第一次世界大戦で、英国は主力野砲として18ポンド砲(榴弾の重量が18ポンド:約8.164キログラムのためこういう名称となった)を装備しておりましたが、大戦間の期間もこの砲がそのまま使用されておりました。
英国陸軍としては新型砲の開発を行ないたかったのですが、戦後の財政難もあり、なかなか新型砲の開発は進まなかったのです。
とはいえ、18ポンド砲の後継となる新型砲の開発は必要であり、英国陸軍も細々とではありますが、開発は行なっておりました。
この新型砲は経費削減の意味から現用の18ポンド砲の砲身を使用することが求められ、砲身の内側を削って口径を増大することで砲弾の威力を増すことを考えられました。
この結果、新型砲は18ポンド砲の口径約84ミリから4ミリ広げて約88ミリにし、榴弾重量が25ポンド(約11.34キログラム)となったことから、25ポンド砲と呼ばれることになりました。
こうして開発された初期の25ポンド砲は、ほぼ18ポンド砲の部品をそのまま流用していたために安定性が悪く、せっかく増大した砲弾の威力を生かせているとはいえないものでした。
しかし、世界不況等で財政的に乏しい英国陸軍は、更なる改良を行なおうにも難しく、それどころか部隊では18ポンド砲がまだまだ主力としてがんばっている有り様でした。
1939年に第二次世界大戦が始まると、ドイツ軍は瞬く間にポーランドを席巻し、翌1940年にはノルウェーも占領されてしまいます。
英国軍も大陸に派遣されましたが、18ポンド砲と新型の25ポンド砲も大陸でドイツ軍を迎え撃つことになりました。
しかしフランス戦ではドイツ軍の電撃戦の前に英仏軍はぼろぼろにされ、ダンケルクからほうほうの体で逃げ出すことになってしまいます。
このため、野砲などの重装備はほとんどが打ち捨てられ、18ポンド砲も25ポンド砲もほとんどが放棄されてしまいました。
ところが、このことがかえって幸いしたのか、18ポンド砲も初期型の25ポンド砲もなくなってしまったことから、改良型の25ポンド砲マーク2(Mk2)を早々に配備しなくてはならなくなり、野砲の更新が進みます。
新型の25ポンド砲MK2は、18ポンド砲の砲身を削ったものではなく、新規に製造された88ミリ口径砲身や砲架を使用しており、これこそ本命の25ポンド砲と呼べるものでした。
Mk1では30度しか取れなかった仰角も最大45度まで取ることができ、それに伴って射程も約10キロから12キロまで伸ばすことができました。

(25ポンド砲Mk2)
また、運搬時には砲架の下側にぶら下げられた円盤型のターンテーブルを地面に設置し、その上に砲の車輪を載せれば全周旋回が楽にできるようになり、左右への射界も広がることになりました。

(車輪の下に円盤型のターンテーブルを敷いているのがわかる)
この25ポンド砲Mk2は一般的に25ポンド砲といえばこの砲を指すようになるほど量産され、12000門もが生産されました。
タミヤでも模型化されているので、ご存知の方も多いでしょう。
北アフリカの戦いでは英軍の主力野砲としてドイツ軍に向かって火を吐いた他、鹵獲された25ポンド砲がドイツアフリカ軍団でも大量に使われ、一部の師団ではドイツ製の砲よりもこの25ポンド砲の方が主力野砲となっていたほどでした。
25ポンド砲は、その後も改良型のMk3が作られたり、各国でライセンス生産がされるなど1980年代まで使用された傑作野砲でした。
また、英軍では自走砲化もされ、セクストンやビショップ自走砲の主砲として使われました。
おそらく、英軍では一番有名な砲ではないでしょうか。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2013/03/15(金) 21:05:35|
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| コメント:2
>映画「遠すぎた橋」にも登場してます
「遠すぎた橋」の英軍砲撃シーンはなかなか派手にぶっぱなしてるので好きな場面ですね。
- 2013/03/16(土) 20:31:17 |
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- 富士男 #-
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>>富士男様
あのシーンはじわじわと射程を延伸していくのがいいですよねー。
独軍側からするとだんだん砲撃が近寄ってくるのは恐怖だったでしょうね。
- 2013/03/16(土) 21:05:49 |
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- 舞方雅人 #-
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