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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

グレイバー(2)

本日21時ごろ、七十万ヒット到達しました。
皆さんありがとうございました。

これからもよろしくお願いいたします。

今日はグレイバーの2回目です。
楽しんでいただければ幸いです。


2、
気を失わせたグレイバーを弥生ちゃんの替わりに牢に入れて鍵をかける。
「さ、脱出よ」
私は弥生ちゃんにそう言うと、ドアをそっと開けて左右を見た。
薄暗い通路は静かで不気味。
でも、人影は無い。
私は後ろにいる弥生ちゃんにうなずいて見せると、彼女を連れてそっと部屋を出る。
こんなところはさっさと抜け出さないとね。
セーバーチームに知らせれば、お兄ちゃんたちがこんなアジトは破壊してくれるわ。
そのためにも一刻も早く・・・

変・・・だ・・・
この通路はまっすぐだったはず・・・
こんなところに曲がり角なんて・・・
迷った?
似たような通路だったから・・・
でも、一本道だったはず・・・
どうして?
私は少し焦っていた。
エレベータを降りて、一本道の通路をやってきたはずなのに・・・
部屋を出た時に左右を間違えた?
そんなはずないよ。
方向音痴じゃないもん。
でも・・・
それじゃどうしてエレベータに着かないの?

「秋奈さん・・・」
心配になったのか弥生ちゃんが背後から声をかけてくる。
「ん、何?」
私は努めて明るい声を出した。
内心の不安を知られるわけには行かないもんね。
「・・・大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。もう少しで出口よ」
私は自分自身に言い聞かせるようにそう言った。

突然、ウインウインウインと警報が鳴り始める。
いけない!
見つかった?
『グレイバーに告ぐ、グレイバーに告ぐ。確保した人間が脱走した。直ちに捕獲せよ!』
インビーナの声だわ。
きっと牢に入れたグレイバーが気がついたんだ。
どうしよう・・・

「秋奈さん、大変。後ろから足音が」
弥生ちゃんが不安そうに私の肩を叩く。
振り向いた私の耳にも、確かに複数の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえてきた。
この通路は左右を壁に囲まれたトンネル状の通路。
前後を挟まれたら逃げ場所はない。
「弥生ちゃん、走るわよ!」
「はい」
私は弥生ちゃんを引き連れて走り出す。
お願い・・・
エレベータにたどり着いて・・・

『ルーィ』
『ルィ、ルーィ』
私は足を止める。
前からもグレイバーたちの声がするのだ。
「秋奈さん・・・」
「弥生ちゃん、ごめんね。どうやら挟まれちゃったわ」
私は必死に左右を見る。
どうにか逃げ場は・・・
あった!
通路の脇にドアがある。
何があるかわからないけど、このままここにいるよりはずっとマシ。
「秋奈さん」
「うん、あそこに隠れよう」
私は弥生ちゃんを連れてドアのところに行き、手を掛ける。
幸い鍵は掛かっておらず、ギイという音を立ててドアは開いた。
私は素早く中を覗く。
中は真っ暗で、何となくひんやりしていた。
どうやら敵の気配はないわね。
隠れるには都合が良さそう。
「弥生ちゃん、入るよ」
「はい」
私は弥生ちゃんをカバーするようにして部屋に入り、ドアを閉じた。

『ルーィ』
『ルーィ』
ドアの向こうではグレイバーたちの声が錯綜している。
きっと私たちを見つけられないで焦っているのかもしれない。
どうにかここを脱出しなきゃ・・・
私はともかく弥生ちゃんは民間人。
なんとしても助けなきゃ・・・
「秋奈さん・・・」
私の上着の裾をそっと握り締めてくる弥生ちゃん。
心細いんだわ。
私がもっとしっかりしなきゃ。
「大丈夫よ弥生ちゃん。絶対にここから連れ出してあげるからね」
「はい」
不安そうにしながらも笑みを見せてくれる弥生ちゃん。
えらいなぁ。
私を励ましてくれているんだわ。
ありがとう。

