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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ふたりはイヴィルシスターズ (4)

「ふたりはイヴィルシスターズ」も今回で最終回となります。
四日間のお付き合いありがとうございました。
邪悪と闇に染まった二人の晴れ姿をご覧くださいませ。

それではどうぞ。


「うにゅー・・・」
今朝もやっぱり机の上で突っ伏している茉莉。
いつもの時間よりも10分ほど早い時間だ。
「おはよー、茉莉。今朝はいつもより早いね。お腹は大丈夫?」
「お医者さん行ったの?」
登校してきた唯と希美が心配そうに茉莉のところにやってくる。
「あー・・・うん、平気」
気のない返事をする茉莉。
これまでなら二人と会話をするのは学校での楽しみだったのに、今は煩わしく感じてしまう。
「LINEも既読だったけど返事がなかったから心配したよ。入院しちゃうのかなとか」
「苦しくなかった? 今日はもう大丈夫なの?」
「大丈夫だから・・・もういいから」
うっとうしい・・・
なんでこの二人はそんなことをいつまでもうだうだと言ってるの?
人が苦しかろうが元気だろうがそんなことはどうでもいいことじゃない。
心配してやれば相手の苦しみが消えるとでもいうの?
相手の苦しみなど、見てあざ笑ってやればいいことじゃない。
ああ、いらいらする・・・

「茉莉、おはよ」
その声にホッとするものを感じる茉莉。
絵美が来てくれたのだ。
やっぱり彼女がいないと始まらない。
「おはよ、絵美」
にこやかな笑顔で絵美を見る茉莉。
「あ、ごめんなさい。棚本さん、与瀬場さん、茉莉に大事な話があるのでちょっと二人きりにしてもらっていい?」
鞄を置いて茉莉のところに近づいてくる絵美。
「えっ? 今私たちも話しているんだけど」
「二人きりにしてもらいたいんだけどいい?」
抗議する唯を冷たい目で一瞥する絵美。
その目にゾッとするものを感じ、唯と希美は思わずあとずさりして、茉莉から離れていく。

「ふう・・・ありがと絵美。なんかうっとうしかったんだ」
「ふふ・・・あの人たちはしょせん普通の人間ですもの。私たちとは違うわ。邪悪と闇の支配する世界なら生き残れないかもね。それにしても眠そうね?」
「だってぇ・・・絵美が朝早く学校に来てなんて言うから・・・ろくに寝てないんだってばぁ」
やっぱりぐてぇっと机に伸びてしまう茉莉。
「早くって言ったって10分ほどじゃない」
ぐたっとなっている茉莉に苦笑する絵美。
「朝の10分は一時間にも二時間にも感じるよぉ。私太陽嫌い。朝嫌い。夜のほうがいい。早く闇が世界を支配してくれればいいのに」
「そのためにも、デモンオー様の目障りなものを排除しなくちゃね。私、一つ排除したいものを見つけたの。どう? 一緒に」
「えっ? もちろんやるやる。いつやるの? お昼? 放課後?」
絵美の提案に一も二もなく乗ってくる茉莉。
なんだかまた破壊を楽しめるなんて嬉しくなってくる。

「まあ、茉莉ったらそんなに勉強がしたかったの? このあとくだらない授業をおとなしく受けるつもり?」
「えっ? あはは、そうだよねー。ということは今から?」
「もちろん。そのために朝10分早く来てもらったんだもん」
にこっと微笑む絵美。
「なんだぁ。それならそう言ってくれていればウキウキ気分で学校に来たのにさ」
茉莉も思わず笑顔になる。
「でも、どうするの? 私たちまだイヴィルシスターズじゃないよ」
「それは鷹紀先生のところに行ってみましょ。たぶん居場所を知っているはずよ、ワルピーの」
「そっか。そうだよね。由華先生もうあいつのしもべだもんね」
絵美の言うとおり、由華先生ならたぶんワルピーの居場所を知っているだろう。
「今の時間なら先生は職員室にいると思うの。行ってみましょ」
「うん」
さっきまでの眠気はどこへやらという感じで立ち上がる茉莉。
二人はそのまま友人たちの目をよそに始業前の教室を後にした。

