と言うことで、本日の更新です。
ローネフェルトの新たな戦場はアフリカとなります。
この砂漠の地で新たな戦いに望むローネフェルトをお届けしますねー。
潮風が吹いている。
太陽が照り付けている。
「オーライ、オーライ」
U-34から物資が陸揚げされていく。
ニューヤークからの輸送物資はこうして潜水艦で細々と輸送するしかない。
地中海の輸送ルートはすでに失われていた。
今回無事にトリポリにたどり着けたのは僥倖というほかは無い。
途中連邦のフリゲートに追跡を受けたものの、何とか振り切ることができたのは艦長の腕前のおかげだったでしょう。
私は艦長以下のU-34の乗組員に別れを告げ、艦を後にした。
ジャブローから帰還した私はすぐに軍本部に呼ばれ一階級の昇進を受けた。
ジャブローを攻略できなかったにもかかわらず、生き残ったものには昇進が与えられたのだ。
それは敗北を糊塗する目的と士気阻喪を阻止する目的の二つがあったのだろうけど、それが上手くはいかなかったことは明白だった。
ミナヅキ少尉は軍病院に入れられ、私は待機命令を受けてニューヤークに留まった。
その後多少の小競り合いがあったものの、我が軍は後退続き。
地上の拠点も次々と失っていた。
私は命令を受けてU-34に乗り込み、ジオン海軍の一員として水中用モビルスーツ乗りとなるのだと思った。
ところが今私はU-34を追い出され、このアフリカの港町で所在無げに過ごしている。
「宇宙へ行けって言ったって・・・どうしたらいいのよ・・・」
私は荷物を手にして桟橋を後にする。
「アマリア・ローネフェルト中尉殿。いえ、大尉殿でしたね。アフリカへようこそ」
小柄な少女が着こなせない軍服を着て敬礼していた。
「あなたは?」
私は答礼を返しながらそう尋ねる。
「はい、私はジオンアフリカ軍団所属、第999軽旅団、第444モビルスーツ中隊のモニカ・ブラウン伍長です」
まだほんの少女と言っていいかもしれないわ。
我が軍の人材不足は深刻のようね。
「アマリア・ローネフェルト大尉よ。よろしく」
「どうぞこちらへ。少佐殿がお待ちかねです」
ブラウン伍長が私の荷物を引き取り、先に立って歩き出す。
「少佐殿?」
私は一瞬アドラー少佐を思い出す。
「オスカー・ボスマン少佐殿です。第444モビルスーツ中隊の中隊長です」
ブラウン伍長が歩く先には車が用意されていた。
「どうぞ。大尉殿」
「ありがとう、伍長」
私は開けられたドアから中に乗り込む。
ブラウン伍長はすぐに私の荷物をトランクに放り込み、そのまま運転席に着くと車を発進させた。
「どこへ向かうの?」
「第444中隊の集結地が近くなんです。そちらにご案内するように申し付かっています」
「そう・・・」
私は少し襟元を緩める。
そろそろ晩秋だと言うのにこの暑さはどうだろう。
さすがに北アフリカと言うことか・・・
砂漠化だけはとどまり無く、すでにサハラは以前の倍近くの広さになっているという。
かつてヨーロッパの強国同士が最後の騎士道を発揮した場所。
狐やネズミがいると言うけどホントなのかしら・・・
私は窓の外を眺める。
舗装された道路とところどころに椰子の木が立っている以外は砂ばかり・・・
こんなだだっ広い場所ではすぐに発見されてしまうだろう。
こんなところで戦っているなんて想像もつかないわね。
第444中隊の集結地というのはすぐに見つかった。
数両のマゼラアタックやサムソントレーラーが砂漠の中で一団となって停止しているのだ。
空爆でも受けたらひとたまりも無いように思える。
キャリフォルニアやカナダ方面で見たようなグリーン塗装ではなく、デザートイエローに塗られたマゼラアタックやサムソンたち。
なるほど、これは意外と見つけにくいのかもしれないわ。
サムソンの一団の中に一台のホバートラックがある。
正面と側面にはでかでかと我がジオンの国籍マークが描かれていた。
ブラウン伍長はそのホバートラックのそばに車をつける。
「ブラウン伍長・・・これって・・・」
「はい、第444中隊の司令部車両です。見てお判りの通り、連邦軍のホバートラックを捕獲したものです」
