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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ある事故の結末

今日は楽しいクリスマスイブということで、短編SSを一本投下いたします。

タイトルは「ある事故の結末」です。
なんかやや誰得のSSになってしまったかという気もしますが、私には得ですので、よろしければご覧くださいませ。
楽しんでいただけましたら幸いです。


ある事故の結末

「あなた・・・あなた・・・起きて。6時よ。起きて。6時0分15秒になったわ。起きないと遅刻するわよ。今6時0分32びょ・・・」
そこまで言いかけて口をつぐむ。
またやってしまった・・・
もっとアバウトに人間らしくしなくてはいけないのに、どうしても機械の正確さがにじみ出てしまう・・・

「う、うーん・・・もう朝かぁ?」
布団の中でゆっくりと目を開ける夫。
赤外線視覚で見ると体温の異常は感じられないし、声も問題はなさそう。
健康状態には数値的問題はないみたいね。
私は視覚を通常に戻すと、夫に笑顔を見せる。
「そうよ。もう6時3分18びょ・・・よ」
またやりそうになってしまい、思わず苦笑プログラムが働く。
人間は秒単位まで気にしないというのに・・・

夫が布団から抜け出したのを確認し、私は台所に戻る。
お味噌汁が沸騰してしまうタイミングまでは、まだあと28秒ほどあるはずなので、余裕をもって火を止められるわ。
夫が洗顔等を済ませている間に、私はタマゴを焼いて目玉焼きを作る。
切っておいたキャベツの千切りを添えて、朝食のおかずができあがる。
夫がテーブルに着くときには、おかずもごはんもお味噌汁も用意ができているというわけ。
こういうタイミングを合わせるのは、今の躰は本当に便利でいい。
でも・・・
以前の私ならやっぱり生身でいたかったと思うのかしら・・・
こんなに素晴らしい躰なのに。

                   ******

私は記憶を再確認する。
あの日、用事があって出かけた私は、車を運転中に躰にとても熱いものを感じ、意識を失った。
しばらくして目が覚めた時、私は何かよくわからない白い光の中にいた。
どこだろうと思って周りを見ようと首を動かそうとしたけれど、なぜか全く首が回らない。
手を動かそうと思ったけど、手も動かない。
いったい何が起こったのかがわからず、私は軽く混乱していた。

そのうち、光の中で人の影のようなものが姿を現したわ。
白い光の中で黒い人の形だけ。
輪郭もぼやけて人っぽく見える影と言った方がいいような姿。
その影が一言発したの。
申し訳ないって・・・

私は何が申し訳ないのか聞き返したわ。
すると、私の躰が蒸発してしまったことを詫びてきたの。
えっ?
私の躰が?
嘘でしょ?
だって、今も躰があるのは感じているのに?

それは幻の感覚だと彼は答えたわ。
男の声っぽかったから彼と言ったけど、性別はわからない。
そもそも性別があるかどうかもわからない。
彼は続けた。
犯罪者を追い詰め、抵抗してきたのを取り押さえるために撃った一撃が、偶然にも次元のはざまを飛び越して君の乗っていた輸送機器に命中してしまった。
そのため、君の輸送機器の下側部分と君の躰は瞬時に蒸発し、かろうじて直撃をまぬがれた君の頭部だけを緊急回収した。
なんとか君を救うべく、今は一時的に頭部のみを生かしている状態に過ぎない・・・と。

何を言っているのか?
私は何か質の悪い冗談に付き合わされているのではないか?
そんな思いをよそに、彼は続ける。
本当に申し訳ないことをした。
我々のできる限りの補償はさせていただく。
偶然とはいえ、放った衝撃波が現地の知的生物を傷つけてしまうことはあってはならないことだ。
可及的速やかに補償について話し合いたいと思っているため、こうして君に覚醒してもらったというわけだ。

補償とは?
私の質問に彼は答える。
君の乗っていた輸送機器については問題ない。
あの程度の低テクノロジーの輸送機器であれば、ほぼ完全に再現が可能だ。
事故時点の記録から、すでに再現は行われているので、確認してほしい。
彼がそういうと、私の目の前に車が現れる。
私の乗っていた車だ。
私が過去に運転をミスってつけてしまった傷も同じ位置にある。
ナンバーももちろん同じ。
再現?
単に私の乗っていた車を持ってきたのでは?
そうではないと彼は言う。
この輸送機器の下部は君の躰とともに蒸発した。
残っていた上部はそのまま利用しようとも思ったが、どうせならと作り直した。
上部を元のと取り換えるならそれでもいい。
私は首を振ろうとして振れないことに気が付いた。
だから、そのままでいいとだけ答えた。

問題は・・・
と彼が言う。
影しかないのに、彼が難しい顔をしたような気がした。
君の躰のほうだと続ける彼。
君の躰は残念ながら元通りに再現するのは無理だと判明した。
えっ?
無理?
車を傷の部分まで完璧に再現できるのに?
確かに君たちの種族の基本的構成要因はそれほど複雑なものではない。
しかし、我々は生命技術においてはいまだ発展途上であり、無から君たちの躰を作り出すことはまだできないのだ。
我々が君に提示できる選択肢は二つ。
我々の種族の躰に君の脳を移植し、我々の種族の一員として今後暮らすというものが一つ。
もう一つは、君の躰を模した機械を用意し、そこに君のデータを落とし込むことで機械の一種として生きていくこと。
この二通りだ。
もちろんこれ以外にそのまま死を受け入れるというのもあるが、それは君は望まないだろう?

