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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

PBR (2)

1964年のいわゆる「トンキン湾事件」に端を発したアメリカのベトナムへの介入は、瞬く間に泥沼の戦争へと発展していきました。

このとき、軍事介入を行なった米軍は、このベトナムという国、もっと言えばインドシナ半島という地域がどういうものなのかわかっていなかったのかもしれません。
特に南ベトナムのメコン河河口流域、いわゆる「メコンデルタ」が陸上部隊にとってまさに地獄のような地帯であり、ほぼ行動不能な場所であることを知りました。

逆に米軍に対抗する南ベトナム民族解放戦線(NLF)にとってみれば、米軍の大部隊が行動不能であるこのメコンデルタ地帯こそ、ゲリラ戦を行うにはうってつけの地域でした。
そしてもともとの反政府活動自体がこのメコンデルタの農民たちの暴動から始まったものだったのです。

NLF側は、このメコンデルタの河上を高速のモーター・サンパン(サンパンとは中国南部や東南アジアに見られる木造の平底船のことで、船外機をつけて高速で走れるようにしたものをモーター・サンパンといった)で神出鬼没に荒らしまわりました。
それに対し、以前ベトナムの宗主国であったフランス軍は小型の河川哨戒艇で対抗しようとしましたが、装甲や武装を載せてしまうと速度低下が激しく、モーター・サンパンには追いつけませんでした。

フランス軍が撤退したあと、その装備を引き継いだ南ベトナム軍にとってもモーター・サンパンの対策は頭を悩ませる問題で、結局アメリカ軍が対応するしかありませんでした。

そこでアメリカ軍は、このモーター・サンパンに対抗するために急遽プレジャーボートをベースにした武装モーターボートを投入することにいたします。
これが映画「地獄の黙示録」でもおなじみの、河川哨戒艇(PBR:パトロールボートリバーの頭文字)です。
PBR2.jpg

PBRは、わずか8トンほどの排水量のプラスチック(FRP)製の船体に、スクリューを使わないウォータージェット推進機を搭載し、これによって最高で26ノット近くの高速を出せるほか、スクリューがないことで水深がわずか数十センチほどの浅瀬でも航行できる優れものでした。
pbr110.jpg

おなじみのMk2型は全長約10メートル、幅は最大約3.4メートルほどで、基本的な武装としては前部に12.7ミリ連装機銃、後部に12.7ミリの単装機銃というものでしたが、一部の艇は60ミリ迫撃砲など武装強化をしたものもありました。
ただし、装甲と呼べるものはほとんどなく、防御力はほぼ無に等しい貧弱なものでした。
PBR1.jpg

このPBRの投入で、NLF側のモーター・サンパンの活動は阻害されるようになりました。
とはいえ、臨検即交戦となることもしばしばなモーター・サンパンとの戦いは、二隻ペアで行動するとはいえ攻撃力も防御力も弱いPBRにとっても苦しいものであり、昼間はヘリコプターの支援を受けることが多かったそうです。

また、モーター・サンパン側にRPG-2/7などの対戦車ロケット弾が積み込まれるようになると、プラスチックの船体などは対戦車ロケットの前には紙切れ同然であり、PBR側の損害も多くなっていったようでした。

河を航行していてもいつどこから攻撃を受けるかわからない。
そんなPBRの乗組員は防弾ジャケットと救命胴衣を常に身につけていなくてはならず、熱帯の気候に悩まされたようでした。
彼らは海軍の軍人でありながらまるで陸軍か海兵隊の兵士と変わりない日常に戸惑いを隠せなかったことでしょう。

PBRは600隻を超える大量生産が行なわれ、多くがメコンデルタに投入されましたが、結局戦局を変えることはできませんでした。
アメリカ軍はベトナムから撤退し、PBRはほとんどが南ベトナム軍に引き渡されたようです。
一部のPBRだけがアメリカ海軍に残され、訓練用などに使われたとのことでした。

河上でモーター・サンパンと高速で撃ち合うPBR。
その様子は空中戦を戦う戦闘機同士のようなものだったかもしれませんね。

それではまた。
  1. 2013/06/07(金) 21:00:59|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

>河を航行していてもいつどこから攻撃を受けるかわからない

まあ、民間人に変装しているゲリラ相手に馬鹿正直に軍服を着て戦っている側は
どうしたって不利ですよね。
  1. 2013/06/09(日) 19:37:51 |
  2. URL |
  3. 富士男 #-
  4. [ 編集]

>>富士男様
それがゲリラ戦の怖さでありいやらしさですよねー。
  1. 2013/06/09(日) 20:51:39 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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