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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クラリッサ

今日は「グァスの嵐」十五回目をお送りします。

久し振りになってしまい申し訳ありません。
それではどうぞ。

15、
去っていくギャレー。
エミリオたちはしばしその姿を目で追っていたが、充分に離れたと判断したところでホッとため息をつく。
「ハア・・・緊張したぁ」
「心臓に悪いぜ」
エミリオもゴルドアンも胸をなでおろす。
「フィオ、ミューを出してあげてくれ」
「ええ、わかったわ」
フィオレンティーナも安堵の表情を浮かべ、ミューを樽から出してあげる。
「あ、ありがとうございます」
樽から出てきたミューが頭を下げる。
「ミュー、気安く呼ばせてもらっているけど、あらためて自己紹介しよう。僕はエミリオ・オルランディ。エミリオで結構だよ。このファヌーは僕の船だから安心していいよ」
エミリオがにこやかに笑いかける。
「ありがとうございます」
ミューもにこやかに微笑んだ。
「俺はゴルドアン。見ての通りバグリーだ」
「私はフィオレンティーナ・モルターリ。フィオでいいわ。この船にはわけあって乗せてもらっているの」
「ミュー・タウゼクスです。よろしく」
「よし、とりあえずこの場所を離れよう。奴らが戻ってこないとも限らない」
ゴルドアンがそう言って帆を操りに行く。
「そうだね。詳しい話はおいおい」
エミリオもうなずいて、舵に付く。
ファヌーは再び滑るように走り出した。

「あうん・・・あ・・・はん・・・あん・・・」
女のあえぎ声。
ギシ・・・ギシ・・・
リズミカルにベッドが揺れる。
「あ・ああ・・・あああ・・・ん」
絶頂に導かれ、女は高みへと昇っていく。
「ふう・・・」
自分自身も放出による開放感に浸るようにごろんと横になる。
いつもセックスのあとは気だるいものだ。
ダリエンツォはベッドの脇にあるテーブルからタバコを取る。
すぐに女がマッチで火をつけ、たくましい胸板に顔をうずめる。
「ふう・・・」
タバコの煙を吐き出すダリエンツォ。
黙って女の髪の毛を梳いてやる。
セックスに関しては悪く無い女だ。
だが、それ以外はどうでもいい女でもある。
売れば結構な金にはなるだろう。
コンコンとノックの音が響く。
「キャプテン。よろしいですか?」
「構わん。入れ」
声の主を理解したダリエンツォは、即座にそう言った。
「失礼しやす」
入ってきたのは赤ら顔に髭を生やしたいかつい男だった。
名をガスパロ・ラッザーリといい、ダリエンツォ指揮する海賊船バジリスクの副長を務めている。
つまりは荒くれどもを押さえつける係りだ。
「ハトが届きました。どうやらリューバ海軍は自航船を手に入れそこなったそうです」
「ふん・・・追い掛け回して逃げられたというところか?」
タバコの煙が暗い室内に広がっていく。
「それがそうでも無いようでして。自航船は自焼したということです」
「なんだと?」
タバコを灰皿でもみ消し、ベッドから立ち上がるダリエンツォ。
「自航船が簡単に燃えるものか? 金属でできているんじゃなかったのか?」
「よくはわかりません。海軍のギャレーがヒューロットに立ち寄った時の情報ですので」
ガスパロも肩をすくめる。
当然だろう。
彼にもわかるわけは無いのだ。
「よし。ヒューロットへ向かう。この周辺ではもう目ぼしいものはあるまい」
「わかりました」
「ああ、待て」
部屋から出て行こうとするガスパロを呼び止める。
「何か?」
「あの女はどうしている?」
ダリエンツォの目が不気味に輝いた。

「ハア・・・ハア・・・」
女の潤んだ目が宙をよぎる。
どろどろになった秘部に白い指が蠢いている。
真っ赤になったそこは腫れ上がって痛々しいほど。
しかし彼女の指は動くのをやめない。
飢えているのだ。
快楽に飢えているのだ。
熱く火照る躰は刺激を求めてやまないのだ。
指だけでは足りない。
欲しい・・・
男が・・・
男の股間でたぎるものが・・・
欲しい・・・
でも・・・
潤んだ目に涙が浮かぶ。
誰でもじゃない・・・
誰でもいいわけじゃない・・・
ダリオ・・・
どこにいるの?
助けて・・・
ダリオ・・・

「意志の強い女でさぁ。食事に混ぜた薬のせいであそこなんかとろとろだっていうのに、男を欲しがりもしねえんです」
監禁場所に向かう通路で男が様子を伝える。
なるほど。
あの男に操を立てているのだろう。
そのような配慮など無縁の男だというのだがな。
ダリエンツォの顔の笑みが浮かぶ。
それならば・・・
面白いものを見せてやるとしよう。

