FC2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

今日はSSを一本投下します。
今日のSSは久しぶりに仮面ライダー(二号)の二次創作となります。
なんか、タイトルが「山田くんと七人の魔女」みたいな感じになってしまいましたね。(笑)

それではどうぞ。


仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

エンジン音を響かせて疾駆するオープンタイプのスポーツカー。
青年が運転し、助手席と後席には若い女性が乗っている。
「おらおらぁ! どけどけぇ! 道を開けろぉ!」
「キャー、かっこいい!」
乱暴な運転で前を走る車をあおり、避けたところを抜かしていく。
自分の運転に自信を持っているのか、後ろの車を振り返ってバカにしたように舌打ちする。
「おっせぇんだよ!」
「ホント、おっそーい。ねえ、修(おさむ)、もっと飛ばしてぇ!」
「よし来た!」
助手席の女性に応えるようにぐっとアクセルを踏み込む青年。
その様子に後席の女性は少し顔を曇らせる。
「ね、ねえ・・・あんまり飛ばすのは・・・」
「なぁに? 洋子(ようこ)ったら怖いの?」
助手席の女性がニタニタと笑いながら振り返る。
「そ、そういうわけじゃ・・・」
内心を隠しながらも洋子は首を振る。
「だったらいいじゃん。こんなかっこいいスポーツカーなんだもん、飛ばさなきゃ嘘よね」
「ああ、安心しろって、俺がハンドル握ってんだからさ!」
運転席の青年はまるで脅かすかのようにハンドルを左右に切って車を蛇行させる。
そのたびに周囲の車が慌てたように避けていくのだ。
修にはそれが面白くてたまらない。
洋子はそんな彼にこれ以上何も言えなかった。

                   ******

五、六人の小学生たちが交差点に差し掛かる。
「さあ、みんな、横断歩道だ。注意しようね」
先頭を歩く少年が後ろの子たちに声をかける。
近くの立花(たちばな)レーシングクラブによく顔を出す石倉五郎(いしくら ごろう)という少年だ。
なかなかに面倒見がいい性格なので、近所の子供たちに慕われている。
「横断歩道は右左を見て渡りましょう」
五郎は横断歩道の手前で車が止まってくれたことを確認し、運転手に礼を言うと、みんなを連れて横断歩道を渡りはじめる。
だが、その時、猛スピードのスポーツカーが停車した車を追い越すようにして横断歩道を横切ってきた。
「危ない!」
きしむタイヤと急ブレーキの音が響く。
五郎たちはとっさに逃げたものの、運悪く一人の少年がひっかけられてしまう。
「あっ、ひろし!」
道路に倒れた少年の名を五郎が叫ぶ。

ちょうどその時、急ブレーキの音に何事かと外に出てきた大人たちがいた。
すぐ近くの立花レーシングクラブのメンバーたちである。
彼らは横断歩道に倒れた少年の姿を見て、何が起こったのかをすぐに把握した。
「おい! 大丈夫か?」
「おい!」
思わず駆け寄ってくる立花レーシングクラブの面々。
中でも真っ先に駆け寄ったのは、ほかでもない一文字隼人(いちもんじ はやと)だ。
彼は少年の救護をほかの人に任せると、怒りの形相でスポーツカーを運転していた青年をにらみつける。
「君たちは・・・」
怒りのあまりその後の言葉が続かない。
こんな市街地で横断歩道を渡っていた少年を撥ねるなど、よほどスピードを出していたか前方不注意だったかに違いないのだ。