ブラウン伍長は私のためにドアを開けてホバートラックに招き入れてくれる。
私はデザートイエローに塗られた連邦軍の車両に初めて足を踏み入れた。
ホバートラックの中は、狭いけれどもテーブルや地図などが広げられ、椅子が設置されて司令部として使えるようになっていた。
その椅子に座っていた二人の少佐がすっと立ち上がって私の方を向く。
「アマリア・ローネフェルト大尉です。ニューヤークから参りました」
私は敬礼して反応を探る。
「ああ、聞いている。宇宙に上がるってこともな。だが、宇宙へ上がるには敵の前線を突破しなくてはならん」
銀髪の少し禿げかけた太目の中年の少佐がそう言って頷く。
「敵の前線を?」
「そうだ。そのためしばしの間君は我が第444中隊に所属してもらうことになる。これはノイエン・ビッター閣下もご承知下されている」
はあ・・・話がうますぎると思ったわ。
要はここで敵を食い止めなければ、宇宙には上がれないってことね。
「了解しました。以後、よろしくお願いいたします」
私は再び敬礼した。
「うむ、よろしく頼むぞ、大尉。君には期待しておるのだ。何せ君はカナダ、アラスカ、そしてジャブローの生き残りなのだからな」
太目のお腹を揺らして笑っている少佐。
察するところこの少佐がボスマン少佐ということか・・・
「ほう、それはすごい。ぜひとも我が中隊にほしいものだ」
現地人よろしくターバンを頭に巻いたもう一人の少佐が私のほうへやってくる。
「第999軽旅団、第443モビルスーツ中隊のロンメルだ。ここに飽きたらいつでも俺のところにくるがいい」
そう自己紹介をして笑うロンメル少佐。
豪放磊落な感じでたたき上げの軍人と言う感じがする。
信頼の置ける指揮官という感覚ではロンメル少佐のほうがボスマン少佐より上のようだわ。
「ロンメル。それは困るぞ。彼女にはこれから我が隊の中核となってもらわねばならんのだ」
「ふん、それはそうだろう。君のところはモビルスーツはあってもパイロットがいないのだからな」
パイロットがいない?
いったいどういうこと?
「そんなことは無い。まだ三人残っている」
ボスマン少佐が言った言葉に私は驚いた。
三人?
たった三人?
それじゃ中隊とはとても言えないわ。
「三人か・・・実態は小隊と言うわけか・・・」
ロンメル少佐が首を振る。
「本国からの補充が届かんからな・・・パイロットは誰でもそばに置きたいものよ」
「ふん、誰でもと言いながら、しっかりと優秀なパイロットを受け取ったじゃないか」
ふふ・・・ボスマン少佐に対する恨み言のようだわ。
「ビッター閣下によくも取り入ったものよ」
「だが、パイロットもいなければ機体も無い。これでどうやって戦えと言うのか・・・」
「ふん、弱音を吐くな! 俺はいざとなればここで何年でも戦ってやるさ」
ロンメル少佐はそう言って外へ出て行く。
「いいか、ローネフェルト大尉。さっき言ったことは本当だ。いつでも俺のところに来い」
「ハッ、機会がありましたら、その時にはぜひ」
私は敬礼をしてロンメル少佐を見送った。
「まあ、座れ」
私は勧められるままに席に着く。
「自己紹介がまだだったな。俺がオスカー・ボスマン少佐。第444モビルスーツ中隊の指揮官だ」
薄くなった銀髪をなでつけながらボスマン少佐がそう自己紹介をする。
指揮官としての腕がどうなのかはわからないが、しばらくはこの人の下に居なくてはならないらしい。
「あらためまして、アマリア・ローネフェルトです。よろしくお願いいたします」
私は立ち上がって敬礼する。
「ああ、構わん、座ってくれ」
「はい」
私は再び席に着く。
「これが辞令だ。君には第二小隊を率いてもらう。ただし、今は君だけしかおらん」
「私だけ?」
私は辞令を受け取ると目を通す。
そこにはただ簡潔にボスマン少佐の指揮下に組み入れられる旨が記されていた。
「ああ、本国にはパイロットの補充を頼んではいるが・・・なかなか来なくてな・・・」
「そうですね。補給ルートは各所で寸断されていますから」
「だが、明後日には二人到着する予定だ。ロンメルは物資調達に関しては達人だが、人を調達するのは俺の方が上手いぞ」