カチャリ。
鍵の開く音にクラリッサは顔を上げる。
たいまつを片手にした男が牢獄の鍵を開けたのだ。
そしてその後ろにはあの海賊のキャプテンが。
「ヒッ!」
クラリッサはとっさに背後の壁まであとずさる。
青ざめた躰を抱え込むようにうずくまるクラリッサ。
「女、出ろ。キャプテンがお話があるそうだ」
クイクイと指で手招きするたいまつの男。
だが、クラリッサは動けなかった。
ガタガタと震えてまともに顔も上げられない。
「ふむ・・・どけ」
「へ、へい」
男がどけ、キャプテンが牢屋に入ってくる。
「あ・・・あ・・・」
恐ろしさに肩を震わせているクラリッサ。
その足元にバサッと布が投げられる。
「え?」
「新しい服だ。躰を洗ってそれを着てこい」
それだけを言うと、海賊のキャプテンは牢屋を出る。
「鍵は開けておけ。それとお湯と石鹸を用意してやるんだ」
「へ、へい・・・」
たいまつを持ったまま、男は口を開けてぽかんとしたままだった。

「キャプテン、連れてまいりやした」
その声に振り返るダリエンツォ。
彼の目によれよれの服を着た水夫と、対照的にさっぱりとしたズボンと白いブラウスに身を包んだ女性が映し出される。
「ほう・・・」
思わずそうつぶやいてしまうダリエンツォ。
それほどまでに目の前の女性は美しかった。
長くちょっと赤みがさした栗色の髪が、まだ少し水を含んでつややかだ。
青い目がうつむき加減で愁いを帯びているのがそそられる。
「あ、あの・・・」
「ん?」
おずおずと口を開いた彼女にダリエンツォは返事をする。
「湯浴みと新しい服・・・ありがとうございます」
多少声が震えているのは寒さのためではあるまい。
このセリバーン海に浮かぶ島々は暑い地域なのだから。
「気にすることは無い」
三角帽を目深に被り直すダリエンツォ。
見るものが見れば、それは彼がちょっとした照れ隠しをしているのだとわかっただろう。
女に礼を言われることなど、ついぞ無かったことなのだから。
「私を・・・どうするつもりなのですか?」
「さあ・・・どうしたらいいとおもう?」
質問に質問で返すダリエンツォ。
彼にしてみれば、今まで女に価値を求めるとしたらSEXか身代金ぐらいでしかない。
だが、彼女の場合はそうではない。
それがちょっと彼を戸惑わせていることだった。

薬であられもなく男を求めてくるのであれば事は簡単だった。
快楽を餌に訊きたいことを訊き、あとは娼館にでも売り飛ばせばいい。
だが彼女はそうならなかった。
快楽に溺れながらも、ただひたすら自慰だけで我慢したのだ。
それだけあの男に対する思いが強いのだろう。
精神力も並みではない。
と、なれば、訊きたいことも素直にはしゃべりはしまい。
さて・・・どうするか・・・

そこでダリエンツォは遊ぶことにしたのだ。
彼女が必死に操を立てている相手がどういう男なのかを知らしめる。
それによっては、面白いことになるかもしれないと思ったのだ。

「身代金は・・・お望みの額をお支払いすることは・・・たぶん・・・」
女は目をそらし、うつむいてしまう。
そうだろうな。
財産を持っているような様子は彼女の家には無かった。
結婚式の持参金も乏しい蓄えを吐き出したのだろう。
だが、どのような金銀財宝にも勝る財産を彼女は持っているはず。
いや、そうでなくてはならないのだ。
星船に関するキーとなるもの。
それを求めたからこそ、ラマイカのジュゼッペ・セラトーリが配下の者を使って彼女を手に入れようとしたのだろうから。
いや、この女ならそのようなものが無くても手に入れたくなりそうだがな・・・
「ふっ・・・」
ダリエンツォの口から笑いが漏れた。

「面白いモノを見せてやろう。来るがいい」
ダリエンツォは手招きしてクラリッサを呼び寄せる。
やむを得ず彼女は従い、ダリエンツォの後を歩いていった。
外の陽射しに思わずめまいがするクラリッサ。
日の差さない牢獄から出たばかりの身にはこの陽射しはきつすぎる。
「大丈夫か?」
「へ、平気です」
気丈にも、ふらつく躰を支えて再び歩き出すクラリッサ。
その様子にダリエンツォは笑みを浮かべた。
  1. 2006/12/11(月) 21:31:29|
  2. グァスの嵐
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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