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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

敵艦離脱

今日はホリドルでも帝都でもなく、ローネフェルトの続きを投下しますね。

楽しんでいただければ幸いです。
それではー。

『そっちー! 武装の準備できてんの?』
『推進剤は満タンか? 敵は待っていちゃくれないんだぞ!』
『パイロットは誰が乗るんだよ? この艦にはパイロットは乗っていないんだろ?』
『艦長命令だ! たまっころから上がってきたやつが乗るんだろ!』
『宇宙の実戦大丈夫なのかよ?』
『知るか!』
喧騒に満ちているハンガーデッキ。
全ての会話が一つの周波数で行なわれているために、誰が誰に向かって言っている言葉なのか慣れないと聞きづらい。
ノーマルスーツとヘルメットをつけた私は、ハンガーデッキにやってくる。
無論私の後ろにはアヤメが付き従ってきていたが、私ははたと思い当たった。
アヤメはモビルスーツで宇宙戦をこなしたことはあったのだろうか・・・
うかつだった・・・
アヤメが宇宙戦闘機乗りだったことばかり考えていて、モビルスーツでの宇宙戦闘をこなしたことがあったのかは聞いていなかったわ。
「アヤメ、あなた宇宙戦闘は?」
『えっ? もちろんありますよぉ。』
よかった・・・
『シミュレーションですけどぉ』
ヘルメットのバイザーの向こうで笑みを浮かべているアヤメ。
「・・・あなたは残りなさい。これは命令です!」
『えっ?』
私の言葉に意外だと言う表情に変わるアヤメ。
でも、宇宙でのモビルスーツ戦は簡単なものではない。
敵の戦力ははっきりしていないけれど、モビルスーツだっているでしょう。
だとしたらいくらアヤメでも・・・
『いやです・・・』
「えっ?」
『いやです・・・お姉さまのそばにいさせてくださいぃ』
アヤメは首を振る。
でも・・・
「これは命令よ! あなたは今回は艦に残りなさい!」
『いやですぅ』
この娘は・・・
「宇宙での実戦経験の無いあなたは足手まとい・・・」
私はハッとした。
『足手まとい・・・』
アヤメの表情が凍りつく。
「アヤメ・・・ち、違うの」
『あ・・・足手まとい・・・あは・・・あははは・・・私は・・・足手まといなんだ・・・お姉さまの・・・邪魔なんだわ・・・』
アヤメの口元には自虐的な笑みが浮かび、その目からはぽろぽろと涙が零れ落ちる。
『私・・・捨てられた・・・お姉さまに捨てられちゃった・・・あは・・・あははは・・・』
糸の切れた人形のように立ち尽くしつぶやいているアヤメ。
「アヤメ!」
私はアヤメを抱きしめる。
『私は・・・私は捨てられた・・・』
「違う・・・違うから・・・そうじゃないから」
私は必死でアヤメをなだめる。
『大尉殿! 何をしているんです! 発進準備できているんですよ!』
「わかっている!」
私は思わず怒鳴りつける。
「えっ?」
『うふ・・・うふふ・・・』
薄く冷たい笑みを浮かべて私を押しやるアヤメ。
「アヤメ!」
『うふふ・・・』
トンッとキャットウォークを踏み出し、モビルスーツへ飛んで行くアヤメ。
「アヤメ! 待って!」
私は自分のうかつさに後悔したが、それどころではない。
『ああっ! ミナヅキ少尉、それは大尉殿が乗るはずじゃ?』
『邪魔だ! どけ!』
「アヤメ!」
後を追った私の目の前でYMS-11のハッチが閉じる。
モノアイが輝き、固定具から機体が外される。
「アヤメ! 待ちなさい!」
『どけ! 邪魔するなぁ! 私は・・・私は足手まといじゃないぃ!』
YMS-11はゆっくりと歩き出し、後部発進口へ向かう。
『どけぇぇぇぇぇ!』
「アヤメェェェェェ!」
私の声をよそにすざまじい勢いの推進剤が撒き散らされ、YMS-11はブリュメルを飛び立っていった。