そう言ってボスマン少佐は笑った。
「まあ、とにかく明後日には君の部下も紹介できるだろう。それまではゆっくりしていてくれ。中隊もここを動けんしな」
「わかりました。一つよろしいでしょうか?」
私は気になったことを尋ねる。
「ん? なんだ?」
「私のモビルスーツはあるのでしょうか?」
「心配するな。モビルスーツだけは七機ある。1から3番機までは第一小隊が使うが、残りは好きに使え」
ボスマン少佐は手元の書類に目を通す。
補給の不均衡がこういった形で現れているのか・・・
パイロットがここにはいなくてモビルスーツがある。
ところがある場所ではパイロットがいてモビルスーツが無いのだ。
「わかりました。品定めをさせていただきます」
「ああ、ブラウン伍長に部屋を用意させる。あとは彼女に任せろ」
「了解しました。それでは失礼いたします」
私は敬礼してボスマン少佐の指揮車両を後にした。
「こういうこと・・・」
私は驚いていた。
ブラウン伍長に案内されて連れて行かれた先はサムソントレーラーの場所だった。
「すみません、大尉殿。いつ連邦軍の攻撃があってもいいように各車両自体がパイロットの宿舎のようになっているんです」
「なるほどね。それで乗り手のいない4、5、6、7号車のどれかを好きに使えってことか・・・」
私はシートをかぶせられている車両を見てまわる。
それにしても・・・
いったいここは何なんだろう・・・
指揮車両もそうだが、物資輸送用のトラックはほとんど全てが連邦軍の捕獲品だわ。
それにマゼラアタックに混じって61式戦車まであるし・・・
まさか・・・
私は手近のサムソンのシートをはぐってみる。
「これは・・・」
サムソントレーラーの荷台に載せられていたのは、紛れも無く連邦軍のジムだった。
各所に砂漠用のフィルターを噛ませてある砂漠戦仕様のジム。
その胴体には胸のところにジオンの国籍マークが入っている。
「ほかも全部そうなの?」
私はブラウン伍長に尋ねた。
「全部と言うわけではありません。第一小隊はすべてジオン製モビルスーツですし、残りの四機のうち二機だけが捕獲したジムとなります」
「残りの二機は?」
「MS-06Dと05です」
「ふう・・・」
私はため息をついた。
姫宮 翼
砂漠での戦い。これまで以上に厳しそうですね。メンテナンス作業が今まで以上に生死を分けることになりますでしょうし。拿捕機体が多いのはやはり補給的なことなんでしょうね・・・・・・。嫌な予感がしますが。それにしても砂漠戦線にロンメルだなんて舞方さんのミリタリー的な物を感じちゃいます。
1月17日 11:46
漆黒の戦乙女
大尉に昇進したんですね、ということはアヤメちゃんも中尉に昇格してるのかなそしてアフリカだけあってロンメルやビッターなど後に活躍する人達の名前が…でも確かアフリカの外人部隊には山猫の方が…まぁこのときにもいたかどうかは分からないし、別の隊かもしれないですしねそして鹵獲機体登場ですねw仕様としては先行量産型の08登場タイプに砂漠戦仕様の改修を行っているという感じですかねでもそうするとさらに整備大変な気が…記憶が正しければこの機体の装甲ルナチタニウムだったような…?いやまぁ陸戦用ジムって言うのがMSVにあったからそっちかもしれないですねローネフェルトさん、何を選ぶのかなさすがにここで05を使う可能性は低いかな
1月17日 22:45
舞方雅人
>姫宮 翼様
砂漠の戦いは補給の戦いでもありますね。メンテナンスを怠ればすぐにただの鉄の塊になりますからねー。ちなみにロンメル少佐はZZに登場したキャラクターなんですよ。
>漆黒の戦乙女様
ギレンの野望にもジム砂漠戦仕様という機体が出てくるので、一応それをイメージしています。捕獲機を使ったほうがかえって弾薬などを捕獲して使えるので、使いやすい場合があるんですよね。ローネフェルトが使うのは・・・こうご期待ということで。(笑)
1月18日 13:44
- 2006/01/16(月) 18:49:35|
- ガンダムSS
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