「失礼します」
「失礼します」
二人が職員室にやってくる。
すでに教師たちは授業の準備を進めており、朝特有のあわただしさが職員室を包んでいた。
「鷹紀先生、よろしいですか?」
「あら、おはよう。二人ともどうしたの?」
こんな時間帯に二人の生徒がやってきたことにちょっと驚く由華。
「実はちょっとお願いがありまして。できれば三人でお話ししたいんですけど」
絵美が笑顔を見せながらも、鋭い視線を由華にむける。
「そう・・・それじゃちょっと出ましょうか」
由華は席を立って二人を連れて廊下に出る。
すでに朝のホームルームの時間が迫っており、廊下にはもう生徒たちの姿はない。
「いったい何の用なの?」
腕組みをして二人を見つめる由華。
「単刀直入に言います。ワルピーに会わせてください」
「ワルピー様に?」
絵美の言葉に驚く由華。
だが、二人はこくんとうなずく。
「いったいどうして? あなたたちの方からワルピー様に会いたいだなんて・・・」
「先生、私たちわかったんです。邪悪と闇に支配される世界の素晴らしさが。デモンオー様にお仕えする喜びが」
「デモンオー様の目障りなものを排除する楽しさが。イヴィルシスターズであることの嬉しさが」
絵美と茉莉がそれぞれ自分の思いを言葉にする。
「そう・・・そういうこと。ふふ・・・二人ともいい表情をしているわ。わかったわ、いらっしゃい。と、その前に・・・」
由華が職員室をのぞき込む。
「森川(もりかわ)先生、この二人が大事な話があるそうなので、すみませんが5組のホームルームをお願いできませんか?」
「あ、はい、いいですよー」
職員室で若い眼鏡の女性教師がOKする。
「これでいいわ。さ、行きましょ」
「「はい」」
女性教師と二人の女子生徒はそのまま連れ立って職員室を後にした。

「やっぱりここですか」
絵美たち三人の前には、校舎のはずれにある普段使われていない倉庫があった。
「ええ。たまたま私がこの中にしまってあったものを取りに来た時にワルピー様とお会いしたの。そして心を邪悪と闇に染めていただいたわ。おかげで生まれ変わったような気持ちになれたの。あなたたちもそうでしょ?」
「ええ」
「はい」
絵美と茉莉が顔を見合わせてうなずく。
もう迷いはない。
二人でデモンオー様のしもべとして生きるのだ。
デモンオー様のために。

倉庫の扉が重々しい音を立てて開かれる。
中は漆黒の闇。
外からの朝の光も差し込まない。
そのことで絵美はこの中が普通ではないことに気が付いたんだよね。
あの時のことを思い出す茉莉。
つい先日のことなのに、なんだか遠い昔のように感じる。
あの時はまだお互いただのクラスメイトというだけだった。
でも今は・・・
一番大事なパートナーだ。
おそらくそれは絵美も同じはず。
そのことを疑ってはいない。

倉庫の中に入っていく由華。
そのあとに続こうとする茉莉。
その手がすっと握られる。
「一緒に」
絵美が手を握ってくれたのだ。
「うん。一緒に」
茉莉もその手を握り返す。
二人はともに倉庫の闇の中へと入っていった。

闇・・・
漆黒の闇・・・
先に入った先生がどうなったのか見えもしない。
隣にいる絵美の姿もかすんで見える。
でも、そこにいることは握り合った手を通してわかる。
それが茉莉には嬉しい。

「ワルピー様・・・ワルピー様」
由華がワルピーを呼んでいる。
「ワルピー、いるんでしょ? 出てきて」
「ワルピー、お願い。出てきてちょうだい」
茉莉と絵美も同じようにワルピーを呼ぶ。
「むぅ・・・われを呼び出すとは何事だピー」
闇の中に黄色の目が現れ、続いて姿が見えてくる。
不思議なことだが、さっきまで見えなかったはずの由華の姿や、隣にいる絵美の姿も見えてくる。
どういうことなのかよくわからないが、そういうものなのだろう。

「おやすみのところ申し訳ありません、ワルピー様。二人がワルピー様にお会いしたいと申しまして」
すっと片膝をついて臣下の礼をとる由華。
彼女はもう身も心もワルピーのしもべなのだ。
「なんと、お前たちの方から来るとはどういうことだピー?」
「お願いがあるの、ワルピー」
「お願いだピー?」
絵美の言うお願いがどういうことなのか困惑するワルピー。
「私たちにイヴィルキーを貸してほしいの」
「な、なんだとピー?」
ワルピーの黄色い目が大きく見開かれる。
「そんなことができるものかピー! これはデモンオー様に預かった大事な鍵だピー」
「そんなこと言わずに貸して。お願いだから。必ず返すから」
「私たちを信じて。必ず返すから」
茉莉も絵美も心の底からお願いする。
「むう・・・イヴィルキーをどうするつもりだピー?」
「そんなの決まってる。イヴィルキーに私たちをイヴィルシスターズにしてもらうの」
「私たち、自分の意志でイヴィルシスターズになりたいの。あなたにしてもらうんじゃなく」
絵美も茉莉も自分自身でイヴィルシスターズになりたかったのだ。

