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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

騎士物語(3)

騎士物語の三回目です。

今回はついつい世界観にのめりこんでしまったような気がします。

それではどうぞ。


「あ~、まったくぅ・・・」
王宮を出てすぐに私は内心の苛立ちを吐き出してしまう。
「マスター?」
エリーヌが驚いたように私を見る。
そうか・・・
エリーヌにはよくわかっていないんだ。
「ううん、なんでもないわ。ただちょっとうまくやられたなーって思っちゃってね」
「うまくやられた・・・ですか?」
少し考え込むような表情を見せるエリーヌ。
こういうところは普通の少女となんら変わるところがない。
本当にこの娘は作られた娘なのだろうかと考えてしまうわ。
「ええ、フォーコンブレ侯にね」
私はエリーヌを馬車に乗せ、自分も乗り込んでドアを閉めた。

「フォーコンブレ侯はタヌキオヤジよ。まんまと再度の遠征をさせられる羽目になったってこと」
「正体不明のアーマドールのことですね?」
ゴトゴトと馬車に揺られながら、私はエリーヌにうなずいた。
「どうせあのタヌキは、手柄を立てさせたいような息のかかった奴にやらせたんでしょうけど、どうも手に負えなさそうということでこっちに押し付けてきたのよ」
「押し付けて・・・ですか?」
「そう。私がうまく対処すれば前回のと合わせて少々褒美をやればいいし、もし失敗しても、目障りな女騎士などという存在がいなくなる。その上であらためて別の人を任に当てればいいってわけ」
「なるほど・・・よくわかりました」
エリーヌの表情が曇る。
やはり彼女にしてもいい気分のものではないのだろう。
「でも、ま、またエリーヌと一緒に出かけられるか。帰ったら忙しくなるわよ。よろしく頼むわね」
「はい、もちろんです。マスター」
こちらを見て微笑むエリーヌの笑顔に、私はすごく癒されるのを感じていた。

                   ******

出立の準備はあわただしく行われた。
正体不明のアーマドールは、ヴァーゾン辺境伯の領地と国王陛下の直轄領の境目付近に出没するという。
ヴァーゾン辺境伯も国王陛下もともに相手側のアーマドールかと思い、それぞれ抗議を申し入れたところで双方に関係のない正体不明のアーマドールであることがわかったという。
ヴァーゾン辺境伯の領地は王都からは約一週間の距離。
やれやれ、遠征費がいくらかは出るとはいえ、また痛い出費だわ。

「マスター、出発の準備整いました」
先日と同様モーガブル六頭立ての台車にきちんと寝かせられた“エリーヌ”が、朝の陽の光を浴びて輝いている。
先日の戦いの跡は微塵もない。
この二日ほどで、ファクトリーの連中がきちんと手入れしてくれたのだ。
その“エリーヌ”の後ろには従者の乗る荷馬車が付き、先頭には私のための馬も用意されている。
私は荷馬車に荷物を積むと、玄関先まで見送りにでてきてくれたお爺様を抱きしめて、その両頬に行ってきますのキスをした。
「気をつけてな。ラシェル家のことなどどうでもいいから、無事に帰っておいで。死んではならんよ」
「わかってます」
お爺様のお返しのキスを受け、私は大きくうなずく。
死ぬつもりなどないけれど、騎士として見苦しいこともできない。
その覚悟を、私は改めて心に刻む。
「それでは行ってきます、お爺様」
私は見送りのみんなに手を振ると、先頭の馬にまたがってラシェル家を後にした。

街道を行く私たちの後ろには、ちょっとした隊列ができていた。
街道とは言っても、町や村との間では巡邏の目も届かない場所が結構ある。
そういった場所では盗賊や追いはぎの類が出ることもあるし、何より野生の獣や魔物がでることもあるのだ。
だから町々を交易する商人は隊商を組んで護衛を雇ったりするし、一般人は隊商に加えてもらったり、こうして騎士や軍勢の移動に付いて行ったりして安全を確保するのだ。
そういうわけで、私たちの後ろにも、幾人かの商人と一般人が付いてきているのだった。
おかげで、“エリーヌ”をつんだ台車には新婚の若妻さんが同乗している。
旦那さんとは王都で知り合ったものらしく、今回の旅は結婚の報告を旦那さんと一緒に旦那さんの両親の家にしに行くのだそうだ。
小柄でかわいい感じの女性で、エリーヌと楽しそうに話している。
まさかエリーヌがユニットドールだなどとは思ってもいないんでしょうね。

