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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリムゾン(1)

今日より三日間で、6年連続更新達成記念SSを一本投下させていただきます。

タイトルは「クリムゾン」です。

舞方の趣味全開の短編ですが、楽しんでいただけますとうれしいです。

それではどうぞ。


1、
201X年、日本は恐るべき危機を迎えていた。
「暗黒帝国ナイローン」と名乗る軍団が、突如侵略を始めたのだ。
どこからともなく現れる異形の軍団。
それはまるで人間がナイロンのベージュ色の全身タイツを身に着けたような、スベスベした体表を持つ目も鼻も耳も口も無い姿の連中だった。
しかも、そのベージュの全身タイツの連中はいずれもがスタイルのいい女性形をしており、男性形と思われるのはわずかに彼女らの指揮を取る「コマンダーパープル」と呼ばれる紫色の全身タイツに黒いマントを羽織った男と、「ナイロン獣」と呼ばれる動物の模様の付いたカラフルな全身タイツを着た者の一部だけだった。

彼らナイローンの攻撃に日本は窮地に陥った。
ベージュの全身タイツを着た女たちは集団で破壊活動を行い、それに対抗すべき警察も防衛隊も歯が立たなかったのである。
拳銃や機関銃の弾はその全身タイツを撃ち抜けず、大砲やミサイルは周囲に与える被害が甚大すぎて見合わない。
ベージュの女を一人倒すのにビルを一つ壊すわけにはいかないのだ。

さらに彼女たちを上回るのがナイロン獣だった。
シマウマ柄や豹柄、うろこなどの模様の付いた全身タイツを身に着けた男女だが、ベージュの女たちの数倍はパワーがあり、戦車の装甲すら拳や爪で引き裂いていく。
彼らもまた目も鼻も口も無い全身タイツ姿だが、動物の模様があったり尻尾や耳が付いていたりすることから識別は簡単である。
色もブルーやグリーンなどベージュの女たちとは違う色だった。

そう、まさに彼らはまるで古い特撮番組のごとく、幹部、怪人、戦闘員といったヒエラルキーを持っており、過去の特撮の悪の組織がそうであったように、手始めにまず日本を征服するという行動にでたのである。

当初たちの悪い冗談としか考えられなかった日本政府も、実際にベージュの女たちを率いるナイロン獣の破壊活動を目の当たりにすると、対策に乗り出さざるを得なくなった。
とはいえ警察も防衛隊も歯が立たない以上、政府に打てる手はほとんど無いに等しかった。
そんな中、ナイローン対策の切り札として設立されたのが、「Anti Nyloon Team(アンチナイローンチーム):略称ANT(アント)」であった。

ANTは日本の各種企業が協力して開発した特殊パワードスーツ「Anti Nyloon Suit(アンチナイローンスーツ):略称ANスーツ(アンスーツ)」を着て戦う五人の男女を中核としたチームで、彼ら五人は「Anti Nyloon Fighter(アンチナイローンファイター):略称ANファイター(アンファイター)」と呼ばれて、ナイローンとの熾烈な戦いを繰り広げることになったのだった。

彼らANファイターの活躍で、ナイローンの侵略活動は大いに阻害されていった。
ナイロン獣はANファイターには歯が立たず、五人のANファイターの繰り出す必殺技に次々と倒されていく。
ナイローンはコマンダーパープルの指揮の下、幾度となくANファイター抹殺を図ったものの、そのつど逆にナイロン獣やベージュの女たちを失う羽目に陥っていたのだった。