「むう・・・由華はどう思うピー?」
「はい。私は二人が自らイヴィルシスターズになりたいというのは本心かと思います、ワルピー様」
片膝をついたまま由華が答える。
「由華がそういうなら渡してみるピー」
ワルピーがそういうと、絵美と茉莉の目の前に黒い鍵が現れる。
「イヴィルキーだピー。受け取るピー」
「ありがとうワルピー」
「ありがとう」
二人の顔がぱあっと明るくなり、礼を言って鍵を手にする。
途端に闇の力のようなものが手を通って伝わってくる。
「これが・・・」
「これがイヴィルキー・・・」
それはまさに邪悪と闇の鍵だった。
「素敵・・・なんだか持っているだけでデモンオー様と一緒にいるような気がする・・・」
「うん。なんだかとても力強い」
うっとりと黒い鍵を見つめる二人。
だが、茉莉がハッとしたように絵美を見る。
「ところでこれ、どうやって使うの? 自分の胸にさすの?」
「うふふ・・・こうしましょ」
絵美がほほ笑みながら茉莉の手に自分の鍵を渡し、茉莉の鍵をそっと受け取る。
そして茉莉の胸に鍵の先端を向けた。
「あ、なるほど」
茉莉もすぐに理解して、自分の受け取った鍵の先端を絵美の胸へと向ける。
すると、二人とも自分が口にするべき言葉が不意に浮かんできたことに気が付いた。
これもイヴィルキーの力なのかもしれない。

「「イヴィルキーよ! 私たちの心に邪悪と闇を注ぎ込みたまえ!」」
二人がそう口にした瞬間、それぞれの持つ鍵から黒い筋が相手の胸に伸び、そこに黒い鍵穴を作り出す。
それを見て二人はゆっくりと近づき、お互いの胸の鍵穴へ鍵を差し込んでいく。
「「オープンロック!」」
お互いの胸にさした鍵を回し心の錠を解除する。
カチッという音とともに二人の胸に黒く丸い穴が開く。
「「ダークネスイン!」」
足元から轟音とともに闇が湧き起こり、二人の胸に吸い込まれていく。
「あああ・・・闇が・・・闇が躰に満ちていく・・・」
「あああ・・・なんて気持ちいいの・・・」
やがて躰に入りきらない闇が二人の躰を覆いつくし、黒い球体を形作る。
そしてその闇の球体が消え去ると、二人の姿は赤と黒の魔女に変化していた。

「赤の邪悪! イヴィルマリィ!」
「黒の邪悪! イヴィルエミィ!」
「「ふたりはイヴィルシスターズ!!」」
「世界を邪悪と闇に染めるため!」
「デモンオー様の目障りなものは!」
「「私たちが排除します!!」」
イヴィルマリィが力強くポーズをとる。
イヴィルエミィはしなやかに柔らかくポーズをとる。
そして背中合わせになり、二人でファイティングポーズをとるまでがすべて組み込まれた動きになっている。
これもイヴィルキーの力なのだろう。
なので、ここまで終わってようやく二人は自由に動けるようになる。

「ああ・・・すごい・・・躰中に邪悪と闇が満ちている」
「うん。すごく気持ちいい」
自分の躰を抱きしめるようにかき抱くイヴィルエミィと、うっとりと自分の躰を見下ろしているイヴィルマリィ。
二人はあらためてイヴィルシスターズとしての力を感じていた。
「なんだか・・・これこそが本当の私っていう感じがする」
「ええ・・・嘘偽りのない邪悪で闇に満ち満ちた私」
「ふふふふふ・・・」
「うふふふふ・・・」
赤と黒の魔女たちが楽しそうに笑っていた。

「おお! 本当に自分たちだけでイヴィルシスターズに変身したピー!」
目の前に現れた二人の姿にワルピーも思わず驚く。
「これで二人もデモンオー様のしもべですわね」
由華も二人の変化を喜んでいた。
自分と同じ邪悪と闇のしもべが増えたのだ。
なんと素晴らしいことだろう。

