このところなんとなくトラベラーづいていたこともあり、夕べは寝る前に久しぶりにトラベラーのボードゲーム「メイディ」をソロプレイしてみました。

こちらが箱絵。
これはHJ版でして、のちに国際通信社からもRPGamer誌付録で再販されました。
とはいうものの、もともとは人類が太陽系宇宙に乗り出したころの太陽系内をちまちま動く「トリプラネタリィ」というゲームをやりたかったんですが、残念なことにこのゲームを私は所有しておりません。
ですが、この「メイディ」を使って「トリプラネタリィ」のような太陽系進出ごろのプレイができる「メイディ2100」と言うバリエーションが、RPGamer誌9号に載っておりましたので、今回はこの「メイディ2100」をソロプレイし、あわせてSS風のリプレイを書いてみた次第です。

ちょっと長めではありますが、よろしければお楽しみいただければと思います。
定常加速を終え、わが「アーサー・クラーク」は木星ガニメデシティへの航海途上にある。
古の2D映画のように気取って宇宙歴何とかと航海日誌でもしたためたいところであるが、現在は特にそんなものをあらためて記録する必要もない。

(宇宙空間を行く「アーサー・クラーク」 ちなみにこのゲームでは一隻を三個のユニットで表します。色地に黒が過去位置、色地に白が現在位置、白地に色が未来位置で、厳密には真ん中だけが本当の宇宙船です)
とはいえ、あと一ヶ月もすればいよいよ西暦も2101年。
22世紀の世の中だ。
21世紀も終わりになるが、人類はこの1世紀をまたもや戦争に明け暮れながら過ごしたような気がする。
特に2050年代は「月の危機」と呼ばれ、中華連合とアフリカ連盟の核戦争直前にまで至ったものだ。
結局アフリカ連盟の崩壊で核戦争は回避されたが、中華連合も無傷ではすまず、環太平洋条約機構との冷戦は今も続いている。
とはいえ、2060年代には核融合が完全実用化にいたり、エネルギー関係での諸問題は大幅に解決された。
そのことは推力の大きな核融合ロケットエンジンの開発にもつながり、いまや各国は資源と人口対策のために宇宙に乗り出していたのだ。
そして宇宙開発は人類のフロンティアであると同時に、また悪徳もはびこることになる。
地球でも宇宙でも食い詰めた者たちが宇宙海賊などと自称し、各国の惑星間商船を襲うようになったのだ。
そのため各国も対策を施さざるを得ず、宇宙戦闘艦艇を配備して、こうしてパトロールしていると言うわけだ。
『艦長、マーカス艦長、至急ブリッジにおいでください。お願いします』
なんてことを思っていたら呼び出しだ。
やれやれ、ゆっくりもしていられないな。
******
「副長、何があった?」
俺がブリッジに入ると、当直任務についていた副長のサナエ・ウィルモア少佐に声をかける。
無重力状態での活動のためにばっさり短くした黒髪だが、伸ばせばさぞかし美しいに違いない。
動きやすさと躰の保護を重視したために躰にぴったりした艦内スーツはボディラインをあらわにするために男女ともに不評ではあるものの、その機能は申し分なく、またこうして目を楽しませてくれるのも事実には違いない。
「前方より接近する宇宙船があります。カリストから金星のヴィーナスシティに向かう客船ですが、問題はそちらに向かって小惑星から宇宙船が二隻発進したのが確認できました」
副長の報告はすぐに艦長席のモニターにも映し出された。
コンピュータでイメージ化された映像に、こちらへ向かってくる客船と、そちらに向かう二隻の正体不明の宇宙船が映し出されている。

(接近する客船と小惑星から発進した正体不明の宇宙船)
「こちらの正体を告げて、相手の船籍を確認しろ」
「先ほどから二度ほど行ないましたが無視されています」
ちっ・・・
俺は舌打ちした。
こちらが北米連合の航宙巡洋艦「アーサー・クラーク」であることを告げているにもかかわらず無視するとは。
目の前で堂々と客船を襲うつもりか?
「副長、戦闘配備だ!」
「イエッサー」
副長が艦内に戦闘配備を下令する。
すぐにブリッジにも火器管制のボーワン大尉と、機関主任のロイド少佐がやってきて席に着く。
この航宙巡洋艦「アーサー・クラーク」にはたかだか20人ほどしか乗ってはいない。
とはいえ、巡洋艦と名乗る以上はそれなりの階級の人間が乗らなくてはならないと言うことで、中佐が指揮を取っている。
まあ、つまり俺のことなんだが。
それにしても、たった20人しか指揮しない中佐というのもそう例はないだろうな。
「戦闘準備完了しました」
副長が報告する。
この瞬間から「アーサー・クラーク」は完全なる戦闘態勢に入ったのだ。
「ロイド少佐、確認だが噴射残数は17だな?」
「はい。発進と定常加速で3使用しておりますので、残は17回です。もちろん、ブースターはいつでも使用可能です」
ロイド少佐が推進剤の残量を確認する。
宇宙船の加速は1Gが限度。
ミサイルなどでもない限り2G以上の加速は難しい。
この「アーサー・クラーク」をはじめとして、各国の軍用宇宙戦闘艦艇はブースターで一回だけ2G加速が可能なようになっているが、商船などにはそういった装備はない。
しかも、経済航行が重視される商船は推進剤も少なく、加減速が10回もできればいいほうだ。
一方軍用艦はたいていが20回の加減速が可能なだけの推進剤を持っている。
「客船『コバヤシマル』より入電。『ワレ、ショウタイフメイノウチュウセンニセッキンサレツツアリ』」
「『コバヤシマル』に打電しろ、北米連合の航宙巡洋艦『アーサー・クラーク』がすぐ助けに行くとな」
これは二隻の正体不明船に対する警告でもある。
これでおとなしく引き下がってくれれば儲けものだが・・・
宇宙空間の戦闘は、実はスピーディなものではない。
実際高速で飛び交ってはいるのだが、その距離が膨大なために感覚としてはじわじわ動いている感じしかしないのだ。
戦闘ディスプレイの表示でも、「コバヤシマル」と二隻の正体不明船がじょじょに接近していくのがわかる。
まるで潜水艦同士の戦いと言う感じだ。

