1982年4月、ガルチエリ大統領は国民の政府に対する不満をそらせるために、長年主権を主張してきたものの、実質的支配権を英国に握られていた島に上陸を開始します。
島の名はマルビナス諸島。
実質的支配国である英国では、フォークランド諸島と呼ばれておりました。
アルゼンチン国民はガルチエリ大統領の軍事行動に熱狂し、一時は現政権に反対の反ガルチエリ勢力ですら、政府の行動を支持し全面的に支援すると言う声明まで発表しておりました。
一方英国は鉄の女サッチャー首相の下、断固奪回と言う方針でまとまります。
これは、英領香港(当時)や英領ジブラルタルに対する諸外国の影響を懸念したためと、やはり格下と思っていたアルゼンチンごときに遅れを取るのは耐えられないと言う国民感情によるものといえるでしょう。
英国は国防予算縮小のためにオーストラリアへの売却すら考えられていた軽空母「インヴィンシブル」と、すでに退役間近となっていた軽空母「ハーミズ」を中核としたウッドワード機動部隊を派遣します。
その機動部隊の防空直衛艦として配属されていたのが、42型駆逐艦「シェフィールド」でした。
ちなみに英国は、エリア防空艦(いわゆる艦隊防空用の長距離対空ミサイルを持つ)を駆逐艦、主に対潜水艦及び対艦用の小型艦をフリゲートと呼んでいるようです。
シェフィールドは、42型駆逐艦の一番艦として1975年に就役。
当時としてはまだまだ最新鋭の部類でした。
シーダート対空ミサイル連装発射機を持ち、後部には対潜ヘリコプターを搭載。(防空艦と言えども対潜装備は持つ)
オールガスタービン推進艦で、基準排水量3500トンの船体を30ノットで走らせます。
(無論巡航時には16ノットほど)
軽空母インヴィンシブルとハーミズ合わせても二十機ほどのシーハリアーでは、二百機に及ぶアルゼンチン空軍に対する艦隊上空の防空体制には不安がありましたが、この42型駆逐艦がしっかりと護ってくれるはずでした。
対するアルゼンチン空軍は、フランスから購入したばかりのシュペルエタンダール(スーパーエタンダール)五機と、それに搭載するエグゾセ対艦ミサイル五発が到着しておりました。
フォークランド(マルビナス)諸島沖に展開した英国機動部隊は、諸島の周囲半径二百海里を海空封鎖領域として宣言。
侵入するアルゼンチン軍艦艇と航空機には攻撃を仕掛けると通告します。
英国原潜「コンカラー」により第二次大戦型巡洋艦「ヘネラル・ベルグラーノ」を撃沈されたアルゼンチンは、英国が本気であることを知り愕然とします。
しかし、アルゼンチンも黙ってはいません。
1982年5月4日。
基地を飛び立った二機のシュペルエタンダール攻撃機は、哨戒任務中の42型駆逐艦シェフィールドに攻撃を仕掛けます。
二機のシュペルエタンダールから発射された二発のエグゾセ対艦ミサイルは、海面すれすれを飛んで一発ははずれたものの、もう一発がシェフィールドに命中。
でもエグゾセは不発でした。
爆発はしなかったのです。
しかし、ミサイルは飛ぶための推進剤が積まれています。
この推進剤はシェフィールドに突入したあとも燃焼を続けました。
近くには調理室があり、一説によると朝食のフライ料理を作っていたとか。
真偽はともかく、調理室の可燃性油に燃え移った推進剤の火炎は、瞬く間にシェフィールドに燃え広がりました。
火災は艦内のプラステック製可燃物などを燃やしたために有毒ガスが発生。
ついに総員退艦を余儀なくされました。
鎮火後も浮いていたシェフィールドでしたが、曳航中の5月10日、浸水により海中に没しました。
エグゾセがフランス製兵器であったため、西側友好国の兵器として敵とは認識されなかったとか、哨戒任務についていたにもかかわらずレーダーを作動させていなかったからだとか、エグゾセの命中にはいろいろと真偽の怪しい話がでましたが、兵器市場においてエグゾセの評価は一気に高まりました。
その後、エグゾセは英国の徴用貨物船「アトランティックコンベアー」も撃沈し、さらに評価を高めています。
対空艦として建造された42型駆逐艦でしたが、5月25日には「コヴェントリー」も撃沈されており(こちらはエグゾセではなく通常爆弾。名誉のために付け加えると、四機のアルゼンチン機の攻撃を受け二機を撃墜するも、爆弾を投下され沈没)、いささか対空艦としては心もとないと思われたのか、その後の建造艦では20ミリCIWSなどを増設しています。
エグゾセ自身は不発だったのにねぇ。
それではまた。
そうそう、時計を変えてみました。
今までの水族館タイプは、癒されるんですが、時刻が見づらかったもので。
水族館タイプが良いという人がいれば、もどそうかなとも思います。
- 2007/02/02(金) 22:27:15|
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| コメント:2
わー!水族館に一票!
なんとなく今のだと秒カウントがせわしなくてゆっくり文面を読めない気が。あくまで個人的感覚ですけど。
エグゾゼっすか、懐かしいですね。
子供のころ
「戦艦を一発で沈めた凄いミサイル」
って話題になったの覚えてます。
ほんとは駆逐艦だったのに、あの頃はなんでも戦艦て言ってたような(笑)。
不発弾だったてのは初めてしりました。こう言っては何ですが結構間抜けなやられ方ですよね(笑)。
おまけにフランス製兵器にやられて、イギリスとしてはかなりむかっとしたでしょうね。
- 2007/02/03(土) 01:05:42 |
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- 空風鈴ハイパー #-
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>>空風鈴ハイパー様
時計としてではなく、癒しとして水族館は復活させました。
私個人も結構癒されますので。(笑)
そうなんですよねー。
カエル野郎(フロッガー、転じてフランス野郎)の兵器に沈められるとは・・・
しかも不発弾に・・・
英国海軍の栄光が色あせちゃいますです。(笑)
まあ、英国も戦争からかなり離れていたので、陸軍の兵士も空母の甲板とかで射撃訓練したらしいですし、ハリアーの戦時迷彩も大慌てで塗ったようですしね。
戦争は大変ですー。
- 2007/02/03(土) 21:56:52 |
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- 舞方雅人 #-
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