「それで? 今日は何を排除するの?」
「うふふ・・・それはね」
イヴィルエミィがすっと手をかざす。
もう彼女は自分がどういう力を使えるかを理解していた。
それはすでに彼女がもう以前の彼女ではなくなってしまったことを意味していたが、むしろそのことが彼女には喜ばしかった。

イヴィルエミィが手をかざした先には外の空間が映し出されていた。
そこには一つの建物が映っている。
それはイヴィルマリィにはあんまり見覚えはなかったが、イヴィルエミィにとってはとてもよく見知った建物であった。
「これは?」
「この街の図書館よ」
「図書館? なんでぇ?」
少し拍子抜けするイヴィルマリィ。
きっと軍事基地とか政治庁舎とかそういうものかと思っていたのだ。
「本は人間にいろいろな知識を与えてくれるわ。そしてそれだけじゃなく、愛や勇気や感動といったものも与えてくれるの。でも、それってすべてデモンオー様の目障りなものばかりだと思わない?」
「あ・・・確かにそうだ」
普段はあまり本を読まないイヴィルマリィでも、イヴィルエミィの言葉には納得できるものがある。
「それにね・・・」
少し言葉を区切るイヴィルエミィ。
彼女の手が黒いボンデージ衣装に包まれた胸の上に置かれる。
「あそこは以前の私が・・・夢だの愛だのそういうくだらないものにうつつを抜かしていた愚かだったころの私がよく利用していたところなの。私は・・・そういう以前の愚かだった私を消し去りたい!」
キッと表情を引き締めるイヴィルエミィ。
「イヴィルエミィ・・・」
思わずその横顔に引き込まれてしまうイヴィルマリィ。
「だからね、排除したいの。手伝ってくれる?」
「もちろん。私たちはイヴィルシスターズ。二人で一つでしょ」
自分の方を向いてそう尋ねてくるイヴィルエミィに大きくうなずくイヴィルマリィ。
それに応えるように、イヴィルエミィもうなずいた。

「それじゃ行ってくるわ。イヴィルキーは戻ってきたらちゃんと返しますから」
「持ち逃げしたりしないから安心して」
「そんなことは心配してないピー! さっさとデモンオー様の目障りなものを排除してくるピー!」
振り向いて笑顔を見せてくる二人をそう言って送り出すワルピー。
すぐに二人の姿は闇の中から消えていった。

図書館上空に表れる黒い球体。
二人はもう闇を使っての空間移動ができるのだ。
手に手を取って球体から飛び出していく赤と黒の稲妻。
それが図書館めがけて襲い掛かる。

「あは・・・あは・・・あはははは」
「うふふふ・・・あははは」
楽しい。
気持ちいい。
殴るたび、蹴るたびに壁が崩れ建物が崩れていく。
瓦礫の下敷きになって悲鳴を上げる人たち。
それが心地よい音楽にすら聞こえてくる。
逃げ惑う人を鞭でからめとってたたきつける。
血しぶきが飛び散ってとてもきれい。
なんて楽しいんだろう。
二人は思う存分暴れまわる。
さほど時間を経ずに、図書館もまた崩れ去った。

「あははは・・・あーあ、楽しかったぁ」
「うふふふ・・・ほんと、すっきりした」
まるで何かのゲームでもしてきたかのような楽しそうな表情の二人が、闇の中に帰ってくる。
「むぅ・・・その様子だと充分楽しんできたようだなピー」
闇の中で黄色い目を輝かせ、二人を迎えるワルピー。
どうやら由華は校舎の方に戻したらしく、今はワルピー一人のようだ。
「うん。楽しかった」
「ええ、とっても。なんだかこれで心からイヴィルエミィになれたような気がするわ」
イヴィルエミィが先ほどと同じように胸に手を当てるが、その思いは全く違っているようだ。
「それはよかったピー」
二人の様子にワルピーも笑みが浮かぶ。
どうやら二人は完全に邪悪と闇に染まったようだ。

「そうそう。イヴィルキーを返さなくちゃね」
イヴィルエミィが自分の躰に吸い込まれていたイヴィルキーを取り出そうとする。
このイヴィルキーを取り外すことで、変身が解除されるのだ。
もっとも、もはやイヴィルキーを取り出して変身を解除したところで、染まってしまった彼女たちの心が元に戻ることはない。
もちろん戻ることを望みもしないだろう。

二人が変身を解除しようとしたとき、突然一陣の黒い風が吹く。
「えっ?」
「風?」
思わず驚く二人。
外の世界と隔絶しているはずのこの闇の中に風が吹くなんて・・・
どういうこと?