『敵艦よりモビルスーツが発進したようです! その数一機!』
『一機だと? 時間を稼ぐつもりだな。逃がすなよ!』
ブリッジの通話がコクピットに流れてくる。
モビルスーツが出てきたか・・・
当然のことだろうな。
ジオンの制宙権の要はモビルスーツだ。
ムサイ級の巡洋艦始めジオンの艦艇はおおよそモビルスーツの搭載能力を備えている。
今まで出撃してこなかった方が不自然だったのだ。
もっとも、今回の敵はあまり戦闘に手馴れた感じはなかったが・・・

『敵モビルスーツ、急速接近!』
『バカな! 速すぎる!』
嘘だろ・・・
艦長の驚きは俺と同じだ。
ザクならこんなに・・・
まさか赤い彗星?
地球にいると聞いたが・・・
あのHLVで?
俺はじりじりしながらコクピットに座っていた。

『熱紋照合・・・データにありません!』
『新型か?』
新型?
赤い彗星でもR型ザクでもない?
勘弁してくれよ・・・
そんな奴と戦わせられるのは・・・

『バーナード少尉! 出撃だ! 発進しろ!』
ロイス・メンデス艦長の命令が下る。
俺は唇を噛み締めた。
仕方が無い。
命令ならば従うしかない。
「ラバフ曹長、モード軍曹、出撃だ!」
『『了解!』』
僚機の返事を聞きながら俺はRB-79「ボール」を発進させる。

アヤメ・・・アヤメ・・・無事でいて・・・
私は06FZを発進させる。
以前乗っていた06Cとは雲泥の違い。
これが同じザクだと言うの?
まるでまったくの別物だわ。
『マリー。ミナヅキ少尉の機体はまっすぐに敵艦に向かっているわ。それにしても速い』
「彼女を援護できますか?」
『やってみるわ。速度維持のまま回頭! 主砲、斉射二連。撃てー!』
ベクトルはそのままに回頭したブリュメルが主砲を斉射する。
もちろん牽制以外の何者でもないものの、連邦軍をかく乱できればそれでいい。
敵は巡洋艦が二隻。
小物が発進している。
モビルポッドのようね。
あんなのにアヤメがやられるとは思えないけど・・・
集中攻撃を受けたら危ないわ。
私は06FZを敵の只中に踊り入らせた。

『どけぇぇぇぇぇぇ!』
『隊長ぉぉぉぉぉぉ・・・』
「イスタンブール」所属の三番機が一瞬にして破片となる。
「速い!」
ほんの一瞬にして敵の新型は急激に接近して一撃離脱する。
照準機に捉える暇さえありはしない。
しかも敵は我が軍の戦闘用周波数に割り込んで笑い声を上げている。
いや、泣き声にも聞こえるか。
『あは・・・あははははは・・・私は・・・私は・・・』
「ラバフ曹長、モード軍曹、俺の周囲に集まれ。集中射をかける!」
『『了解!』』
すぐに俺の周囲に二機のモビルポッドが集まってくる。
わずかな機動性しか持たないボールは、その唯一の長所である砲撃力を集中するしか勝ち目は無い。
『隊長、敵の新型の速度は・・・』
「わかっている。R型にまさるとも劣らないスピードだ」
だが・・・
敵の攻撃はモビルスーツらしくない。
R型の場合はその速度変更能力、つまり機動力を生かして急速に接近し、ベクトルを合わせて攻撃し、また速度を上げて離脱すると言うものだ。
しかし今回の新型は直線的に接近し、速度を落とすことなく攻撃を加えて去っている。
まるでセイバーフィッシュのようだ。
これならやれるかもしれない。
「いいか。敵は速度こそ速いが動きは単調だ。「サラゴサ」を基点に二時の方角、下角12度に射点を設定。次の接近時に一斉射撃だ!」
『『了解!』』
二人の返事に俺はタイミングを計る。
だが、そうは簡単にはいかないらしい。
『隊長。もう一機来ます』
やっぱりな・・・
たった一機のわけが無いんだ。
「構うな。新型に集中しろ!」
だいたい残存ボール五機で・・・
『ウワァーッ!』
光が走る。
訂正・・・残存ボール四機では一機のモビルスーツだけでも手一杯だ。
せめてジムがあれば・・・

