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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

アメリカ南北戦争概略その23

「ゲティスバーグの戦い」三日目です。
この戦いについては歴史などでチラッと習ったりはするかな?


二日目の戦闘が終わったあと、南軍にはスチュアートの騎兵隊とジョージ・ピケット少将の一個師団が到着していました。
南軍は再度の攻撃をかけるための兵力を手に入れていたのです。

一方北軍も第六軍団が戦場に到着し、兵力は増強されていました。
ミードはリーが中央突破を図るだろうと予測はしていましたが、なお左右両翼の布陣に不安があったのか、第六軍団をリトル・ラウンド・トップ及びそれに連なるビッグ・ラウンド・トップの後方に配備します。

明けて1863年7月3日。
北軍七万二千、南軍五万の両軍は更なる戦いに突入します。
この日、先に動いたのは北軍でした。
午前四時半、北軍右翼、カルプスヒル方面のスローカム将軍率いる部隊が南軍エーウェル麾下のジョンソン隊に攻撃を仕掛けたのです。
両軍は互いに激烈な銃砲撃を繰り返しましたが、この攻防は北軍に凱歌が上がります。
午前十時半、南軍はカルプスヒル方面を半包囲していた態勢からついに後退しました。

その頃南軍の司令部が置かれたセミナリーヒルでは、ついに最悪の事態が訪れてしまっておりました。
リーとロングストリート両将の対立です。
リーは前夜新たに到着したピケットの軍勢を中心にした、北軍中央に位置するセメタリーヒルへの突撃を考えておりました。
ピケットの軍勢は戦闘の疲れもなく、彼を中心に突撃をかければ、北軍陣地の突破は可能であろうと考えたのです。

しかし、ロングストリートはこれに真っ向から反対しました。
防御戦闘に巧みだった彼は、強固に構えられた防御陣地への突撃はただただ死傷者を増やすだけで、突破することはできないと考えていたのです。
「将軍、お考え直し下さい! このままの突撃は敵の餌食になるだけです」
ロングストリートは何とかリーを説得しようとしたようでした。

しかし、リーは首を振ります。
前もって南軍の全部の火砲をセメタリーヒルへの砲撃に費やし、防御陣を黙らせた上での突撃であれば勝算は充分あると考えたのです。
戦局を好転させるにはこの突撃によって北軍を分断するしかない。
リーはそう信じていたのかもしれません。

「将軍、突撃は無謀です! 現場生え抜きとして申し上げるが、ピケットの隊がたとえ今の倍の一万二千いたとしても、北軍陣地は抜けません!」
「ならばピケットに一万五千を預ければいいではないか!」
リーの言葉にロングストリートは肩を落とします。
以後、この戦いにおいてロングストリートは積極的に何かをしようという気持ちを失いました。

ジョージ・ピケット少将は有頂天でした。
メキシコとの戦争が無ければ落第だったといわれる士官学校落ちこぼれのピケットは、しかし勇猛さでは誰にも負けないという自負がありました。
この瞬間彼は同僚の誰よりも重要な任務を一万五千もの兵を率いて行なうのです。
困難かもしれませんが、当然彼はやり遂げるつもりでした。
南軍砲兵隊のウィルコックス将軍がこう言います。
「ピケット、乾杯しよう。あと数時間で地獄行きか勝利かが決まるのだから」
ピケットはうなずいて乾杯しました。

午後一時、南軍の百四十の大砲が一斉にセメタリーヒルの北軍陣地へ撃ち込まれます。
北軍陣地は猛烈な砲撃にたまらずに混乱を起こしますが、すぐさま北軍砲兵隊もいっせいに撃ち返し始めました。
双方の砲撃戦は一時間ほども続き、大砲の砲身が加熱して赤くなるほどだったと言います。
ここで北軍は砲身を冷ますためと、弾薬の供給のために一時砲撃を控えるよう命令を出します。
これがまた錯誤を生みました。

北軍砲兵隊の砲撃が少なくなったのを見た南軍砲兵隊指揮官アレキサンダー大佐は、これは南軍の砲撃で北軍の大砲や陣地が破壊されてきたためだと解釈したのです。
北軍同様に手持ちの弾薬が少なくなっていた南軍砲兵隊の指揮官であるアレキサンダーは、今こそ突撃の好機であると進言しました。
時に1863年7月3日午後三時。
ピケットは勇躍前進の命を下します。