『その必要はない』
闇の中に重々しい声が響く。
「こ、この声はデモンオー様のお声だピー」
聞き覚えのある威厳に満ちた声にワルピーが恐れおののく。
「えっ?」
「デモンオー様の声?」
ハッとして顔を見合わせるイヴィルマリィとイヴィルエミィ。
すぐに二人は片膝をついて頭を下げ、臣下の礼をとる。

『イヴィルシスターズよ。そなたたちの誕生、喜ばしく思うぞ』
腹の底から響くような重い声が闇に伝わってくる。
聞く者が聞けば、それは恐ろしさを感じさせるものであったろう。
だが、二人にとってはそれは慈父の声を思わせるものであり、その声を聞くことができたことが心から嬉しかった。
「デモンオー様・・・」
「あ、ありがとうございます」
恐れ多くて顔を上げることもできない。
だが、二人の誕生を喜んでもらえたなんて、なんと嬉しいことなのだろう。
『イヴィルキーはそなたたち二人で持つがいい。いつでもイヴィルシスターズに変身し、余のために尽くすのだ』
「は、はい。喜んで」
「私たちはデモンオー様のためなら何でもします」
それは嘘偽りのない言葉。
デモンオー様のお声を聴いた瞬間から、二人はもうデモンオー様に心からお仕えすること以外は考えられなくなっていた。
デモンオー様の意に従い、デモンオー様のために、デモンオー様の望むことをする。
それこそが彼女たちの喜びとなっていたのだ。

『うむ。そなたたちの誕生に対し、余からのプレゼントをやろう。闇の力を受け取るのだ。さあ、立つが良い』
「「はい。デモンオー様」」
すっくと立ちあがる二人。
顔を上げると、闇の中に巨大な力の塊のようなものが見える。
あれがデモンオー様のお姿なのだろう。
私たちのためにそのお姿を見せてくれたのだと思うと、イヴィルマリィもイヴィルエミィも心が喜びに震えてくる。
『ふんっ!』
その力の塊から一筋の闇が飛び出し、二人に突き刺さる。
「きゃあああああ」
「ああああああ」
二人の全身を強烈な衝撃が襲い、二人は思わず悲鳴を上げてしまう。
はじかれるように飛ばされた二人は倒れこんでしまい、しばらく起き上がることができない。
「あう・・・」
「うう・・・」
ようやくその衝撃が薄れてくると、二人はなんとか立ち上がる。
「えっ?」
「ええっ?」
立ち上がった二人は、自分たちの衣装が変化していることに気が付いた。
以前とほぼ同じではあるものの、二人の躰を覆うつややかなエナメルボンデージには金属製の鋲がいくつか打ち込まれ、より凶悪さと力強さを見せている。
膝上までのロングブーツも編み上げタイプとなっており、さらにブーツとレオタードの股間との間の太ももも以前はむき出しだったものが、二人ともが黒い網タイツに覆われて、より淫靡さを増していた。
それと同時に二人は自分たちの中に強い力を感じていた。
より強い邪悪と闇の力。
それが自分たちに宿ったのだ。

『クククク・・・これでより一層わがしもべにふさわしい姿になった。お前たちの持つその力、余のために存分に振るうがいい』
「ハッ、デモンオー様」
「私たちに何なりとお命じください」
「「私たちイヴィルシスターズは、デモンオー様に心から永遠の忠誠をお誓いいたします!」」
再びすっと片膝をつき忠誠の言葉を述べる。
二人の邪悪と闇の魔女が完成した瞬間だった。

『うむ、二人とも期待しておるぞ。だが油断はならん。どうやらお前たちが邪悪と闇に染まったことで、“正しい心と力を持つ者”が新たに生み出された気配を感じる』
「えっ?」
「そんな・・・」
思わず顔を見合わせるイヴィルマリィとイヴィルエミィ。
デモンオー様に歯向かう存在が生まれたというの?
『いずれそのものは余の前に立ちはだかってくるはず。その前にできるだけ世界を邪悪と闇に染め、“正しい心と力を持つ者”を孤立させるのだ。よいな』
「はい。仰せのままに」
「私たちイヴィルシスターズにお任せください。“正しい心と力を持つ者”になど邪魔はさせません!」
力強く顔を上げる二人。
「私は赤の邪悪! イヴィルマリィ!」
「私は黒の邪悪! イヴィルエミィ!」
「「ふたりはイヴィルシスターズ! どうか私たちにお任せを!」」
『うむ、頼んだぞ』
すうっと強大な力の気配が消えていく。
だが、二人はしばらくその消え去った方を崇拝の目で見つめていた。