                   ******

「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした、司令」
夜も更けてきたあたり、カラオケ店の入り口から数人の女性たちが姿を見せる。
いずれも紺のスーツ姿で、仕事帰りのOLたちが数曲歌って楽しんでいたように見えるに違いない。
だが、そのうちの一人の口にした言葉に、声をかけられた女性の表情が引き締まる。
「伊井田(いいだ)さん、本部の外では私のことは・・・」
「あっ、す、すみません」
自分の犯したミスに気がつき、伊井田と呼ばれた女性が頭を下げる。
「くすっ、まあいいわ。本部の外でこうしてあなたたちと一緒にいることなんてあまり無いものね。それに誰にも気付かれなかったようだし・・・」
苦笑しながらも周囲に対する警戒を怠らないその女性が言葉を続ける。
「でも、どこでどうナイローンに情報が洩れるかわからないわ。あなたたちも充分に気をつけてちょうだい」
「「「はい、紅澤・・・さん」」」
背筋をピンと伸ばして返事する女性たち。
その様子は普通のOLとはちょっと言いがたい。
「ほら、そういうところ気をつけないと。今のは誰が見ても変に思うわよ」
「あ、いけない・・・」
顔を見合わせて自分たちも苦笑する女性たち。
今は紺のスーツ姿だが、彼女たちは五人のANファイターたちを陰で支えるANT本部のオペレーターたちなのだ。
そして、彼女たちに注意を与えた中央の女性こそ、これまでANファイターたちに的確な指示を下してナイローンの侵略を食い止めてきたANTの司令官紅澤夕子(べにさわ ゆうこ)である。

「それじゃみんな気をつけてね。明日当直の人は遅れないように。いいわね」
「「はい。お休みなさい」」
三々五々と女性たちが散っていき、夕子も最寄り駅に向かって歩き始める。
ANファイターのおかげでナイローンの襲撃を撃退したばかりなので、今までの経験から言ってここ数日は動きがないはずだ。
この機会に少しみんなで気晴らしをしようということで、今回司令部オペレーターの女性たちとカラオケを楽しんだのだった。

「あ、紅澤・・・さんもこっちなんですか?」
先を歩いていたオペレーターの一人神原倫子(かんばら みちこ)が振り返る。
司令部に配属されて間もない若い女性でくりくりした瞳がかわいらしいが、能力は折り紙付きでその甘い声とも相まってANファイターたちからの人気は高い。
普段は紅澤司令と夕子のことを呼んでいるので、どうにも紅澤さんとは呼びづらそうだ。

「ええ、神原さんもこっちなの?」
夕子は呼び慣れなさそうにしている倫子に苦笑しながらそう答える。
いつも紅澤司令と呼び慣れているのだ。
いきなり紅澤さんと呼ぼうとしてもぎこちなくなってしまうのは仕方が無いだろう。
紅澤先輩とでも呼ばせたほうがいいのかしらと夕子は思った。

聞くと倫子は地下鉄で二駅ぐらいのところに住んでいるらしい。
そう言われればオペレーターとしての身上書に住所が記載されていたことを思い出す。
地下鉄で言えばここから三駅ほどの位置に住む夕子は、意外と近くに部下が住んでいたんだなとあらためて思い、他愛無い話をしながら駅への道を歩いていた。

すっとあたりが暗くなる。
停電になったわけではない。
むしろ闇に覆われたといったほうがいいだろう。
夕子も倫子も突然のことに驚いたが、すぐに周囲を警戒する。
もしかしたらナイローンの奴らが動き出したのかもしれない。
だが、いつもなら少し時間を空けるはず。
先日撃退されたばかりでもう動き出したというの?
夕子は自分たちがパターン慣れしてしまっていたことを後悔した。

「ククククク・・・」
闇の中から人影が現れる。
「誰?」
夕子が鋭い声で人影に向かって誰何する。
「ククククク・・・ようやく会えたようだな、紅澤夕子」
「えっ?」
相手が自分の名を呼んだことに驚く夕子。
闇の中から姿を現したのは、紫色の全身タイツに身を包み肩から黒いマントを羽織った筋肉たくましい偉丈夫と、ベージュの全身タイツに身を包んだ女性たちだった。
「あなたはナイローンのコマンダーパープル!」
夕子は愕然とする。
まさかこんな場所でナイローンの指揮官と出会うなど想像もしていない。

「ククククク・・・会いたかったぞ、夕子」
くぐもった笑い声がコマンダーパープルの顔あたりから発せられる。
そこにはまったく目も鼻も口も無いにもかかわらず、ものを見ることも声を出すことも可能なようで、つるんとしたタマゴ状の頭部のどこにそんな機能があるのか夕子には不思議に思えた。
だが、相手は人間ではないのだ。
人間が全身タイツを着ているような姿をしているからと言って、人間と同じように考えてはならないだろう。