あなたたちの種族になるということは、家族と離れなくてはならないのですか?
もちろんだ。
我々は犯罪者を追ってたまたまこの世界にかかわったに過ぎない。
それも事故によってだ。
なので、この件が終われば我々はここを離れる。
我々の種族の一員となれば、我々の世界で生きてもらうことになるが、もちろん全力でサポートするつもりなので安心してほしい。

機械になれば家族と離れずに済むのですか?
機械とはいえ、特殊素材でできた外皮により、君の種族と見た目的な差異はなくすることが可能だ。
事故直前の情報から、君そっくりの外見を再現することもできる。
ただし、機械に君のデータを移し替えるため、機械的な思考になることはあり得るし、長期にわたって外見上に老化は起きない。
そのため、いずれは家族に違和感を感じられてしまう可能性はある。

私の答えは決まっていた。
少なくともこんなことで家族と別れるのはいやだ。
私は機械の躰を用意してもらい、そこに“私”を移し替えてもらったのだ。

                   ******

それ以来、私は何食わぬ顔をして家族と一緒に暮らしている。
いずれは家族に違和感を感じられる可能性はあるが、現状ではその可能性は3%ほどと低い数値だ。
と・・・あと28秒で6時30分。
娘を起こさないと。
部屋を出て娘の部屋に行くまでに8秒。
不測の事態が起きても対応できる時間はあるわね。
私はそう計算し、リビングを出て娘の部屋に向かった。

4分12秒で娘を起こしてリビングに戻ってくると、夫は黙々と食事を続けていた。
何も言わずに食べているけど、その表情から計算すると、今朝の食事に満足している確率は77%。
悪くない数値である。

「おはよー」
パジャマ姿の娘がリビングに入ってくる。
「おはよう。早く顔を洗ってらっしゃい。朝御飯できてるわよ」
「はぁい」
娘は私に返事をしてそのまま洗面所に向かう。
その間に私はご飯とお味噌汁を用意する。
ちょうど娘が戻ってきてテーブルに着く。
うん。
計算通り。

「お父さんもおはよう。いただきます」
「ああ、おはよう」
「うん、いいにおい。最近お母さんって手際が良くなったよねー」
そう言いながらご飯を口に放り込む娘。
「ご飯もおいしくなったしさ。お父さんもそう思わない?」
「そうだな・・・朝はきちんと時間通りに起こしてくれるしな。前は自分でも寝過ごしていたぐらいなのにな」
夫が笑っている。
そうだったかしら?
時間に合わせて行動するのは当たり前でしょ?
ご飯だってグラム単位で計算していれば味覚に合うぐらい当然だわ。
って・・・これももう少しアバウトにした方がいいのかしら?
なんだかアバウトっていやなのよね・・・

「キャベツの千切りだってすごくきれい。いつの間にこんなに上手になったの?」
目玉焼きの付け合わせのキャベツの千切りを口に運んでいる娘。
包丁をミリ単位で動かせばいいだけのことだから、何でもないことなのに・・・
生身だった時はできていなかったかしら・・・

「ごちそうさま。さて、行くとするか」
食事を終えて身支度を整えていく夫。
私は置いてあったカバンを取ってきて手渡す。
「行ってらっしゃい」
「うん、それじゃ行ってくる」
私からカバンを受け取ると、夫は娘にも手を振って玄関へ向かう。
「行ってらっしゃーい」
娘も夫に手を振ると、食事を済ませ、制服に着替えるために部屋に向かった。

                   ******

夫も娘も出かけると、私は後片付けを済ませ、充電に入る。
今の私には食事は不要なもの。
夫や娘に怪しまれないように食べる真似はできるけど、食べたものはそのままトイレで吐き出している。
食事なんかより充電のほうが私は好き。
電気が充填されていくと、躰がほてって気持ちよくなるの。
私はスカートを捲り上げ、ショーツをずらして尾てい骨のところからコードを伸ばす。
そして家庭用コンセントにコードを差し込むと、その前で四つん這いになって充電を楽しむ。
ああ・・・ん・・・
気持ちいいわぁ。
脳にも躰にも電流が流れ、機械である喜びを感じることができる。

「ピッ! プログラムを開始・・・通信を行います」
私の口から普段とは違う電子音が発せられる。
それと同時に、左右の耳からアンテナがせり出していく。
プログラムが起動し、“彼ら”へとデータが送られていくのだ。
私の見聞きしたこの世界のデータ。
専業主婦である私には大した情報は持たないが、それでもこの世界を知る貴重なデータになるだろう。
いずれこのデータをもとに彼らの行動が行われることになる。
時間的計算で言えば、私のデータを使うことですでに私と同じように機械人間に置き換えられた人間は90%以上の確率で10体以上。
70%以上に範囲を広げれば50体以上はいると言える。
置き換えられた私たちは、時期が来たら彼らの組み込んだプログラムに従って人間を攻撃し、彼らがこの世界を支配する手助けをする。
そのことがわかっていながら、私はそのことを家族に伝えようとは思わない。

なぜなら、私はすでに彼らの側として行動するようにプログラムされており、彼らに従うことこそが私の存在理由となっているから。
いずれ彼らのプログラムが発動して、私自らが家族を攻撃する日が来る。
だが、私はそのことを心待ちにしている自分を抑えられない。

彼らが私の躰を作ってくれたのは補償からでも好意からでもなんでもない。
都合がよかったからなのだ。
彼らの示した選択肢を私がどう選ぼうと彼らはよかった。
脳移植を受け彼らの一員となれば、私は喜んで彼らにこの世界の情報を伝えていただろうし、機械人間になれば、こうして彼らの手先として世界に潜り込ませられるのだから。

私を巻き込んだ事故は確かに100%偶発的なものだった。
しかし、その事故の元となった“犯罪者”は、この世界に彼らの侵略が迫っている危険を知らせようとしていた確率が70%を超える。
犯罪者を始末した結果、偶然私を手に入れることができたことは、彼らにとって喜ばしいことだったであろう。
おかげで私はこうして人間のふりをしながら彼らのために行動している。

「ん・・・充電終了」
私は通信と充電を終え、アンテナを格納してコードも収納する。
立ち上がってショーツとスカートを直し、外見を整える。
今日は買い物ついでに町中にでも出かけてみよう。
些末な情報でも彼らにとっては有意な情報となるのだから。
今晩のおかずは何がいいかしら。
今はせいぜい家族のために尽くすようにとプログラムが命じている。
いずれ時が来たら・・・
うふふふふ・・・
私は充電による満足感とは違う、何か別の喜びをプログラムによって感じさせられていた。

END

それでは皆様良いクリスマスをお楽しみください。
年末年始にはまた二三本SSを投下できるかと思いますので、お楽しみに。
ではでは。
  1. 2017/12/24(日) 20:46:30|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<桃姫悪堕ち | ホーム | 一年間ありがとうございました>>

コメント

機械になって家族との生活を取り戻したという、珍しく平和的な内容かと思いきやそこは流石の舞方節w

自分の体や行動など全ての事において疑問を感じなくなってきている様に見えますが、機械化する前に考えた家族と過ごすことの喜び等も感じなくなってしまってるんですかね( ´∀`)
「彼ら」の侵略が始まるまでは機械の体で善行などもしそうですね(=゚ω゚=)

次のSSも楽しみにしてますー( ≧∀≦)ノ
  1. 2017/12/24(日) 21:34:58 |
  2. URL |
  3. IMK #-
  4. [ 編集]

おつかれさまでしたー
いい意味で騙された作品でした

前半ウルトラ的正義ヒロインの話なのかと思ったら後半…
いやこういうどんでん返しは面白いですねえ(*゚∀゚)
読み返すと彼らの台詞が邪悪なものに見えてくる。
どっちの選択肢選んでてもってのが実に卑劣(笑)
面白かったですー!

  1. 2017/12/24(日) 23:23:50 |
  2. URL |
  3. くろにゃん #pPSiK00E
  4. [ 編集]

執筆お疲れ様です。
未知との遭遇で死にかけた所を救ってもらった・・・と思いきや、
実は侵略の為の先兵に改造されていたと言うのは意表を突かれましたね。
彼女の他にも改造された人間が多数いる辺り、
「彼ら」の次元を超えた誤射が過失じゃ無く故意に思えて来ますね。
楽しませていただきました。
  1. 2017/12/25(月) 03:22:22 |
  2. URL |
  3. MAIZOUR=KUIH #gCIFGOqo
  4. [ 編集]

コメントありがとうございました

>>IMK様
書いている作者も気が付かないうちに光の連中が悪の侵略者になってました。(笑)
彼女にとってはもう家族と過ごすこともプログラムによる動作になってしまっているのかもしれませんねぇ。
次は30日に投下しますのでお楽しみに。

>>くろにゃん様
まさにおっしゃる通り、この作品はある意味「ウルトラマン」のパロなんですー。
なのにいつの間にか侵略者側に。(笑)
銀と赤の巨大ヒロインになったママも見てみたかったかも。

>>MAIZOUR=KUIH様
世の中早々うまい話はなかったということで。(笑)
彼らも手駒が増えたことで、侵略スケジュールを早めるかもしれませんねー。
  1. 2017/12/25(月) 20:49:55 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

途中まで「こういう悲しいながらも微笑ましい話もいいな~」って思ってたらまさかの結末ですか(笑)
いや~いいオチでした。
  1. 2017/12/26(火) 00:34:18 |
  2. URL |
  3. g-than #-
  4. [ 編集]

>>g-than様
コメントありがとうございます。
作者も途中まで騙されておりました。(笑)
  1. 2017/12/26(火) 18:52:14 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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