                   ******

「ふあーー・・・眠ぅ・・・太陽の奴ー、忌々しい」
翌朝、今日も大きなあくびをしながら学校へ向かう茉莉。
あのあと少しワルピーや絵美と相談し、しばらくはこれまで通りの紅倉茉莉、黒坂絵美のふりをして日常を過ごし、じょじょにデモンオー様の目障りなものを排除して邪悪と闇を広げていこうということにしたのだ。
そのため、行きたくはないが学校へも行かなければならない。
突然学校に行かなくなれば、人目を引いたり怪しまれてしまうだろうからだ。

それでもやはり今の二人にとっては夜の方が躰に合うのは間違いなく、昨晩も二人は公園でおしゃべりを楽しんだ。
これから何を排除していこうか。
人々をどんなふうにいたぶっていったら面白いか。
そんなことを話していると楽しくて、明け方近くまで話し込んでしまったのだ。
朝、布団の中にいないと怪しまれると思い、仕方なく家に戻って布団にもぐりこんだものの、今朝は母親の機嫌が良かったのか悪かったのか、いつもと同じ時間にたたき起こされてしまったのだった。

「おはよう、茉莉」
絵美が茉莉を見かけて声をかけてくる。
あの日学校に行く途中でぶつかったこともあり、実は二人とも似たような時間に通学していたことに気づいて、途中で待ち合わせることにしたのである。
あれからもうかなりの時間が経ったように感じるが、実際には数日しか経っていない。
その数日の間に二人は今までとは全く違う存在に変わってしまった。
それが二人はとても嬉しい。
二人は選ばれたのだ。
偉大なる邪悪と闇の支配者デモンオー様に。

「今朝もだいぶ眠そうね」
「うん、眠い。でも、それ以上に太陽が憎い! それと今日はお母さんも憎い!」
「お母さんも?」
太陽とお母さんが同列とはと絵美が苦笑する。
「うん。いつもなら遅刻しようが構わずにほっとくくせに、今日はたたき起こされた」
口をとがらせて不満げにいう茉莉。
「あら? 茉莉はまだ家族を支配してないの?」
「えっ? 支配?」
「うん。私はもうママもパパも支配しちゃったから、二人とももう私の言いなりの奴隷よ」
さらっと奴隷などと言う言葉を口にする絵美。
「うそ? そんなの知らないよぉ? どうやってやるの?」
「ほらぁ、私たちも最初のころワルピーに支配されたじゃない。あの要領よ」
「えー? そんなこと言われても・・・わかんないよ。教えてぇ」
支配されたことははっきり覚えているものの、やり方などわかるはずもない。
絵美は頭もいいから、きっとすぐに邪悪と闇の力を使いこなしているんだろう。

「もう・・・じゃ、ちょっと見てて」
絵美が困ったものだという顔をしながらも、教えを請われてまんざらでもないようだ。
「あの、ちょっとすみません」
「はい?」
通りを歩く通勤途中のサラリーマンに絵美は声をかけ、サラリーマンが立ち止まる。
おそらく会社に行くのに集中して、普通なら声をかけたところで足を止めることもなかっただろうが、かわいらしい女子生徒に声をかけられたとなれば話は別なのだろう。
「うふふ・・・」
その瞬間、眼鏡の奥の絵美の目が赤く輝き、男の目と視線が合う。
「あ・・・」
男の目がうつろになり、どこか遠くを見るような表情になる。
「うふふ・・・お前はもう私の言いなり。さあ、周囲を見なさい。獲物がたっぷりとうろついているわ。お前は野獣。周りは全て獲物ばかり。行くのよ。男は殺し、女は犯す。さあ、楽しんでらっしゃい」
「う・・・う・・・うおーーー!」
「うわー!」
「きゃぁーっ!」
男は鞄を放り出して周囲の人たちに襲い掛かる。
人々の悲鳴が交錯し、あっという間に一帯は喧騒の渦に巻き込まれた。

「うふふ・・・どう? あんな感じよ。相手の目を見て念を送るの。慣れれば簡単になると思うわ」
喧騒をよそに茉莉を連れて再び学校へ向かう絵美。
「へー、すごい。絵美すごいよ」
絵美と一緒に歩きだしながら、茉莉は思わず感心してしまう。
慣れればということは、すでに絵美はもう何人かにかけているのだろう。
私も練習してみよう。
誰がいいかな・・・
まずはお兄ちゃんで練習かな?
お母さんは確実に支配して、いつでも私の好きなものを食べられるようにしなきゃ。
お父さんとお兄ちゃんはどうでもいいや。
とりあえず突然いなくなったら変に思われるから生かしておくけど、家の隅っこでおとなしくしているようにさせようか。
うふふ・・・楽しみぃ。
茉莉は家族を支配することを思い描く。

