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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

美香の災難(1)

今日から三日間で短編一本投下いたします。
ホントは一気に投下したほうがいいんでしょうけど、ちょっとばかり余裕も欲しいかなと。(笑)

楽しんでいただけたら幸いです。

1、
ピピピピ・・・ピピピピ・・・

電子音がお姉ちゃんの腕時計型の通信機から鳴り響く。
「はい、嶋鳥(しまとり)です」
すぐにお姉ちゃんは私に隠すようにして通信機に返事をした。
「はい・・・はい・・・わかりました、埠頭ですね? すぐ行きます」
ぱちんとカバーを閉じて通信機を袖の中に隠すと、お姉ちゃんはふうとため息をついた。
「ごめんね、美香(みか)。お姉ちゃん行かなくちゃ」
「また・・・モンスター?」
私は静かにそう訊いた。
返事はわかりきっているのに・・・
「ええ、埠頭に出現して暴れているらしいわ。すぐに行かなくちゃ」
お姉ちゃんはそう言いながら皮つなぎに着替えると、ヘルメットを手に玄関へ向かう。
「気を付けて・・・」
私は祈るようにそう言うしかない。
モンスターと戦うお姉ちゃんが怪我をしないように、傷付かないように祈るしかない。
「大丈夫。何かあったらすぐにベースに知らせてね。一応この近辺はガードされているはずだけど・・・」
慌ただしくブーツを履いて手袋を嵌めるお姉ちゃん。
「由香(ゆか)? 出かけるの?」
キッチンから母が出てくる。
洗い物をしていたのだろう、手をエプロンで拭いていた。
「ええ、行って来るわ。お母さん」
そう言って玄関の扉を開けて出て行くお姉ちゃん。
すぐにオートバイのエンジン音が響き、遠ざかって行く。
「お姉ちゃん・・・」
私はお姉ちゃんの無事を祈らずにはいられなかった。

いつの頃からか姿を現した異形の存在モンスター。
動物と人間を掛け合わせたようなその姿は、まるで一昔・・・ううん二昔前の特撮番組を思い起こさせるものだった。
黒尽くめの蟻のような兵士たち(スレイブアントというらしい)を操り、人々を殺傷し建物を破壊する。
警察も自衛隊も歯が立たない存在に、日本中はパニックとなった。
都市機能は麻痺し、経済も混乱した。
高校生の私にはよくわからないことだったけど、雑誌もお菓子も手に入りにくくなったことは確かだった。
父は警察官として精いっぱい市民の安全を守った。
でも・・・父は帰ってこなかった。
モンスターに殺されたのだ。
姉も私もわんわん泣いた。
どうしてこんな目に遭うんだろうって思った。
政府は米軍に出動を依頼したらしい。
でも、米軍も歯が立たなかった。
戦闘員を一人倒すのに、米軍兵士や民間人が十人以上も死んでいく。
あまりのことに米軍は首都圏に核を落とすことまで考えたとか。
幸いそれは回避されたけど・・・

結局この危機に対応できたのは、ある研究施設だった。
そう、モンスターが特撮番組ならば、対応する機関も特撮番組だった。
新澤(あらさわ)研究所。
何を研究していたのかはよくわからない。
でも、ここが提示した強化スーツがモンスター対策の切り札となったのだ。
政府は首都圏を激甚災害指定するとともに、最優先で新澤研究所の強化スーツに予算を回して完成させた。
そして、素質(何の素質なのかはよくわからない)のある人間を選抜し、強化スーツを着てモンスターと戦うチームを作り上げたのだ。
モンスター・エクスタミネーター。
通称ME。
このMEチームに、私のお姉ちゃんは所属していた。

私たちから父を奪ったモンスターを、お姉ちゃんは許せなかった。
父の後を継いで警察官になると言っていたお姉ちゃんにとって、父は尊敬する存在であり、先輩だったのだ。
だから、お姉ちゃんがどうしてかMEチームに入ったことも私は理解しているつもりだし、応援もしている。
でも・・・
もし・・・
もしお姉ちゃんまでが居なくなったら・・・
私には耐えられないよ・・・