「コバヤシマル」はなけなしの推進剤で加速したらしい。
向かってくるものを振り切るにはいい方法だ。
相手は逆噴射して速度を殺し、その上で再加速が必要になる。
もっともそれはこちらも同じこと。
「コバヤシマル」のところに近づくために加速しているが、そろそろ逆噴射が必要になるだろう。
「正体不明船、『コバヤシマル』に急接近」
「正体不明船を海賊船と断定。宇宙魚雷を投射する」
宇宙魚雷は誘導可能なミサイルとは違いまっすぐ飛ぶだけの代物だ。
だが、宇宙空間ではそう簡単に進路変更ができないため、こんなものでも効果があるし、回避のために推進剤を使わせるだけでも『コバヤシマル』には助かるはずだ。

「逆噴射開始。減速!」
俺の命令と同時に「アーサー・クラーク」は艦体を回転させて艦尾を進行方向に向ける。
そして1G加速を行なって速度を殺すのだ。
それと同時に宇宙魚雷が発射され、「アーサー・クラーク」の速度を保った上に魚雷そのものの加速でぐんぐん進んでいく。
「魚雷、かわされました。敵艦アルファ、加速して進路変更」
「このままアルファとブラボーの間に割り込むような形で飛び込め。砲撃用意」
「了解です」
ボーワン大尉がコンソールにデータを入力していく。
それと同時に艦体についている三基のレーザー砲塔が海賊船に砲口を向けていく。
「敵艦ブラボー、左舷を航過します」
「主砲発射!」
艦体にわずかな振動があり、レーザーが発振されたことが感じ取れる。
音がするわけでも光が見えるわけでもない。
だが、これが宇宙空間の戦闘なのだ。

「敵艦ブラボーに命中!」
ボーワン大尉が興奮ぎみに報告する。
初弾から命中とは幸先がいい。
「続いて敵艦アルファ、右舷を航過します」
「こちらも撃てっ!」
続く振動。
「アルファにも命中! 破片が飛び散ってます!」
「応射に注意しろ」
レーザーの撃ち合いは互いに行なわれる。
こちらの射撃が命中する以上、相手からの射撃も命中しないとは限らないのだ。

「艦長、減速間に合いません! 敵艦から引き離されます」
すでに反転再加速を行なっている海賊船に対し、こちらはようやく減速し終わったところだ。
このままでは再加速しても追いつけなくなる。
「ブースターを使え! 各員加速に注意!」
「ブースター使います! 各員加速に注意!」
ぐんとシートに押し付けられる。
強烈なGが躰にかかってくる。
躰にぴったりしたスーツを着るのはこういうときのためでもある。
ぶかぶかなスーツでは場合によっては怪我をすることもあるからだ。
「敵艦ブラボー、『コバヤシマル』に接近中。間に合いません!」
副長の悲痛な声。
ここでむざむざと海賊行為をさせてなるものか。
「誘導弾発射! ミサイルでブラボーの頭を叩け!」
「了解です。誘導弾発射!」
ブースターを使いきり通常の1G加速に戻った「アーサー・クラーク」からミサイルが投射される。
推進剤の煙を吹きながら飛んでいくミサイル。

「敵艦アルファも『コバヤシマル』に接近中。ですが攻撃をする様子はありません。乗り込むつもりと思われますが、先ほどの攻撃で武装が使えなくなっている可能性が高いです」
「よし、当面の脅威はブラボーだけだな。ミサイルはどうか?」
「ミサイル敵艦に接近中。ブラボーの推定回避力では回避不能です」
「よし、そのまま行けぇ!」
はたして一時間半ののち、ミサイルは海賊船ブラボーに命中した。
海賊船ブラボーは航行不能になったらしく、そのままどこかへ飛び去った。
このままの進路で漂流すれば、地球近辺で警備艇が捕捉するだろう。

(画像がボケボケですが、ブラボーにミサイルが命中)
アルファはブラボーの状態を見てこちらも飛び去った。
推進剤の残量も少ない上に1対1では不利と悟ったのだろう。
こちらも推進剤の残量が7回分ほどしかなくなっていたので、ぎりぎりの勝利と言えようか。
「『コバヤシマル』軌道を金星に向け直しました。感謝の通信が入ってます」
「やれやれだな。だが、こちらもこのままガニメデにいくわけには行かん。一度月に戻るとしよう」
俺はいつの間にか浮き出ていた額の汗をぬぐい、月に進路をとるように命じた。
ミサイルと推進剤の補充と、ブースターの再装備を行なわなくてはならないからな。
とはいえ、それまで一息つけるだろう。
俺は副長に後を任せると、狭い艦長室へと戻ることにした。
いかがでしたでしょうか?
なんとなく「メイディ2100」の雰囲気が伝わりましたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2012/11/27(火) 21:04:36|
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