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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

遠吠え (後)

昨日に引き続きまして10年記念&400万ヒット記念オリジナルSS「遠吠え」の後編をお送りします。

お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


「ん?」
一歩その家の中に入って感じたのは、においだった。
農場だから家畜を飼っているのは当たり前かもしれないが、なんというか獣臭いにおいを感じたのだ。
見るとディブも感じているらしく、鼻に手をやっている。
強烈なものではなく、微かといってもいいぐらいなのだが、なんとも獣臭かったのだ。
「エランドさん。いるなら出てきなさい。保安官だ」
ディブが奥に向かって声をかける。
玄関から奥に向かっていくと、リビングがあった。
小奇麗で片付いてはいるものの、さっきよりも獣臭さが強く感じる。
大型犬でも室内で飼っているのか?

「いったいなんですか? いきなり」
部屋の奥の扉が開き、男が一人現れる。
やつだ。
夕べ妻をさらっていった男だ。
「失礼、郡保安官だ。トニー・エランドだな? 聞きたいことがあったので入らせてもらった」
ディブがライフルを肩に担ぐ。
「ああ、こんにちは保安官。今日はいったい何の用です?」
ふてぶてしくも落ち着いた表情の男。
こいつ、保安官といっしょに俺がいるのに、なんとも思わないのか?
「彼を知っているだろう? 町の雑貨商のオスカーだ」
「ああ・・・知ってる。何回か買い物をした。もっとも、あんたに言われてからは行ってないがね」
チラッとこっちに一瞥をくれる男。
歳は俺とそう変わらない若さのようだが、体格はがっしりしている。
だが、雰囲気は優男そうに感じないこともない。

「それで、どうも彼が言うには、君が・・・」
『アオーーーーン』
な、何だ?
犬の遠吠え?
やはりここは犬を飼っているのか?
「今のは?」
ディブも驚いてきょろきょろしている。
それにしても大きな吠え声だ。
「ふふふ・・・新たな仲間が興奮して吠えたようで」
男はニヤニヤしながら奥に通じる扉のほうを見る。
「そ、そうなのか・・・それで」
「あら、あなた・・・来てたの?」
ディブが話を続けようとしたとき、奥から現れたのはサリーナだった。
「サリーナ・・・お前・・・無事で・・・」
俺は妻の無事を喜ぼうとしたが、何かが変に感じる。
どうにも目の前の妻に違和感を感じて仕方がなかったのだ。
いったいどうしたというのだ?
着ているのはブラウスとジーンズという姿だし、どこも変わったところなどないはずなのに・・・

「サリーナ、旦那さんが迎えに来たようだよ」
何?
こいつは今妻のことを名前で呼んだのか?
「うふふふ・・・そうみたいですわね」
なんだかねっとりした視線を俺に向け、ぺろりと唇をなめるサリーナ。
そのしぐさは妙にエロティックでいやらしい。
「サリーナさん、無事でよかった。彼に連れ去られたというので心配で来てみたところだ。ご主人もいるし帰りましょう」
ディブが手を差し伸べる。
だが、サリーナは驚いたことに、やつの元へ行き、その躰にしなだれかかったのだ。
「うふふ・・・ありがとうラウエルさん。でも私はもう戻るつもりはないの。あなたもわかって頂戴。私はもう彼のメスになったのよ」
「な?」
俺は耳を疑った。
サリーナは今何を言ったのだ?
なぜサリーナはあの男に恋人のように寄り添っているのだ?
いったい何があったのだ?

「ねえ、トニー。私、生まれ変わったばかりでお腹が空いたわ。肉が食べたい」
先ほどよりもいっそう舌を出して唇を舐めるサリーナ。
何だ?
彼女は以前の彼女じゃない。
いったい・・・
「ふふふ・・・それならちょうど目の前にいるじゃないか」
「ああん・・・でも、彼を食べるのはまだ気がすすまないわぁ。それにイザベラさんが狙っているみたいだし」
「そうなのか? それじゃ、そっちのほうにするか」
二人の視線がディブに向く。
いったい・・・
二人はいったい何を言っているんだ?
俺は躰が震えていることに気がついた。
何だ?
こいつらはいったい何なんだ?

