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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

地獄の業火

ロンメルの攻勢(しかもダミー戦車などによる)に愕然とした英軍ではありましたが、一方的にやられているつもりはありません。

英国中東軍司令官ウェーベルは、本国のチャーチルが送ってきた増援を受け取ると、すぐさまドイツ軍に対し反撃に出ました。

英軍には切り札がありました。
歩兵戦車マークⅡ「マチルダ」です。

歩兵と共同攻撃を行なうために、速度は遅いマチルダ嬢でしたが、がっしりとした分厚いドレス(装甲)を身に纏い、ドイツ軍戦車の野蛮な求婚(攻撃)をことごとく跳ね返すはずでした。

事実前年1940年のフランス戦では、最終的にはダンケルクに追い詰められたものの、マチルダを中心とする英軍戦車隊はドイツ軍を大いに混乱させていたのです。

英軍はこのマチルダを先鋒に立て、ドイツ軍への反撃を開始しました。
作戦名「バトルアクス」
斧によってドイツ軍を叩き割るつもりだったのです。

英軍がやられっぱなしじゃないことはロンメルも重々承知していました。
彼は英軍が反撃に出ることを見越して、防御陣地を設置するべく、防御上の要地「ハルファヤ峠」を英軍から奪います。

そしてその防御上の要地ハルファヤ峠で英軍を迎え撃ったのです。

1941年6月15日
英軍は第4インド師団と第22近衛歩兵旅団が100両以上もの戦車の支援を受けて、ドイツ軍の篭もるハルファヤ峠に攻撃を開始しました。
戦車のうち大半は重防御のマチルダでした。

一方ドイツ軍のハルファヤ峠守備隊は元牧師のバッハ少佐が指揮を取っていました。
彼の双眼鏡には、先頭を切って突っ込んでくる多数のマチルダが捉えられていました。

ドイツ軍の主力対戦車砲は37ミリ対戦車砲です。
しかし、この砲はマチルダには歯が立ちません。
ドイツ軍戦車も後方で温存されているので付近にはいません。
英軍の攻撃にドイツ軍は手も足も出ないかのように見えました。

先頭のマチルダが距離1500メートルに達した時、バッハ少佐の手が振り下ろされました。
轟音とともに砲弾が発射され、唸りを上げてマチルダに向かいます。

英軍歩兵は次の瞬間信じられないものを見ました。
重装甲のマチルダの前面装甲がいともたやすく貫通されたのです。

しかも、それはまぐれなどではありませんでした。
周囲ではマチルダが次々と装甲を貫通され、擱坐炎上していくではありませんか。
「くそったれ! ありゃなんだ?」
英軍指揮官が敵陣地に据え付けられた砲を見ます。
それは上空を飛ぶ航空機を撃つための砲。
88ミリ高射砲でした。

ロンメルはフランスですでにマチルダの装甲の厚さに手痛い目にあっていました。
37ミリ対戦車砲では歯が立たないことを知っていたのです。
彼はフランスでも行なった方法・・・88ミリ高射砲で戦車を撃つという手段でこのハルファヤ峠でも英軍を迎え撃ったのでした。

上空高く砲弾を撃ち上げなくてはならない高射砲は、高速の砲弾を直進する弾道で撃ち出します。
それは対戦車砲と同じであり、高射砲は水平にすることで対戦車砲として充分使えたのでした。
ドイツ軍の88ミリ高射砲は優秀な対戦車砲になったのです。

バッハ少佐の指揮の下、ハルファヤ峠に陣取ったわずか四門の88ミリ高射砲は、その砲弾を撃ち出すたびに英軍戦車を血祭りに上げて行きます。
数時間ののちに、ハルファヤ峠前面は英軍戦車隊の墓場と化しました。
英軍は58両もの戦車をハルファヤ峠だけで失ったのです。

英軍は後退し、作戦は失敗しました。
この時捕らえられた捕虜とドイツ兵の会話といわれるものが逸話として残っています。

英兵「飛行機を撃つべき高射砲で戦車を撃つとは卑怯じゃありませんか?」
独兵「対戦車砲の砲弾を跳ね返す戦車で攻めてくる方が卑怯じゃないかね?」

この戦いの後、英軍兵士はこのハルファヤ峠のことを「ヘルファイヤ峠」(地獄の業火の峠)と呼び恐れ、バッハ少佐のことを「業火の牧師」と呼んで敵ながらあっぱれと称されたのでした。
  1. 2007/01/13(土) 21:42:00|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

誰も対空砲で戦車を撃つなんか考えないですからね。英国軍は度肝を抜かれたと思いますよ。
それにしてもこの逸話は面白いやw
  1. 2007/01/14(日) 10:53:45 |
  2. URL |
  3. 静寂 #8U7KPG92
  4. [ 編集]

>>静寂様
楽しんでいただき何よりです。
ミリタリーネタはあまり皆さんに好まれないのか、コメントも少なくて寂しいのですが、こういったコメントはすごく嬉しいです。
実際この逸話は後世の創作ではないかとも思いますが、面白いですよね。
  1. 2007/01/14(日) 21:45:08 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

遅レスすいませんー。
この逸話は有名ですよねー。
アハトアハトの水平射撃はロンメルが自分が始めてだって主張してるらしいですが、ほんとはその前に他の人もやってるらしいですよね。
「発案者は誰?」
なんでしょうね?
88ではないですけど、実際T-34ショックの時は対戦車砲の陣地を突破された挙句ぬかるみにはまって動けなくなった所を本来曲射する150ミリカノンで水平射撃して撃破してますもんね。

しかし3突しかり88しかり、本来の対空任務よりも対戦車任務で活躍したってのは、意図したものとまったく違う結果で面白いですよね。
88の予想外の活躍に、オットー・カリウス氏の手記でも
「それまで愛想笑いの対象だった対空砲部隊に(戦車兵から)最高の敬意が払われるようになった」
って言ってますし。
野戦病院での英米兵捕虜に対するアンケートで
「一番やな独軍兵器は?」
ってのの答えもダントツで
「88!」
だったそうですし。独特の発射音は
「味方に勇気と勢いを、敵には絶望と悪夢の象徴に」
に聞こえたんでしょうね。
  1. 2007/01/14(日) 23:55:36 |
  2. URL |
  3. 空風鈴ハイパー #-
  4. [ 編集]

>>空風鈴ハイパー様
とにかくあるものを使うというのは戦場では当たり前の行為ですよね。
ソ連軍も迫撃砲から高射砲、果ては榴弾砲も「すべての砲は対戦車砲である」と言う使われ方をしましたからね。
ドイツ軍では88ミリ高射砲。
ソ連軍では76ミリ野砲。
いずれも名対戦車砲として名を残しましたが、本来の用途ではないんですよねー。

ちなみにソ連軍のT-34/85の主砲85ミリ砲も元は高射砲でした。
  1. 2007/01/15(月) 21:50:33 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
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