今日はお正月SSシリーズの四回目。
ホーリードールの十八回目をお送りします。
お楽しみいただければ幸いです。
それではどうぞ。
18、
くちゅ・・・くちゅ・・・
長く伸びたピンク色の舌がスカートの中に忍び込んでいる。
両脚の太ももを持ち上げられ、まるで駅弁売りが弁当の山を抱えるがごとくに躰を抱えられた女は、身動きもままならずに頬に涙を伝わせる。
「あ・・・ん・・・ああん・・・」
泣きながらも、躰を走る快感は確実に彼女の躰を火照らせる。
大事なところを化け物の舌で嬲られているというのに、躰はそれを喜んでいるのだ。
化け物の唾液なのか、それとも自分の垂らす愛液なのか、床には水のたまりが広がっていた。
「うふふ・・・ごらんなさい。あなたのお友達はとても喜んでいるわ」
「ああ・・・弘美(ひろみ)・・・」
人間とは思えないほどの力で、店員に背後から押さえつけられているもう一人の女性が思わず顔をそむける。
だが、最初は嫌がっていた弘美が、カメレオンの化け物の舌で嬲られていることに次第に快楽を感じ始めているのは、その口から漏れる声だけで充分に察せられた。
「ああ・・・い、いい・・・」
弘美がついに快楽に屈した。
躰が自然と開き、腰を振ってカメレオンビーストの舌を奥まで受け入れる。
「ひ、弘美・・・」
「ああ・・・せ、瀬里奈(せりな)・・・見ないで・・・あはぁ・・・いい・・・いいのぉ・・・」
ガクガクと腰を震わせて快楽をむさぼって行く弘美。
友人のあまりの変わりように、瀬里奈は唇を噛む。
だが、逃げることもできない。
躰はがっちりと店員に押さえつけられている。
「くすくす・・・ほうら、もう彼女はカメレオンビースト様に躰を開いたわ。もうすぐ心も捧げるようになる。次はあなたよ」
「い、いやぁ・・・」
首を振り、か細い声で悲鳴を上げる瀬里奈。
「あはぁ・・・瀬里奈ぉ・・・いいよぉこれぇ・・・あはぁ・・・カメレオンビースト様ぁ・・・はぁん・・・」
たらたらと愛液を垂らし、舌による愛撫を嬉々として楽しんでいる弘美。
すでに彼女の心は快楽に溺れていた。
そのことが瀬里奈には悲しかった。
「男子と女子が合わせて72人います。そのうち男子は女子のちょうど三倍の人数です。男子と女子の人数はそれぞれ何人か答えなさい」
黒板を前に担任の縁根(ふちね)先生が問題を出す。
今の雪菜にとっては算数など退屈なだけ。
このような時間を過ごすなど無意味なことに感じる。
あーあ・・・
ビーストを使って暴れたいなぁ。
くだらない人間どもを切り裂くの。
きっと楽しいだろうなぁ。
雪菜は思わず忍び笑いを漏らす。
「小鳥遊さん。ちゃんと授業を聞いていますか?」
縁根先生の注意が飛ぶ。
そのことに雪菜は非常な不快感を感じた。
この女・・・
くだらない人間の癖に・・・
「小鳥遊さん」
「・・・ちゃんと聞いています」
今すぐにでもこの女の首を刎ねてやりたい。
ブラディサイズの生贄にしてやりたい。
雪菜はそう思う。
『ベータ・・・ベータ・・・』
えっ?
雪菜の中に声が響く。
アルファお姉さま。
それはすごく安らぐ声。
ともに闇に仕える雪菜の優しい姉とも言うべき存在、レディアルファの声だ。
『アルファお姉さま』
すぐに雪菜はアルファに呼びかける。
『くすくす・・・いらいらしているのね? あなたの気持ちが漏れてきたわ』
あ・・・
雪菜は少し恥ずかしくなる。
感情のままに雪菜はその思いを垂れ流してしまっていたのだ。
もしかしたら光に気付かれるかもしれないというのに・・・
『ご、ごめんなさい、アルファお姉さま』
『光の手駒がどこにいるかわからないわ。気を付けてね』
優しく嗜めるレディアルファ。
『はい、アルファお姉さま』
『その退屈な時間が終わったら私の元へいらっしゃい。面白い時間が過ごせるわよ』
わあ・・・
雪菜の心がはずむ。
きっとアルファお姉さまはビーストを使って楽しんでいるのだろう。
早くこんな時間は終わらないかなぁ。
そうだ・・・
お母さんと同様にあの縁根先生もビーストにしちゃおうか。
ただ殺すよりそっちの方がいいよね。
決ーめた!