闇の中、寄り添って壁に背中を付け座り込んでいる私たち。
通路からはグレイバーの声はもうあまり聞こえない。
どうやら助かったようね。
でも、油断は禁物。
もう少し様子を見た方がいいわ。
「秋奈さん・・・あれ、なんでしょう?」
弥生ちゃんが闇の中を指差す。
薄暗い通路だったとはいえ、それでも明かりのあった通路からこの真っ暗な部屋に入ったのだ。
闇に目が慣れるまでは少しかかった。
「あれは・・・」
部屋自体はさほど広くない部屋だ。
いくつもの箱が置いてあり、上からは何か薄っぺらなものがぶら下がっている。
私は立ち上がると、そのぶら下がっているものを見に行った。

「レオタード?」
ぶら下がっていたのは、なんとあのグレイバーたちの着ているような漆黒のレオタードだった。
口元だけが覗くような頭部を覆うマスクが付いたレオタード。
これって、つまりグレイバーたちの衣装ってことよね。
「これって・・・レオタードですか?」
弥生ちゃんも驚いたのか口元に両手を当てている。
「そのようね。でも、これはチャンスだわ」
「チャンス?」
弥生ちゃんに私はうなずいた。
グレイバーがどのように作られているのかはともかく、この衣装を着てグレイバーに変装したら、きっと怪しまれずにこのアジトを出ることができるわ。
「これを着て奴らの仲間に変装するの。そうしたら、怪しまれずに行動できるわ。出口も探しやすくなる」
「でも・・・そんなに上手く行くでしょうか? それに・・・着ても大丈夫なんでしょうか?」
弥生ちゃんの心配ももっともだわ。
でも、今のままじゃ、他に手段がないことも事実。
細心の注意を払って着れば、何とかなると思うわ。
「ここを抜け出すまでの間だけ。ここを抜け出したらすぐに脱ぎましょう。だからほんのちょっとだけ我慢して」
私の言葉にしぶしぶうなずく弥生ちゃん。
当然だよね。
私だってこんなところでレオタード着るなんて思わなかったもん。
でも、今のカッコじゃすぐ見つかっちゃうわ。
仕方ないのよ。

私は手を伸ばすと、ぶら下げられているマスク付きレオタードを取り外す。
すべすべした手触りがなんだかとても素敵。
これを素肌に着るって、もしかしてすごく気持ちいいのかも・・・
何を考えているの、私?
私は首を振ると、手近な箱を開け、一式全てを取り出した。
うわぁ・・・
黒い革でできたような長手袋。
かかとが高いハイヒールになっているロングブーツ。
薄い滑らかな繊維でできているパンティストッキングのようなもの。
そして、暗黒組織ルインの紋章の入ったバックルのついたベルト。
まさにグレイバーのコスプレセットだわ。
どうしてこんなものが・・・
やっぱり中身は女の人?
そういえば女幹部インビーナだって普通の女性と変わりない姿だわ。
暗黒組織の連中、人間と同じ姿をしているのかも・・・

見ると弥生ちゃんもレオタードを取り外して、コスプレセットを広げている。
こんなところで真剣にコスプレしようとしているなんて、なんか私たちって間抜けっぽいね。
「まず、私が着てみるね。外から見てて変だったらすぐに教えて」
「はい」
真剣な表情でうなずく弥生ちゃん。
可愛いなぁ。
こんな妹欲しいなぁ。
お兄ちゃんじゃ可愛らしさどころか、かっこよさもないもんね。

私は意を決すると、上着もスカートもブラウスも脱いでいく。
弥生ちゃんのじっと見つめる視線がちょっと恥ずかしいけれど、服の上から着るわけにいかないもんね。
靴を脱いで、ナチュラルベージュのパンストも脱ぎ・・・
「ご、ごめん。ちょっとだけ後ろ向いてくれる?」
女同士でも何となく恥ずかしい。
「えっ? 下着も脱ぐんですか?」
弥生ちゃんが驚いた。
「うん。レオタードって下着の線も出ちゃうから、下着も脱がないとまずいと思うの」
「あ、はい。わかりました」
くるっと振り向いて私に背を向けてくれる弥生ちゃん。
私も弥生ちゃんに背を向けながら、ブラとショーツを脱いでいく。
ひんやりした空気が肌寒い。
まずはこれよね。
私は裸になったところで、急いで黒のパンストのようなものを手に取った。
サイズ的に問題は無いと思うけど・・・
伸縮性有りそうだし・・・
でもこれって・・・
確かに形はいつも穿いているパンストだけど・・・
腰のところの伸縮部分もボトムの継ぎもないわ。
穿いても下がってくるんじゃないかなぁ。
レオタード着るから大丈夫なのかな?
でも、それにしたって・・・
私は少しの間目の前のパンストのようなものを見つめていた。
とにかく裸でいるわけにいかないわ。
私は気を引き締めると、くしゃくしゃとつま先を手繰り寄せ、右足から通していった。
  1. 2007/07/03(火) 21:04:18|
  2. グレイバー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