一週間ほどかけて街道沿いの宿場町を経由しながら、私たちはヴァーゾン辺境伯領との境界までやってくる。
幸い今回はさほどの問題もなく無事に来ることができた。
盗賊や追いはぎが出てくることも、魔物の類に襲われることも、アーマドールを奪おうとするような輩にも出会わずにすんだ。
ここから先はヴァーゾン辺境伯領になるので、国王陛下の騎士である私はうかつには入れない。
もっとも、今回はこのあたりに出没する正体不明のアーマドールの探索なので、ヴァーゾン辺境伯領に入り込む必要はない。
この境目の宿場町であるキロブスクの町を拠点にして動けばいいのだ。
私は早速この町を管理する町長のところへ行き、国王陛下の命令でしばらくこの町に滞在することを告げた。
町長は傍目にも大げさすぎるほどの歓迎を示してくれ、好きなだけ滞在してくださいと言ってくれた。
悪いけどお言葉に甘えさせていただくとしましょう。

町長は私に一軒の家を提供してくれた。
宿の一部屋を使わせてもらえれば充分だったのだけど、空き家になっているので自由に使ってほしいとのこと。
これも私はお言葉に甘えさせてもらった。
小ぶりだけどいい家だし、滞在するにはもってこいの家だわ。

私は早速エリーヌとともに“エリーヌ”を起動させ、慣らし運転をする。
一週間台車に寝かせきりだったけど、各部の駆動は何の問題もない。
心臓石も出発前に交換したばかりだから生き生きしているし、循環液もさらさらと静かに流れている。
これがしばらく使っていると、心臓石の動きは弱まり、循環液もドロドロに濁ってくるのだ。
そうなったらアーマドールそのものの動きも鈍くなるので、さっさと取り替えなくてはならない。
アーマドールを動かすのは大変なのよね。

                   ******

正体不明のアーマドールが出現するまでは出番がないと思いきや、翌日から私はすぐに忙しくなった。
最初は女騎士ということで物珍しさもあったのだろうけど、それ以上に国王陛下の騎士が来たということで、いろいろな問題ごとが持ち込まれることになったのだ。
その大半は町長が裁定すればいいものだったので、私は単に国王陛下の代理としてその裁定にいわばお墨付きを与えればいいだけであったのだけど、それでも細かい揉め事まで持ち込まれてきたのには疲れてしまう。

それが終わったら今度は町の周辺の猛獣退治。
森林虎や巨大蛙などを、アーマドールを使って追い払うのだ。
蛙と言っても大きなものは人間を一飲みにしてしまうほどの大きさがある。
森に入る人間がまれに襲われたりすることがあるのだ。
こういった猛獣は町の周囲に近づかなければそれでいいので、アーマドールの巨体で脅かしてやれば当分は近づかない。
それでも寄ってくるような奴は退治しないとならないけどね。

そんなこんなでキロブスクに来て十日ほども経つと、ようやく忙しさも一段落する。
エリーヌの作ってくれた夕食を食べ、お茶を飲んでゆったりと過ごす夜。
ユニットドールの能力に家事を加えたのは誰なのかしらね。
まあ、これだもの男性騎士がユニットドールを愛でるのも無理ないわ。
可愛くてかいがいしく身の回りの世話をしてくれるんですもの。
手放すなんてできないわよね。

あわてたようなノックの音がする。
もしかして?
私はすぐに立ち上がると玄関のドアを開けた。
「何事?」
「き、騎士様! で、出た! 出ました!」
玄関先では青ざめた顔をした男が町の外を指差している。
「正体不明のアーマドールね?」
「は、はい。森にいます」
「わかったわ。すぐに行きます。あなたは町長さんにもこのことを知らせて」
私は男の人にそう言ってドアを閉め、すぐに身支度を開始する。
見るとエリーヌもエプロンを外し、白いフィットした特殊スーツに着替えていた。
「すぐに“エリーヌ”を出すわ。お願い」
「了解です、マスター」
着替え終わったエリーヌが外へと駆け出していく。
私はその間に全身を覆うチェインメイルの上に皮の胸当てと腰当てを着け、ブーツと手袋を身に着けた。
そしてヘルメットをかぶり、外へ出る。
すでに庭先では、“エリーヌ”が起動態勢に入っていた。
私はすぐに胸の操縦席に入り込み、躰を固定して操縦悍を握る。
足のペダルを踏み込むと、アーマドール“エリーヌ”は、ゆっくりと立ち上がった。

「エリーヌ、各部チェック」
『チェック終わってます。異常なし』
私の声にすぐに頭上から反応が返ってくる。
“エリーヌ”の頭部にあるドールハウスと呼ばれる制御槽におさまったエリーヌが返事をしてくれるのだ。
うん、今日も息は合っているわ。
「行くわよ」
『了解です、マスター』
私は“エリーヌ”を歩かせ始めた。