あとでビーストにしてあげるね、先生。
うふふ・・・
あうー・・・
男子と女子合わせて72人でしょ、そのうち男子は女子の三倍・・・
三倍かぁ・・・
と言うことは・・・
赤い彗星と同じだ!
違う違う・・・
雑念よ去れ!
ちゃんと勉強に身を入れないと。
あ・・・
珍しい・・・
雪菜ちゃんが怒られちゃったよ。
明日美ちゃんも雪菜ちゃんもあんまり怒られたりしないのにね。
あれ?
なんだろう・・・
雪菜ちゃん・・・
どうしてあんな顔するんだろう・・・
なんか怖いよ・・・
紗希は一瞬雪菜が浮かべた表情に恐怖を感じる。
いつもなら雪菜が浮かべるとは思えない表情だったのだ。
紗希は見たくないものを見てしまったように顔をそむけて授業に集中することにした。
それほど雪菜の表情は紗希にとっていやなものだった。
「お任せ下さいませ、カメレオンビースト様」
「私たちが更なる奴隷を連れてまいりますわ。うふふふ・・・」
妖しく笑みを浮かべる弘美と瀬里奈。
その目には黒くアイシャドウが引かれ、唇も黒い紅で彩られている。
先ほどまでの二人とはうって変わった妖艶さだ。
「ゲゲ・・・イキナサイ」
巨大な突き出した目をきょろきょろと動かし、カメレオンビーストは二人を送り出す。
彼女の舌で嬲られた二人は、快楽とともに刷り込まれるカメレオンビーストの闇の波動によって洗脳されてしまったのだ。
「「はい、カメレオンビースト様」」
二人は身奇麗に整えると、ブティックを出る。
新たな獲物をつれ、カメレオンビーストに支配してもらうのだ。
そうして仲間が増えれば・・・
二人は舌なめずりをしながら、昼下がりの町に消えていった。
「終わったー!」
担任の縁根先生が帰りの会を終わらせて教室を出て行くと、紗希は思わず両手を上げていた。
「紗希ちゃん」
明日美がにこやかに近寄ってくる。
その笑顔を見るだけで、紗希の心は温かくなる。
「明日美ちゃん」
紗希は微笑みながら明日美を迎える。
「今日こそうちへ寄って下さいませ。お母様が昨日ご馳走できなかったアップルパイを今日こそはって張り切っていると思いますわ」
「うわぁ、嬉しいな。行く行く」
昨日は気が付くと本屋で時間を潰してしまっていた。
今日はそんなことが無いように寄り道しないようにしなくちゃ。
「あ、雪菜ちゃん」
明日美はもちろん今日は雪菜を誘おうと声をかける。
だが、雪菜は二人の方を振り返りもせずに、鞄を持って教室を出て行ってしまった。
「あ・・・」
明日美の表情が曇る。
いつもならたとえ用事があったとしても、二人に声をかけない雪菜ではなかったのだ。
「雪菜ちゃん・・・どうかしたのでしょうか・・・」
「あ・・・うん・・・」
紗希も表情を曇らせる。
先ほど見せた雪菜の表情。
背中がぞっとするような笑みを見せていたのだ。
まるで・・・
まるで・・・魔に取り憑かれたような・・・
紗希は急いで頭を振る。
そんな馬鹿な話は無い。
アニメじゃないんだから。
きっと雪菜ちゃんは急ぐ用事があったんだ。
紗希はそう思うことで、自らを納得させた。
- 2007/01/05(金) 21:29:49|
- ホーリードール
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
ここでガ○ダムネタですか?知っている自分って、結構おぢさん?。もしかして紗希は年齢を詐称しているとか・・・(冗談ですけど)。
闇側は徐々に侵食を始めたというのに、光側の活躍?がご無沙汰ですね。そろそろ戦いも見たいものです。
- 2007/01/06(土) 12:17:16 |
- URL |
- metchy #-
- [ 編集]