サミュエル・ヒューストン率いるテキサス軍が窮地の逃亡を続けているころ、メキシコ軍を率いる大統領サンタアナは、テキサス軍の補足に躍起になっておりました。
サンタアナとしては、いつまでも戦争が長引くのは決して望ましいことではなかったのです。
そのため彼は、麾下のメキシコ軍を数隊に分け、それぞれを分派してテキサス軍を追わせたのです。
このことがサンタアナにとっては痛いミスとなりました。
1836年の4月に入ると、テキサス軍は以前の約半数の1000名ほどにまで弱体化しておりました。
ところが、追撃してくるメキシコ軍も兵力を分散させ、サンタアナ率いる本隊もわずか700人ほどになっていたのです。
逃亡に疲れたテキサス軍は、ここで一気に乾坤一擲の反撃を行い、サンタアナの本隊を打ち破ろうと考えます。
最初は乗り気ではなかったといわれるヒューストンでしたが、もはやこれ以上の逃亡は難しいと感じ、ついに彼も戦いを決心します。
4月20日、斥候の報告によりサンタアナのメキシコ軍がサンジャシント川近くにいると知ったヒューストンは、テキサス軍をサンジャシント川まで進めます。
一方サンタアナも、逃亡を続けていたテキサス軍がサンジャシント川にいることを知り、今度こそ逃がすまいと部隊を進めました。
さらにサンタアナは、近くにいるはずのコス将軍に連絡を取り合流するように命じます。
コス将軍はすぐさまこの命に従い、500人以上の部隊を率いて合流いたしました。
メキシコ軍が700人ほどだと思っていたヒューストンは、コス将軍の合流で1200人ほどに増強されたことを知り動揺します。
攻撃をためらうヒューストンでしたが、テキサス軍の兵士たちはもうこれ以上の逃走は望みませんでした。
攻撃しかないと腹をくくったヒューストンは、約800人の兵力でメキシコ軍への奇襲をおこなうことにしました。
4月21日の早朝、テキサス軍はメキシコ軍への攻撃を開始します。
長い間の追撃で疲労していたメキシコ軍は、テキサス軍の攻撃はないと思っていたのか、まったく無防備に休息しておりました。
「アラモを忘れるな! ゴリアドを忘れるな!」の言葉を大声で叫ぶテキサス軍の攻撃は、完全なる奇襲となり、メキシコ軍は大混乱へと陥ります。
たった18分ほどの戦闘で、メキシコ軍は600人以上が戦死し、700人以上が捕虜になってしまいます。
それに対しテキサス軍の戦死者は、10人に満たないという少ないものでした。
自軍が一瞬のうちに崩壊した大統領サンタアナは、戦場からの逃亡を図ります。
彼は一兵士の服と自分の服を取替えてまで脱出しようとしましたが、テキサス軍は見逃しませんでした。
4月22日、メキシコ大統領サンタアナはテキサス軍に捕らえられ、捕虜としてヒューストンの前に連れてこられます。
ただ一度の敗戦が、メキシコ軍を崩壊させてしまいました。
サンタアナが捕らえられたことで、メキシコ軍はテキサスから後退しました。
捕らえられたサンタアナは、自らの命を救うためにはテキサスの独立を承認するしかありませんでした。
1836年5月14日に条約が結ばれ、サンタアナはテキサスの独立を承認します。
ただし、サンタアナはすでにメキシコ大統領としての地位を追われており、メキシコとしての承認ではなかったといいます。
サンタアナは放免され、メキシコに戻って退位させられていた大統領に再び復帰。
その後メキシコ各地でテキサスに習って発生した独立要求をねじ伏せて行きました。
こうしてメキシコとの間の独立戦争を戦い抜いたテキサスは、テキサス共和国として歩みだしたのち、1845年にわずか10年に満たない生涯を終えアメリカ合衆国へと併合されます。
テキサスは住民の総意という名目で、アメリカの28番目の州になりました。
当然このことはメキシコとの間に軋轢を生むことになり、翌1846年の「米墨戦争(アメリカ-メキシコ戦争)」へとつながります。
この米墨戦争のアメリカの勝利により、ついにメキシコはテキサスをあきらめざるを得ませんでした。
最初は放棄するはずだったアラモの砦。
それがいつしか守るべき場所になってしまい、メキシコ軍との間に激戦が行われてしまいます。
そして、危惧したとおりに全滅という憂き目を見てしまいました。
しかし、そのことでテキサスはもとよりアメリカでもメキシコに対する戦いを「正義の戦い」として訴えることができるようになりました。
こうしてアラモの戦死者たちは英雄とされ、今でもアメリカ国民に取り思い入れのある人々になっているのです。
アラモの戦い 終
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参考文献
「アラモの戦い」 歴史群像2001年12月号 学研
他
参考サイト
「Wikipedia テキサス革命」
「Wikipedia アラモの戦い」
他
今回もお付き合いいただきましてありがとうございました。
- 2010/04/24(土) 21:39:55|
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