡の中のボクはこんなにかわいいんだろう・・・
ここはジャキュート様の家。
そしてボクの新しい家。
あのボクがこの服に着替えた部屋はボクの部屋となった。
ジャキュート様が今日からはここに住むんだよって言ってくれたのだ。
前の家の家財類は必要なものだけエルさんかリアさんが持ってきてくれるらしい。
必要なものって・・・何かあっただろうか・・・
ジャキュート様が褒めてくれた。
ボクはかわいいって。
ボクはジャキュート様に選ばれたかわいい子なんだって。
ジャキュート様に選ばれることは、それだけでも喜ぶべきことで、選ばれなかった連中の上に立つ資格があるんだって。
だから、ボクはこの世界を導いていかなくちゃいけないんだって。
この世界をかわいいもので満たすために・・・
ジャキュート様が好むジャキュート様のための世界に・・・
ボクは薬を飲む。
この薬はジャキュート様がくれたもの。
もっとボクをかわいく変えてくれる薬。
これを飲めばあの醜いおちんちんもエルさんやリアさんみたいなかわいいおちんちんになるんだって。
躰付きももっともっと柔らかくかわいい躰になるんだって。
ボクはかわいい。
もっともっとかわいくなりたい。
ボクはジャキュート様に選ばれたかわいい子。
ジャキュート様・・・
和希の心が歪んでいく。
そのことに和希は気が付いていなかった。
******
続く
- 2019/01/03(木) 21:00:00|
- かわいいは正義
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