妖艶な笑みを浮かべているサリーナ。
普段の・・・今までのサリーナでは絶対に浮かべないような笑みだ。
美しさを通り過ぎ、不気味ささえ感じさせる笑みだ。
「うふふふ・・・ねえ、ラウエルさん・・・あなたとても魅力的ね。おいしそうだわぁ」
ゆっくりとディブに近づくサリーナ。
いったい何をするつもりだ?
俺は恐怖を感じる。
なぜだ?
なぜ俺は妻に恐怖を感じなくてはならないんだ?

「奥さん、いったい?」
ディブも戸惑っている。
いつも笑顔でおいしいドーナツを作ってくれた女性だ。
その彼女が妙な笑みを浮かべて近づいてくる。
戸惑うのが当たり前だ。
「うふふ・・・いただきます」
ディブの首に両手を回すサリーナ。
まさかキスでもするつもりなのか?
だが俺のそんな考えは一瞬で裏切られた。

「ギャッ!」
小さな悲鳴とともに、血しぶきが上がる。
「うわぁーーーーーーー!」
気がつくと俺も悲鳴を上げていた。
妻が、サリーナがディブの首筋に噛み付いたのだ。
そして肉をえぐるように噛み千切り、むしゃむしゃと食っているではないか。
「うわぁーーーーーーー!」
悲鳴が止まらない。
口から血を滴らせた妻が俺に笑みを向けたのだ。
その瞬間俺は入り口に向かって駆け出していた。
違う!
違う違う!
あれは俺の妻じゃない!
何か別の存在だ!
俺の妻はあんなことはするはずがない!

あと少しで玄関だというところで、目の前に人影が現れる。
いや、人じゃない!
犬?
いや、狼だ?
巨大な人ほどの大きさのある狼が玄関先にいて、俺をにらんでいるのだ。
何なんだ?
いったいなんでこんなところに狼なんかがいるんだ?
俺は追い払おうと拳銃を抜く。
威嚇して追い払うつもりだった。
だが、だめだった。
拳銃を抜いたとたん、狼は一直線に俺に飛びかかってきたのだ。
俺は拳銃を発射したが、狼は俺に体当たりをかけて押し倒す。
床に倒れた衝撃で俺は頭を打ち、そのまま意識を失った。

                   ******

ん・・・んちゅ・・・ぴちゃ・・・ちゅぷ・・・
何の音だ?
俺はゆっくりと目を覚ます。
あたたた・・・
頭が痛い。
そうだ・・・
俺は狼に押し倒され、頭を床に・・・
俺ははっとした。
ここは?
俺はいったい?

「う・・・」
目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。
見ると俺はイスに座らされ、両手を後ろ手に縛られている。
しかも下半身はむき出しにされ、股間のものを一人の女性が舐めていた。
「うわっ」
俺は驚いて思わず声を出す。
「フフ・・・目が覚めたみたいね」
上目遣いで俺を見上げる女性。
この女性はいったい?
さらに奥ではベッドをギシギシと鳴らしながら、一組の男女がセックスをしているではないか。
いったい何なんだ?

