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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

普墺戦争(9)

「普墺戦争」が勃発した時点で、プロイセン王国軍の指揮官はもちろんプロイセン国王であるヴィルヘルム一世でしたが、参謀本部制度を確立していたプロイセンでは、実質的には参謀総長であるモルトケが総司令官である国王を輔弼(ほひつ:助言などを行い補佐すること)すると言う名目で指揮を取ることになっておりました。

モルトケはオーストリア帝国と戦うにあたり、作戦として以下のようなことを考えておりました。
多方面から同時侵攻的にオーストリア領内に攻め込み、それらが一ヶ所で合流するような行動をとることでオーストリア軍を集結させ、そこを一挙に包囲殲滅すると言う作戦です。

これは一般的に外線作戦による分進合撃と呼ばれるもので、外線とは敵を複数の部隊で外側から押し込むようにして主導権をとることをいい、分進合撃とは複数の部隊が別々に戦場を目指し行軍を行って、戦場では合流してひとつの部隊として戦うことを言います。

これにはメリットも大きい反面デメリットも大きく、たとえばナポレオン戦争の序盤でナポレオンが行ったように、オーストリア軍が内線の利を生かして部隊を集結させ、外側から別々に向かってくるプロイセン軍を各個撃破すると言うことも考えられました。

内線とは外線に対して内側から外側に向かって押し出していくことで主導権を得ると言う考え方で、事実当時はこのナポレオンの内線の利による各個撃破があまりにも衝撃的だったため、外線作戦に対する内線作戦の優位さが軍事学の主流を占めていたのです。

しかし、そのナポレオンも終盤には列強各国の軍による外線からの封じ込めでじょじょに戦力を喪失していき、最後には敗北を喫してしまったと言う事実をプロイセン参謀本部は理解しておりました。
また、ナポレオン戦争から50年が経ち、その間に鉄道や電信など移動にも通信にも新技術が発達したことで、当時とは比べ物にならないほど外線作戦を行う各部隊相互の連携がとりやすくなっていることもモルトケは理解していたのです。

また、巨大なオーストリア帝国に対しプロイセンは小国であり、長期の戦争を戦い抜く国家的体力はありませんでした。
そのためモルトケは、できるだけ戦争を短期間で終わらせなくてはなりませんでした。
であれば、一番効果的なのはオーストリア軍の主力を野戦で叩き潰すことだとモルトケは考えます。
外線作戦による分進合撃はそのための手段でもありました。

この作戦にのっとり、モルトケは第一軍、第二軍、エルベ軍の三個軍約二十五万をオーストリア領ベーメンに同時侵攻させました。
また、オーストリア側に付いたザクセン王国に対しても一個軍を差し向け、これらの軍を鉄道を使って迅速に移動させることでオーストリア軍との速戦即決を目指したのです。

一方宣戦布告を自らの側から行ったにしては、オーストリア軍の動きは活発ではありませんでした。
第一、第二、エルバと三つの軍に別れ、全体で約500km.の範囲にも広がってベーメンに侵攻してきたプロイセン軍は、当時の軍事学から言えば内線の利を生かしての各個撃破をするには絶好の状態です。
しかし、オーストリア軍はそうした行動をとることができませんでした。

これはオーストリア軍が内包する問題点によるものでした。
複数の民族をその領内に抱える帝国であるオーストリアは、当時主流となりつつあった戦闘単位としての師団制を取り入れようとして失敗し、旅団を中核として軍団を編成せざるを得ませんでした。
何せ多民族国家であるがゆえに部隊を構成する兵士も各民族の寄せ集めとならざるを得ず、言葉も違ったりするために師団として統一運用しようとしてもできなかったのです。

そのためオーストリア軍は軍団の編成に時間がかかり、また編成した軍団の一部はビスマルクの外交力によって参戦してきたイタリア方面にも割かなければならなかったため、侵攻してきたプロイセン軍に対応できる兵力が少なかったことから好機に乗じることができなかったのでした。

またオーストリアでは三十年戦争以来軍の独走を懸念するあまり、政治による軍事に対する干渉が激しく、参謀本部はほとんどその機能を発揮することはできませんでした。
参謀本部は軍事行動を指揮するどころか、兵站管理程度の業務しかやらせてもらえなかったのです。

それでもオーストリア軍は長期戦に持ち込めばプロイセン軍に勝てるであろうと考えておりました。
プロイセンには長期戦に耐える力はなく、時間を稼げば稼ぐほどオーストリアにとっては有利になると考え、持久戦を行うつもりだったのです。
そのためオーストリア軍はオルミュッツ、ヨゼフシュタット、ケーニヒグレーツの三つの要塞を中心にした防御的態勢を整えていくことにいたしました。

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  1. 2011/11/22(火) 21:01:22|
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