と表題をつけてみましたが、別に感動の大作などというものではありません。
こちらの本をここ数日読み返しておりました。

「五月の嵐 ドイツ電撃作戦とダンケルク」 真砂博成著 学研M文庫
第二次世界大戦中の1940年に行われた、ドイツ軍のいわゆる「西方電撃戦」と、それによって追い詰められた英仏軍のダンケルクからの脱出作戦である「ダイナモ作戦」を扱った本です。
ドイツ軍による「西方電撃戦」は、フランス軍首脳部の「戦車はアルデンヌの森を突破できない」という思い込みを逆手にとって、大規模な装甲軍団をアルデンヌの森からフランスに侵攻させたことでドイツ軍が大勝利を得るわけですが、この本はその戦いの両軍の動きを平易な文章で読ませてくれる本となってます。
1939年に第二次世界大戦が始まったものの、ポーランド陥落以後は独軍に動きがなく、英仏軍はじょじょに緊張感を失っていってしまうわけですが、そういった様子もきちんと描写されています。
軍も民間人もドイツ軍の攻撃はないと思い込み、そのために実際にドイツ軍の攻撃を受けたときには、奇襲効果以上に呆然自失となってパニックに陥ったフランス軍が多かったんですね。
そしてドイツ軍の攻撃になすすべのなくなった英仏軍はダンケルクに追い詰められていくわけですが、その追い詰められた兵士を救うために、ありとあらゆる船が英国中からかき集められ、ダンケルクへと送られます。
はしけ、タグボート、レジャーボート、消防艇、遊覧船、漁船などなど、もう本当にありとあらゆる船です。
そういった船はその持ち主ごと参加したものも多く、多数の民間人が窮地の軍人を助けに行くという普通とは逆の行為が行われたわけです。
打ちひしがれよれよれの状態で何とか味方駆逐艦に救出された英国兵は、英国に引き上げる途中で今からダンケルクに向かおうとするこれらの雑多なボートたちとすれ違い、思わず感激の涙を流したそうです。
「俺たちを助けてくれるのは海軍だけではない。多くの民間人が助けに来てくれたんだ」
そういう思いがあったのでしょう。
そんな民間船のひとつがテムズ川観光遊覧船の「マクベス」号だったそうです。
外輪船の河川遊覧船ですから、そこそこの大きさがあったとは思いますが、ドーバー海峡を渡るのは大変だったことでしょう。
この「マクベス」号は、一度英軍兵士を満載してダンケルクを出発したものの、ドイツ空軍の空襲を受けて損害を受けてしまい、やむなく引き返さざるを得なくなりました。
船長は沈没を避けるために浅瀬に座礁させましたが、兵士を英国につれて帰れなかったことを大変悔やんだそうです。
しかし、海岸近くで座礁した「マクベス」号は、堂々としたままの姿を保っており座礁した船には見えませんでした。
マストには旗もひらめき、まさにこれから兵士たちを積み込もうと向かっているように見えたのでしょう。
ドイツ空軍はこのうち捨てられた「マクベス」号に何度も攻撃を仕掛け、ほかの船に使うべき爆弾を「マクベス」号がかなり引き受けていったのだそうです。
船長の見事な操船の賜物だったのでしょう。
ほかにもいろいろなエピソードが詰め込まれ、読み手を当時のダンケルクの海岸へと連れて行ってくれる本です。
興味のある方は手に取られてみてはいかがでしょうか。
それではまた。
- 2010/10/05(火) 20:51:05|
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