今日はローネフェルトをちょっとだけ送ります。
戦闘に入るのがなかなか遅くてすみません。
今日も戦闘に入りませんが、なにとぞご容赦を。
「な、なんだ? あの光は?」
「何が一体?」
モンテビデオの艦橋は戦慄した。
俺が艦橋に上がった時、その光は第一連合艦隊を直撃していたのだ。
「何があったか調べろ。全ての回線で情報を・・・」
艦長のサカッチ少佐が指示した途端、モンテビデオの各通信機器は飽和した。
『誰か~!!』
『フェーベが・・・フェーベが消滅?』
『第43戦隊は応答なし! 第28戦隊も同じく応答なし!』
『うわ・・・あ・・・』
『誰か応答してくれー!!』
『こちら戦艦ビクトリア! こちら戦艦ビクトリア! 救援を・・・救援を請う!!』
『たすけ・・・て・・・たす・・・』
『誰でもいい! 動けるものはこっちに来てくれ!!』
『フェーベ、ヒマリア、ともに応答なし。第一連合艦隊の旗艦をアリゾナに移せ!』
『キール、アストラハンともに応答なし!』
『再編を急ぎ現空域を離脱しろ! 第二射が来るぞ!』
『もうだめだ・・・もうだめだぁっ!!』
『敵が・・・敵がぁっ!!』
『開けてくれぇ!!』
「なんだこれは?」
サカッチ少佐が腰を浮かす。
通信機から聞こえるのは悲鳴と絶叫。
「スズヤに確認しろ。モンテビデオはいかがすべきか? とな」
「は、はい」
慌てて通信機に取りつく通信担当士。
「何をしている! ボールの発進準備をして置け!」
「了解しました」
俺は艦長に敬礼すると、艦橋から退出する。
『戦艦ヤマシロ、応答なし!』
背後で聞こえるその名前に俺は黙って目をつぶった。
『お姉さま、いえ、大尉殿。全軍に通信です』
「通信?」
私は何が起こったのかわからなかった。
MP-02Aの事故がまだ収まっていないのに・・・
『ギレン総帥の特別演説が行なわれるとのことです。各艦艇、各機とも通信回線を開くようにとのことです』
パットの09Rが私の15の肩を掴む。
『戻りましょう、大尉殿。ブリュメルが近くまで来ています』
「わかったわ・・・戻りましょう」
私はうなずいた。
『我が忠勇なるジオン軍兵士達よ。今や地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。この輝きこそ我らジオンの正義の証である。決定的打撃を受けた地球連邦軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。あえて言おう、カスであると。それら軟弱の集団がこのア・バオア・クーを抜くことはできないと私は断言する。人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理・運営されてはじめて永久に生き延びることができる。これ以上戦いつづけては人類そのものの危機である。地球連邦の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって立たねばならぬ時である、と』
「ご苦労様」
ブリュメルの艦橋に上がった私をギレン総帥の演説とリーザの笑顔が出迎える。
「ソーラ・レイ?」
直立不動でギレン総帥の演説を聞いている艦橋要員たちの間をすり抜ける。
「光を見たでしょ? コロニーマハルを使ったレーザー砲よ」
リーザの表情がかげる。
コロニーを使ったレーザー砲?
