第一次世界大戦で多いに発展した航空機は、各国の海軍にも影響を与えました。
列強海軍は最初水上機を運用する水上機母艦を整備いたしましたが、水上機はやはり海上の波などの条件に左右されることが多かったため、陸上機を運用できる航空母艦を整備するようになって行きます。
第二次世界大戦で航空母艦を運用した国というと米英日の三ヶ国が有名ですが、実はフランスも航空母艦保有国でした。
第一次世界大戦前、フランスはノルマンディー級戦艦五隻を起工しましたが、第一次世界大戦の勃発にともない工事は中断。
戦後、建造は再開されましたが、1922年に列強海軍の間で「ワシントン海軍軍縮条約」が締結され、ノルマンディー級戦艦は結局建造中止、完成前に廃艦となってしまいます。
ところが、「ワシントン海軍軍縮条約」では、戦艦を改装して航空母艦として保有してもよいことになったため、建造中止となったノルマンディー級戦艦のうち、五番艦の「ベアルン」だけは日本の「加賀」やアメリカの「レキシントン」などと同様に、航空母艦に改装されることになったのです。
1923年に航空母艦として建造が再開された「ベアルン」は、1927年にフランス海軍最初の航空母艦として完成し就役します。

基準排水量は22150トンと日本の航空母艦「飛龍」よりも5000トンも重く、「翔鶴」級に迫るものだったにもかかわらず、全長は182.6メートル、最大幅35.2メートルと「飛龍」よりも全長で40メートル短く、逆に幅は10メートルも太くなっておりました。
これはもともと「ベアルン」が「加賀」同様に戦艦を航空母艦へと改造したため、速力よりも航続力や防御力を優先した船体だったためのもので、「加賀」同様最高速力が低いという欠点を持っておりました。
最高速度はわずか21.5ノットに過ぎなかったのです。
しかし、「ベアルン」が完成した1920年代後半では、まだ搭載航空機も複葉機の軽いものしかなく、金属製の重い艦載機を発進させるために必要な高速も必要なかったため、さほど問題にはなりませんでした。
むしろ、「ベアルン」には、当時の航空母艦としては先進的な技術が取り入れられておりました。
障害物の無い平らな飛行甲板や、煙突と一体型の艦橋構造物、排煙を海水で冷やして上空を漂わないようにし、艦載機の運用の妨げにならないようにするなど、日米英の空母でその後取り入れられた技術を「ベアルン」はすでに取り入れていたのです。
一方、格納庫が狭く艦載機をわずか40機ほどしか搭載できないことや、対巡洋艦用に主砲を搭載したりと空母としては不都合な面もいくつか持っており、特に速力の低さは致命的でした。
新型になりどんどん大きく重くなっていく航空機に対し、「ベアルン」ではそれらを艦載機として運用することができなくなっていったのです。
フランス海軍もそのことは理解しており、より新型の航空母艦を建造する予定でしたが、第二次世界大戦の勃発と、その翌年のドイツによる侵攻によりフランスが降伏してしまったことで、新型空母は幻となってしまいました。
「ベアルン」はフランス降伏により連合軍側に抑留されたのち、自由フランス軍の航空母艦として連合軍側として運用されることになりました。
そしてアメリカで装備を整えたあと、航空機輸送艦として使用されることになります。
さすがに21.5ノットの速度では、航空母艦として運用することはできず、アメリカ大陸から航空機をヨーロッパまで輸送する輸送艦として使われたのです。
「ベアルン」は第二次世界大戦の終戦まで生き残り、その後は輸送艦や練習船として使用され、退役したのはなんと1966年でした。
約40年の長きに渡って使用された「ベアルン」
もしこの「ベアルン」が航空機運用のしやすい高速艦であったとしたら、もしかしたら前線に投入され大戦で沈んでいたかもしれません。
最高速度がわずか21.5ノットという低速だったことが、もしかしたら、もしかしたらこの「ベアルン」を長生きさせたのかもしれませんね。
それではまた。
- 2011/05/15(日) 21:41:52|
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>>拍手コメントを下さったお二方
ありがとうございました。
フランスにもこんな空母があったんだと知っていただけてうれしいです。
- 2011/05/16(月) 21:00:09 |
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- 舞方雅人 #-
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