第二次世界大戦前、各国の軍隊は当時まだ装甲の薄かった戦車の搭乗員を殺傷することのできる対戦車ライフルを、歩兵用の対戦車兵器として装備しておりました。
この傾向はソ連軍も例外ではなく・・・といいたかったのですが、実は第二次世界大戦開始時には、ソ連には有効な対戦車ライフルがありませんでした。
いくつか開発はされていましたが、いずれも威力不足で量産には至らず、さらに戦車は対戦車砲で対処するというのがソ連軍のテーゼだったので、いまさら対戦車ライフルを作る気にもならなかったのです。
ところが、1941年にドイツ軍のバルバロッサ作戦が開始されると、ドイツ軍戦車に対抗できる歩兵の携帯用対戦車兵器は火炎瓶(モロトフカクテル)と、針金でまとめた結束手榴弾しか無いという状態でした。
そこで大慌てで物になりそうな対戦車ライフルを製造することにしましたが、威力のそれなりにある14・5ミリ弾を撃てる対戦車ライフルはワシーリィ・デグチャレフとセルゲイ・シモノフ両名に設計を依頼します。
両名が設計した対戦車ライフルはまったく対照的なものでした。
デグチャレフは単発式の一発ずつ弾を込めるタイプの対戦車ライフルを設計し、シモノフはガス圧作動の自動式の五連発対戦車ライフルを設計します。
シモノフ式対戦車ライフル(PTRS)は性能はよかったのですが、やはりどうしても構造が複雑になり、生産性がデグチャレフ式対戦車ライフル(PTRD)に劣ります。(当然のことですが)
しかし、シモノフに政治力があったのか、ソ連軍はこの二種類の対戦車ライフルを正式に採用しました。
1941年8月29日のことです。
デグチャレフの対戦車ライフルは、単発式で構造も単純なため、正式採用の翌日には工場から完成品が吐き出されたという噂があるほど、量産性には優れていました。
1941年終了までに、なんと一万七千丁以上が完成したということです。
シモノフのPTRSが七十丁しかできていなかったことを考えると、生産性の違いは明白でした。
デグチャレフのPTRDはボルトアクション式で全長約2メートル、重量約18キログラム。
装甲貫通力は100メートルの距離で40ミリの装甲を撃ちぬきました。
ドイツ軍は四方八方から飛んでくる対戦車ライフル弾に辟易して、ついに砲塔周囲や車体側面に「シュルツェン」と呼ばれる補助装甲をつけるようになるのです。
一方のシモノフ型対戦車ライフルPTRSは、複雑な機構が災いして生産性が低く、しかも冬の戦場ではガス圧での作動に不具合が続出していい評価を得られませんでした。
全長は同じぐらい(約2メートル)でしたが、重量はやはり重く、約21キログラムになりました。
しかし、弾の方は同じなので、貫通力は同じだったので、細々と生産は続けられ、ソ連軍の対戦車ライフル部隊の一画を占めていたようであります。
しかし、シモノフ型対戦車ライフルは、日本では結構有名ではないかと思われます。
それはあるアニメがきっかけでした。
そのアニメの中で、シモノフ型対戦車ライフルは、五連発の有利さと装甲貫通力を遺憾なく発揮したのです。
「ルパン三世 カリオストロの城」
このアニメの中で、次元大介は全長2メートル、重量21キログラムのこのシモノフ型対戦車ライフルを振り回し、装甲に身を包んだカゲたちをなぎ倒していったのです。(笑)
おそらく彼に使われたPTRSが一番活躍したPTRSだったのではないでしょうか。
それではまた。
- 2007/06/12(火) 21:44:29|
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前線の兵士で戦う兵士にとって大事なのは
1、生産数が多く、補充が利きやすい
2、構造が頑丈で壊れにくい
3、そのためにメンテナンスが楽
4、兵器として充分有効性がある
ってところですからね。ソ連のような自然環境が苛酷なところの場合、凍結などにも強くなければいけないですからシンプルな武器がこのまれたのでしょうな。
ライフルってほとんどが一発込めのものが多いですね。安定性とか考えたらしかたがないのでしょうか?
そう考えるとゴルO13がM16で精密狙撃するのは現実離れしてるのでしょかね?^^ではまた^^
- 2007/06/13(水) 21:06:17 |
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>>あぼぼ様
トカレフの自動拳銃なんかは手袋つけた状態で撃てるように、トリガーガードが広く作ってあったりしますし、AK47あたりも作動部分が極力少なく作ってあるということで、確実に作動するようになっているとか。
ソ連製兵器は作りは雑だが頑丈で故障が少ない。
といわれたのは昔のことかなぁ。
でも、肝心な時に故障してしまうような兵器に命を託したくないですからねぇ。
確実に作動するというのは重要なことでしょうね。
- 2007/06/13(水) 21:18:08 |
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