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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

龍が口を開けて火を吐いているようだった

『こちら利根四号機。敵らしきもの10隻見ゆ、ミッドウェーよりの方位10度240浬地点』
1942年6月5日午前五時、索敵に飛び立っていた偵察機からの入電が入る。
機動部隊旗艦である空母「赤城」の司令部では、司令官南雲中将が眉をひそめた。
だが、敵らしきものとは何か?
アメリカの機動部隊なのか?
それとも単なる水上艦隊なのか?
「敵の艦種を知らせよ」
すぐさま利根四号機に打電が送られる。
返ってきた返事はこうであった。
『敵兵力は巡洋艦5隻、駆逐艦5隻なり』
敵の機動部隊ではない。
空母はいなかった。
南雲長官以下にホッとした空気が広がる。

だが・・・
午前五時半。
再び利根四号機から入電。
『敵はその後方に空母らしきもの一隻を伴う』
南雲司令部は混乱した。
いないはずの空母がいたのか?
で、あればどうするべきか?
「赤城」以下の飛行甲板では、ミッドウェー島に対する第二次攻撃の準備が進められていた。
対地上用の爆弾では敵の空母は沈められない。
南雲中将は決断する。
「対艦攻撃装備に換装せよ」
運命のミッドウェー海戦が始まるのだった。

と、まあミッドウェー海戦の出だしをそれっぽく書いてみましたが、この時、アメリカの機動部隊をいち早く発見したのが、重巡洋艦「利根」の偵察機でした。

重巡洋艦「利根」は、昭和9年(1934年)に「最上」型巡洋艦の五番艦として建造が開始されました。
日本の巡洋艦は、基本的には重巡が山の名前、軽巡が川の名前となっており、軍縮条約上軽巡として作られた「最上」型の一隻である「利根」も川の名前を付けられました。
「利根」は六番艦の「筑摩」とともに着工前に設計が見直され、重巡として建造されることが決まっていたのですが、名前はそのままになったのです。

設計が見直されたことによって、「利根」は今までの日本の巡洋艦とはとても印象の違う艦になりました。
なんと、主砲の20センチ連装砲塔を四基すべて艦体の前部に集中して配置してしまったのです。
今までの日本の重巡は、20センチ連装砲塔を前に三基、後ろに二基というのが標準でしたので、まさに見た目にはとても特異な艦に見えたことでしょう。
c70058c22.jpg

これによって空きスペースとなった後部甲板は、航空機搭載スペースとして活用されることになりました。
「利根」は水上偵察機をなんと六機も搭載することになったのです。
今までの重巡はせいぜい二機から三機でしたので、「利根」は一隻で重巡二隻から三隻分の偵察機を持つことになったのです。
いわば「利根」は、偵察重視型の重巡でした。

昭和13年11月、重巡「利根」は完成します。
基準排水量は11200トン、全長は200メートルもの堂々たる重巡でした。
武装は主砲が20センチ連装砲塔が四基八門、12.7センチ連装高角砲が四基八門、三連装魚雷発射管が四基十二門という重武装。
主砲塔が一基少ないことを除けば、他の重巡と遜色ありませんでした。

「利根」は同型艦として完成した「筑摩」とともに第八戦隊を編成しますが、その搭載偵察機の多さを買われて、第一航空艦隊、いわゆる南雲機動部隊に配属されます。
そして持ち前の偵察機を使って、機動部隊の目として活躍することを期待されました。

「利根」はその期待にこたえる働きをして見せました。
真珠湾攻撃の時にはハワイ上空の偵察を行ない、貴重な攻撃前の情報を入手します。
インド洋作戦のときも英艦隊を発見したりいたします。
そして運命のミッドウェー海戦。
その日も「利根」からは索敵機が飛ぶ手はずになっておりました。
ところが、射出機(カタパルト)の故障からか(異説あり)、四号機の発進が30分程度遅れます。
この遅れが幸運だったのが致命的だったのかは意見の分かれるところですが、四番機はこのあと冒頭のようにアメリカの機動部隊を発見したのでした。

ミッドウェーの大敗後も「利根」は生き残り、日本海軍の主要な海戦に参加して行きます。
昭和19年のシブヤン海海戦では、敵機の集中攻撃を受けた戦艦「武蔵」のそばで対空射撃に奮戦し、前甲板の四つの砲塔が空に向かって砲撃するさまを見た者が、「まるで龍が口を開けて火を吐いているようだった」と言ったとも言います。
この時爆弾二発を受けたものの、うち一発は不発だったそうで「利根」は健在。
その後のサマール島沖海戦では、米軍の護衛空母艦隊に対し主砲を発射。
数発を命中させたといいます。

その後も生き残った「利根」は呉軍港に係留されておりましたが、終戦間際の幾度となくおこなわれた米軍機の攻撃によりついに大破着底。
そのまま終戦を迎えました。

不遇の生涯を送る重巡が多い中で、「利根」はかなり活躍した部類ではないでしょうか。
主砲塔を一基減らしてまで増やした航空機装備も、充分すぎるほどに役目を果たしたと思います。
最後はスクラップになってしまいましたが、保存しておいてやれればよかったのになぁと思いました。

それではまた。
  1. 2010/07/21(水) 21:42:25|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

この艦は、主要な海戦のほとんどすべてに参加しているみたいですね。
前半部が火器、後半部が航空兵装という艦容は、現代艦のスタイルを先取りしたものでしょうか。
ユニークな格好は、子供のころからとても印象的でした。
  1. 2010/07/22(木) 21:59:29 |
  2. URL |
  3. 柏木 #D3iKJCD6
  4. [ 編集]

>>柏木様
現代艦船ですと後部はヘリコプター甲板というのが多いですよね。
その意味では先取りしていたのかも。
最後着底したとはいえ、ほとんどの海戦を生き残った運のいい艦だったみたいです。
  1. 2010/07/22(木) 22:11:40 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
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