「あはぁ・・・いいわぁ・・・最高・・・最高よぉ・・・」
聞きなれた知っている声が聞こえてくる。
そんな・・・
ベッドの上で男にまたがって腰を振っているのは、紛れもなく妻だ。
いやらしい姿で腰を振り、いやらしい声で男に媚びている。
そんな妻を見る羽目になるなんて・・・
「あはぁ・・・あなたぁ、目が覚めたのね? 見てぇ・・・私・・・彼のメスになっちゃったのぉ」
口元に指を当て、潤んだ目で俺を見るサリーナ。
その間も腰の動きは止まらない。
「気持ちいいのぉ・・・獣のセックスは最高なのぉ・・・はぁん」
「ふふふふふ・・・どうだ? 彼に生まれ変わった姿を見せてやったら」
男がサリーナを下から突き上げる。
そのたびにベッドがギシギシと揺れている。
「ええ、そうしますわぁ・・・あなた、見てね・・・私の生まれ変わった姿。彼のメスになった姿を・・・ワオ・・・ワオーーーーーーン」
俺は目を疑った。
サリーナが・・・彼女の躰がみるみるこげ茶色の毛に覆われていき、鼻が突き出し、耳も尖って伸びていくのだ。
それはそう、まるで人間が狼になっていくような姿。
サリーナの口からは尖った牙がのぞき、両手の指からは鋭いつめが伸びていく。
「ワオーーーーン!」
誇らしげな遠吠えが彼女の口から放たれ、その姿こそが本当の姿だと訴えているようだ。
「アオーーーーン!」
彼女の下にいた男も、彼女同様に姿が狼に変わっていく。
やがて二人は、二頭の狼の姿となり、更なるセックスを楽しんでいく。

「うふふふ・・・驚いた? すっかり元気がなくなっちゃったみたいね」
さっきから俺の股間に顔をうずめていた女性が顔を上げる。
「うふふふ・・・私たちは狼人間なの。兄が彼女を気に入ったのよ。彼女はもう狼人間の仲間。兄のメスとして生まれ変わったの」
「狼・・・人間・・・」
俺は何が真実なのかもうわからない。
目の前で起こっていることは本当なのか?
妻は・・・サリーナはもう人間じゃなくなったというのか?
「うふふふ・・・彼女を取り戻しにきたのは立派よ。でももうあきらめたほうがいいわ。彼女はもう兄のメスとしての気持ちしかないの。あなたのことはもうどうでもよくなっているわ」
「そんな・・・」
「でも心配しないで。今度は私があなたのメスになってあげる。あなたのこと気に入ったわ。私といっしょになりましょう」
「えっ?」
俺が彼女が何を言ったのか理解する前に、彼女は再び俺のものを口にする。
うわ・・・
さっきまでは気づいていなかったが、なんて気持ちがいいんだ。
こんなフェラチオは今まで経験がない。
たまらない。
俺の股間はこんな状況にもかかわらず反応し、むくむくと屹立する。
「うふふ・・・これでよし」
彼女は下着を脱ぎ捨てると、イスに座る俺の上からまたがるように座ってくる。
そして俺のそそり立ったものを彼女の中へと導いた。
ああ・・・
なんてこった・・・
妻の・・・サリーナの目の前で、俺も別の女性とセックスしているではないか・・・
だがなんという快感・・・
気持ちいい・・・
なんだか力がみなぎってくる感じだ・・・
ああ・・・
世界が・・・
世界が変わっていく・・・

                   ******

「いらっしゃいませ、こんばんは。うふふふふ・・・」
店に入ってきたのがトニーだとわかると、すぐに彼女の表情がうっとりとしたものになる。
「ああん・・・トニー・・・待ってたわぁ・・・」
いそいそと彼の元へ行くと、彼に腕と片足を絡め、濃厚なキスを味わっていく。
サリーナは彼のメスだ。
いずれ彼の子を孕み、産むことになるのだろう。
少し複雑な気持ちだが、そうなってしまったものは仕方がない。
「ふふふふ、彼と浮気していたんじゃないか?」
「ああん、そんなことないに決まっているでしょ。彼はイザベラのものですもの。それに、私はもう身も心もあなたのものよ、トニー」
「そうかい? じゃあ、食事にでも行こうか。この町の郊外にはまだまだ獲物がいっぱいいる」
「狩りに行くのね。うれしいわ」
目を輝かせているサリーナ。
以前の弱弱しさは姿を潜め、野性味あふれる生気に満ちている。