四十二の連隊旗に従う兵士たちは約一万五千。
隊伍を組んで堂々と行進する様はまるで一幅の絵画のようだったといわれます。
南北戦争史上、南部諸州同盟のまさに最高潮の瞬間といわれるゆえんでしょう。
ラッパと太鼓の音に従って行進する兵士たちは勝利を確信していたかもしれません。

しかし、この行進は虐殺に変わります。
北軍は両翼の高地からの砲撃に加え、正面の陣地では突撃のために味方を撃たないよう南軍の砲撃が止んだのをいいことに、兵士たちが一斉に射撃を開始したのです。
さらに沈黙していた大砲も、砲身が冷え弾も供給されたために再度砲撃を開始。
人員殺傷力の高い散弾を撃ちまくります。

南軍兵士は次々と撃ち倒されていきます。
しかし、突撃は止まりません。
南軍兵士は強靭な精神力で前進を続けたのです。

北軍ウィンフィールド・ハンコック少将の無二の親友ルイス・アーミステッド准将も突撃に加わっておりました。
南軍に参加するアーミステッドを、戦争前夜自宅に招いて惜別の宴を開いたハンコックはまさに突撃の目標であるセメタリーヒルの北軍司令官でした。

アーミステッド率いる南軍兵士は北軍陣地の一角にたどり着きます。
そこは前衛砲台の一つでしたが、それでも猛烈な銃砲撃の中たどり着いたのです。
北軍兵士を蹴散らし、砲台を占拠した後、アーミステッドは銃弾に倒れました。
致命傷でした。

南軍の突撃はごく一部が北軍前衛陣地にたどり着いただけでした。
多くの兵士が血だまりの中に倒れていました。
生き残った兵士は自らの命を守るために後退するしかありませんでした。
突撃は失敗に終わったのです。

ピケット自身は生き残りましたが、率いた兵士の半数は戻りませんでした。
直属の五千名のうち戦闘に耐えられるものは八百にまで減っていました。
リーもロングストリートも戻ってくる兵士を温かく迎え、北軍の反撃に備えるべく防御を固めました。

ミードは一杯一杯でした。
どうにか南軍の突撃を追い払ったものの、反撃をする余力はありませんでした。
彼は自軍の損害に頭を痛めつつ、南軍に備えて陣を固めるだけでした。

翌1863年7月4日。
第86回目のアメリカ独立記念日でした。
昼頃より雨が降り始め、両軍がにらみ合う中、静かに南軍は退却を始めました。
ついに「ゲティスバーグの戦い」は終わったのです。

三日間の戦闘の損害は、北軍二万三千名、南軍は二万八千名でありました。
兵力の少ない南軍にとっては、もはや再起不能に近い損害でした。
これ以後南軍は防戦一方に追い込まれることになります。
そして、南軍は更なる凶報を受け取ることになりました。

5月以後包囲されながらも耐え忍んでいたミシシッピ川沿いの要塞都市ヴィックスバーグが、この7月4日ついに陥落したのです。

その24へ
  1. 2007/04/10(火) 20:49:26|
  2. アメリカ南北戦争概略
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

長い道のり

ロングストリートの戦術判断力は、リーより上だと思うんです。
同様に、機動戦術ではジャクソンが、組織力ではマクレランが、国家戦略と戦略と作戦を結びつける能力ではグラントが、近代戦への理解ではシャーマンが、南北戦争におけるトップということになるでしょう。

しかし、それら全てを、高い水準で併せ持つ総合力と、(おそらくは彼に勝る者はリンカーン以外にいないであろう)人望と指導力ゆえに、リー将軍は南北戦争最高の将帥として名を馳せているのでしょう。


ヴィックスバーグ包囲戦の話はもうほとんど書いてますから、次はテネシー戦線ですか。
おそらく南北戦争で唯一、ロングストリートが、「損害を省みず前進せよ」をやったチカモーガ……それが報われないところがオールド・ピートの不幸なところです。
  1. 2007/04/11(水) 18:37:00 |
  2. URL |
  3. とくめー@MCリンク集 #yfe3OhEo
  4. [ 編集]

>>とくめー様
うんうん、おっしゃるのはすごくよくわかります。
人望と指導力はまさにリー将軍の真骨頂でしょうか。
惜しむらくは南部諸州同盟の国力がリーを生かしきれなかったのかもしれませんね。

次回はおっしゃるとおりチカモーガ戦です。
  1. 2007/04/11(水) 21:28:30 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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