「うるさいわねぇ・・・かすっただけでしょ」
「そっちがもたもたしているから悪いんだ」
助手席の女も運転席の男も、まるで悪びれる様子がない。
「なんてことを言うんだ!」
あまりのことに立花レーシングクラブの会長である立花藤兵衛(たちばな とうべえ)も、思わず声を荒げてしまう。
「へっ、あばよ!」
だが、男は意に介した様子もなく、そのまま車を発進させる。
まさか逃げるとは思っていなかった隼人と藤兵衛は、一瞬反応が遅れてしまった。
「ま、待て!」
慌てて追いかけようとしたが、車はどんどん遠ざかる。
「くそっ!」
「隼人兄ちゃん!」
「滝(たき)、あとは頼む! 五郎、俺に任せろ!」
ひき逃げ犯が逃走してしまうことを恐れた五郎に、隼人は力強く答えると、すぐにレーシングクラブの前に止めてあったバイクにまたがってスポーツカーを追う。
モトクロスレーサーだった一号ライダー本郷猛(ほんごう たけし)には及ばぬものの、彼とて仮面ライダーと呼ばれる改造人間だ。
普通のスポーツカーを追うのぐらいわけはない。

「チッ、追ってきやがるのか・・・」
バックミラーに映るオートバイ。
そのバイクにまたがっている男が先ほどの男だと知った修は、さらにアクセルを踏み込んでいく。
「ねえ、人をひいてしまったのよ。おとなしく警察に・・・」
後席から心配そうに洋子が言う。
根がおとなしい彼女に取り、人をひいてしまったということは大変なことなのだ。
「なぁに? 洋子ったら修が警察に捕まってもいいわけ?」
「へっ、ガキの一人や二人ひいたからなんだっていうんだ。まあ、いざとなりゃ親父がもみ消してくれるだろうけどな。あんまり親父に迷惑もかけられないしな」
バックミラーにぴったりと付いてくるバイクに少々焦りを感じる修。
何とか振り切って逃げきらなければ・・・
親父にくそうるさく言われるのはごめんなのだ。
「くそっ・・・あの野郎・・・」
背後にぴったりと付いてくるバイクの男に、修は憎悪を抱くのだった。

                   ******

猛スピードで疾走するスポーツカーとバイク。
その様子を道路わきの地面からせり出した一台のカメラが中継する。
その映像はある場所に設置されたモニターに映し出され、その映像を黒マントを羽織り車椅子に座る老人がじっと見つめていた。

「これだ・・・この男こそ、我々が探し求めていた男。この男には冷たい悪魔のような血が流れている」
老人がその骸骨のように痩せた顔にニヤリと笑みを浮かべる。
子供をひいたことを悪びれもせず、一人二人ひいたところでなんだというんだとまで言い放つ男。
こういう男こそが、悪魔の組織ショッカーの尖兵となる改造人間にふさわしい。
「この男を捕まえろ。ハエ男に改造するのだ」
「イーッ!」
老人の背後に立つ数人の黒づくめの男たちが奇声を上げる。
彼らは全身を躰にぴったりした黒い衣装で包み、顔には目鼻口だけが露出するマスクをかぶっている。
マスクの額にはハエの模様が書き込まれ、腰には鷲のマークの付いたベルトを締めていた。
彼らこそ、世界征服を企む悪の秘密結社ショッカーの手先である戦闘員たちであり、彼らに命じた老人こそ、改造手術の権威である死神博士その人だった。

映像の中では逃げるスポーツカーが映し出されている。
どんなに頑張っても一文字隼人のバイクを振り切れないのだ。
戦闘員の一人が機器のスイッチを操作する。
すると、映像の中に白煙が立ち込めていく。
『な、なんだこれは?』
『えっ? 霧?』
『こわーい!』
スポーツカーの男女の声がモニターから流れてくる。
戦闘員がさらにボタンを押すと、白煙に包まれたスポーツカーは道路ごと地下へと沈んでいく。
開いた穴はすぐにまた覆われ、一文字のバイクはその上を通過していく。
煙が晴れた時、一文字は追っていたスポーツカーが突如消え去ったことに愕然とした。