「ハイ、オスカー」
トニーといっしょにやってくるイザベラ。
俺は彼女を抱き寄せると、その口にキスをする。
かわいい俺のメス狼。
猛々しさを持つその姿は彼女にふさわしい。
「私たちも食事に行きましょう」
そういって俺に腕を絡めてくるイザベラ。
失ったものもあったが得たものもあった。
そして、俺は今とても気分がいい。
外は満月。
俺たちの世界だ。
俺はイザベラとともに店の外に出ると、夜空に向かって思い切り吠え声を上げるのだった。

END
  1. 2015/07/18(土) 21:11:53|
  2. 異形・魔物化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

記念SS執筆お疲れ様です。
獣化&寝取られ…まさに本領発揮と言う感じですね。
それでいて今回は寝取られでありながら旦那の方も絶望して終わりでは無く、
相手側の女性に堕とされて結ばれると言うパターンは予想外でした。
楽しませていただきました。
  1. 2015/07/19(日) 00:00:35 |
  2. URL |
  3. MAIZOUR=KUIH #gCIFGOqo
  4. [ 編集]

お疲れ様です~
この展開は旦那さんが食い殺されるのか?とヒヤヒヤしておりましたが、今回は良かったですね(?)と言ってあげたくなるエンドなのですね。

こういう救いとも言える展開もいいと思います~
  1. 2015/07/19(日) 00:27:47 |
  2. URL |
  3. g-than #-
  4. [ 編集]

定番?と思いきや・・・

久々のSS、楽しみました。
どうもありがとうございました。
g-thanさんも書いていらっしゃいますが、私も最後は旦那さんが食い殺されるのかと思いました(私はg-thanさんと違って「ワクワク」しておりましたがww)。それが、「ハッピーエンド」に終わったので意外でした。舞方さんの新境地というところでしょうか。
それにしても、相変わらず変身(心)後の奥様の描写が素晴らしいですね。生まれ変わったサリーナさんが登場するところだけですごい興奮でした。
次のSSもワクワクしながらお待ち申し上げます。
どうか、これからもゆるゆると、末永く続けてくださいませ。
  1. 2015/07/19(日) 07:46:51 |
  2. URL |
  3. 沙弥香 #-
  4. [ 編集]

>>MAIZOUR=KUIH様
コメントありがとうございます。
いつもなら旦那は殺されたりしちゃうんですけど、今回は狼人間として仲間を増やすことを中心に考えてみました。

>>g-than様
私もいつもなら食い殺しているだろうなーと思いながら書いてました。(笑)
まあ、奪われたままというのも癪なので、妹は逆に奪ってやったぞみたいな感じで。(笑)

>>沙弥香様
お久しぶりです。
妻が奪われ、絶望の中元妻に食い殺される旦那というのも私としては萌えるんですが、今回は変えてみました。
一人称であるがゆえに奥さんが狼女にされてしまうシーンはなかったのですが、その分ギャップを感じていただければと思いました。
  1. 2015/07/19(日) 21:22:29 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #fR9d3WYs
  4. [ 編集]

あ、なるほど

そうですね。一人称ではなくサリーナの視点で描かれるとまた違った楽しみもあったかも知れませんね。そちらはいつもの舞方さんですよね。
そして、変身したあとはかつての自分の旦那がイザベラによって変えられてゆくさまを眺める・・・
そんなシチュもなかなか萌えですww
  1. 2015/07/20(月) 20:52:37 |
  2. URL |
  3. 沙弥香 #-
  4. [ 編集]

>>沙弥香様
あー、確かにサリーナ視点ですと、私のいつもの作品ぽいですね。
そっちもいいですよねー。
  1. 2015/07/20(月) 21:23:52 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #fR9d3WYs
  4. [ 編集]

狼人間モノ、いいですね~!
サリーナの変貌ぶりが素敵です。
やはり、吸血鬼・狼人間は鉄板ですね(^^
  1. 2015/07/21(火) 01:47:37 |
  2. URL |
  3. marsa #.dp7ssrY
  4. [ 編集]

>>marsa様
コメントありがとうございます。
吸血鬼や狼人間のような眷族を増やすタイプのモンスターはいいですよねー。
  1. 2015/07/21(火) 21:00:54 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #fR9d3WYs
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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