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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

エチオピア戦争(11)

エチオピア軍の攻撃に自軍が崩壊寸前まで陥ったことに、ムッソリーニは激怒しました。
欧州の文明国の近代的軍隊が、アフリカの野蛮人の軍隊に負けることなど許されるものではなかったのです。
ムッソリーニは重ねて毒ガスの使用を命じました。

ムッソリーニの命を受け、イタリア軍司令官バドリオ元帥は毒ガスの使用に踏み切りました。
イタリア軍は負けるわけには行きません。
もはやなりふりかまってなどいられなかったのです。

進撃を再開するにあたり、イタリア軍は航空機による毒ガス散布を行いました。
エチオピア軍は毒ガス戦に対抗する手段を用意しておらず、イタリア軍の毒ガスの前にはなすすべがありませんでした。
ガスマスクもなく、毒ガスの知識さえないエチオピア軍の兵士たちは、ただ毒ガスの前に逃げ惑うことしかできません。
前線のエチオピア軍は崩壊し、イタリア軍はようやく進撃を再開することができたのです。

イタリア軍の毒ガス散布はセラシエ皇帝に衝撃を与えました。
彼はすぐさま国際連盟にイタリア軍の毒ガス使用を訴えます。
「毒ガスはすべての文明国において禁止された兵器である」とのエチオピアからの抗議に、イタリア政府は当初毒ガスを使用した事実は無いと突っぱねました。
しかし、毒ガス使用の事実がじょじょに伝わるに連れて、「確かにガスは使用したが、あくまでも殺傷力のない、もしくはきわめて低いガスしか使っていない」という主張に切り替えます。

ガス使用を認めたイタリアに対し、国際連盟はまったく無力でした。
有効な経済制裁も実力行使もできず、ただイタリアに対する言葉だけの制裁に終わってしまったのです。
結局イタリア軍の毒ガス使用は終戦まで止まることはありませんでした。

進撃を再開したイタリア軍には、ムッソリーニからの支援として、本国から新たに二個師団と重爆撃機が送られました。
また、ソマリランド方面のグラツァーニ隊にもリビア師団が配属され、戦力はこれまでになく充実します。
毒ガス使用ともあいまって、もはやイタリア軍の進撃を止められるものはいないように思われました。

しかし、イタリア軍の進撃はまたも止められてしまいます。
ラス・カーサの部隊に全面攻撃を仕掛けたイタリア軍は、当初は圧倒的に有利にラス・カーサの部隊を攻撃しておりました。
ところが、イタリア軍の一部が側面の守りを忘れて前進してしまい、本隊の側面が手薄になるという状況が生じたのです。
ラス・セイオームがその隙を見逃しませんでした。
ラス・セイオームは、自らの軍勢を率いてイタリア軍の側面に開いた間隙に攻め込みます。
側面を突かれたイタリア軍はまたしても崩壊。
部隊は総崩れとなり、またも火砲も戦車も放棄して逃げざるを得なくなります。
エチオピア軍の強さをまたしてもイタリアは見せ付けられたのでした。

エリトリア方面の躓きに対し、ソマリランド方面ではグラツァーニ将軍に率いられたイタリア軍が順調に攻め込んでおりました。
このグラツァーニ隊の動きがイタリア軍に転機をもたらします。

このグラツァーニ将軍率いるイタリア軍に対し、エチオピア軍はラス・デスタ及びラス・ナシブ率いる合計八万の兵力をソマリランド方面に送り込んでおりました。
これはエチオピア軍全体の約四分の一ほどに上ります。
さらに塹壕構築や鉄条網の配置など野戦築城に造詣の深いトルコ人ウェヒブ・パシャを用い、頑強な野戦陣地を構築してイタリア軍を迎え撃つ準備をしていたのです。

このエチオピア軍に対し、グラツァーニは機動戦で対抗しようといたしました。
彼は指揮下の部隊を自動車化し、さらには馬やらくだまで用いて部隊の機動力を高めたのです。
そしてのちの第二次世界大戦でドイツ軍が用いたような電撃戦とも言うべき機動部隊による迂回包囲行動を行い、要塞化されていたコラヘという町を難なく陥落させたのです。

コラヘの陥落に驚いたラス・デスタは、グラツァーニ隊の後方を遮断して補給を断とうと考えました。
いかに精強な部隊でも、補給無しでは戦えません。
ラス・デスタはイタリア軍の補給拠点であるモガディシオに向かい部隊を送り出しましたが、これはイタリア軍の知るところとなってしまいます。
イタリア軍には空軍があり、また機動力の面でもグラツァーニ隊は優れておりました。
グラツァーニは空からラス・デスタの部隊に攻撃をかけて足止めし、自らは急遽引き返して、逆にこれを包囲いたします。
エチオピア軍は機動力に勝るグラツァーニ隊から逃れることはできず、包囲されて各個に撃破されていきました。

年が明けた1936年1月20には、ソマリランド方面のエチオピア軍の要衝ネゲリの町が陥落。
グラツァーニはここで部隊の休息と再編成を行います。
ソマリランド方面のエチオピア軍は、ほぼ壊滅状態に追い込まれてしまいました。

(12)へ
  1. 2010/11/22(月) 21:26:26|
  2. エチオピア戦争
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

エチオピアの敗色が、濃厚になってきましたね。
毒ガス使用のくだり、ムソリーニは人を野蛮人扱いする死角があるのだろうか?どっちが野蛮人なんだか?という気がしてなりませんでした。
そこまでやりながら攻勢を止められてしまうイタリア軍もイタリア軍なのですが。。。
  1. 2010/11/23(火) 08:00:34 |
  2. URL |
  3. 柏木 #D3iKJCD6
  4. [ 編集]

>>柏木様
当時の欧州人の感覚ではそれほどおかしなものではなかったんではないでしょうかね。
多分大多数の人がアフリカの人々を「野蛮なアフリカの原住民」という認識だった気がします。
白人に毒ガスを使うことはためらっても、原住民の有色人には使ってもたいした問題ではないと思っていたのではないでしょうか。
  1. 2010/11/23(火) 20:13:33 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
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