                   ******

「もう大丈夫ですよ。怪我のほうも軽いものでしたし、この分なら二三日で退院できるでしょう」
医者の言葉にホッとした表情を浮かべる五郎と女性たち。
立花レーシングクラブのエミと、車に撥ねられたひろしの母の澤子(さわこ)である。
息子が撥ねられたと聞いて、急いで病院に駆け付けた息子思いの美しい女性だ。
「よかったわねぇ」
エミが笑顔を見せる。
五郎も心からホッとしたように安堵の表情を浮かべていた。
「皆さん、本当にありがとうございました。五郎ちゃん、もういいわよ。あなたには何の責任もないんですから」
お礼を言い、五郎の負担を考えて帰っても大丈夫と伝える澤子に五郎は首を振る。
「ひろし君のおばさん、ボクもう少しひろし君のそばにいますから」
「そう? ありがとう」
五郎の申し出に澤子はうれしくなる。
ひろしにこんなにいい少年が付いていてくれるなら、学校でも安心だろう。
「よかったなひろし。あとは隼人兄ちゃんが犯人を捕まえてくれれば万々歳だ!」
「うん、ありがとう五郎ちゃん」
ひろしも怪我はしたものの、その表情は明るさを失っていなかった。

                   ******

円形の台に寝かされているスポーツカーを運転していた男。
その周囲には白衣の男たちが集まり、様々な器具をセットしているところだった。

「加納(かのう)修。金持ちの家に生まれ、周囲の人間を見下している冷酷な男。この男こそ、ハエ男の素材としてふさわしい」
一段高くなった位置から円形手術台を見下ろす死神博士。
黒いマントの襟が誇らしげに高く立っている。
『死神博士よ。ハエ男は仮面ライダー抹殺のための強力な怪人。だが、それだけで仮面ライダーに勝てるのか?』
壁にかけられた鷲のレリーフが明滅し、重々しいショッカー首領の声が響く。
「ご安心を、首領。そのほかにも手は打ってあります。仮面ライダーもその戦闘力をフルに発揮することはできますまい」
レリーフを見上げ、にやりと笑みを浮かべる死神博士。
その表情はまさに死神の名にふさわしい。
『うむ。頼んだぞ、死神博士』
「ハッ、よし、改造手術を始めるのだ」
レリーフに一礼し、手術台の周囲の連中に指示を下す。
その命に従い、白衣の男たちは加納修の手術を開始するのだった。

手始めに修の躰には薬剤が注入されていく。
この薬剤によって遺伝子合成が可能となり、他生物の遺伝子を取り込むことが可能となるのだ。
今回はネパールの秘境に存在するという大型の肉食バエを修の躰に取り込ませるのだ。
すぐに肉食バエの遺伝子を混ぜ込んだ第二の薬剤が用意され、修の躰に流し込まれる。
それと同時に、筋肉や内臓の強化のために機械部品が埋め込まれる。
この生物と生物に加え、生物と機械の融合もまた、ショッカーの改造人間の特徴であった。

やがて修の躰に変化が生じてくる。
全身に黒くかたい毛が生え始め、頭の形もハエの頭部のように変わっていく。
胸の部分は緑色のなめし皮のような蛇腹となり、両目は大きな緑色の複眼が形成されていく。
両手も黒い毛に覆われ、鋭い爪が伸びていく。
最後は脳にショッカーへの忠誠を刻み込む脳改造が行われ、改造手術が完了する。

「ブルルルル・・・」
ゆっくりと起き上がるハエ男。
その全身はまさにハエと人間が融合した姿であり、グロテスクなものだった。
「ハエ男よ。お前には一文字隼人の抹殺を命じる」
起き上がったハエ男に指示を下す死神博士。
「ブルルルルッ! 一文字隼人? 誰だそれは?」
「この男だ」
指揮棒でモニターを指し示す死神博士。
そこには先ほどまで修を追ってきていたバイクの男の姿が映し出されていた。
「ブルルルルッ! この男か! 俺はこの男が憎い! 喜んで殺してこよう!」
「待て、ハエ男よ。やつこそは仮面ライダーと名乗り、このショッカーに歯向かう小癪な男。万全を期すためにもお前に配下を付けてやろう。入ってこい」
出かけようとしたハエ男を制する死神博士。
するとその言葉に呼応したように手術室の扉が開き、二人の人影が入ってくる。
そのスタイルからして女のようだったが、その姿もまた異様なものだった。