ポーズ画面のまま止まっている対戦ゲーム。
いつもモンスターと戦っているくせに、対戦ゲームだといい勝負になるのは、手加減してくれているのだろうか・・・
私はスイッチを切って、画面を消す。
静かになった部屋が何か寂しさを感じさせる。
『美香ー! そろそろ寝なさい!』
母の声が聞こえてくる。
「ハーイ」
私はそう返事をして、寝る支度をするために部屋をでた。

『昨晩現れたモンスターは、MEチームの前に敗退。幸い死傷者もなく、政府はMEチームを高く評価するとともに・・・』
「行ってきまーす」
テレビから流れるニュースの声を聞き流して、私は玄関をでる。
お姉ちゃんはまだ帰ってきてはいない。
きっとスーツの点検やら身体検査やらで足止めされているのだろう。
まだまだ強化スーツは新しい技術なのだ。
データはいくらあっても足りないぐらい。
戦い一つ一つがデータ収集も兼ねている。
お姉ちゃんはモルモットなのだ。
安全かどうかすらわからないスーツ。
そんなのを着て戦うお姉ちゃん。
何もかもがひどすぎる。
モンスターなんて全部いなくなればいいのに・・・

「おはよー」
私はいつもの街角で声をかけられる。
一緒の学校へ行く狩田理生(かりた りお)ちゃんだ。
小柄な理生ちゃんはセーラー服がよく似合う。
くりくりした目が特徴的な娘で、何となく愛らしい小動物を思わせる。
私は彼女とは馬が合って、今では親友だと思っている。
「おはよー」
私は手を上げて理生ちゃんを迎えた。
「ねえねえ、テレビ見た? MEチームがモンスターを倒したって言ってたよ」
理生ちゃんが目を輝かせている。
彼女はMEチームのファンなのだ。
米軍も歯が立たなかったモンスターに対し、政府は切り札を持っているということを国民に知らせなくてはならなかった日本政府は、MEチームを秘匿することはできなかった。
そのため、そのスーツを着ている人間こそ明かされていないものの、MEチームそのものは公に存在が認められている。
マスコミもさすがにその正体を探るようなことは、報道各局の申し合わせで行なってはいないものの、モンスターとの戦いはテレビで報道されたりもするのだ。
そうなれば、特撮ドラマと変わらない。
ファンクラブができたり、2chの掲示板に『MEチームの正体はダルダ?』なんていうスレが立ったりもする。
うんざりだわ・・・
「そ、そう・・・よかったね」
私は当たり障りのない返事をするしかない。
身内がMEチームだと知られるわけにはいかないし、何よりMEチームをアイドルみたいに考えるのは間違っているよ。
「かっこいいよねーMEチーム。やっぱり私はMEピンクとMEホワイトが好きだなぁ」
「そ、そうかな」
五人いるMEチームは色でスーツが分かれている。
MEレッド、MEブルー、MEグリーンが男性で、MEホワイトとMEピンクが女性。
お姉ちゃんはそのどちらかなんだけど、それはさすがに教えてくれない。
でも、たぶんホワイトなんだと思う。
テレビに映る仕草がピンクよりホワイトの方がお姉ちゃんらしいのだ。
私はそんなことを考えながら、理生ちゃんと歩き始めた。

「あれ?」
朝だというのに周りを歩いているのは誰もいない。
車も先ほどから通らない。
「ねえ、理生ちゃん・・・変じゃない?」
「うん、私もそう思う。怖いよ、美香ちゃん」
私の腕をぎゅっと掴む理生ちゃん。
『うふふふふ・・・』
「えっ?」
どこからともなく聞こえてきた笑い声に私と理生ちゃんは顔を見合わせた。
「怖い」
「理生ちゃん、逃げよう」
私はとにかくここから逃げようと思う。
どこへ行けばいいのかわからないけど、ここにいては危険だ。
走り出そうとした私たちの前の地面に、黒い影がいくつも現れる。
「えっ?」
影はそのまま真っ黒い人型になって起き上がる。
「スレイブアント!」
私は思わずそう叫んでいた。
黒い人型はモンスターの手先となる蟻型戦闘員スレイブアントだ。
「いやあっ!」
理生ちゃんが悲鳴を上げる。
私は理生ちゃんの手を引いて、何とか逃げようと振り向いた。

