第一次世界大戦で兵器としての実力を示した「潜水艦」は、第二次世界大戦でさらに大きく発展を遂げました。
水中での推進力を生み出す電池も改良され、その能力を大幅に伸ばしておりましたので、水中での活動時間や速力等も大きく改善されておりました。
しかし、この時点での潜水艦は、あくまでも「潜航活動可能艦」でしかなく、基本は水上で航行し、攻撃時等必要なときだけ水中にもぐることができるだけでしかありません。
水上での航行をしなくても、常時水中航行ができる本当の意味での「潜水艦」ではありませんでした。
これはひとえに動力であるディーゼル機関等の内燃機関が、動力を生み出すためには空気(酸素)を必要とするものであったからに他ならず、動力を生み出すのに空気を必要としない動力源があれば水上航行をしなくてはならない時間を大幅に短縮して本当の潜水艦になることができるのです。
第二次大戦の戦勝国となったアメリカでは、ハイマン・リッコーヴァー提督が当時実用化の域に達してきた原子力(原子炉)を動力源とすることで、空気を必要としない動力を手にすることができるとして潜水艦の原子力化を強力に推進しつつありました。
そしてその原子力を動力源にした第一号の潜水艦として建造されたのが、原子力潜水艦「ノーチラス」(SSN-571)です。
ノーチラスは、船体そのものは第二次大戦型の潜水艦を踏襲しており、動力だけを原子力にしたと言ってもいいものでしたが、そのおかげでまさに真の潜水艦の第一号と呼べるものでした。
ノーチラスは1952年に建造が開始され、1954年の9月に就役。
全長は98メートル、最大幅は8.4メートル、水上では3500トン、水中では4000トンという排水量を誇り、最大速度は水上で22ノットなのに対し、水中では23.3ノットと水中のほうが速度が速いというものでしたが、これはまさに画期的なことでした。
なぜならば、今までの潜水艦(通常動力潜水艦と呼ばれる)は、水上での最高速力こそ20ノットぐらい出せましたが、水中では電池によるためせいぜい8ノットぐらいしか出ず、ノーチラスは何とあの「赤い彗星」のごとくその3倍の速度を発揮することができたのです。

ノーチラスの原子炉は1954年12月末に臨界に達し、翌1955年1月17日、史上初めて潜水艦が原子力で航行し、「本艦は原子力にて航行中」という歴史的電文を発信しました。
その後もノーチラスは原子力潜水艦の能力をフルに発揮し、1958年8月3日には潜航状態のままで北極点に到達し、その能力の高さを見せ付けました。
さらに1381浬の距離を連続潜航行動し、燃料交換無しで62562浬の距離を航海するなど、事実上乗組員の肉体的限界以外は無限といえる航続力を持つことも実証いたしました。
フルトンがナポレオンの要請で1800年に世界初の実用的といえる潜水艦を設計したときに、海中に住むオウムガイにちなんで名付けたのがノーチラスという艦名でした。
その名は作家ジュール・ヴェルヌに受け継がれ、「海底二万浬」という作品に出てきた潜水艦の名もまたノーチラスでした。
そしてアメリカ海軍もまた、世界初の実用原子力潜水艦にこのノーチラスの艦名を授けたのです。
もしかしたら、潜水艦史上にまた新たなる一歩が記されるようなときが来たら、その艦名はノーチラスとなるかもしれませんね。
それではまた。
- 2011/08/28(日) 21:11:32|
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ノーチラスと言えば、私はベルヌの「海底二万里」のイメージが強いですね。小学校の子供向けのSF文庫をワクワクしながら読んでました。
他にも「動く人工島」、「空飛ぶ戦艦」など、古めかしいんですけど面白そうなメカが出てくる話が気に入ってました。
- 2011/08/29(月) 23:33:28 |
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- 富士男 #-
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>>富士男様
ヴェルヌの作品は私は読んでおらんのですが、結構面白そうですよね。
いろいろなメカが出る作品は好きです。
今度読んでみましょうか。
- 2011/08/30(火) 20:08:44 |
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- 舞方雅人 #-
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