彼女たちは二人ともが全身を青いなめし皮のような皮膚に覆われ、背中からは薄く黄色い翅が伸びている。
その形良い両胸は黒と黄色の同心円状に模様が広がり、まるで蜂のお尻のようなイメージだ。
頭には紫色の髪が広がり、額からは蜂の胴体のような硬質な部分が頭頂部まで覆っている。
両目は緑色の複眼となっているものの、ハエ男と違って口元は人間のままとなっている。
そして腰には、ハエ男と同じショッカーの紋章が入ったベルトをつけていた。

「ブルルルルッ! この二人は?」
入ってきた異形の女たちを見やるハエ男。
「お前と一緒に車に乗っていた女たちに、日本支部初期の改造人間蜂女をベースにした改造を施したもの。いわば量産型蜂女の一号と二号だ。お前の好きに使うがいい」
満足そうに完成品を眺める死神博士。
簡易改造で作り上げたにしては完成度が高いのだ。
満足するのも無理はない。
「ブルルルルッ! ミッチ、洋子、お前たちも生まれ変わったようだな。これからは俺様のために働くのだ」
「キキーッ! 私は量産型蜂女一号。ハエ男様に従います」
「キキーッ! 私は量産型蜂女二号。何なりとご命令を」
二体の量産型蜂女が右手を上げて返事をする。
助手席に座っていたミッチも後席にいた洋子も、改造を受け量産型蜂女へと変わってしまっていた。
もはや彼女たちに人間らしい心は残っていない。

「ハエ男よ。このカプセルを人間の女に飲ませれば、その女は量産型蜂女に生まれ変わる。あと四つあるこのカプセルで、立花レーシングクラブの女たちとお前が撥ねた少年の母親を量産型蜂女にするのだ。そうすれば一文字隼人は知り合いと戦うことができず、その戦闘力は大幅に落ちるだろう。そこを殺すのだ」
「ブルルルルッ! それは面白い! 任せてくれ、死神博士」
死神博士からカプセルの入ったケースを受け取るハエ男。
その緑色の複眼が不気味に光り輝いた。

                   ******

「お、三人そろってお出かけかい?」
ちょうど立花レーシングクラブに戻ってきたFBI捜査官滝和也(たき かずや)と、入れ替わるようにユリ、エミ、ミカの三人が出てきたのだ。
「ええ、これからひろし君が入院している病院まで」
「ああそうか。今日も五郎は学校が終わったらまっすぐ病院に行っているんだっけ?」
ユリの言葉に合点がいく滝。
「うん。だからお見舞いと差し入れを持っていくの。あと人手があった方が助かるだろうからみんなで行ってこいって会長が」
エミも手にしたバスケットと花束を持ち上げてみせる。
「なるほど。気を付けて行ってこいよ。俺はあのひき逃げ犯の家がわかったことを知らせに来たんだ」
「ホント? さすがは滝さん。一文字さんなら会長と一緒よ」
ミカが感心したように滝を褒める。
「わかった」
ヘルメットをバイクにおいて、すぐに滝は中へ入っていく。
一刻も早く犯人の住所を知らせようというのだろう。
「これでひき逃げ犯も捕まるわね」
「ひろし君にいい報告ができそうね」
「それじゃ行きましょ」
三人の女性たちはいい話に笑顔になりながら、病院への道を歩いて行った。