「逃げようとしても無駄よ」
振り向いた私たちの前に一人の女性が立ちはだかる。
女性?
私は目の前の相手をにらみつけた。
その姿は紛れもなく女性。
でも、黒いコルセットのような衣装と、ひざまでのブーツ、それに肘までの手袋をはめ、背中には大きく広がった黒い翼が生えている。
さらに頭の両脇には角が生え、お尻から垂れ下がっているのは尻尾のよう。
マンガの中から抜け出してきた女悪魔の姿だわ。
「うふふふ・・・この状況で私をにらみつけるなんて。さすがはあのMEホワイトの妹といったところかしら」
「えっ?」
私は驚いた。
どうして知っているの?
「私はゲルダ。フューラーより軍団の指揮を任されているわ」
軍団?
彼女がモンスターを操っているの?
私は逃げ道を探したけど、すでに囲まれてしまっていて、逃げるのは難しそうだった。
「私たちをどうするの? 殺すの?」
「心配は要らないわ。あなたには利用価値がある。ふふ・・・そっちの娘も利用してあげるわ」
牙の生えた口元に笑みを浮かべるゲルダ。
美しい顔をしているのに、なんて冷たい笑みなんだろう。
「理生ちゃん・・・走れる?」
私は小さな声でそっと理生ちゃんに聞いてみる。
でも理生ちゃんは首を振った。
がたがた震えている理生ちゃんはとても走れる状態じゃない。
私は覚悟を決めた。

「彼女に用はないでしょ? MEホワイトの妹である私だけを連れて行けばいいわ。彼女は解放して」
私はそっと理生ちゃんを私の背後に回す。
何とか彼女だけでも逃がさなきゃ。
お姉ちゃん・・・助けて・・・
「あら? その娘が死んでもいいのかしら? 私は私の姿を見た者を黙って帰しはしないわよ。一緒に来たほうがその娘の未来も明るいと思うけど?」
ペロッと舌なめずりをするゲルダ。
私は唇を噛んだ。
「連れて行きなさい。二人ともよ」
「キィッ」
スレイブアントたちが私と理生ちゃんの腕を掴む。
そして、世界が暗転した。
  1. 2007/04/25(水) 20:41:30|
  2. 美香の災難
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

久しぶりのSSですね。今回は戦隊モノをモチーフにしましたか。
1回で終わらせるより数回に分けた方が読む側も次の展開を自分なりに考えて書く側との違いを楽しむこともできるので僕としては分けてもらった方が良いかもしれませんね。
今日は前段的な感じなので深くは突っ込みません。
明日の晩が楽しみです。
  1. 2007/04/25(水) 22:37:26 |
  2. URL |
  3. metchy #-
  4. [ 編集]

初回から私の好きな場面が出ていていいです.
次回が分かりたいです.
期待しています.
  1. 2007/04/25(水) 23:26:05 |
  2. URL |
  3. ベルクルド #-
  4. [ 編集]

むむむ、久しぶりのSSですな。
全三回の予定とのことですが、頭の中では三回で終わらずに中篇ぐらいの展開しか予想できないっす。
明日明後日が楽しみだ~
  1. 2007/04/26(木) 01:58:23 |
  2. URL |
  3. 静寂 #8U7KPG92
  4. [ 編集]

SS読ませて頂きました。
二人はどうなるのでしょうか…。
続きを楽しみにさせて頂きますね~。
  1. 2007/04/26(木) 03:24:57 |
  2. URL |
  3. 折尾楽太郎 #aiMm5YXE
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます

>>metchy様
なるほどー。
いっぺんに掲載するばかりがいいことではないんですね。
そういった楽しみ方は目からうろこでした。
metchyさんの予想と違うのか、それとも予想通りだったのか、こちらとしてはそこが楽しみです。

>>ベルクルド様
お好きな場面はどちらでしたか?
今日の分も楽しんでいただければ嬉しいです。

>>静寂様
ぶっつり切っちゃっているので、そう感じられるかもしれないですね。
いろいろと書くものがたまっているので、適度で切り上げることにしましたです。

>>折尾楽太郎様
楽しんでいただけておりますでしょうか?
二人のこれからにご注目下さいませ。
  1. 2007/04/26(木) 19:29:02 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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