人間じゃない生き物

70万ヒットおめでとうございます。

自分の意志でグレイバーのコスプレしちゃうから、秋奈たちどう変化するか楽しみですね。内臓組織もどう変化するのかな?
  1. 2007/07/03(火) 21:24:49 |
  2. URL |
  3. mas #d58XZKa6
  4. [ 編集]

SS2

あ~っ!!キリ番狙ったのに・・・、10遅かった・・・。
ということで、70万ヒットおめでとうございます。
5夜連続の第2夜、楽しませてもらいました。
予想していた展開と違っていました。弥生ちゃんはてっきりもう洗脳されているのかと思いました。秋奈よりも弥生ちゃんにはまってしまいました。あんな可愛い妹が欲しい。
明日が楽しみです~。
  1. 2007/07/03(火) 21:29:04 |
  2. URL |
  3. metchy #-
  4. [ 編集]

前者です

ご指摘の通り2通の名無しは一人です。
そして・・・前者『悪がセーバーズ』に勝って欲しいんです。女性は全員悪に落ちて嬉々として悪の活動に従事してる姿を見たいです。
  1. 2007/07/03(火) 21:35:53 |
  2. URL |
  3. 名無し #-
  4. [ 編集]

70万ヒット、おめでとうございますー。
しかも記念作品まで公開してくださるとは…くくぅ!いいっすねー。
王道(?)(笑)のラバースーツ悪堕ちものですね、次回からの“スーツにとらわれていく”展開が楽しみです。
期待してますー、それではー。
あと改めて、おめでとうございます。
  1. 2007/07/04(水) 01:42:35 |
  2. URL |
  3. 空風鈴ハイパー #-
  4. [ 編集]

ご無沙汰しております

70万ヒットおめでとうございます。

そして楽しませて頂いております。
実は私も、弥生ちゃんは洗脳されてるのではないかと思っておりました。

続きを楽しみにしております~。
  1. 2007/07/04(水) 03:18:01 |
  2. URL |
  3. 折尾楽太郎 #-
  4. [ 編集]

皆様コメントありがとうございます

>>mas様
そのあたりは明確にはしていないですが、おそらくは・・・
ですね。

>>metchy様
惜しかったですね。
80万ヒットの時には是非。(笑)
弥生ちゃんが可愛いと思ってもらえて嬉しいです。
ありがとうございます。

>>名無し様
いいですよね~。
嬉々として悪に染まった行動を取る女性たち。
そういうシーンも書いて行きたいものです。

>>空風鈴ハイパー様
スーツを着せられて・・・ではなく、スーツを着ちゃってというところを強調しようと思いました。
楽しんでいただければ嬉しいです。

>>折尾楽太郎様
ありがとうございます。
弥生ちゃんはすでに洗脳・・・実は私も最初はそう思っておりました。
このあとどうなるかお楽しみにー。
  1. 2007/07/04(水) 20:29:44 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

70万ヒットおめでとうございます!
遅ればせながらコメントさせていただきます。

うーん、70万ヒットですか~!
「凄い!」の一言に尽きますね。
こうやって歴史は作られていくんだなあと
しみじみ感じております。
北の夏は短いですが、ブログはいつまでも
熱く!長く!マイペースで頑張ってください!
  1. 2007/07/04(水) 20:51:45 |
  2. URL |
  3. grendy #-
  4. [ 編集]

>>grendy様
ありがとうございます。
これからも長く続けて行きたいですね。
頑張ります。
  1. 2007/07/05(木) 20:55:40 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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