足音を響かせて大地を振るわせるアーマドール。
重量があるから仕方ないとはいえ、町中では迷惑だわね。
私は大通りを郊外に抜け、そこから森に向かうことにする。
キロブスクの町の周囲はほとんどが森。
その中を一本の街道がヴァーゾン辺境伯領まで延びているのだ。
街道の途中にできた宿場町であるキロブスクは、周囲の開拓もそれほど進んではおらず、うっそうとした森が周囲には広がっている。
そこは木こりでさえ奥までは入らない未知の森。
正体不明のアーマドールが出没するにはもってこいの場所なのだ。

樹木の間に見え隠れする一体のアーマドール。
まだ遠いせいもあって、どんなアーマドールかはわからない。
ただ、月明かりがあるのに装甲板の輝きが鈍いよう。
あまり手入れをされていないのかしら?
だとしたら山賊が手に入れたアーマドールという可能性もある。
騎士の持ち物であるアーマドールだけど、奪われてしまったアーマドールが無いわけじゃないし、そういった中の一体が売られずに使われているということだってあるだろう。
充分に使いこなせなくても、旅人や村人を威嚇するには充分すぎるのだから。

「エリーヌ、何かわかる?」
『今のところは何も・・・動きがあんまりよくないようです』
樹木の間をゆっくりと動いている相手のアーマドール。
動きが制限される森の中とはいえ、確かに動きはよくないようだ。
やはり正規の訓練を受けた騎士ではないのかも。
「近づくわ。正体を確かめる」
『了解です、マスター』
私は“エリーヌ”を街道からはずれさせ、森の中へと踏み入れさせた。

幸い満月に近い時期のおかげで、相手を見失うことはなさそう。
でも、森の中に入ってしまえば、アーマドールといえども樹木にさえぎられて視界は悪くなる。
まさかとは思うけど、待ち伏せとかには気をつけなくては。
私は樹木の間を縫うようにしながら、相手のアーマドールに近づいていく。
相手は動きが鈍く、なんだか酔っ払っているようにも見える。
いったいどんな人が乗っているのかしら・・・

『マスター』
「何?」
頭上からの声に私は答える。
『どうも様子が変です。相手から・・・その、何も感じられません』
どういうわけかわからないが、ユニットドールは人間の“気”のようなものを感じ取ることがある。
それが今回は何も感じないということなのか。
事実私も相手から気迫めいたものは何も感じない。
むしろ、何を考えているのかわからない不気味さのようなものを感じていた。
「そうね。なんというか、私も相手の気持ちが感じられない気がするわ」
『充分注意してください。何があるかわかりません』
「了解」
私は“エリーヌ”の腰からバスタードソードを抜き放つ。
樹木の間を縫うには邪魔くさいけど、戦闘には欠かせない。
それにしても・・・一体どんな奴なのだろう・・・

「えっ?」
私は驚いた。
不意に相手のアーマドールがこちらを向いたのだ。
その瞬間、私はいいようのない恐怖に襲われた。
「な、何?」
甲冑を着た騎士を模したアーマドールの頭部には、バケツを逆さにしたようなグレートヘルムがかぶせられている。
その正面には外を見るためのスリットがついていて、ユニットドールはそこから外を見るのだけど、そのスリットの奥が不気味に赤く輝いていたのだ。
まるでアーマドールに目があって、それが赤く輝いているみたいだわ。
こんなアーマドールは見たことが無い。
いったいこいつは何なの?
  1. 2011/02/10(木) 21:11:26|
  2. 騎士物語
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

前書きで舞方様がおっしゃっていたとおりで、悪堕ちとかなんとか関係なく、世界観に引き込まれてしまいますね!悪堕ちはそれとして楽しみですが(w
  1. 2011/02/10(木) 21:27:41 |
  2. URL |
  3. maledict #gR92Clc.
  4. [ 編集]

エリーヌ、やっぱり可愛すぎますよ。世の中の怖さを知らない純朴すぎる少女が、人の手で造られたなんて信じられません!

この世界観は確かにはまりますね。僕自身がこういった部類が好きなのかもしれません。
  1. 2011/02/10(木) 22:36:31 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

>>maledict様
今回は世界観ありきになってしまいました。
楽しんでいただければうれしいです。

>>metchy様
エリーヌが可愛いといっていただけてうれしいです。
本当はもっと腰をすえて書くべきな世界観だったかもしれませんね。
  1. 2011/02/11(金) 20:06:58 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
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