やがて、人通りの少ないあたりに来たところで、三人の前に黒いワンボックスカーが停車する。
「な、なに? いきなり」
急に現れたワンボックスカーに戸惑う三人。
するとワンボックスカーのサイドドアが開き、中からハエの躰をした怪人が現れる。
「キャーッ!」
「ショ、ショッカー!」
「に、逃げ・・・」
慌てて逃げ出そうとした三人だったが、すでに背後にも二人の蜂のような姿をした女性が立っていた。
「ふふふふ・・・逃げられはしないわ」
「ふふふふ・・・あなたたちも量産型蜂女になるのよ」
二人の蜂女はそういうと、エミとミカの顔にスプレーをかけて気を失わせてしまう。
「エミ! ミカ! あうっ」
空手の経験があり、とっさに口をふさぐことができたユリだったが、ハエ男に背を向けてしまったことで首筋を強打され、彼女も気を失ってしまった。
「ブルルルルッ! よし、連れていけ!」
「「イーッ!」」
ワンボックスカーから黒づくめの戦闘員たちが現れ、三人を車の中に連れて行く。
やがてワンボックスカーはハエ男や二人の蜂女も乗せ、いずこともなく去っていった。

                   ******

「ブルルルルッ! 死神博士、このカプセルを飲ませればいいのだな?」
ハエ男の鋭い爪をした指先が白いカプセルをつまみ上げる。
彼の前には大きな台に寝かせられた三人の女性たちがいた。
「その通りだ。この女たちにそのカプセルを飲ませるのだ」
車いすに座った死神博士がハエ男にうなずく。
「ブルルルルッ! 一文字隼人よ、お前の仲間はショッカーの一員となるのだ。ブルルルルッ!」
ハエ男はほくそ笑むような鳴き声を発し、ユリ、エミ、ミカにカプセルを飲ませていく。
やがて彼女たちの躰が極彩色の光に覆われていき、皮膚の色が青く変化し始める。
顔も大きな複眼が形成され、額から頭頂部にかけて蜂の腹部のような外骨格が覆っていく。
髪は紫色となり、胸も黒と黄色の同心円の模様の蜂の腹部のように変化する。
背中から薄く黄色い翅が生え、彼女たちの変化は完了した。

「ブルルルルッ! 終わったようだな。さあ、起き上がって自分が何者か言ってみろ」
ハエ男の言葉に従うようにゆっくりと起き上がる三人の女たち。
「私は量産型蜂女三号。ショッカーに忠誠を誓います」
「私は量産型蜂女四号。ハエ男様に従います」
「私は量産型蜂女五号。何なりとご命令を」
ユリ、エミ、ミカの三人はそれぞれ量産型蜂女の三号、四号、五号へと変化してしまっていた。
もはや彼女たちからは仮面ライダーとともにショッカーに立ち向かうなどという正義の心は消え失せ、悪魔の組織ショッカーの一員となった喜びがあるだけだった。

「この三人の姿を見れば、一文字隼人もまともには戦えぬはず。あとはやつをおびき寄せるためにも、少年の母親も量産型蜂女にしてしまうのだ。行け! ハエ男よ!」
「ブルルルルッ! お前たち、付いてこい!」
「「「キキーッ!」」」
死神博士の命に、ハエ男は新たに量産型蜂女となった三人とこれまでの二人をを引き連れてアジトを出る。
向かうはひろし少年の入院している病院だった。

                   ******

「五郎ちゃん。今日もきてくれてありがとう。でも本当にいいの? ひろしのことならもう心配はいらないのよ」
「おばさん。ボクの気が済むまで・・・ひろし君が退院するまではいさせてください。お願いします」
真剣な表情で頭を下げる五郎に澤子は胸を打たれる。
本当にありがたいことだ。
「そう? それじゃおばさんちょっと用事を済ませてくるから、その間ひろしのそばにいてくれる?」
「はい。もちろんです」
顔を輝かせる五郎。
ベッドでそのやり取りを聞いていたひろしも顔をほころばせる。
「ありがとう五郎ちゃん」
「いいんだよひろし。それにもうすぐユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃんたちが来ると思うし。あっ、そうだ! クラスの友達からノート借りてきたから、勉強も遅れないで済むよ」
そう言ってカバンの中からノートを取り出す五郎。
「それじゃ、ちょっとの間お願いね」
澤子はそんな二人をほほえましく見ながら、病室を後にした。