噂に聞いていたあれが・・・ついに・・・
「いい気なものだわ・・・マハルには何百万も人がいたのに・・・」
「リーザ。それ以上は・・・」
私に耳打ちするように言ってくるリーザを私は押しとどめる。
どこで密告されるかわからないのだ。
こんな時節では、どんなことをしても総帥府に取り入っておこうとする輩もいるだろう。
「気にすることは無いわ」
「リーザ・・・」
『ジークジオン!』
スクリーンではギレン総帥の演説がクライマックスを迎える。
だが、ブリュメルの艦橋は静かだった。
「パーシス少尉、連邦軍の観測は続けている?」
「はい、艦長」
栗色の肩までの髪の女性士官がリーザにうなずいた。
「動きがあったらすぐに知らせて。おそらくこのまま引き上げたりはしないわ」
「まさか・・・いくらなんでも再編成のために後退するのでは?」
航海長のオスカー・パウルス中尉が振り向いた。
「甘いわ。連邦にしてみればここでの後退は政治的にマイナスにしかならないわ。それにソーラ・レイは連射が利かないでしょ。だとしたら後退再編成に時間をとって再度のソーラ・レイを受けるよりは一気に攻撃に転じる可能性は高いわ」
私もうなずく。
実際のところソーラ・レイによる被害を受けても、なお連邦軍の戦力は我々の戦力を上回っているのだ。
おめおめと逃げ帰ることは考えられない。
「連邦軍、二手に分かれます。やはり来るようです」
「やはりね・・・戦闘準備!」
「了解!」
私は気を引き締めた。
『あれがホワイトベース・・・』
アナスタシアのつぶやきが聞こえる。
ボールのコクピットから見るホワイトベースは白くてよく目立つ。
俺たちの乗る巡洋艦モンテビデオは戦艦ルザルを旗艦とした艦隊に再編成されることになったのだ。
その中核はホワイトベース。
連邦の白い勇者たちだ。
話によればアムロ・レイ少尉はまだアナスタシアやミスティと変わらないどころか、もっと幼い少年兵だという。
それがあの活躍ぶり。
ニュータイプだとかというのもわかる気がする。
『中尉殿・・・こんな戦力で勝てるんですかぁ?』
「エイボン曹長。大丈夫だ。確かに味方は損害を受けた。だが、被害はわずかだし、ジオンの悪あがきもそうは続かないさ。現にあの光だって一撃だけだろ?」
俺はまったくの気休めを言う。
指揮官は腹芸ができないとならないのだ。
事実はそんなものでは無い。
おそらく半分近い戦力を失ったのではないだろうか。
応答が無い戦艦だけでも二十数隻におよぶ。
だが、それを言ったところで始まらない。
いつだって希望を与えてやるのは指揮官の仕事だ。
もっとも・・・兵士というものはいつだって士官の嘘を簡単に見破るものだが・・・
『そ、そうですよね? ジオンはもうお終いなんですよね・・・』
「ああ、だからこの戦いは無理するなよ。俺たちはしっかりとやることをやればいいだけなんだ。間違っても英雄になんかなろうとするなよ」
『中尉殿も死なないで下さい・・・』
俺はどきっとした。
アナスタシア・チュイコワ曹長・・・
俺はもう生きていても仕方ないんだよ・・・
ソフィアはもういないんだ・・・
情け無い話だが、俺はソフィアに惚れちゃっていたらしい。
彼女がいるから頑張れた。
ヤマシロがあの光に飲み込まれた今となっては・・・
「大丈夫だ。みんな死なない。死ぬもんか」
俺は心にも無いことを言っていた。
姫宮 翼
有名台詞ですね。カスであるとは。
で、この後このお方は死んでしまうわけですね。
と言う事はこの後はお楽しみの展開ですか。楽しみに待っています。
足なんて飾りなんです(笑
7月27日 19:31
漆黒の戦乙女
ギレン最後の演説ですね
ギレンの演説は毎度自信たっぷりなんですが、演説を聞かせる対象が全世界(ガルマ国葬)、ソロモンが落ちた直後(高官達に向けて)、そして今回のア・バオア・クーの将兵達に向けてと周りの変化で国が負けに向かっているという表現をしているとテレビで言っていたシーンなので印象に残っております
ローネたちの運命、一番気になるのはそこでしょうねwアヤメたちとの甘いひと時をもう一度過ごすことができるのか…楽しみです
7月27日 21:48
舞方雅人
>>姫宮 翼様
レス遅くなってすみません。
AMBACさえなければ足なんぞ不要ですよねー。
偉い人にはそれがわからんのです。(笑)
>>漆黒の戦乙女様
なるほどー。
言い聞かせる相手の変化ですか。
確かに国内向けになって行きますよね。
ローネたちの運命は・・・
どうなるのかなぁ。
7月28日 21:56
- 2006/07/26(水) 22:08:23|
- ガンダムSS
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