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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ソ連に喜ばれた毒蛇

航空機の運用方法の差が、その航空機自体の評価を大きく左右したのが、アメリカのベル・エアクラフト社の開発したP-39エアラコブラでしょう。
これほど米英とソ連での評価が違う機体も珍しいかもしれません。

P-39は、1937年にアメリカの高高度迎撃用の単座戦闘機開発要求に基づいて作られました。
この時同時に要求のあった双発戦闘機がのちのP-38ライトニングとなるのですが、この双発戦闘機の航続性能を落とした程度というかなりレベルの高い要求がこの単座戦闘機には求められておりました。

ですが、その高い要求にベル社を含む三社が計九種類もの試案を提出。
そのうちの一つがこのP-39の基となりました。

P-39は通常の戦闘機の一般的配置とは異なり、胴体中央の部分に液玲エンジンを搭載し、コクピットはその前に置くという変則的な配置を採用しておりました。
エンジンからは長いプロペラシャフトが機首まで伸び、そのシャフト内に37ミリという大口径の機関砲を装備。
高高度での迎撃機として申し分のないものでした。

試作機は優秀な成績をおさめ、米軍としても満足のいくものではありましたが、残念なことに高高度の迎撃機としては、同時期に要求された双発戦闘機P-38が完成しており、P-39はあまり必要がなくなってしまっておりました。

そこで米軍はP-39から高高度での飛行に必要なターボ加給器を取り外し、中高度域での戦闘機として完成させることにしました。
この中高度型の試作機は1940年9月に完成し、欧州での戦闘が激化していたことから、英軍向けの輸出機として生産が開始されます。
さらに太平洋方面への配備も進み、太平洋戦争序盤の米陸軍航空隊の主力戦闘機として使用されました。

しかし、実戦でのP-39の評判はさんざんでした。
英軍はホーカーハリケーンにも劣るとの評価を下し、戦闘機としての使用を早々にあきらめます。
米軍もまたP-39と零戦の空戦の結果から、こちらも戦闘機としての評価はきびしいものとなりました。

ですが、これはエンジンを中央に置いたP-39の飛行特性をパイロットが把握し切れなかったことも大きな要因でした。
通常の戦闘機と同じように乗りこなそうとして、上手く操縦できていなかったのです。

また、ターボ過給器をはずしてしまったことで、高高度でのエンジン性能が低下してしまったこともP-39の悪評を高めることになりました。
欧州や太平洋では、空戦が結構高度の高い場所でおこなわれることが多かったのです。

結局米英では見切りを付けられてしまったP-39は、レンドリース機としてソ連に追いやられてしまいました。
ところがこのP-39。
ソ連では意外なほどに好評でした。

ソ連空軍は対地支援を主におこなうための空軍でした。
対地支援用の攻撃機は地上攻撃を行なうのですからあまり高高度を飛びません。
そのため、対地支援攻撃機をガードする戦闘機も、必然的に低高度での飛行が多くなりました。

P-39は低高度域では充分な能力を出すことができました。
ソ連空軍はP-39をメッサーシュミットBf109に充分対抗可能な戦闘機としてもてはやしました。
事実空戦では多くのBf109がP-39に撃墜されました。
また、機首の37ミリ機関砲は、対地攻撃にも有効でした。

ソ連空軍は多くのエースパイロットをこのP-39で生み出しました。
ソ連軍にとってはまさに運用にぴったりはまった戦闘機だったのです。

のちにアメリカは、このP-39の高高度性能を高めようとして、改良型のP-63キングコブラをベル社に作らせました。
しかし、そのときにはP-47サンダーボルトやP-51ムスタングなどが完成しており、P-63の出番はありませんでした。
結局このP-63もソ連へのレンドリース機となってしまい、ソ連空軍はまたしても高性能の機体をアメリカからもらえることになったのです。

機体の運用の違いが、東西でこれほど評価を変える機体も珍しいでしょう。
P-39はまさにソ連軍のためのアメリカ製戦闘機だったのです。

それではまた。
  1. 2010/02/05(金) 21:40:28|
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