「ねえ、茉莉」
ふと絵美が足を止める。
「え、何?」
つられて茉莉も足を止める。
「ちょっといい?」
茉莉の顔を覗き込むようにする絵美に、茉莉はつい彼女の顔を見る。
絵美の眼鏡の奥の目と、茉莉の目がふと合った。
その瞬間、頭に何かが触ったような気がして思わず手で振り払う茉莉。
「えっ? 何?」
「ああ・・・やっぱりダメね。うふふ・・・」
絵美がちょっと残念そうに微笑む。
「えっ? ダメって何が?」
「ちょっと茉莉を支配してみようと思ったの。でもダメだった。たぶん私たちはもう普通の人間じゃないから、無意識で防御しちゃっているんだと思う」
「そうなんだ・・・って、絵美! あなた私を支配してどうするつもりだったの?」
絵美を説明を聞いて感心したものの、支配されるところだったことを思い出す茉莉。
「えっ? いやぁ、何でもない・・・」
「何でもないわけないでしょ! 何をするつもりだったのか言いなさい!」
「あ、わ、わかりました。言います言いますぅ。ちょっとこっちに来て」
茉莉の迫力に押されたのか、絵美が茉莉の袖を引っ張って物陰に誘い込む。
そしてあたりに人目がないのを確認すると、そっと茉莉の顔を引き寄せてキスをした。

「な・・・な、な、な、なーー!」
たちまち慌てふためく茉莉。
「もう・・・ほんとは茉莉を支配して、茉莉の方からキスしてもらうつもりだったのにぃ」
茉莉の唇の感触を確認するかのように唇に指をあてる絵美。
「え、絵美ぃ! あなたねぇ!」
「きゃー! ごめーーん!」
慌てて茉莉から逃げ出す絵美。
「待てぇーー!」
茉莉も逃げ出した絵美を追う。
二人の足の速さの違いかすぐに絵美は茉莉に追いつかれ、捕まえられてしまった。
「ご、ごめんなさい」
「捕まえた。もう離さない」
絵美を背後からギュッと抱きしめる茉莉。
「茉莉・・・?」
「もう・・・絵美ったら・・・キスぐらい言ってくれたらいつでもするのに・・・」
「茉莉・・・」
「好きよ・・・絵美・・・大好き」
「私もよ、茉莉。大好き」
後ろから抱き着かれたまま、絵美も茉莉に応える。
「もう支配はやめてよね」
「うん。もうしないわ」
「さ、学校行こ」
茉莉が絵美を開放し、二人は手をつないで学校へと歩き出す。

「ねえ、茉莉」
「なぁに、絵美」
「この平和で穏やかな世界が、邪悪と闇に飲み込まれると思うと、わくわくしてこない」
冷たく邪悪な笑みを浮かべる絵美。
「うん。すごく楽しみでわくわくする」
同じように茉莉も冷たい笑みを浮かべる。
「さあ、始めましょう。私たちの宴を」
「うん、始めよう。デモンオー様のために」
「「私たちはイヴィルシスターズ」」
二人の邪悪と闇に染まった少女たちは、手をぎゅっと握りあってデモンオー様の支配するであろう未来へと歩いていく。

それを・・・じっと見つめる目があった・・・

END


茉莉と絵美の二人の物語はここでおしまいです。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
このあと二人は邪悪と闇の魔女として、これから現れるであろう“正しい心と力を持つ者”と死闘を繰り広げることになるのでしょうが、それはまた別の話。

この作品を書いている二週間ほどの間、本当に楽しく過ごすことができました。
毎日二人のことを書いてて、とてもいい時間を過ごすことができました。
作者としても作品に感謝感謝です。
ありがとうございました。
  1. 2018/11/18(日) 20:00:00|
  2. ふたりはイヴィルシスターズ
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  4. | コメント:8
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コメント

拝読しましたー( ≧∀≦)ノ
かつての友人や思い出のある場所への態度など、完堕ち後の2人の心境や会話が素敵でした(≧▽≦)