「私の名前を知っている・・・ということは・・・私が何者かも知っているということかしら・・・」
夕子は恐怖に怯える倫子を背後に隠し、コマンダーパープルと向き合った。
それと同時にコマンダーパープルの背後にいたベージュの女たちが散開し、二人を取り囲むように回り込む。
逃げ場は無いということね・・・
夕子の額に汗が浮かぶ。
どの道ベージュの女たちの囲みを破ったところで、この闇の中はおそらく異空間化しているはず。
夕子にここから出る手段は無いのだ。

「もちろんだ。お前は紅澤夕子。我らナイローンの憎き敵ANファイターどもの司令官を勤めている女だ」
「クッ・・・」
やはりそのことも知られていたのね・・・
夕子が歯噛みする。
どこからどう情報が漏れたのかはわからないが、相手のことを探るのが戦略の基本である以上、こちらのことを全力で調べてきたに違いない。
知られるのは時間の問題だったということか・・・
そのことに思い至らず、敵の行動のパターン化に慣れてうかうかと遊びに出た自分がうかつすぎた。
夕子はそう自責の念に駆られる。

「私たちをどうするつもり」
おそらく答えは決まりきっているのだろうが、夕子はそう尋ねずにはいられない。
何とか時間を稼いで仲間がこの事態に気が付いてくれるのを祈るしかないのだ。
「クククク・・・心配するな。お前たちを殺したりはしない」
「えっ?」
夕子は驚いた。
彼らナイローンにとって、ANファイターは目の上のこぶ。
当然その司令官たる夕子はすぐにでも抹殺せずにはいられない憎い敵のはず。
それなのに殺さないというの?

「紅澤夕子。俺はお前に会いたかったのだ。お前を殺すことなど考えてもいない。だから一緒に来るのだ」
夕子の驚きをよそに、両手を差し伸べてくるコマンダーパープル。
周囲のベージュの女たちもじりっと迫ってくる。

「あ・・・あの・・・お願いです」
夕子の背後で震えるようなか細い声を出す倫子。
その顔は青ざめて恐怖におののいている。
「神原さん?」
夕子は背後の倫子に振り返る。
いったい何を言う気なの?

「あの・・・お願いです。私はただのオペレーターなんです。紅澤司令とは違って、ただ仕事だからやっていただけなんです。ANファイターの詳しいことなど何も知らないし知らされてもいません。だからどうか・・・見逃してください」
両手を胸のところで組んで必死に懇願する倫子。
その姿に夕子は哀れさすら感じる。
何を無駄なことを・・・
彼らが私たちを見逃すはずが無いではないか・・・
見逃すつもりなら最初から私だけを確保しているはず・・・
夕子はそう思い無言で首を振った。

「ククククク・・・見逃すことはできんな」
「な、なぜ? どうしてですか? もうナイローンには逆らいません。オペレーターも辞めます。あなたたちの邪魔はしませんから・・・」
半分泣きながら必死に訴える倫子。
ナイローンの恐怖が彼女の冷静さを失わせているのだ。

「クククク・・・たまたま一緒に捕獲してしまったが、お前はいい素体になりそうだからな。さあ、二人とも来てもらおう」
コマンダーパープルがあごでベージュの女たちに指示を出す。
すぐにベージュの女たちが二人に駆け寄り、その腕を両側から拘束する。
「いやっ、いやぁぁぁ!!」
倫子の叫び声が響き必死に逃れようとするが、つかまれた腕はまったく振り解けない。
夕子も無駄だとわかっているので抵抗こそしないものの、その目は射るようにコマンダーパープルをにらみつけていた。
「クククク・・・飼いならされていない野生の目つきか・・・すぐにそんな目など不要にしてやるぞ」
コマンダーパープルが夕子に近づき、あごを持って顔を上向かせる。
「たとえ目をつぶされてもあなたのことをにらみ続けてやるわ」
「それはどうかな・・・ククククク・・・」
コマンダーパープルの手がスッとかざされると、夕子の意識はふっと遠くなってしまう。
「しばし眠るがいい、紅澤夕子よ。ククククク・・・」
コマンダーパープルの含み笑いがあたりに響いた。