「急いで銀行に行って来なくちゃ」
澤子は入院費などのためにお金を降ろしに銀行へ向かおうと、病院の廊下を歩いていく。
そして物品庫の前に差し掛かった時、いきなりドアが開いて中から伸びた手が澤子を物品庫の中へと引きずり込む。
「きゃっ! な、なに?」
突然のことに驚く澤子。
すると左右から奇妙な姿をした女たちが澤子の躰を押さえつける。
「い、いやっ! だ、だれか!」
「ブルルルルッ! お前もこのカプセルを飲むのだ」
目の前に現れたハエの化け物が、澤子の口にカプセルを押し込んでくる。
「む・・・むぐっ」
何とか飲み込まないように抵抗する澤子だったが、無理やり口をこじ開けられるようにして飲まされてしまう。
「あ・・・あああ・・・」
喉を掻きむしるようにして倒れ込む澤子。
躰が熱を持ったように熱いのだ。
やがて思考がぼんやりし、なにがなんだかわからなくなっていく。
「あああ・・・」
じょじょに澤子の躰が極彩色の光に覆われ、躰が変化し始める。
数分後、澤子の躰はほかの女たちと同じように、蜂の怪人へと変わっていた。

「私は量産型蜂女六号です。ハエ男様、何なりとご命令を」
ゆっくりと立ち上がり、ハエ男に向かって右手を上げる量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! 俺様はお前のガキを跳ね飛ばした男だぞ。その俺様に従うというのか?」
試すように意地悪く質問するハエ男。
自分を憎んでいただろう撥ねた相手の母親を支配するというのは、気持ちがいいものだ。
「はい。もちろんです。あの子はもう私にとってはどうでもいい存在。私にとって大事なのは偉大なるショッカーとハエ男様です」
「ブルルルルッ! ならばあのガキどもを始末するのだ。できるな?」
「もちろんです。ハエ男様」
こくりとうなずく量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! ならば行け!」
「キキーッ!」

病室にノックの音が響く。
「どなたですか?」
五郎がひろしに代わって返事をする。
おそらくは立花レーシングクラブの三人の誰かか、ひろしの母澤子が戻ってきたのだろう。
『私よ。ひろしの母よ』
ドアの向こうからの声に、安心してドアを開ける五郎。
だが、そこに立っていたのは、全身を青い皮膚に包んだ異形の女だった。
「わぁ! 化け物だ!」
思わず飛びのいてしまう五郎。
「五郎ちゃん!」
ひろしもベッドから躰を起こす。
「ふふふふふ・・・お前たちは一文字隼人を引き寄せる餌。だが、お前たちが死んでもいずれやつはここに来る。だから死ね!」
ゆっくりと病室に入ってくる蜂の怪人。
「あっ、お母さん!」
その姿や顔の造りにひろしは自分の母の面影を見る。
「オホホホホ・・・私はもうお前の母親などではないわ。私はショッカーの量産型蜂女六号。お前たちはここで死ぬのよ。ホホホホホ・・・」
手の甲を口元に当てて高笑いをする量産型蜂女六号。
すでに彼女はひろしの母親という気持ちを失っているのだ。

「ひろし! こっちだ!」
ベッドの上で愕然とするひろしの手を引き、窓から逃げ出そうとする五郎。
だが、その窓を開けたところには、三人の同じ姿をした量産型蜂女が待ち構えていた。
「うふふふ・・・逃がしはしないわ」
「どこへ行くつもりなのかしら?」
「お前たちはここで死ぬのよ」
「そ、そんな・・・ユリ姉ちゃん、エミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんまで・・・」
五郎の顔が青ざめる。
その蜂女たちは立花レーシングクラブでいつも見慣れた顔の面影があったのだ。