『捨てないで・・・私はこんなに戦えるの・・・捨てないで下さいお姉さま・・・お姉さまぁぁぁぁ』
「アヤメ! 落ち着いて。誰もあなたを捨てたりはしないわ。だからコースを変えて!」
あれではいけない・・・
コースが丸わかりだわ。
あれでは未来位置に砲弾を集中されてしまう。
「アヤメ!」
敵のモビルポッドが固まっているのがわかる。
手強い・・・
あの集中砲火は食らってはただではすまない。
きっと優秀な指揮官が指揮を取っているのだろう。
もう一隻から発進したモビルポッドがばらばらなのに対して統制が取れている。
『私は戦える・・・私は戦えますお姉さま・・・だから・・・だからぁ』
「アヤメェ!」
視界の片隅でモビルポッド三機の主砲が火を噴いた。

『きゃあーっ!』
「アヤメェッ!」
YMS-11は敵の張った弾幕に頭から突っ込んでしまった。
砲弾のいくつかが至近弾となり、装甲に被害を与えて行く。
『ああ・・・あああ・・・』
「アヤメ! 下がって! ブリュメルへ下がって!」
私は必死になって06FZを走らせる。
最大速度の違いがこれほどとは・・・
この06FZだって以前の06Cや06Fに比べれば機動性は上がっていると言うのに・・・
「この距離では・・・」
私は無駄弾になるのを承知でシュツルムファウストを発射する。
なんとしてもあのモビルポッドの連携を崩さなければ。
『ごめんなさい・・・お姉さま、ごめんなさい・・・』
「アヤメ!」
アヤメのYMS-11はコースを変えない。
バカな・・・
その先には・・・

『やったぁっ!』
「まだだ! 続けて撃ち込め! まだ撃破したわけじゃない!」
俺はトリガーを引き絞る。
残弾はこの際気にしない。
残したところで沈められてしまえば意味が無い。
『隊長、あのモビルスーツはコースを変えません。このままでは・・・』
俺はハッとした。
まさかあのモビルスーツはイスタンブールに突っ込むつもりか?
「ボール04よりイスタンブール! 避けるんだ!」
俺は思わず叫んでいた。

「アヤメ! コースを変えなさい!」
『お姉さま・・・お姉さま・・・お姉さま・・・』
だめだ・・・今のアヤメは正気じゃない。
アドラー少佐たちが・・・
私は唇を噛む。
このままではコースの前方に弾幕を張られるか、敵巡洋艦に激突してしまう。
敵巡洋艦は回避行動に入ったようだけど・・・間に合うかどうか・・・
仕方ないわ。
私はトリガーを引く。
マシンガンの銃弾が一直線に伸びて行く。
「当たって・・・」
私はスクリーンを凝視する。

『隊長、イスタンブールが!』
俺の目の前でマシンガンの銃弾がイスタンブールの推進器部分に吸い込まれていく。
だめだ・・・
俺はとっさにそう思った。
エンジン部分の直撃は艦にとっては致命的だ。
ある程度の装甲はしてあっても、マシンガンの直撃に耐えるには巡洋艦の装甲は薄すぎる。
サラミス級巡洋艦CC-163イスタンブールは紅蓮の炎を吹き上げた。