                   ******

「う・・・こ、ここは・・・」
冷んやりした空気が肌を撫でるのを感じて目を覚ます夕子。
周囲は相変わらずの闇。
なので周りのことはよくわからない。
「ん・・・」
躰を動かそうとして、夕子は自分が両腕を支えられて立たされていることに気が付いた。
しかも下着すら着けていない裸である。
「えっ? いやっ! 離して!」
羞恥から夕子は両手で胸と股間を隠そうとした。
だが、彼女の左右にはベージュの全身タイツを着た女性たちがいて、夕子の腕をがっちりとつかんでいる。
夕子は必死に腕を振り解こうとしたが、とても彼女の力では振りほどくことができなかった。

「目が覚めたようだな」
カツカツという足音が響き、夕子の前に紫色の全身タイツの男がやってくる。
「コマンダーパープル・・・」
「無駄なことはするな。人間の力でベージュを振り切ることは不可能だ」
「クッ・・・」
夕子は裸を晒している恥ずかしさに顔を赤くしながらも、そのことを認めざるを得ない。
もともと屈強な兵士たちだって、このベージュの女たちには歯が立たないのだ。
彼女の力で振り切るのは不可能だろう。

「な・・・」
夕子が驚いたことに、コマンダーパープルの手が伸びてきて彼女のあごをつかみあげる。
「思ったとおり美しい女だ。人間にしておくのはもったいない」
「な、何を・・・」
夕子は思わず手を振り切って顔を背ける。
「実にもったいない。特にその顔についている余分なものが邪魔だ。目、鼻、耳、口などお前にはまったくふさわしくない」
「な、ふざけないで。人間にとって目、鼻、耳、口は大事なものよ。邪魔だなんてとんでもないわ」
「ふ、そのようなものに頼るから人間は下等なのだ。我らナイローンは全身で感じることができる。そのような特定の器官に頼るようなことは無い」
全身でというのはおそらく事実なのだろう。
夕子の目の前にいるコマンダーパープルもナイロン獣もベージュの女たちも、いずれもが頭部はつるんとしたタマゴ形をしており目、鼻、耳、口は存在しない。
だが、まったく行動に不自由はしていないのだ。
むしろ人間よりはるかに動きがいい。
ANファイターもANスーツがあって初めて互角以上の勝負ができる。
生身の人間ではとても立ち向かえるものではないのだ。

「それにしても会えてよかったぞ、紅澤夕子よ。これで我が望みも叶うというものだ。ククククク・・・」
コマンダーパープルが不気味に笑う。
「それはどうも。私は会いたくなどなかったわ」
視線をはずしたまま吐き捨てるように言う夕子。
「クククク・・・そういうな。俺にとっては待ち望んでいた瞬間なのだ」
「待ち望んでいた?」
「クククク・・・そうだ。待ち望んでいた」
コマンダーパープルの言葉に戸惑う夕子。
自分を殺す瞬間を待ち望んでいたのだろうか?
だが、どうもそうは思えないことが夕子を戸惑わせている。

「紅澤夕子。お前は我がナイローンの憎むべき敵ANファイターの司令官だ。ANファイターはお前の指示のもと我がナイローンの行動を的確に読んで妨害してくれた。おかげでナイローンの日本侵略は大幅に予定を狂わされることになったのだ」
「当然の結果ね。あなたたちにこの日本を自由にさせてたまるものですか」
「クククク・・・だから俺は何とかお前を排除しようとお前のことを調査した。どうすればお前をANファイターから引き離すことができるかを考えたのだ。お前さえいなくなれば、ANファイターどもなどすぐに統率が取れなくなるだろう」
「クッ・・・」
コマンダーパープルの言葉は夕子が危惧していたことでもある。
もともとANファイターの五人はANスーツの適合者ということで選ばれたに過ぎない。
そのためチームワークという面ではいまだに難があることは事実だったのだ。
  1. 2011/07/17(日) 21:10:07|
  2. クリムゾン
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