さらに闇がそそがれて女幹部への変貌や百合百合しい2人なども良かったです(*・∀・*)
家族を支配した後は友人や教師も支配するのか、もしくは図書館と同じ様な理由で学校も破壊するのか、新しい光と正しい心を持った者との邂逅など、今後の展開も妄想できて素晴らしい終わりかたでしたね!(≧▽≦)

長編お疲れ様でした&楽しませていただいてありがとうございます!( ≧∀≦)ノ
  1. 2018/11/18(日) 20:21:31 |
  2. URL |
  3. IMK #-
  4. [ 編集]

完結、お疲れ様でした!
正義のヒロインから悪堕ちではなく、一般人からという点が新鮮でみありましたし、心の変化等を楽しめました。
より邪悪となる2段変身がまた良いですね!
先生の暗躍ももう少し観てみたかったですね~
ありがとうございました!
  1. 2018/11/18(日) 20:35:30 |
  2. URL |
  3. marsa #.dp7ssrY
  4. [ 編集]

四夜更新お疲れ様でした!
何度も悪の変身を繰り返す事で段々闇に染まって行くのは良いですね!
もし新たに生まれた“正しい心と力を持つ者”が茉莉の友達だった唯と希美だったら、
変わり果てた二人を見た時のリアクションは・・・とか妄想をかき立てられてしまいます。
とても楽しませていただきました!
  1. 2018/11/18(日) 21:03:59 |
  2. URL |
  3. MAIZOUR=KUIH #gCIFGOqo
  4. [ 編集]

Twitterの方でもコメントさせていただきましたが、こちらでも改めて更新お疲れ様でした!
いやあ、良いですね……素晴らしいです……!
二人の関係性だけで、もうご飯三杯いけます!
ほんともう、素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございます……!
  1. 2018/11/18(日) 21:38:12 |
  2. URL |
  3. 暁ユウ #-
  4. [ 編集]

遂に完結ですね

変身するごとに闇が注がれるのに興奮しますう
毎回再洗脳されてるよなもんで繰り返すほど更に闇に染まり…。
お約束のパワーアップも最高でございました!
新たな光のモノ、本来の歴史なら仲間だったかもしれませんねえ
ピンチに担任が追加戦士として参戦するのが見えましたよ(笑)
魔眼洗脳も大好きだしそれ絡めたオチには萌えた
いやー友情すっとばしちゃいましたね(*´ω`)

本当にはじまりから終わりまで大満足な物語でした
素敵な作品読ませていただきありがとうございます!
お疲れ様でした!
  1. 2018/11/19(月) 17:23:55 |
  2. URL |
  3. くろにゃん #rC5TICeA
  4. [ 編集]

皆様コメントありがとうございます

>>IMK様
やはり堕ちた後は以前の自分との決別は欲しいですよねー。
第二段階は少しどぎつい感じにしてみました。
きっとデモンオー様の趣味なのでしょう。(笑)

>>marsa様
すでにヒロインとなっているのを堕とすのもいいですけど、こういうのもいいよねということで。
書いてて楽しかったです。

>>MAIZOUR=KUIH様
“正しい心と力を持つ者”が誰を選ぶのかは気になりますよねー。
知り合いだったらというのもいいですねー。

>>暁ユウ様
今回は結構キャラが作者の思惑を超えて走ってくれたので、予想外に絆が深まった気がします。
最後も絵美に魔眼を使わせるだけのつもりが、キスしたいーと主張してきましたので。(笑)

>>くろにゃん様
最後の自らの変身シーンいかがだったでしょうか?
お互いに向かい合ってお互いの胸に鍵を差し込むというのは、自画自賛ではありますけど、結構いい絵になるのではないかと思いました。
最後のパワーアップはもうね、ポルンの「光のパワーを受け取るポポー」を思い出してしまって、デモンオー様が「闇の力を受け取るポポー」って言いだすのではないかとひやひやでした。(笑)

あらためて皆様、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
  1. 2018/11/19(月) 18:50:22 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

お疲れ様です~

やっと全編読ませていただきました。
二人の価値観の変化や心の機微などが読んでて凄くゾゾゾッてきましたね。

あとは先に堕ちていた先生、ああいうキャラ好きですわ~
  1. 2018/11/20(火) 22:17:38 |
  2. URL |
  3. g-than #-
  4. [ 編集]

>>g-than様
コメントありがとうございますー。
なかなか反応をいただけなかったので、受けなかったのかなーと思っておりました。
先生が先に堕ちていることで絶望感が増すのいいですよね。
  1. 2018/11/21(水) 19:01:14 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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