「やった」
私は思わずつぶやいた。
これで敵巡洋艦の爆発はYMS-11の速度を殺し、コースも歪めてくれるはず。
少なくとも次の斉射を食らうことはまぬがれるはずだわ。
『きゃぁー!』
アヤメの悲鳴が聞こえてくる。
巡洋艦の爆発のエネルギーがYMS-11を翻弄しているのだろう。
「アヤメ、アヤメ!」
私は呼びかける。
『あ・・・お。お姉さま?』
よかった・・・
まともな返事が返ってきたわ。
「よかった・・・アヤメ、無事?」
『ああ・・・はい・・・お姉さまぁ、私は無事ですぅ』
よかった・・・本当によかった・・・
「アヤメ。機体の制御はできる? できるならブリュメルに後退して」
『は、はい。だ、大丈夫みたいですぅ。後退します』
アヤメのYMS-11は推進剤の尾を引きながらも転回し、ブリュメルへ向かった。
後は・・・

どうするんだ?
まだやるのか?
確かに敵の一機は後退中だが、敵にはまだ無傷のザクがある。
それに比べてこちらはイスタンブールを失い、ボールも二機失っている。
ちょっかいをかけた代償にしてはあまりにも大きい。
もっとも、それを後悔する暇も無くイスタンブールとともに艦隊司令は沈んでいるが・・・
『こちらサラゴサ。全機集結せよ。全機集結せよ!』
俺はホッとした・・・
後退するのだ。
ジオンの補給艦や商船相手ならともかく、巡洋艦に対してはモビルスーツを持たない連邦の巡洋艦が数で勝っていても意味が無いということなのだ。
モビルスーツが無ければ・・・
「こちらランディス・バーナード。サラゴサに後退します」
俺はボールをサラゴサへの軌道に乗せた。

「後退してくれたか・・・」
私はホッとした。
これ以上やりあうのはこちらもつらい。
あの連携したモビルポッド相手では多少のダメージは覚悟しなくてはならないだろう。
後退してくれてよかった・・・
『こちらはブリュメル。ミナヅキ少尉の収容完了。大尉殿も後退してください』
「了解」
私は06FZを帰還軌道に乗せてブリュメルへと向かっていった。
ALTION
 予測を超えてYMS-11にはミナヅキ少尉が搭乗とは・・・しかし、地上試験に出されていたアクト・ザクも最新鋭。FZをもってしても追いつけないのは納得。しかしまっすぐ敵艦に突っ込むMSというのはザク偵察型のプラモデルの箱絵を思い出します。これからどうなるのか楽しみです。
あと06F2ですが、私はあまり好きなほうではないです。MMP-78のマシンガンが実銃のカービンライフルになっているところがあまり好きになれないことですかね。ガンダムは架空戦記のはずというのが年頭にありましたから(でもアレックスは認めていたり。ファマスですが)
それでは失礼します。

3月28日 23:18

漆黒の戦乙女
アクトザク早しですね
ボール隊の集中運用、これで幾多のリックドムが屠られたか…というのがソロモン戦(作戦名チェンバロ作戦)でのボール運用法ですからこれが普通なんでしょう
アヤメちゃん大変そうですね、お姉様としては気が気ではなさそうですね
でも次はMSが相手になりそうな感じですし、苦労は続きそうですね
3月29日 23:21

舞方雅人
>ALTION様
アクト・ザクはやっぱり高機動でしょうからね。
FZでは追いつけないでしょう。
ただ、突っ込むだけなら軌道を読まれちゃいますからね。
集中砲火も仕方ないでしょうね。

>漆黒の戦乙女様
ソロモン戦はこのお話ではこれからになりますが、ボールの集中砲撃は結構破壊力があるでしょうね。
少ないリックドムをさらに減らされるのではたまったものではないですね。
アヤメの不安定さは非常につらいですね。
ローネフェルトとしては困ったものです。(笑)
3月30日 22:24
  1. 2006/03/28(火) 20:18:59|
  2. ガンダムSS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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