                  ******

「畜生! 子供が子供なら親も親だ!」
「ああ・・・だがいずれは家に戻ってくるはず。立花の親父さんが見張っていてくれるそうだから、今度は逃がさんぞ」
ぶつくさと文句を言いながら病院にやってくる滝と一文字。
滝の情報をもとにひき逃げ犯の家に行ってみたものの、うちの子がそんなひき逃げなどするはずがないとけんもほろろに追い返されたのだ。
二人はやむなくそのことを病院に来ているはずのレーシングクラブのメンバーに伝えるつもりだった。

『助けてー!』
奥の病室の方から声が上がる。
「おい、今のは?」
「五郎の声だ!」
「行くぞ!」
すぐに病室に向かう滝と一文字。
二人が病室に飛び込むと、今まさに鋭い爪で二人の少年を引き裂こうとしている量産型蜂女たちの姿があった。
「こ、これは・・・」
「ショッカー!」
二人は体当たりを食らわせるようにして、蜂女たちを突き飛ばすと、二人の少年を確保する。
「隼人兄ちゃん! 滝兄ちゃん!」
「よし、五郎。もう大丈夫だ!」
滝が二人を抱えるようにして引き寄せる。
その三人をカバーするように立ちはだかる一文字。
「滝兄ちゃん! その四人はユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんとひろし君のおばさんなんだ!」
五郎が半分泣きながら蜂女たちを指さす。
「なんだって?」
滝も一文字もその言葉に衝撃を受ける。
確かに四体の蜂女たちは、いずれも見覚えのある面影があった。

「なんてこった・・・ショッカーめ!」
一文字が歯噛みする。
そして四体の蜂女の背後から、新たに二体の蜂女を引き連れたハエの怪人が現れる。
「ブルルルルッ! どうだ一文字隼人! こいつらは死神博士のカプセルで、量産型蜂女へと生まれ変わったのだ。こいつらが相手では、お前も戦うことはできまい!」
「出たな、ショッカーの改造人間!」
「俺様はハエ男! 貴様を抹殺するために作られたのだ。ブルルルルッ!」
「うふふふ・・・」
「おほほほほ・・・」
ハエ男と六体の蜂女たちが笑い声をあげる。

「滝! 子供たちを連れて窓から逃げろ! 俺はこいつらを食い止める」
「わかった!」
滝はそう返事をすると、二人の少年を連れてさっき五郎が逃げ出そうとした窓から外へ出る。
「変身! とうっ!」
力強い変身ポーズと掛け声が上がり、一文字隼人は仮面ライダーへと変身する。
「ブルルルルッ! 現れたな仮面ライダー! やれっ!」
「「キキーッ!」」
ハエ男の命に従い仮面ライダーに向かってくる量産型蜂女たち。
今、仮面ライダーのつらい戦いが始まった。

END
  1. 2018/01/28(日) 20:53:56|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
<<上級ルールによる海戦が面白いらしい | ホーム | 北海道は駒大苫小牧>>

コメント

素晴らしかったです!
この後は果たして辛くも勝利を収めるのか、はたまた敗れ去るのか、気になりますね……!
  1. 2018/01/28(日) 21:07:26 |
  2. URL |
  3. 暁ユウ #-
  4. [ 編集]

これは辛い戦いですね。
ハエ男を倒せば元に戻る様なことではないでしょうから…
勝っても恨み買うなぁ。
  1. 2018/01/28(日) 21:20:57 |
  2. URL |
  3. sengoku #rFnOs2i6
  4. [ 編集]

>>暁ユウ様
コメントありがとうございます。
仮面ライダーにとってなかなかに戦いづらい状況だとは思いますねぇ。

>>sengoku様
コメントありがとうございます。
案外あの番組のことですから、ハエ男を倒したらしれっと元に戻っているかもしれませんよ。(笑)
  1. 2018/01/29(月) 19:31:51 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://masatomaikata.blog55.fc2.com/tb.php/4776-de67d35c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

AquariumClock 2

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア