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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

エチオピア戦争(12)

ソマリランド方面でグラツァーニ将軍が勝利を収めたことは、エリトリア方面のイタリア軍を率いるバドリオ元帥にも勢いを与えることになりました。

1936年2月、バドリオ元帥はエチオピア軍に対して大規模な攻勢を実施します。
イタリア軍のこの攻勢を正面から受け止めたのは、ラス・ムルゲータの部隊でした。
ラス・ムルゲータは、防御のしやすい高地アンバ・アラダンに陣を敷き、そこでイタリア軍を迎撃します。

高地に陣取るエチオピア軍を正面攻撃するのは不利だと判断したバドリオ元帥は、グラツァーニ将軍のやり方を取り入れました。
つまり機動力のある機動部隊を作り、それによってエチオピア軍の陣地を迂回して包囲しようと図ったのです。
ラス・ムルゲータの部隊はこの迂回行動に対応することができず、部隊が丸ごと高地の陣地で包囲されてしまいました。

ラス・ムルゲータは麾下の部隊を窮地から救うため、果敢にも包囲網からの突破を図ります。
エチオピア軍の戦士たちは、まだしっかりとした包囲陣が整っていなかったイタリア軍を攻め立て、なんと包囲の輪をこじ開けてしまいました。
そして部隊はほぼその戦力を保持したまま包囲網から脱出することに成功します。
機動力ではイタリア軍に一歩譲ったエチオピア軍でしたが、まだまだ個々の戦闘ではその強さを発揮したのでした。

しかし、この包囲からの脱出は部隊の戦力を発揮しやすい昼間に行われたものでした。
このことは逆にイタリア軍にも戦力の発揮がしやすいということでもあります。
特に、イタリア軍には昼間の利点として航空機による攻撃がありました。
イタリア軍は、ただちに脱出したラス・ムルゲータの部隊に対して、航空攻撃をかけたのです。

地上での戦いには強さを発揮するエチオピア軍も、航空機からの攻撃には弱いものでした。
さらにイタリア軍は爆弾だけではなく毒ガス弾も投下して、エチオピア軍を痛めつけます。
そして、もっと悪いことに、イタリア軍側に寝返った部族の攻撃を受けて行方不明になった二人の息子を探しに出かけたラス・ムルゲータが、この空襲で戦死してしまったのです。
指揮官を失ったラス・ムルゲータの部隊は、もはや部隊としての戦力を維持できませんでした。
また一つ、エチオピア軍の戦力が失われたのです。

エチオピア軍のダメージはこれだけにとどまりませんでした。
ラス・ムルゲータの部隊と同様にイタリア軍の攻撃を受け止めていた、ラス・セイオームとラス・カーサの部隊も、じょじょに押し込まれ始めます。
そして高地戦に強いイタリア軍の山岳歩兵師団がエチオピア軍の守りの要であるワーク山の頂上を強襲すると、エチオピア軍はもはや戦線を維持することができなくなってしまいます。
やむなくラス・セイオームとラス・カーサの軍勢は退却を始めますが、そこにもイタリア軍は航空機を使って空襲を繰り返しました。

エチオピア軍の退却に対し、イタリア軍は追撃を行います。
逃げるエチオピア軍を、完膚なきまでに叩きのめそうとした追撃は、逆にエチオピア軍に利用されることになりました。
追撃するイタリア軍の隊列が伸びきったところを見計らい、幹線道路の両側面に兵を伏せるように配置していたラス・イムルの軍勢が、イタリア軍に襲い掛かったのです。

ラス・イムルの襲撃は、イタリア軍にとって完全に奇襲となりました。
先ほどまで逃げるエチオピア軍を追い立てていたはずなのに、今度は自分たちが追い立てられる羽目になったのです。
イタリア軍はその場にとどまって何とか態勢を立て直そうとしましたが、あまりのことに同士討ちをするものまで現れる始末。
それでも、このときのイタリア軍は、何とか踏みとどまることができました。

あと一歩でまたしてもイタリア軍を退却させることができたエチオピア軍でしたが、今回は女神はイタリア軍に微笑みました。
踏みとどまったイタリア軍は果敢にエチオピア軍に立ち向かい、一部では銃剣突撃も行って何とかエチオピア軍を食い止めます。
逆にラス・イムルの軍勢のほうが、イタリア軍の頑強な粘りに押され、その攻勢を止められてしまいました。

そうなると戦場上空を支配するイタリア軍航空機がものを言い始めます。
爆弾や毒ガス弾がエチオピア軍を襲い、ついにラス・イムルの軍勢も退却を余儀なくされてしまいました。
退却はやがて潰走となり、エチオピア軍の前線はついに崩壊したのです。
ラス・イムルは、わずか千名ほどとなった部隊を率い、ゲリラ戦を続けるしか手がありませんでした。

(13)へ
  1. 2010/11/26(金) 21:16:15|
  2. エチオピア戦争
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<ジョージ・ワシントンも参加 | ホーム | 400年ぶりだそうです>>

コメント

母国を守るため果敢に闘い、いちどは包囲網を突破したラス・ムルゲータに一票!
ところで彼の息子たちの行方は、判明したのでしょうか?
  1. 2010/12/05(日) 13:07:12 |
  2. URL |
  3. 柏木 #D3iKJCD6
  4. [ 編集]

>>柏木様
ラス・ムルゲータの息子は、どうも寝返った部族によって殺されてしまっていたようです。
残念なことです。
  1. 2010/12/05(日) 21:17:34 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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