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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

紋章からの声(3)

「紋章からの声」も今日で3回目です。
後半に入りました。
お楽しみいただければ嬉しいです。


目覚ましのアラームが鳴る。
もう朝だわ。
起きなくちゃ。

私は上半身を起こして躰を伸ばす。
うーん・・・
気持ちいい・・・
なんだかすがすがしい気分だわ。
最高。

ひくひくと触角が動く。
両脇の歩肢がざわざわと蠢いている。
そうか・・・
昨晩はこのまま眠ってしまったんだわ。
私は布団をはねのけて起き上がる。
フローリングの床に私のかかとが当たって音がする。
なんだかいい音。
私の外皮の硬さを感じさせてくれる音だわ。

私は立ち上がって姿見のところへ行く。
鏡の中からムカデ女の私が見つめ返してくる。
黒く丸い単眼。
額から伸びる太めの触角。
両顎に挟まれたような私の口元は真っ赤な唇がいやらしい笑みを浮かべている。
両脇に連なる歩肢。
茶褐色の外骨格。
黒いアンダースーツに覆われた躰。
全てが私。
ムカデ女の私。
偉大なるボーハッツの怪人ムカデ女。
それが私。

「キキーッ!」
私は右手を斜めに上げて服従声をあげる。
ボーハッツのしもべであることの宣誓の声。
服従声をあげることで、心の中により深くボーハッツの一員である誇りと喜びが広がってくる。
「私はムカデ女。偉大なるボーハッツの忠実なるしもべです。いかなる命令にも従います」
誰に聞かせるでもなく、私はそう口にする。
でも、ベルトのバックルがちゃんと私の言葉を聞いてくれている。
そんな気がした。

はい・・・
ご命令のままに・・・
私はボーハッツより与えられた命令を思い出す。
テラズファイターの司令官に擬態し、その司令部を支配すること。
それこそが私の使命。
ご命令に従います。
「キキーッ!」

私は自分の外皮を外し、ヘルメットを脱ぐ。
テラズファイターの司令官である女の顔が鏡に映る。
これは誰?
これは私?
そうだわ・・・私はこの女に擬態しなくてはならない・・・
この女に擬態し、テラズファイターの司令官としてふるまうのだ・・・
私はアンダースーツを脱ぐ。
白く柔らかい無防備な人間の肌・・・
自分が自分でなくなってしまったような喪失感・・・
ご命令でなければこんな姿をするなんて考えたくもない・・・
でも・・・ご命令には従わねば・・・

私はテラズファイターの司令官の制服に着替え、身支度を整える。
この姿で活動し、すべての情報を手にしなくてはならない。
そしてこの司令部を掌握し、偉大なるボーハッツの前線拠点とする。
そのために働くのだ。

私は冷蔵庫に入れておいたドリンクを出して飲み干すと、姿見に自分の姿を映し出す。
テラズファイターの司令官の制服に身を包んだ私。
うまく擬態できているようだ。
おそらく気付かれることはないだろう。
「キキーッ!」
私は右手を斜めに上げて服従声を発する。
はい・・・
これより使命を果たします・・・
私はペンダントを制服の下に隠すと、部屋を後にした。

「おはようございます、坂木司令」
「おはようございます」
「おはようございます」
オペレーションセンターに入ると、いつものように夜間チームが挨拶をしてくれる。
「おはよう。異常はない?」
私はいつものように司令官席の町原副司令に挨拶する。
「はい、とりあえずは。ただ・・・」
「ただ?」
いつもは歯切れのいい彼女が珍しく言葉を濁したのが私は気になった。
「はい。深夜に壁を這うおかしな人影を見たという報告が一件入ってますが、報告者が酒に酔っていたとのことで、おそらくは何かの見間違えかと」
彼女の言葉に私はうなずく。
なるほどそういうことか・・・
もしかしたら昨晩の私の姿を誰かに見られたのかもしれない・・・
気を付けなくては・・・
「ほかには?」
「特に何も。昨日機動部隊一つを撃破しておりますし、ボーハッツも戦力の補充に努めているかと」
「そうかもね。でも油断は禁物よ」
「はい。わかっております」
表情を引き締める町原副司令。
彼女の能力は高く、ボーハッツの支配下となればいい働きが期待できるはず。
この女を支配し、私の手駒とすることで、この司令部の支配もしやすくなるに違いない。
まずはこの女からにするべきか?
だが、優秀なだけに気を付けなくてはならない。
一度指示を仰ぐべきかも。
気付かれてはならないのだ。

「それでは司令部を引き継ぎます。町原好美、待機に入ります」
「ご苦労様。ゆっくり休んで」
私はそのまま彼女を見送る。
ほかのメンバーも順次引き継がれ、司令部は昼間体制に移行した。

「あの・・・坂木司令」
しばらくいつものように司令官としての仕事をこなしていた私に、オペレーターの一人が話しかけてくる。
メガネをかけ、髪をショートにした娘で、相沢狭霧(あいざわ さぎり)という娘だ。
主に通信のオペレーターをやっている。
「どうしたの?」
私はいつもの通り返事をする。
「実は・・・昨晩からのデータをチェックしていたところ、この本部内から微弱な電波が発信されているようなのです」
「微弱な電波が発信?」
どういうことだろう?
「はい。それも昨晩だけではなく、三日ぐらい前からなんです」
真剣な表情の相沢狭霧。
三日ぐらい前から?
もしかして・・・
「相沢さん、そのことは誰かに話した?」
「いえ、まずは司令に報告しなきゃと思いまして」
「そう。これは大変なことの可能性があるから、今はまだ誰にも言わないで。いいわね?」
「は、はい」
「場合によっては情報漏洩の可能性もあるわ。副司令とも相談して対応するので、対応が決まり次第あなたにも教えるわね」
「わかりました」
敬礼して席に戻っていく相沢狭霧。
何とかごまかせたみたいだけど、これは対応を確認しないと。
「ちょっと席を外すわ。あとはお願い」
私はそう言って席を立った。

控室に入ってカギをかける。
これでここには誰も来ない。
私はペンダントを制服の内側から外へ出し、そのまま洗面台の鏡に向かう。
やがてペンダントの紋章の目が赤く光り・・・
「はい」
「はい。この通信が気付かれた可能性があるかと」
「はい。それではまずあの娘から?」
「はい。かしこまりました」
「はい。私にお任せくださいませ」
私は命令を受け取る。
まずはあの娘の口を封じなくてはならない。
あの娘の口を・・・

「相沢さん」
「は、はい」
オペレーションセンターに戻った私は、相沢狭霧を呼ぶ。
「お呼びでしょうか?」
「先ほどの件、誰にも話してはいないわね?」
「もちろんです」
私の念押しに力強くうなずく彼女。
これなら大丈夫だろう。
「今晩その件で副司令と話し合うわ。あなたにも同席してほしいの。いいわね」
「あ、はい。了解です」
「それではちょっと遅くて悪いんだけど、2130に私の自室に来てほしいの。場所はわかるわね?」
「2130ですね? 了解です。場所はわかります。何かデータをまとめたほうがよろしいですか?」
「必要ないわ。あなたの証言がほしいの」
「了解しました」
引き締まった表情で敬礼する相沢狭霧。
司令官に自分が必要とされていると感じているのだろう。
これでいい・・・

                    ******

一日の任務を終え、夜間チームに引き継ぎを終えた私は、自室に戻って着替えをする。
これから来る獲物を待ち受けるために・・・
偉大なるボーハッツのために・・・

ピンポンと呼び鈴が鳴る。
2130ちょうど。
時間に正確なのは好ましいわ。

「どうぞ」
私はインターコムにそう告げる。
さあ、いらっしゃい。
最初の獲物はあなたになるのよ。
私はなんだかゾクゾクするものを感じている。
ボーハッツのために働けるのだ。
偉大なるボーハッツのために・・・

「失礼します。えっ?」
室内に入ってきた相沢狭霧が驚いている。
それも当然だろう。
人間は暗闇では目が見えない。
明かりを消してある室内に戸惑ったに違いない。
クフフフ・・・
こんな闇など私にはどうってことないのにね。

「司令? 坂木司令?」
玄関わきのスイッチを探す相沢狭霧。
気配を消して天井に潜む私には、その様子が手に取るように見える。
もっとも、この部屋は一般隊員の部屋とそれほど造りに違いはないから、すぐにもスイッチは見つかるだろう。
だがそれまでに数秒はかかる。
それでいい。

私は天井から這い降りると、すぐに玄関の鍵をかける。
「えっ? 何?」
カチャッという音が彼女にも聞こえたのだろう。
「誰? 司令? 坂木司令ですか?」
目が慣れ、うっすらと室内の様子が見えているはず。
私は入口の所に立ち、彼女を逃がさないようにする。
「こんばんは、相沢さん」
「司令? どうして部屋の明かりを?」
彼女が探り当てたスイッチを押す。
室内に明かりがつき、私たちの姿があらわになる。
「えっ? ひっ?」
すぐ近くに私が立っていることに驚いたのだろう。
悲鳴をあげようとした彼女の口をふさぎ、私は彼女を押し倒す。
「む、むぐっ!」
必死で抵抗する彼女。
でも、私の力にはかなわない。
クフフフ・・・
気持ちいい・・・
人間ってこんなに弱い生き物だったんだわ。
クフフフフ・・・

「おとなしくしなさい、相沢狭霧。死にたくはないでしょ?」
彼女の目が驚愕に見開かれる。
おそらく私の声に気が付いたのだろう。
突然襲われて押さえつけられた相手が、まさか司令官だったとは思わなかったに違いない。
「さあ、私の音をお聞きなさい」
私は彼女の目を見つめながら、触覚と歩肢を震わせて洗脳波を出す。
クフフフフ・・・
これで彼女は私のもの・・・

「む・・・ぐ・・・」
彼女の目がとろんとなる。
洗脳波が効き始めたようだ。
もう手を放しても大丈夫だろう。
私はそっと彼女の口から手を離す。
「あ・・・」
口が自由になったにもかかわらず、叫び声をあげたりする様子はない。
いい感じだわ。

「さあ、起きなさい。相沢狭霧」
私は彼女の上からよけ、彼女を自由にする。
ぼうっとした表情でゆっくりと立ち上がる彼女。
「私のほうを見るのよ」
「・・・・・・はい」
彼女がうつろな目で私のほうに向きなおる。
「お前はもう私の虜。私の命令にはなんでも従うしもべ」
「・・・・・・はい。従います」
「これが何かわかる?」
私は腰にはめたベルトのバックルを指さす。
偉大なるボーハッツの紋章。
私のすべてをささげる紋章。
「・・・はい。暴発軍団ボーハッツのマークです」
「そう。今日からこの紋章があなたの支配者。あなたはこの紋章に忠誠を誓うのよ」
「・・・はい。忠誠を誓います」
「テラズファイターはボーハッツの敵。それを脳に刻み込みなさい」
「・・・はい。刻みます」
「では、右手をこう斜め上に上げ、キキーッと服従の声をあげなさい」
「・・・はい。キキーッ!」
彼女が右手を上げ服従声をあげたところで、私は洗脳波を最大にする。
「あ・・・」
彼女の心にボーハッツへの服従心とそれに伴う心地よさが刻み込まれたはず。
これでこの女はボーハッツのしもべ。
クフフフフ・・・

私は部屋から紙袋を持ってきて、中から女戦闘員のコスチュームを取り出す。
全身を覆う全身タイツになっていて、着ることで強靭な防具となり、肉体を保護してくれるものだ。
「さあ、着ているものをすべて脱いでこれに着替えなさい」
「・・・はい。司令」
私は苦笑する。
「私はテラズファイターの司令官などではないわ。この姿の時はムカデ女様と呼びなさい」
「・・・はい。ムカデ女様」
着ているものを脱ぎ全裸になる相沢狭霧。
そして差し出された全身タイツを着こんでいく。
オペレーターとはいえ、それなりに引き締まった肉体が女らしいボディラインを見せている。
クフフフ・・・
人間たちは基本的に男が戦うもの。
こうして見るからに女と分かるボディラインであれば、戦いにも一瞬の躊躇が生まれるはず。
それこそが女戦闘員の大きなメリット。
さすがは偉大なるボーハッツ。

長手袋をつけ、ハイヒール状のブーツを履き、最後に私と同じボーハッツの紋章の付いたバックルのベルトを付ける。
これで彼女は眼だけを除き、すべてが黒に包まれた。
ボーハッツの女戦闘員としてふさわしい姿。
ボディラインも露骨に表れ、男たちが見れば思わず息をのむだろう。
クフフフフ・・・
バカな人間たち。
偉大なるボーハッツの恐ろしさを知るといいわ。

「さあ、こっちへ来なさい」
私は女戦闘員を姿見のところへと連れて行く。
全身を映す姿見に、その姿を映し出させ、女戦闘員となったその姿を脳裏に刻み込ませるのだ。
「さあ、ごらんなさい」
「・・・はい」
全身黒一色となった彼女が姿見を見つめる。
「これが本当のお前の姿よ。お前は偉大なる暴発軍団ボーハッツの女戦闘員。ボーハッツの命には絶対服従し、ボーハッツにすべてをささげるのがお前の喜び。脳にしっかり刻み込みなさい」
「・・・はい。私は偉大なるボーハッツの女戦闘員。ボーハッツにすべてをささげ、命令に従います」
「それでいいわ。さあ、服従声を。キキーッ!」
「キキーッ!」
私は女戦闘員となった彼女と二人で右手を挙げて服従声を出す。
気持ちいい・・・
偉大なるボーハッツに栄光あれ・・・

                  ******

(続く)
  1. 2017/07/19(水) 20:12:05|
  2. 紋章からの声
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

司令に頼りにされたと思った喜びが恐怖に変わり、それもすぐにボーハッツへの忠誠心に変わってしまう・・・抵抗もさせず有無を言わさず洗脳してしまう描写が素晴らしくて興奮しました!(*゚∀゚)=3
次回から戦闘員がジワジワと増えていくのかそれとも一気に増えるのか、楽しみです!(*゚∀゚*)
  1. 2017/07/19(水) 21:34:08 |
  2. URL |
  3. IMK #-
  4. [ 編集]

まずは一人目ですね。
次は誰を堕とすのか楽しみです。
  1. 2017/07/19(水) 23:42:19 |
  2. URL |
  3. sen-goku #rFnOs2i6
  4. [ 編集]

>>IMK様
洗脳波による即堕ちみたいなものでしたが、それがかえってムカデ女の能力の高さになっているかなと思いました。

>>sen-goku様
お楽しみに―。(*´ω`)
  1. 2017/07/20(木) 19:08:26 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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